18 断頭台に横たわることになったルリィ
すいません。
うまく書けなくて第三者視点やランベルト視点、ルリィ視点が混在してしまいました。
読みにくかったら申し訳ありません。
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★カルフォヴィアの後始末
ドロリアスはカルフォヴィアの王城へと部下を引き連れ入っていった。
メキシアは王族同士で殺し合っていて、生き残っていたのは一人だったそうだが、カルフォヴィアは王族全員が生き延びていた。
死んでいてくれたらいいのにとジャイカルの者は思ったことだろう。
王、王妃、側妃が二人、王子が四人、王女が六人いた。その上に王弟が三人、王妹が二人いた。
その上、カルフォヴィアは特権意識が強いお国柄で、いわゆる高位貴族までもが王城の中で生き残っていた。
その中には生まれて間もない幼い子供達もいた。
だが、王城にいるものたちこそが戦争の責任を取るべき者達であったため、幼い子供といえど、極刑が下されることになった。
女は全員娼館落ち、十三歳以下の子供は女牢で育てられることになり、十三歳を迎えると、男は鉱山へ、女は娼館に落されることに決まった。
勝ったジャイカルの者達が、後味の悪い思いすることになった。
「カルフォヴィアは本当に生き汚いな・・・」
「本当、ですね・・・せめて女子供だけでも殺してやればよかったのに」
「王族、高位貴族として扱われると思っていたのでしょうか?」
「さぁな・・・」
ジャイカルにもここまでの人数の娼婦は必要ない。
カルフォヴィアの女達は他国の娼館へと半数が売られることに決まった。
二人でため息をついてカルフォヴィアの王城を後にした。
最後にドロリアスがカルフォヴィアの王城から出ると、聖女ルリィが城を潰し、更地にした。
それを見せられたカルフォヴィアの王族達はその場に崩れ落ちた。
自分の過去の栄光を思ったのか、それとも今から待ち受ける未来を思ったのか・・・。
ドロリアス達が無理やり立ち上がらせ、乗る馬車を振り分けた。
これからの最低な生活の中にも、少しでも救いがあればいいのにと思いながら。
カルフォヴィアの生き残りの国民は数カ所に集められ、炊き出しを与えられた。
聖女ルリィが王の命令で、カルフォヴィアを完全な更地にしてしまった。
ドロリアスは聖女ルリィの力におそれを抱いた。
その力が復興に向いている間はいいけれど、平穏が訪れた時、聖女ルリィはどうなってしまうのだろうと、聖女ルリィの顔を盗み見た。
メキシアとカルフォヴィアの海辺には港が急ごしらえされ、何艘もの船も作られていく。
港町として栄えるよう細心の注意が払われていた。
何をするにも人手が足らず、ジャイカルの南からも沢山の人を呼び寄せたが、それでも全然足りなかった。
「結局は人が足りなくてどうにもできないのですね」
聖女ルリィの護衛がぽつりと漏らした。
「ここまで国民を殺す必要があったのでしょうか?メキシアもカルフォヴィアも本当に何を考えていたのでしょうか・・・」
カルフォヴィアの王は「勝てると言っていたのだ。メキシアの金も湯水のように渡してきたのだ。だから私は、聖女が欲しくて・・・メキシアに懸けてみたかったのだ」
「国民を飢えさせる必要があったのか?」
そう聞くと、「メキシアの王が、犠牲はつきものだと・・・私はどうしてあんなことをしてしまったのだろうか?!」
そう、小さく尋問に答えていたと後からドロリアスは聞いた。
死んでいった者達には何の救いにもならない。カルフォヴィアに続いてメキシアも更地になった。
ジャイカルの王の命令で辺境伯の六家は港を任されることになった。
誰も魚すら食べたことのない辺境伯は、僅かな生き残り達に助けられ、何かにぶち当たる度に六家で力を合わせてなんとかやって来た。
港町としてまともに機能し始めたのは、戦争が終わってから五年が経ってからだった。
聖女ルリィは港を作り、船を作り、そこに住む家を作り、六家が済む屋敷を作った。
教会も作られ、生まれてくる子供達には力のある子供達が生まれていた。
ランベルトはルリィと離婚すること無く、レオーラとの間に三人の子供が生まれていた。
離婚して欲しいと何度も手紙を送り、時には直接会いに行って離婚して欲しいとお願いしたが、聖女ルリィはやはり離婚届にサインしなかった。
