19 神々との邂逅。そして・・・
どの神が喋っているのか解らなくなってしまいました。
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神々の憂鬱
円卓を囲む十二の神々はそれぞれ思うことを好きに話していて、とりとめがない。
女性の守護神
戦略の女神
医療の神
最高の美神
時の神
荒ぶる神
豊穣の神
大地の女神
鍛冶の神
魔法の守護神
海洋の神
家庭生活の女神
神々が一斉に話しかけてくるのだ。
何を言われているのかさっぱり解らない。
まとめ役の全知全能の神がいないことが、収拾を付けられない理由だとはルリィは知らない。
ルリィはここにいる神に好きに話しかけられ、ただ黙って聞いているようでその実、聞いてはいない。
神々の言葉なので真摯に聞きたいとルリィは思うのだが、ただの人間のルリィには十二人の神々の言葉を聞き取ることなどできない。
どれくらいの時間が経ったのか・・・。
多分、数年、数十年単位だと思われる。
神々の目の前に置かれたお茶が何千杯、もしかしたら何万杯も入れ替わっている間に、全員が同じことを聞き始めるようになってきて、声が揃って、初めてルリィは神の声に気持ちを向けることができた。
「で、どういうことなの?」
「すみません。何を聞かれているのか解りません」
また神々が一斉に好きに話し始めてしまったので、理解ができなくなり、聞き取ることを諦めた。
ここに呼ばれて一体何年が経ったのだろう?
ルリィはこの先、ここに座っていればいいのだろうか?
胸に自分の頭を抱えて。
早く天国・・・には行けないだろう。
地獄でもいいのでここではない場所に移動したいと思っていた。
考えれば、ルリィは第一王子と別れてからは我慢ということをしたことがなかった。
人の気持ちも考えず、自分のしたいことだけをして、人の迷惑も顧みずにしたいことだけをし尽くしてきた。
戦争が起こるのを誰よりも望んでいたのはルリィで間違いない。
自分の力を試す場が欲しかった。
力を示したらランベルトが私を見てくれるようになると思っていた。
けれど、ランベルトの気持ちは私から離れていった。
ランベルトに会いたくなると使者も立てずにランベルトの元に何度も顔を出したのが間違いだったのだろうか?
だから離婚された?
ランベルトの横に立つ聖女に腹を立てて攻撃魔法を展開したのが間違いだったのだろうか?
でも、ランベルトが聖女の前に立ち塞がったから攻撃は不発だった。
だから大丈夫なはず。
ランベルトの子供を殺そうとしたことも誰も知らないはず。
神々が口々に好きなことを言っている間にルリィは自問自答する。
何が悪かったのか?
どこから間違ったのか?
何度考えてもルリィは同じ間違いをしてしまう。
だって魔法を使いたくて仕方がないんだから・・・。
そして聖女として役に立っていると思われたかった。
肩を叩かれてハッとする。
女性の守護神が声を大きくして一度皆を黙らせる。
「ルリィは人間だから一斉に喋ると理解できないって言っているでしょう!!話すのは一人ずつにしなさい!」
ルリィは今度こそ会話ができるかも知れないと耳を澄ませた。
「まずは戦略の女神からどうぞ」
「ありがとう、女性の守護神。ルリィはどうして離婚を認めなかったの?」
「ランベルトを・・・愛していたから?です・・・いえ、意地だったのかもしれません」
医療の神が尋ねてくる。
「愛していたようには見えなかったのだけれど・・・」
「ただ魔法を使うのが面白かったのは事実です。・・・ランベルトを失いたくなかったのは本当です」
最高の美神が聞いてくる。
「魔法を使うことに比べたらランベルトなどどうでも良かったのでしょう?」
「それは・・・、はい」
「愛も伝えたことなかったわよね?」
「・・・はい」
神々の聞いてくることは心に刺さる。
心の内がさらけ出されるので、隠し事も出来ない。
時の神が話しかけてくる。
「人の矛盾というものじゃないのかな?可愛いものだよ」
荒ぶる神が口を挟んでくる。
