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聖女って、魔力を使い果たすまで使って、気絶したらベッドに放り込まれる人のことです。  作者: 瀬崎遊


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22/22

22 最終話 戦うまでもなく、敵は崩れていく

最終話です。

 カルフォヴィアが挙兵した。

 前はメキシアが先に挙兵したのに、どうして?!

 私の人生が変わっているのだから、他のことも変わって当然なのかもと思いなおす。

 時期もかなり早い。

 亡命の話などは聞くことがなかった。

 防壁を早く建てたことで早まったのかしら?


 ランベルトに「カルフォヴィアの防壁へ行ってくれるか?」と尋ねられ「行けと言って」とお願いした。


 愛を確かめ合い「無事に帰ってきてくれ」と何度も言われ「直ぐに帰ってくるわ」と言った。

 

「カルフォヴィアが挙兵したらメキシアも挙兵するかもしれない。私はクルイストへ向かうよ」

「分かったわ。カルフォヴィアが終わったらクルイストへ直ぐに向かうわ」

 互いに気をつけてと言い合って、私はハルロイ砦を目指してひたすら馬を走らせた。


 ハルロイ砦に私の馬車が用意されていて、これでいつ気絶しても大丈夫ねと護衛騎士と笑った。

 誰も結婚もせず、私の護衛騎士のままずっと付いてきてくれている。


 馬車に乗り込みカルフォヴィアが挙兵している真ん前に位置づけた。

 前回同様投石機を設置していたが、前回とは比べ物にならないおもちゃのようなものだった。

 開戦の火蓋は投石機が石を飛ばしたことで始まったが、石は防壁には届かず、カルフォヴィアの頭上に落ちていった。


 私は司令官に許可を取って兵を檻で囲んで、王城を防壁でぐるりと囲んで今立っている防壁を海まで押し上げた。

 カルフォヴィアの王城以外はジャイカルのものになり、檻に入れられた兵はジャイカルの騎士達に囲まれ、時折投げ槍で突っつかれていた。


 司令官に「私はメキシアの方に向かいます」と言い、馬にまたがって防壁の上をひた走った。メキシアとカルフォヴィアの国境を防壁で遮り、メキシアがカルフォヴィアへ立ち入られないようにした。


 メキシアの王城の前に着くと挙兵はされていなくて、辺りはシーンとしていた。


「ランベルト!!」

「ルリィ!!怪我はしていないか?!」

「大丈夫、防壁を動かしただけだから」

「どんな様子なんだ?!」

「王城以外は全てジャイカルのものになったわ」

「えっ?ほんとに?」


「ええ。投石機で石を飛ばしてきたのだけど、前に飛ばず、カルフォヴィアの頭の上に落ちて、開戦の火蓋がきられたので、防壁を一気に海まで押し上げたの。王城だけをぐるりと囲って。多分、今頃は王城の周りを騎士達が囲っていると思います」

「そ、そうか・・・」


 ランベルトと、周りにいた人達は引きつっているが、勝っちゃったんだから良いよね?

「メキシアはどうしているんですか?」

「何も・・・何もしてこない。一旦、二級防衛まで落とそうかと思っている。そうでないと無駄にこちらが疲れるしな」


「そうですね・・・アンサーレッツとオールベルトと話し合って決めたほうがいいと思います」

「そうだな。ちょっと言ってくる。ルリィは一旦下がって休め」

「解りました」



 どのくらい経ったのか、私が眠っていると、ランベルトがベッドの中に潜り込んできて、私を抱き枕にして眠りについたので私ももう一度眠りについた。


 それから一週間経ってもメキシアは何もしてこず、ジャイカル側だけが緊張状態にあるように感じられた。

 私はヴェルトラム邸へと戻っていたし、ランベルトも明日には戻ってくると連絡が来た。


 カルフォヴィアの王城から白旗が上がり、降伏すると宣言があり、私に来て欲しいと連絡が来たが、明日、ランベルトが戻るまで待って欲しいとお願いした。

 そうすると「急いでいないので、いいですよ」と軽い返事が来て、脱力してしまった。


 翌日、ランベルトが帰ってきて、カルフォヴィア城に呼ばれていると伝えると、一緒に行くとランベルトが答えた。


 ロウエンのところに向かい、そこからメキシアとカルフォヴィアの国境の防壁を越え、最短ルートでカルフォヴィア城へと着いた。

 

