17 開戦!! あっけない終わり。
ふと気が付くと、ルリィが居た。
「聖女ルリィ・・・」
「陛下の要請を受けてクルイストに配属されました」
「そうですか、よろしく頼みます。あの道具がなにか想像はつきますか?」
「はっきりとは解りませんが、投石機ではないでしょうか?」
「とうせきき?」
「大きな石を投げ飛ばしてくる機械ではないかと思います」
「石を?」
「はい。見た限りではどれくらいの距離飛ばせるのか解りませんが、岩が飛んできたら、こちらの被害も大きくなるかと・・・」
「そうですね・・・」
「防壁を前進させますか?」
「どれくらい前進させたら気を失うんでしょうか?」
「解りません・・・。ちょっとやそっとでは気を失うとは思いませんが・・・あっ、今思いついたのですが、進軍してきている兵達を囲んでしまうのはどうでしょう?」
「出来るのか?」
「可能です」
「ならやってみてください」
「かしこまりました」
ルリィが振るった魔法は牢屋をイメージしたのか、鉄格子を土で四方を固め、逃げられないように天井にも網目状に囲い込んでしまった。
メキシアの進軍はその場に縫い留められ、動けなくなった。
「魔力は大丈夫なのですか?」
「防壁なら十kmくらいなら設置できますよ」
「防壁、一気に十kmも建てられるのですか?」
「はい」
「そ、そうですか・・・凄いですね」
「防壁を移動させますね?」
「ああ。お願いします」
防壁がメキシアの兵が居たところまで動いてく。
それに伴って騎士寮も一緒に動いてく。
ただ、唖然とするしかなかった。
ルリィはメキシアの王城を塀で取り囲んで、王族が逃げられないようにした。
「私がするのはとりあえずここまででしょうか?」
「そ、そうですね・・・」
ルリィは馬車に乗り込んで、メキシアとカルフォヴィアの国境線の上を防壁を十km程建てて眠りについた。
ルリィの護衛騎士達が「このままここで待機しますか?それともカルフォヴィアの方へ移動したほうがいいでしょうか?」と私に聞いてきたので、カルフォヴィアへ移動するように頼んだ。
護衛騎士達が取り囲んだ馬車がカルフォヴィアへ向けて走っていくのを見送った。
「なんと言いますか・・・我々が想定していた以上にあっさりと終わってしまいましたな」
「そう、だな・・・この後どうすべきだと思う?」
「放置でいいのではないでしょうか?」
「そうなるよな?」
アンサーレッツとオールベルトと話し合い、とりあえず放置と決まった。
見張りはしっかり残して、一緒に移動してきた騎士寮でしっかり体を休めるよう伝えて、私も空いた騎士寮の一室を借りて、眠りについた。
翌日も何も変わらず、閉じ込められた兵達と防壁に囲まれた王城が見える。
王城までの距離は馬で半日というところか。
「降りて、王城へと向かいますか?」
「放置でいいんじゃないですか?」
「白旗が上がるまでほっときましょう」
「そうしますか・・・」
閉じ込められた兵達は助けてくれと呻いているが、どうしたものか、悩ましい。
カルフォヴィアが兵を挙げたと連絡が来て、投石機で攻撃されるのを待ってから、ルリィが防壁を動かしていった。
既にジュレムとは隣国になっていて、防壁はどんどん北西へと上がって行っている。
クルイストの防壁の上から見ていても西側がどんどん広がっていく。
ちょっと見に行きたい誘惑にかられながら、メキシアの王城を見た。
そこには大きな白い旗がはためいていた。
メキシアが兵を挙げてからたったの四日、無血で終わった。
戦後処理をどうするかが困った。
「もう暫くほっておいて、死んだ者を聖女ルリィに埋めてもらうほうが楽でいいのではないでしょうか?」
「メキシアの王城も潰してしまったほうが簡単でしいでしょうし」
「そうですよね・・・。人道的問題はどうでしょう?」
「・・・・・・」
「ランベルト様!アンサーレッツ様!オールベルト様!」
名を呼ばれて三人で振り向くと、一人の騎士が息せき切って「ご報告がっ!!」と言った。
騎士の息が整うのを待って聞いたのは「聖女ルリィ様がカルフォヴィアの王城以外全て占拠いたしました!!」
「はぁぁあぁ?!」
「カルフォヴィアの王城をメキシアの王城のように防壁でぐるりと囲んで、防壁を海とカルフォヴィアの隣国まで防壁を移動させてしまいました」
「それはまた・・・」
「戦争をするのがバカバカしくなりますね・・・」
「あと、カルフォヴィアの王城はまだ白旗は上げておりません」
「解った。ありがとう」
私は叔父達に「何となくこんな終わりになるような気はしていました」と伝え「今はメキシアの生き残り達をどうするかが問題です」
「そうだな」
「どちらにしても聖女ルリィに来ていただかないことには檻も潰せないし、王城の中に入ることもできませんからね」
「そうですね。ゆっくりしましょうか」
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ジュラク国の王城での会話
「メキシアもカルフォヴィアも何もせずに負けたとは情けないにも程があるな」
「いや・・・我々が戦いを挑んでも同じ結果になるでしょう」
「馬鹿だな。戦いなど挑まないんだから同じ結果になんかなるわけ無いだろうが!!」
「なるほど」
「ジャイカルはメキシアとカルフォヴィア両方の土地を手に入れましたね。ちょっとした大国ですよ」
「聖人、聖女を抱えていて、無償で治療を施す国なのだから、大きくなってもいいだろう」
