15 ルリィへの手紙 + 二つの話
★ ルリィへの手紙
『ルリィへ!!
陛下が来られるというのに帰ってこないとは
どういうことなんだろうか?!
色々としていることは知っているが
妻としての最低限はきちんとして欲しい。
今からでも間に合うので返ってくるように!!
ランベルトより』
ルリィから返事はなかった。
『ルリィへ
一旦工事は止めて帰ってきなさい!!
いい加減怒るよ!!
ランベルトより』
当然の如くルリィから返事はなかった。
・・・・・・・・・・・・・・。
『ルリィへ
元気にやっているだろうか?
今回、カルフォヴィア王家の仕事を
押し付けてしまって申し訳なく思っている。
病気、怪我などしないように気をつけてくれ
ランベルトより』
届いた返事。
『ランベルト様へ
工事予定は予定通り進んでいます。
聖女ルリィ様は怪我もなく、
毎日お元気に魔法を振るっていらっしゃいます。
お手紙を見せましたが、返事を書いておいてと
言われましたので、報告書と共に・・・。
防壁在中Aより』
『ルリィへ
たまには手紙の返事でもくれないだろうか?
それとも手紙が手元に届いていないのだろうか?
ランベルトより』
『ランベルト様へ
ルリィ様に手紙の返事を書くように頼んだのですが
元気だと伝えておいてと頼まれてしまいしました。
とても元気にしておられます。
防壁在中Bより』
『ルリィへ
私のことは気にならないのかな?
ちょっとは気にかけてくれると嬉しいのだが
忙しいだろうが、返事がほしいよ。
ランベルトより』
『ランベルト様へ
本当に申し訳ありません。
ルリィ様には間違いなくお手紙は渡しております。
報告書のついでに元気であることを
伝えるように頼みました。
防壁在中Cより』
『ルリィへ
緊急に必要な防壁の設置はとりあえず
終わったと聞いている。
ハルロイで宿泊する時、
一週間程休みを取って一度帰ってこないか?
長く会っていないので寂しいよ。
これからの話もしたい。
こちらに戻ってくるのが難しいようなら
ハルロイで滞在する日を教えてもらったら
それに合わせてハルロイへ会いに行くよ。
返事が欲しい。
ランベルトより』
『ランベルト様へ
ルリィ様はジュラクへ行くことを急がれていて
お会いする時間は取れないと
伝えるように言われました。
ランベルト様が来られたら日程に狂いが出るので
伝える必要ないとのことでした。
本当に申し訳ありません。
お手紙は間違いなくお渡ししています。
元気でやっていると伝えてくれと言われました。
防壁在中Dより』
『ルリィへ
私も仕事が忙しく会いに行くことが出来なくて
手紙での知らせで申し訳ないが
私には子を儲ける義務がある。
他の女性を迎えるよう進言があった。
私の子はルリィに産んでもらいたいと思っている。
ルリィの考えは如何に?
ランベルトより』
『ランベルト様へ
ルリィ様はお元気にお過ごしでございます。
お手紙は間違いなくお渡ししています。
報告書、手紙の受領書を同封いたします。
防壁在中Dより』
『ルリィへ
手紙を読んでくれているのかもわからない。
前回の手紙にも書いたが、私には子が必要だ。
ルリィと離婚すべきだという声が大きくなっている。
せめて返事をしてくれないか?
それとも私には興味がないのかな?