聖女ルリィは忙しく、畑を作り、村民達が住む家を作り、ジャイカルを囲む防壁もすべて仕上げた。
聖女ルリィの力は膨大なものになり、街の中心で治癒魔法と回復魔法を使うと、すべての人が癒やされるようになっていた。
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戦後十年が経ち、ランベルトの一番上の子が聖人として高い能力を買われ、教会に行く年に決まった。
それを機にランベルトは聖女ルリィの下を訪れた。
「お久しぶりです。聖女ルリィ様。ご活躍はお聞きしております」
「ランベルト・・・そんな口の聞き方をするのや止めて・・・」
ランベルトは聖女ルリィの言葉は気付かなかったふりをして、ことさら丁寧に接した。
「我が子、ドランドールが教会へと所属することになりました。元はメキシアの地だったので、聖人、聖女の血が受け継がれるのか心配しておりましたが、無事、聖人として末席に名を連ねることが叶いました」
私は穏やかに聖女ルリィを見て「つきましてはお願いに参りました。今までにもお願いしておりました離婚届にサインを頂きたく思いご迷惑だとは思いましたが、来訪させていただきました」
「私はランベルトと離婚する気はないわ・・・」
「聖女ルリィ様は、どうしてそこまで離婚しないことにこだわるのでしょうか?始めから私との結婚も嫌がられて、結婚後も私に会うことよりも他のことを選んでいらしたのに・・・一緒に暮らしたのなんて、半年、あったかどうかも定かではありません。もう私を自由にしていただきたいと思います・・・」
「私の気持ちは今も昔も何も変わっていないからだわ!」
「今も昔も愛してなどいなかったのでしょう?」
「違うわっ・・・そんな風に言わないで・・・」
「今はもう、状況は大きく変わりました。私は三人の子の親になっていますし、戸籍上妻ではありませんが、実情では私を支えてくれる妻がおります。その妻と子供達にいつまでも日陰の身のような思いをさせていたくはないのです。どうか、お願い致します。離婚を・・・」
「絶対に嫌よっ!!離婚はしないわっ!!私はランベルトの妻よっ!!」
話はいつもの平行線を辿ることになった。
ランベルトは溜息を一つ吐き出し「失礼いたします」と背を向けてルリィの前から立ち去った。
私はその足で王城へと向かい、過去、十二年間聖女ルリィと夫婦関係はなかったことを届け出て、離婚の申し立てをした。
聖女ルリィを慮って、王家の者達も手続きを嫌がったが、届け出を受けないわけにはいかず、渋々ながらも王家はその書類を受け取った。
それから半月後、離婚が受理された。
普通では半月もかからずに結果は出るのだが、聖女ルリィによほど気を使ったのだろう。
ランベルトが離婚の受理書を受け取った時にはもう、王都は消失していた。
強制的に離婚させられたことを知った聖女ルリィは、その場で感情のままに魔法を放ってしまい、王都、その周辺をたった一撃で滅ぼしてしまった。
王族や、聖人、聖女、沢山の貴族、平民の死という犠牲を出してしまった。
たまたま他領へ視察へ行っていた王弟殿下が、亡くなった王の跡を継ぎ、ジャイカルはなんとか国の体裁を整えることが出来た。
その王が住まう城も、美しく整理された王都もルリィが作った。
だが、そこに住む人はルリィには作ることはできなかった。
王は、聖女ルリィを使うだけ使って、ルリィは聖女として認められないと発表した。
その発表を誰もが当然のように受け止めた。
王弟殿下の妻も子も亡くなっていた。
生き残っている中から、最も高位な侯爵家の娘と王弟殿下は結婚し、側妃を三人娶って、王族を増やすのに力を入れた。
一致団結したジャイカルは、短期間で力を取り戻した。
ただ、戦後からずっと、領地の大きさに合わず、人の少なさだけは短時間ではどうにもならなかった。
人の憎しみは王都を壊滅状態にしたルリィへと向かい、王はルリィへと処罰を与える他なかった。
城が建ち、物見台が建ち、貴族の屋敷が建ち、平民達が住まう家屋もルリィの力で建てられたが、そんなことでは人の心は癒やされなかった。
王都の家屋が全て建った時、ルリィは裁きを受けることになった。
死刑のないジャイカル国で初めての死刑が実行されることになったと報告を受けた。
離婚届を出さずにいれば、こんなことにはならなかったのだと。私は自分を責めた。
責任を取るべきなのは私なのではないだろうか?