「まぁ、そうですな」
「何だ不服か?」
「いえ、妄想の中でジャイカルと戦ったのですが、こてんぱんに叩きのめされて、土地を奪われてしまいました」
「はっはっははははっ!!仲のいい友好国でいつまでもいるように子孫に伝えていこう」
「そうしましょう」
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★メキシアの王城の中
挙兵して兵をジャイカルに向かわせた翌日には、王城は防壁に囲まれ、寄せ集めた兵達は巨大な檻に入れられてしまいました。
高位貴族は王城に詰めていたが、侯爵以下は戦場へと行かされています。
それでも二千五百人に足りませんでした。
「どうして兵の数があれっぽちしか居ないのだ?!」
「重税を課しすぎて、平民が死んでしまったからですよ」
父とビクトレン兄上が言い合いを続けています。
「貴族だけでももっといるだろう!!」
「食べ物がなく、準男爵や男爵、子爵、伯爵と弱いものから餓死していきました」
「何故食べ物がないのだ!!平民達は何をやっているんだ!!」
「だから、父上が殺したんですよ」
「私は誰も殺したりしていない」
「言っても理解できないのでしょうが、父上が殺したので間違いないですよ」
ビクトレン兄上が剣を抜き、父親の首を刎ねました。
「ビクトレン!!何をするのですかっ?!」
母と側妃がお兄様を責め立てていますが、その背後から私の母である側妃を刺しました。お兄様はこちらに駆け寄って王妃を斬り伏せました。
兄や姉達は腰を抜かしてその場に座り込んでいます。
戦意はもう、どこにもないのでしょう
ビクトレン兄上と私は、兄と姉の首も順番に跳ねていきました。
兄姉達が「どうして?」と言っていたが、それを考えられない馬鹿だから死ぬことになるのだと思っていました。
ビクトレンお兄様は守ってくれる騎士が居ない公爵達も斬り伏せて、この王城に残ったのは最低限の使用人達と、私とビクトレンお兄様だけになりました。
「お兄様、これで生き残れると思いますか?」
「無理だろう。楽に殺してやる。こっちに来い」
「いえ、お兄様、私は最後まであがいてみようかと思います」
「そうか」
お兄様は自分の喉に剣を当て、勢いよく首を落とした。
「あっぱれですね」
私は血で汚れたドレスを脱ぐために使用人に湯船にお湯を入れるように言いつけました。
血の汚れを落とし、さっぱりして、私は最も似合うドレスを身に纏いました。
ジャイカルの方々いつ来られるか解りませんが、王族としての矜持を持ち続けようと決心しました。
なんとしても私は生き残るのです。
薄化粧をして、鏡の中の私に満足します。
私は謁見の間に行き、王のみが座ることを許される玉座に腰を下ろしました。
ジャイカルの人達は何時になったら来るのだろうかと思いながら待ち続けました。
見たことのある騎士が私の眼下に広がる王族と公爵の遺体を見て「あなたがやったのですか?」と聞いてきた。
「殆どはビクトレンお兄様です」
「そうですか・・・どうしてあなただけが生き残っているのですか?」
「私は生き汚く生きてみようと思ったからです」
騎士は私に近づいてきます。
「そこで止まりなさい!」
「もう、私に命令してもいい人は居ません。ほら、そこで血を流して動きません」
あぁ、王妃の護衛騎士だったのね。
騎士は私に遠慮もせず近寄ってきて、私の腕を掴みドレスを引き裂いた。
「なっ!何をするのですかっ!!」
「お前達王族が馬鹿な戦争など起こすからこんな事になったんだっ!!」
その怒りを私にぶつけるように二度、三度と殴られ、抵抗する意志を奪われてしまいました。
スカート部分をまくりあげられ、おしりを突き出した格好にさせられ、騎士のされるがままになってしまいました。
騎士は達してもまだ止めるつもりは無いようで、達するものが出なくなるまで私を蹂躙しました。
ビクトレンお兄様・・・あなたに殺してもらったほうが良かった。
騎士が私から離れると、使用人の男達が列をなしていて、両親兄姉の死体が転がる中で、ジャイカルの人達が来るまで犯され続けました。
私は何も身にまとわない姿でジャイカルの人に「殺して」とお願いしましたが、私の願いは叶いませんでした。
大切に扱われるわけでなく、指一本動かせない私を縛り、シーツのようなものを被せて私は何処かに連れて行かれました。
私は聖人の癒やしで体の傷は治りました。
ですが、心の傷は治りません。
小さな物音にも怯え、部屋の隅でただ振るえているしかありませんでした。
メキシアとカルフォヴィアのしたことの責任を私が取らなければならないそうです。
ジャイカルには死罪と言うものがないそうです。
人としてまともに反応できない私は、娼館に下げ渡されました。メキシアとカルフォヴィアの住民が喜んで通ってきます。
私の料金は銅貨二枚だそうです。
子供でも支払うことが出来る金額なのだそうです。
沢山の男達が私の中に吐き出し、狂うに狂えない自分を呪いながら、朝になると身を清め、眠りにつき、日が暮れると、誰とも知らない人を相手に望まれるままのことをします。
死なないように、時折聖人様がやって来て私に癒やしと回復魔法を掛けてくださいます。
どれほど傷ついていても瞬時に治ってしまいます。
ビクトレンお兄様、私は本当に生き汚く今日も生きています。
お願い・・・誰か殺して・・・。