ランベルトより』
『ルリィへ・・・』
『ランベルト様へ
申し訳ありません C』
『ルリィへ・・・』
『ランベルト様へ
申し訳ありません A』
『ルリィへ・・・』
『ランベルト様へ
申し訳ありません E』
『ルリィへ・・・』
『ランベルト様へ
申し訳ありません B』
・・・・・・・・・・・・・。
『ルリィへ最後の手紙となる。
私はルリィと未来を築きたいと思っていたが
ルリィにとってはそうではなかったようだ。
無理やり結婚させてしまって申し訳なかった。
離婚届は王都の両親に預けてある。
なるべく早く離婚届にサインをしてほしい。
私には再婚を急ぐ必要がある。
ランベルトより』
ランベルトは結婚してから二百五十通以上の手紙を送って、ルリィからは一通の返事もなかった。
。・。♪。・。♫ 。・。♪ 。・。♪ 。・。♫ 。・。♪ 。・。♪ 。・。♫ 。・。♪
★オールベルトに行った鍛冶職人は見て聞いてしまった。
鍛冶職人の朝は早い。
特に今は忙しくて朝から晩まで働いている。
カルフォヴィアと違うのは、働いたら働いた分だけお金か、物々交換かしてもらえることだ。
ここに来て直ぐ、鍛冶職人になりたいという子供がやって来て、手伝いをしてくれているが、それでも手が足りなくてガンドが農作業の合間に手伝いに来てくれる。
弟子など取るような柄ではないが、戦争の準備もあって、作れば作っただけ売れていく。
農具の手入れもしてやらければならない。
夏の暑くて厳しい時季がやっと済んで、刈り入れ前の農具の手入れが溜まっている。
それらをせっせと片付けていると、汲み置きの水が無くなって、手伝いに来ている子供も昼ごはんに帰っていて居なかった。
仕方なく川に水を汲みに行くと、木立の向こうに二人の男がボソボソと話をしていた。
何を話しているのか耳を澄ませていると、カルフォヴィアが攻め入ってくるとか、メキシアが兵を挙げるとか聞こえた。
俺は驚いて声を上げそうになったが、口を押さえて身を縮こまらせた。
カルスタル・・・・・いま攻め・・・勝てる!
いや、勝て・・無理・・・・・ジャイカル、強い
お前・・・気かっ!
またボソボソとして聞き取ることができず、そして唐突に大きな声で「俺はこのジャイカルで幸せに暮らしたいんだっ!もう、カルフォヴィアになんか借りはないっ!!」
「待てっ!!裏切る気かっ!!」
俺は聞いちゃいけないことを聞いた気がする。
俺は、カルスタルという人に心当たりがあった。
カルフォヴィアの将軍がカルスタルという名前だったはずだ。
誰に相談したらいいんだろうか?!
俺はこのジャイカルに生かしてもらっているんだ。この国を守らなくてはならない。
水くみも忘れて通りをウロウロしていたら、馬に乗った十人くらいの集団が来た。
俺は思わず手を振って、馬に乗った人達を止めてしまった。
馬から降りてくれて「どうかしたか?」と聞いてくれた。
「俺はカルフォヴィアから逃げてきた鍛冶職人のバンドーと言います。ジャイカル国の方ですよね?」
「ああ。俺はヴェルトラムの人間だ」
ベルトラムはカルフォヴィアに面したジャイカル国の領地の名前だった。
「実はさっき、カルスタル将軍という名を話している奴らが居て・・・」
俺が説明すると、聞いていたヴェルトラムの人達の眉根が寄っていった。
「話していた奴らが誰か解るか?」
「俺より後にカルフォヴィアからやって来たドバンとグアナだと思う。グアナのほうが、ジャイカルで幸せに暮らしたいと言っていた方だ」
「グアナの家は解るか?」
「ああ。案内できる」
仲間の人達に何か話をして、乗っていた馬を任せて、俺と二人でグアナの家へと向かった。
グアナのカミさんと子供が昼食後の片付けをしているようで、グアナは居なかった。
「もう直帰ってくるからちょっと待ってて」
「飯終わったとこじゃないのか?」
「グアナはちょっと呼び出されて出て行って、まだご飯を食べてないから腹をすかせて直ぐ帰ってくるよ」
本当に直ぐグアナは戻ってきた。
