21 前回とは違うように動くルリィ
翌朝、一緒にウエィストへ向かい、途中の宿で一晩泊まり、翌夕方、ウエィストへ着いた。
ウエィストへ着くと直ぐに防壁に登りたいとおっしゃったので、エレベーターを使って上がった。
前の時は地面を押し上げたのだったと思い出す。
防壁の上に移り、小さくなったメキシアを見下ろした。
メキシアの城は直ぐ近くにある。
視力が良ければメキシアの城の窓の向こうに誰が出ているのかすら見えてしまう距離だ。
これでもメキシアは挙兵するのだろうか?
圧迫されすぎて居心地が悪いことは間違いないだろうと思う。
私なら、後方に城を移動するけど、メキシアにそんな力は残っていないだろう。
陛下は何度かメキシアの城を握りつぶす仕草をして、ウエィストの山頂砦に登って、カルフォヴィアを見下ろした。
陛下は山頂砦の視察をして、防壁の上をクルイストへと向かうことになった。
少し遅くなったが、クルイストの高位貴族のための宿泊施設に泊まっていただくことになる。
降りるために砦のエレベーターを使うと、陛下が「砦にまでエレベーターがあるのか?!」と驚かれた。
「残念なことに、魔力が全くない人には動かせないんですけど・・・」
「いえ、誰かと一緒に上がればいいんだ。階段を登ることを考えたら本当に便利なものだ」
翌日は陛下は騎士達に声を掛けて回っていた。
今日は砦の一階から見学をしながらゆっくりと防壁の上へと上がっていった。
トステリアへと向かい、そこにはアンサーレッツ辺境伯も待ち構えていた。
陛下の案内はアンサーレッツにお任せして、私達は陛下と別れることになった。
ヴェルトラム邸に戻ると、自分の体調の悪さに気がついた。
陛下がいらしていて、緊張していて自分の不調に気が付かなかったようだ。
私は自分の体調不良の原因を探したら、妊娠しているのだと気がついた。
その日、ランベルトにゆっくり愛され、満足して、ランベルトに妊娠したかも知れないと告げた。
ランベルトは真っ裸のまま飛び上がって喜んだ。
「まだお医者様に見ていてただいていないので、確かではないので、秘密にしていてくださいね」
「体調は悪くないのか?」
「少し、体調が悪かったので、妊娠に気が付きました。治癒と回復の魔法をかけたので心配はいりません」
「決して無理はするなよ!!」
「はい」
「その・・・してしまったけど、問題はないのか?」
「あまり激しいものはよくないでしょうが、愛し合うことは悪いことではありませんよ」
「そうなのか?」
「はい。大丈夫です。優しく愛してください」
ランベルトはよほど嬉しかったのか、まだ秘密だと言ったのに、ランベルトの態度で屋敷の者達にはあっさり知られてしまった。
ロアに医者を呼びますか?と聞かれたが、まだ早いと答えて、来月の中頃に来ていただくように手配してもらった。
治癒魔法だけではなく、魔法を使っても子供には影響なかった。
ランベルトは過保護になって、私が魔法を使うのを嫌がったが、私が魔法を使うと子供も魔力量が増えている気がしたので、その事を伝えると、不本意だと言う顔をしながらも、魔法を使うのを許してくれた。
「魔力量の高い子が欲しいかと聞かれると、微妙なところだな。魔法は使えた方がいいだろうが、それに振り回されているルリィを見ると、良いことではない気がする」
「ずっと後回しになっていた教会を建てたいのですが・・・」
「そんなに魔力を使って大丈夫なのか?」
「ゆっくりやってみます」
二人で教会の図面を引きながら、子供達を預かることになる部屋を二十用意することにした。
王都の教会のようにベッドと机一つで身動きも取れないようなものではなく、六畳間くらいの大きさの部屋を作った。
ランベルトが側にいてくれる横で私は教会を建てることにした。
場所はヴェルトラム邸から少し離れた場所に一気に建てた。
「アンサーレッツやオールベルトに教会を建てそこねてしまいました」
「それぐらいは自分たちで建てるさ」
ランベルトはルリィに建ててくれとは言わなかった。
「そうですね」