 離れた場所から二十人位が入れる入口を開け、騎士を入れると人が一人ずつしか出入り出来ない小さなものにした。

 暫く見ていると木製の手枷をした人が一人ずつ出てきた。


「王族かしら?」

「そうだろうな。顔の確認ができるものが側についているから心配ない」

 百人以上が出てきただろうか、ジャイカルの騎士が全員出てきて、何かを叫んでいる。


 騎士の一人が馬に乗って駆け寄ってきて「合図があったら、カルフォヴィア城を更地にしてください」と言って来た。

 城の前から合図があり「お願いします」と言ってきたので、私は土煙も立てずにカルフォヴィア城を潰し、砂塵へと変えてみせた。


 私達はもう帰っていいと言われたので、あっさりと引き上げることにした。

「あっ」

「どうした?」

「檻は壊さなくていいんでしょうか?」

「ああ、そうだな。また来いって言われたら面倒だな」

 

 檻も人が一人通れるだけの小さな入り口を作り、私達は今度こそ本当にヴェルトラム邸へと帰った。



 メキシアは動かず、ヴェルトラムには日常が戻っていた。


 流石に今妊娠するのは不味くないかと聞いてもランベルトは気にしないようで、たっぷりと可愛がってもらっていた。

 考えたら、避妊したことがない。

 いくら治癒があっても、年子で三人は周りが大変ではないだろうかと思ったが、出来てしまったものはもう戻せない。

 

 妊娠中にメキシアが挙兵しませんようにと願いながら三人目を出産した。

 三人目は初めて光らなかったけれど、魔力の高さは一番高かった。

 男の子でケルトシアと名付けられた。

 この子がヴェルトラムを継ぐことになるのだろうか?それともこの後、光ってしまうのだろうか?

 聖人、聖女に生まれることと、どちらが幸せなのだろうかと思い悩むことになった。



 ある日、物見台からメキシアが白旗を上げていると言ってきた。

「戦いもせずにか?まさか?!」

 そう言いつつ物見台に上がると、多分シーツなのだろう、風でバタバタと棚引いていた。


「嘘だろう?・・・どう受け止めればいいんだ?」

「どういう意味かも解りませんよね?」

「そうだな・・・。トステリアへ向かったほうがいいのではないですか?アンサーレッツとオールベルトと話をしなくては・・・」


「そうだな・・・陛下に来ていただいたほうがいいかもしれん・・・」

「それは後でもいいのではないですか?とりあえずメキシアが何を望んでいるのか聞いてみることから始めるべきかと」

「無視したら駄目かな?」

「・・・駄目でしょう」


「だよなぁ〜〜〜。これだと、王族を始末することができなくなる」

「そうですね・・・」

「ルリィ、一緒に来てくれ」

「解りました」


 

 トリステリアに着くと、アンサーレッツもオールベルトも頭を抱えていた。

「どうしたものでしょうか?」

「とりあえず話を聞くしかあるまい」


 メキシア城から一人の女が白い布をはためかせながらこちらに向かって歩いてきた。

 防壁の向こうへ降りるように大きな階段を作った。二十人くらいは一気に降りられるだろう。


 騎士と、その女が何事か話し、騎士の一人が上がってくる。

「王族は末の姫様以外殺し合って誰も生き残っていないそうです。その末の姫様も、男達のはけ口にされて、正気を保っているかどうかも解らないそうです」


 このあたりは前回と同じだ・・・。


「残っているものは、使用人ばかりで、もう、何も食べるものがないそうです。食事を恵んで欲しいと言っています」

「何人くらい残っているんだ?」

「五十人ほどだそうです」

「騎士や兵士は?!」

 前回は二千人ほどは居たはず。

「餓死していて、誰ももう残っていないそうです」


 周りを見回しても麦畑が広がっている。

 前回と違って平民がそこまで減っていないはずなのになぜ?


「そんなことってあるのか?!」

「とりあえず中を見に行ってみないことには判断できないでしょう」

「そうだな」

「取り敢えず、城の中に人を入れよう」


 出てきた女に案内させて、城に百人ほど入れた。

 私は第一防壁を城の直ぐ前まで移動させた。

 出てきたこちらの騎士は、シーツを体に巻き付けた女を一人引きずって来て「この女が生き残りの王族だと思われます」と言った。

 私が癒しと回復魔法を掛けると、目の焦点が合い、声を限りに叫び続けた。


 その後から使用人と思われる男女が手枷をはめて出てきた。

「なんか後味の悪い終わりになったな・・・」

「そうですね」


 使用人たちに聞いた所、ジャイカルが怖くて外へ物資を取りに行くことも持ってこさせることも出来なくて、自滅したということだった。


 その後、カルフォヴィアとメキシアの生き残りは男は鉱山行きになり、女は娼館落ちになった。

 王族だけはジャイカルに残し、他の女性は、他国へ娼婦として売られることになった。

 