私は聖女ルリィが処刑されるその姿を自分の目で見るべく王都へと向かった。
断頭台の上に手枷と足枷を掛けられた元聖女ルリィが一歩一歩登って行くのが見える。
半分が聖女ルリィに感謝をしている人。
半分が、ルリィのせいで死んでいった人を悼む人達もいた。
辺りは静かでつばを飲む音すら聞こえるようだった。
誰もが胸の前で腕を組み神に祈った。
元聖女ルリィは何も言わず断頭台に首を置き、刃が落ちてくるのを静かに待っていた。
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ルリィは断頭台に首を置きながら考える。
どこで間違ってしまったのだろう。
ただランベルトの側にいたかった。
ランベルトの子供を産みたかった。
ランベルトに愛され続けたかった。
私は、いつランベルトを愛したのだろうか?
時間が来て、縄に繋がれ刃が落され、断首を見に来ていた人達の悲鳴が上がり、その場にいた者達は、静かに聖女ルリィの安らかな眠りを祈り続けた。
聖女ルリィの遺体は晒されること無く直ぐに教会が手厚く葬った。
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ランベルトはその姿を見届けて、どうすれば良かったのかと、王都が消失した日からずっと思い悩んでいる。
レオーラはランベルトを温かく見守ったが、ランベルトが、レオーラを拒否してしまい、二人の仲はギクシャクとしたものになっていった。
子供二人は教会に取られ、一人の子、キャスバルだけが手元に残った。
今はこのジャイカルに、力のある聖人、聖女はいない。
力が弱いながらも、聖人聖女と認められた者達が、頑張っている。
ジャイカルの国は閑散としている。
貴族の数も足りず、農民も足りず、何もかもが足りなかった。
ブルータス兄上は生き残っていて、ほぼ平民と変わりない妻との間に子供が五人いる。
教育が足りないため、その子供達を王族や公爵家の子として育てる訳にはいかないが、五人の子供が生んだ子供は生まれた瞬間に王族に取り上げられると決まっている。
ブルータス兄上に現存する最もくらいの高い公爵令嬢が二人目の妻として認められ、産まれたら公爵家が引取って育てていくそうだ。
産まれてくる子供が可愛そうだと思うが、貴族がほとんどいない中、仕方ないのだろう。
いまを生きる者の義務として、レオーラは「子供を作りましょう」と私を誘ったが、ルリィの死後、私はレオーラに手を出すことは出来なかった。
キャスバルが成人すると、すぐさま私は一線を退いた。
レオーラとは結婚しないまま、心が離れることになった。
私は物見台に住み、レオーラは家敷に住んだ。
もうよほどのことがなければ顔を合わせることもない。
私はレオーラが困らないだけの資産を渡した後、まるで聖女ルリィが呼んでいるかのように、半年で目覚めない眠りについた。
ランベルトの病は聖人、聖女がどれだけ手を尽くしてもこの世に留めることはできなかった。
目覚めない、眠りについたランベルトの顔はとても穏やかなものだった。
まだ続きます。




