私情警察3 ~後編~ 中国の拷問【凌尾刑】
「オレは津木田 五郎ってんだ」
「名前なんてなんでもいいさ。アンタ、スジもんだろ…?」
「カンがいいねぇ。さすが元警察官だ」
(オレを知っている…?)
「…で?なんなんだ? コイツらを助けにきたのか?」
「あ~ちがう、ちがう。コイツらね、人のシマで小遣い稼ぎしてたんだわ~」
「…で、カタにハメようってわけか?」
「そう。若者の内臓って、中国では高く売れるんだわ~。あ、タバコ吸ってるの?それだと値段が下がっちゃうなぁ~。ま、薄利多売でいくか…」
ターゲットの顔がみるみる青ざめる。津木田という男は話しかける。
「キミだけじゃないから。お友だちも一緒だから。さみしくないよ~」
学校ではいじめ、学校の外では違法な小遣い稼ぎか…。
(すくえねぇな、こいつら…)
「電化製品も…車も…内臓も…日本産は人気なんだわ~」
「だからと言って、ターゲットは渡す気はない!こいつはオレが…!」
「ああ、それでいい。ただよ、オレたちは眼球と内臓を無傷で手に入れたいんだ。そこさえ無事だったらあとはどうでもいいよ。だた、ナイフくん以外は預からせてもらうよ。いろいろ聞きたいことがあるんだわ~」
いきなり外道が口をはさむ。
「あ、あの…冗談ですよね?」
「そちらさんはどうか知らないが…」
津木田は外道の髪を鷲づかみにする。
「オレは親しい人間のまえでしか冗談は言わないんだわ~。おまえ…オレと親しいの?」
「…………あ……う…いえ…」
「と、いうわけで頼むわ。鳥嶋の兄ちゃん。オレ、アンタを気に入ってるからやり合いたくなんだよね」
オレは少し考えた。ヤクザもんと取引するのは気が引けるが……。
「引き渡した方が外道がもっと苦しむというなら…その条件をのもう」
「ああ、それは約束するぜ。兄ちゃんに負けず劣らずの地獄を味あわせてやる予定だ」
「わかった。3日間コイツを預からせてもらう」
「OK。3日後、S港に14時でな。時間厳守でたのむぜ」
そういって男はスッと、闇の中に消えていった……。
カチカチッ……カチカチッ……カチカチッ………
なんの音かと思ったら…外道が恐怖で歯をカチカチ鳴らしていた音だった。
「さてと、いったん眠ってもらうぜ…」
そしてオレはチョークリーパーで外道の意識を刈り取り、拷問室に運んだ。
外道を拷問室に運んだオレは、外道を大木のような柱に括りつけた。
「ZZZ…………」
まだ寝てやがる…。いつまで寝てやがんだ!
「さっさと…起きやがれ!グズが!」
ボコッ! 鼻に一発、気付けのジャブををお見舞いしてやった。
あたりに外道の歯がに2~3個散らばった。
「ぐはぁ! ってなんだここは!? なにも見えねぇ!」
「お目覚めか…?」
ヤツは周囲を確認できない。当然だ。目隠しをしているのだから。
「その声…元警察官の…おいアンタ!助けてくれよ!…な?」
「知るか…。オレが助けるのは善良な一般市民だけだ…」
「そ、そんな…オレには少年法が…」
「おいおい、自ら法に背いたくせに…自分が困ったら法に助けを求めるのか?」
「いや、それ…は…」
「マリの大好きな小説で出てきた言葉だそうだ。『悪人に人権はない』ってな。とても…いい言葉だと思うよ」
(眼球と内臓がキレイなままで痛みつける、か。なら、アレにするか…)
ヤクザもんの注文を聞くのはポリシーに反するが…。
まぁいい、外道が永く苦しむことができるのなら…。
「いやだ、死にたくない…死にたくない…」
……なに言ってんだコイツ?
テメェが殺した娘さんは…生きることすらできねぇだろうが!
残された遺族は…ずっと苦しんで生きていくんだぞ!
ま、外道に説教しても意味はないか。
そもそも聞く耳があるなら…オレのターゲットにはならないけどな。
「さて、そろそろ始めるか…」
オレは火であぶった短刀を手に取った。
その切っ先を外道の右腕に軽くあてる。浅く突き刺し、肉をこそぎ落とした。
「ひ、ぎゃああああああぁぁぁぁ!」
外道の悲鳴が室内に響く。
「他人の痛みには鈍感で…自分の痛みには敏感なのか?」
「や、やめて……」
「やめるわけねぇだろ、アホ」
オレはその後も、両腕、両脚から少しずつ肉を削ぎ落していった。
ゴッソリとは削らない。浅く薄くやっていくのがコツだそうだ。
この拷問は『凌尾刑』といって中国の拷問の一種である。
罪人の体を生きたまま少しづつ切り落とし、長時間苦しめるという拷問だ。
ホントはこのまま苦しめてやりたいが…ヤツとの約束もある。
「や、やめてくれぇええええええ!」
3日後…オレは店から一時間の港に車を走らせた。
大きめのキャリーケースを乗せて。
「…これでいいのか…?」
「問題ないぜ…って、ん?なんかヒンヤリしているな?このキャリーケース…」
「ああ、鮮度を気にしていたから、冷やしておいたんだ」
「気が利くなぁ!鳥嶋の兄ちゃん。お、そうだ!分け前は…」
「いらない。オレはヤクザもんと取引はしない。勘違いしないでくれ。オレは外道が永く苦しむというから手を貸しただけだ」
「ま、アンタならそういうと思ったわ~。借りができたな。いつか返すよ」
「………………」
オレが持ってきたキャリーケースを受け取り、男は船に乗っていった。
外道の行方はだれも知らない。
港から帰ると、マリがコーヒーを淹れてくれていた。
「お疲れさま、マモルさん」
「ありがとう、マリ」
うむ、一仕事終えたコーヒーはとても美味しく感じる。
「今回も片付けがラクで助かったわ」
「そりゃ、よかった」
こうして今回の依頼は無事に終了した。
無事に終わったが、反省点もある。ヤクザの言いなりになったことだ。
オレがもっと強ければ…ヤクザの要求を突っぱねることができた…。
『外道が永く苦しむなら』と言ったが…津木田に少し腰が引けたってのも本音だ。
津木田は強い。おそらく俺よりも…。
(マリがいなくてよかった…。情けねぇ…もっと強くならなきゃ……!)
オレは拳をカタく握った…。
(ヤクザが…オレを見て、道を開けるくらい…強くならなきゃ、な!)
翌日、オレは依頼者に依頼完了の知らせをおくった。
事件の真相、事の顛末、なるべく依頼者がキズつかないように言葉をえらんで…。
筆記試験最下位の警察官と言われたオレは、これにとても神経をつかう…。
(ヤクザと取引したことは、だまっておくか……)