ランベルトに愛され、慈しまれて私は女の子を産んだ。
キャシュリーと名付けられ、キャシュリーは生まれた瞬間から全身が光り、聖女の力があることが解った。
魔力量もかなり多い。
私一人で育てることは無理だと言われ、王家から乳母が派遣された。
なるべく子供とランベルトの側に居ることを心がけつつ、ランベルトが頼んできたことのみをこなしていった。
ランベルトは私にたっぷりの愛情を向けてくれる。
私も、恥ずかしがらずに愛を伝える。
陛下から王城にも物見台を作ってくれと手紙が届いた。ランベルトも一緒に付いてきてくれることになった。離れなくて済んで、ホッとした。
キャシュリーはレイとロアにくれぐれもと頼み、乳母二人と一緒に面倒を見てくれることになった。
私は後ろ髪を引かれる思いで、キャシュリーに行ってくると告げ、王都へと向かった。
王城にはひときわ高い物見台を建て、エレベーターも大きなものを設置した。
陛下が動くと護衛の人数も多くなるから。
「陛下、エレベータの中は逃げ場所がないので、本当に信用できる人だけを乗せてくださいね」
「ああ、そうだな解った。ところでキャシュリーは元気にしているのか?」
初孫の話が聞きたくて陛下も王妃もソワソワしている。
「とっても元気にしていましたよ。陛下と王妃にお土産を持ってきているんです」
「ほう!何かな?楽しみだ」
「少し重いので、後でお渡ししますね」
物見台からの景色に王妃がため息を吐き「陛下がぜひとも欲しいと言った理由が解りますね」
とぐるりと景色を楽しんでいた。
陛下達と夕食をご一緒して、王子、王女達が大きくなっていて驚いた。
私が子供を生むくらいだものね。
「お土産をお見せしますね」
私は土魔法で作ったキャシュリーの等身大の姿の石像を作成してみせた。
肌の色もキャシュリーとそっくりで、私のお気に入りの服を着せた超絶可愛い笑顔の一品だった。
王妃は「まぁっ!まぁっ!!」と頬を押さえて「なんて可愛いのっ!!」と大興奮して、陛下も喜んで下さった。
翌朝、私達は王都を後にしてハルロイ邸へと急いだ。
ハルロイ邸の物見台にも、エレベーターも設置する。
ハルロイにもカルフォヴィアから逃げてくるものが多く、受け入れるだけでも大変だと言っていた。
「生活はかなり厳しいらしい。もう限界だと言っていた」
「そうですか・・・。なら、近々攻めてくるかも知れませんね」
「そうだな。だが、どうやって攻めてくるんだ?アノ高さの防壁をどうやって越えるんだ?」
「想像も付きませんね・・・」
オートマル、ガリアルト、オールベルト、アンサーレッツの物見台にもエレベーターを付けて回った。
オールベルトでも女の子が生まれていた。
「さすがに血が近いから婚約させられないわね〜」と、フルール夫人は残念がったが「うちの子も女の子ですから」という一幕があった。
ヴェルトラムの屋敷に戻ると、キャシュリーに少し忘れられていて、近づくと泣かれた。
あまりのショックに呆然としていると、乳母に「抱いてあげてください。すぐに思い出します」と言われて、私とランベルトは交代で抱いてあやし続けた。
ランベルトが二十歳になり、また子供が出来たと伝えると「最高の誕生日だ!!」と私を抱き上げ、キスの雨を降らせた。
二人目は男の子で、ランベルトより陛下の面差しによく似た子だった。この子も生まれた瞬間に光ってしまった。
ビューヒットと名付けられ、キャシュリーの乳母の一人が同時期に妊娠したため、ビューヒットの乳母も続けてくれることになった。
屋敷の細々とした物を、夢の世界で見た物を作っていった。
赤ん坊の歩行器を作ると、キャシュリーが暴走族のように屋敷中を徘徊していて乳母では付いて回れなくなってしまった。
そこで兄弟の面倒をよく見ていたという騎士見習いが志願してくれて、時折キャシュリーの面倒を見てくれている。
オールベルトにも同じものを作ってプレゼントした。
階段は転げ落ちる心配があるので、室内の中で使うか、一階で使うように、くれぐれも注意して欲しいと書いて贈った。
次話、最終話です。