 第一防壁と第二防壁の辺境伯は領地を離れ、海の直ぐ側に屋敷を建てることになった。

 メキシアやカルフォヴィアの防壁は取り払われている。

 西のジュレム、東のジュラクとその北にあるシューマコックへと防壁を建てた。


 広い領地に人が少ない。前回に比べると三倍くらいの平民は居るんだけど、メキシアもカルフォヴィアも貴族や騎士が一人も残っていない。

 ジャイカルは今は誰も彼もが産めよ増やせよと頑張っている。


 次男、三男が貴族として認められてそれぞれ領地を与えられ、王都ももっと中心へと移動させた。

 ルリィの魔法で区画整理が出来た王都がほんの一ヶ月ほどで立ち上がってしまった。


 新しい王都に陛下は満足してジャイカルとカルファヴィアの両国から接収した金銀の一部をルリィに報奨として渡し、ルリィが産んだ子供には全員に侯爵位を与えるという約束ももらった。

 

 ルリィは長期出張になると必ずどこか半ばで会いに来てくれとねだることにしている。

 それが面倒臭いのか、嬉しいのか今のルリィには判断できないけれど無理な時は無理と言ってくれるので、安心して甘えたことを言っている。


 前回のときはランベルトが好きだったのか何だったのか解らなかったけれど、今は胸を張ってランベルトの事が好きだと言える。

 私にとって、居なくてはならない人に。

 ランベルトもそう思ってくれていたらいいのにな。と思っている。



 海の暮らしはとても満足の行く暮らしだった。

 領民は足りないのだけれど、海の魚は美味しくてルリィはちょっとふっくらしたとランベルトに言われてしまった。

 そこでハッとしたのが、また妊娠?!と気がついて、自分の体を調べると、やはり妊娠していた。


「ランベルト、また妊娠したみたい」

「そうかっ!おめでとう!!」

「つぎはもう、レイとロアの代わりの人を雇わないと、レイとロア死んじゃうよ?!六人目なんだよ!!」


 そう、私はケルトシアの後にも女の子と男の子を産んでいる。

 それも移動の忙しいさなかに。

 全員年子。いくら癒やしが使えると言っても、ちょっとは体を休めないと駄目だと思うんだけど・・・。


「そ、そうだな・・・」

「まだまだやらなきゃいけないことも多いのに、きっとランベルト、恨めしい目で見られるよ」

「そ、その覚悟はしている」

「ならいいんだけど・・・レイとロアの代わりの人、どこから引っ張ってくるの?」

「陛下に・・・」

「もう無理って言われちゃったよね?乳母も出せないって」

「生まれたら生まれたで、なんとかなるものだ」

「しわ寄せは、ランベルト以外に行くんだけどね」


 ランベルトは私にキスをして「元気な子供が生まれるといいな」と笑って逃げて行ってしまった。

 私はレイとロアにまた子どもが出来たことを伝えた。

 私が謝ろうとしたら「おめでとうございます!!」と喜んでくれたのが、痛々しかった。


「今は、産めよ増やせよの時代です。気になさらずどんどん子どもを生んでください。奥様がお生みになるお子様は能力の高いお子様達なので、皆心から喜んでいますよ。たとえ、能力がなくとも、このヴェルトラムを支えてくれるお子様です。私共はお子様が生まれることを心よりお待ちしております」


「レイ、ロア・・・ありがとう。役立たずのランベルトは血祭りにしてもいいよ」

「はい。そうさせていただきます」

 あーーランベルトは血祭りなんだ・・・。

 だよね〜・・・。


 だって、まだまだ建物も必要だし、道も必要だものね・・・。

 まぁ、妊娠中に魔力使うと魔力量の高い子が生まれるみたいだから、魔法ガンガン使っていいくわ!!



 その日の夜、神々の夢を見た。

 十二の神々が「幸せか?」と聞かれて私は「とても幸せです」と答えた。

 神々は満足そうに笑って「もっと幸せになりなさい」と言ってくれた。

 そして「お腹の子は双子だから、大変だね〜」と一柱の神が言った。

 「それ言っちゃ駄目でしょう!!」と声が聞こえて、その後目が覚めてしまった。


「うそぉっ!!双子なの?!」

長い間お付き合いいただきありがとうございました。

誤字脱字報告いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
胃が引き絞られるように辛さを感じた。まだ子供で魔法と異世界に魅入られて没頭してしまって、愛し方も愛を育てなくてはならないことも知らないままに、すれ違いが長すぎて取り返しがつかなくなってから気づいて。魔…
[一言] 終盤で幸せになれて良かったです。 子供が7人確定でこの後何人兄弟になるのか?幸せで何よりだと思います♡
[良い点] 完結おめでとうございます お疲れ様でした〜 もうどうなることやらとハラハラ読んでいましたがルリィが幸せになる努力が実を結んでよかったです 今周のメキシアの王族たちは前回とほぼ変わらないオチ…
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