「ルリィのやったことは可愛くないけどな」
豊穣の神が、少しだけルリィを非難する声音で話す。
「そうよね。旧ジャイカル一つを滅ぼしてしまったんだもの。たくさんの命が失われてしまったわ。本当に国一つ滅ぼすだけの思いがランベルトに向いていたのか、怪しいでしょう?」
「は、い・・・」
大地の女神が次は私の番とばかりに口を開く。
「大地が驚いていたのよ!!あの土地、ジャイカルは本当に特別な土地だったのに・・・。あの爆発で、ジャイカルの特別な力は失われてしまったわ。もう聖女も聖人も生まれない土地になってしまったわ」
「えっ?!」
自分のしたことの大きさに驚く。
鍛冶の神がルリィを褒める。
「だがルリィが新たに建てた建物は美しいものだった。夢の世界の建物なのかな?人間たちはルリィを殺さず、魔法を使い続けさせたほうが良かったんじゃないか?」
魔法の守護神が興奮気味に話し出す。
「それはその通りだったと思うよ僕も。ルリィにはまだまだ新たな力を発揮する事ができたはずだ」
海洋の神が何度も頷きながら重々しく口を開く。
「ルリィが生きていれば海の中の食べられる生き物ももっと見つけられただろうな。海洋へと進出もできたはずだ。人間は浅はか過ぎるな。ちょっとくらい殺されたからと言って、ルリィを殺すなんて!!」
「ちょっとではないでしょう?!国一つよ!!」
家庭生活の神も海洋の神に賛成のようだ。
「ルリィさえ生きていれば、もっと生活も文明も潤ったと思うのよ!!本当に残念でならないわ」
どの神かは解らなかったけれど「ルリィを生き返らせるべきだ」と言い始めた。
「だが、俺達がルリィを特別視しすぎたせいでこうなってしまったのだろう?これ以上人間界に手を加えては創造神様に怒られてしまうかも知れないぞ」
「それはーあるかもしれないわねぇ〜」
「創造神様は怒らせてはいけない」
神々が頷く。
「だが、誰がルリィがこんな最期を迎えるなんて思った?」
「本当よね。人の気持ちって想い合っていても、すれ違っちゃうとだめになっちゃうものなのねー」
「人間には本当にビックリだよ」
「ねぇ、王都を滅ぼした理由は何だったの?」
「聞いた瞬間に感情が振り切れてしまって・・・良く解りません」
「愛だったの?」
「すみません。良く解りません」
自分の頭を腕に抱きしめたルリィが話している。
「ねぇ、取り敢えずルリィの首と胴体くっつけてあげたら?医療の神?」
「いえ、これは私の罪なので・・・」
「でも、鬱陶しいのよ」
今頃?とは思ったが口にはしなかった。
「申し訳ありません・・・」
家庭生活の女神の言葉に医療の神が指を一本振るっただけで、私の頭は元の位置に戻っていた。
「これで話しやすくなったわね。お茶を飲んでも大丈夫よ」
目の前にティーカップが突然現れた。
「ありがとうございます・・・」
「今までも十分話はしていたと思うがね」
医療の神が呆れたように言う。
「それはそうと、ルリィはランベルトにどうしてあそこまで執着したんだい?さっさと離婚すれば良かったのに、それが僕には不思議でならないよ」
「最初の質問に戻るのね?」
「だが、この中で理解できる者がいるかい?」
神々が首を横に振り、ルリィも首を一緒に振りたかった。
「私も何故と聞かれたらどう答えればいいのか解りません。ただ、愛されたのが初めてだったのです。愛されているのなら何をしてもいいと思ってしまって・・・ランベルトの気持ちは変わったりしないと思い込んでいたんだと思います。他聖女と子供が出来たと聞いたときも力を爆発させそうになっていました。私は・・・ランベルトを失ってしまうと、あの時点ではもう何の価値もありませんでした。魔法を振るうことのできる環境が無くなっていましたし、私が私ではなくなるような気もしていました」
「あー確かに。ランベルトはルリィを愛し続けていたわね」
「そうでしょうか?」
「だからルリィが死んだ後レオーラと結婚せずに、片付けなければならないことをしてしまうとルリィを追うようにして死んだのでしょう?違うかしら?」
えっ?ランベルトも死んでいるの?
「あの・・・私の魔法でランベルトは死んだんですか?」
「違うよ。でも閉じた世界の住人になってしまったのはルリィのせいかもしれないね」
「ランベルトも呼ぶ?」
「それだけは許してください!!」
「どうしてだい?」
「合わせる顔がありません・・・。自分のしたことを、ランベルトに・・・他の人にも、謝罪しても許してもらえるようなことではありません。ランベルトに会うのは怖い・・・」
ルリィは涙をポロポロと流す。
「ゴホン。ランベルトは呼ばないから、泣くな」
「それに、ランベルトの魂は消滅してる可能性もあるし」
「あーそれもありうるかもしれないわね」
「ランベルトは絶望で、寿命よりも二十年も早く死んでしまったものね」
「えっ?そうだったんですか?えっちょっと待ってください!!ランベルトは消滅している可能性があるんですか?!」
時の神がルリィの頭を何度も撫でる。
「時を戻してあげるから、やり直してみるかい?」
「やり直せるのですか?」
「それはどうだろう?私には解らないよ。ルリィ次第じゃないかな」
ルリィは一瞬夢を見たが、自分のしたことを思い出し、その罪は償わなくてはならない。
「いえ、もう私は大きな間違いを起こしてしまいました。罪もない人を巻き込んで・・・その償いをしなければなりません」
「でもね、時を戻さないとジャイカルに聖人と聖女が生まれなくなってしまったし、我々にとって色々と都合が悪いんだよ」
「そうよ。死んでしまっては償いなんて出来ないわよ」
「ルリィ一人が悪かったわけじゃないと私は思うわ。人間ってちょっとずつ何か悪いところがあるものよ」
「それはそうよね。人と人とのつながりでどちらかだけが悪いなんてことは絶対ないわよ」
「じゃぁ、メキシアとカルフォヴィアも?」
「・・・人間の欲は留まるところがないからね、例外もあるわね」
「神々のお方、お聞きしたいことがあるのですが、ジャイカルだけがどうして聖人、聖女があんなにも沢山現れるのですか?」
「この星を作っているときに、創造神様があくびをして涙をこぼしたのよ。その上に集落ができて、村になり、町になり、いつの間にか王都ができて国になっていったの。創造神様も知らなかったのだけれど、その涙が聖人聖女を生み出す力の元となっているの」
「創造神様の涙?」
「そうだ」
「聖人、聖女とはいえ被害者と言ってもいいと思うわ」
「創造神様に聞かれても知らないからな!!」
「・・・人間たちは聖人聖女のおかげで病や怪我を直していただいているのだから恩恵を受けているわ!!」
慌てて言い繕う家庭生活の女神様に創造神様が恐ろしいものに思えた。
「それにルリィには我々が夢を見せてしまったためにそれにのめり込んでしまったし。余計な知識が増えたために力の振るい方がこの世界ではありえないものになってしまった。我々にも責任がある」
「そうねぇ・・・」
時の神が顎に手をやり、深く考え込んで、口を開く。
「ルリィ、やはり人生をもう一度やり直してきなさい。いつまでもここに居ても、罪の償いなんてできないし、一人で背負うには重すぎる罪だ。生きて、間違わないように選んで自分の幸せを掴み取っておいで、そして、寿命が来た時は、また我々とお茶をしよう」
「そうね」
「それがいいと思うわ」
「まだ聞きたいことがあるんです!!」
「なんだろう?」
「先程、私に夢を見させたって、どういうことなんでしょうか?私の前世とかですか?」
「ちがうぞ」
鍛冶の神が「すまん世界を発展させたくて・・・」と済まなそうにルリィを見る。
「前世ではないのですか?」
「この世界の文明を発展させたくて、異世界の小川久美だっけ?その人の人生を見せていただけだよ。ルリィには縁もゆかりもない」
「ルリィなら、実現可能なことも多そうだったからな」
「それが重荷になってしまったんだろうな・・・」
「そうよね、私達にも責任があるわ」
「ほら、行っといで・・・」
「違う人生を歩んだっていいんだ。好きに生きなさい。ただし、幸せになるんだよ」
「えっ?神様っ?!嘘っ!!きゃぁぁぁぁぁぁああああああっ!!」
「ああぁ、行っちゃったね」
「そうね」
「でも、ルリィ、私達の部屋入ってこれるってどういうことなのかしらね?人間じゃないレベル?!」
「誰がこの部屋に呼んだんだい?」
「呼んだのは私だ」
そう時の神が言った。
「それより創造神様に絶対怒られるよな?時戻しなんて・・・」
「やってから後悔するとはさすが時の神だね」
「元に戻すかい?」
「それもまた怒られそうだろう?」
「そうだな、もう何もしないほうがいいよ」
「ほら見てご覧、ルリィが全身光らせているよ」
神々はその言葉を聞き、外界を覗き込んだ。
そこに見えたのは可愛いルリィではなく、創造神の無表情な顔だった。
『説明を聞こうか・・・』
神々は顔を見合わせ首を竦めてから誰かがクスリと笑い、それが波紋のように広がって十二人の神々が笑い出した。
創造神様の不機嫌な咳払いが聞こえて慌てて時の神が言い訳を始めた。
巻き戻しかよっ!と思ったあなた、巻き戻しではありません。
時が戻ったのです・・・。
そんなふうに自分に言い訳している今日このごろです。
二度のクラッシュで、方向を見失い、話は二転、三転して、どこへ向かうのか私が知りたいくらいの作品になってしまいました・・・( ´Д`)=3
元第一王子ブルータスの話を結構色々な方向から書いていたのですが、クラッシュを経て、過去の人となり、どこかへ行ってしまいました。
ブルータス・・・ごめんね。
本当はあなたは活躍するはずでした。
幸か不幸かは別にして・・・。