俺と、もう一人の顔を見て、ため息をついてこちらへと寄ってきた。
「知ってるんですね?」
とグアナが言い「知っているとは言い難いが、グアナが何かを知っているらしいということは知っている」
「ここでは話せませんのでバンドーの家でもいいですか?」
「私はかまわないよ。待っているから昼ごはんを食べておいで」
グアナはハッと顔を上げて「いいんですか?」と聞いた。
俺の隣に立つ人は頷いて「バンドーの家に先に行っている」とグアナに背を向けた。
俺達がゆっくり歩いたのもあるが、グアナは五分も待たずにやって来た。
俺はお茶を入れて、席を外した。
さっきし忘れた水汲みをした。
手伝いの子供がやって来て、一緒に水を汲み、水瓶をいっぱいにした。
外でできる仕事を三つほど片付けた時、グアナとヴェルトラムの人が出てきて「俺に家を借りて済まなかった」と言って帰っていった。
グアナは俺に「ありがとう」と言って、畑へと向かっていった。
その日の夜、ドバンは騎士様に捕縛されて何処かに連れて行かれた。
グアナは何事も変わりなく、毎日を過ごしている。
あの日から十日ほど経った時、ベルトラムの人が俺の家にやって来て「鹿を一頭取ったから皆で食え」と言って鹿をくれた。
帰り際「何も心配しなくていい。方が付いたからな」と言って笑顔で帰っていった。
俺はちょっとでもジャイカルのためになることができたと嬉しかった。
★メキシアの王族の二人の末子
今日もジュラクから色よい返事は帰ってこない。
「父上!私がジュラクへ直接行って説得してまいりますっ!!直接話せばきっと我々の気持ちを理解するでしょう!!」
「おお!!さすが、ビクトレン!!ならば使者を頼んでもいいか?!」
「お任せください!必ずや色良い返事をいただいてきます」
「うむ。頼んだ!!お前だけが頼りだよっ!!」
父上は兄や姉達をぐるりと見回し、役立たず共めというような目で見ている。
同じ年の妹、ララーシャも「私もビクトレンお兄様と一緒に行ってまいります」と言い出し、私は内心焦った。
だが、表情に出す訳にはいかない。
父上はララーシャが行くことに渋ったが「私があちらの王族か公爵家に嫁ぐと話してみます」と言い出した。
父上は「すまぬ。頼む」と涙ながらにララーシャを抱きしめた。
私はララーシャと二人、私が選別した護衛を数名連れてジュラク国へと入国の打診をした。
入国は中々許してもらえず、私達は国境で長く留め置かれたが、私は用意していた手紙をジュラクの国王に渡してくれと頼んだ。
その手紙の返信として、国境に宰相補佐がやって来た時、私は生き残れるかも知れないと思った。
父上は狂っている。
ハルロイの防壁ですら超えることができなかったのに、あの時より力が落ちた今、ハルロイ以上に高く堅牢な防壁をどうやって攻略するというのか?!
国民はどんどん餓死していってる。
来年の夏前には王族ですら食べるものが無くなるだろう。
私は勝てる勝負ならしてもいいが、全く勝てる見込みのない無駄死になどしたくない。
ジャイカルとの戦いが無駄死にだ。
私はなんとしても亡命するのだ。
ララーシャはどんなつもりで付いてきたのか解らない。
母が違うララーシャとは仲が良かったことがないのだ。何を考えているのかさっぱり解らない。
「お兄様・・・一人では逃しませんよ」
「何だと?」
「私も沈む船から降りたいと思っています」
「父上を裏切る気か?!」
「態とらしい・・・一番に逃げ出そうとしているお兄様に裏切りなどと言われたくありません。わたくしが今回連れてきた者達も亡命を望んでいる者達です」
「何だと?!」
「お兄様が連れて来た者達もそのおつもりなのでしょう?」
「私は其方が恐ろしいわ!!」
ジュラクの王城へと案内され、旅装を解いて、私はどこか遠くの国への亡命を望んでいるとジュラクの王へと願い出た。
妹はどこでもかまわないので、何処かへ嫁がせて欲しいと申し出た。
ジュラクの王は一瞬何を言われたか解らず、数秒考え、大笑いした。
「泥舟から逃げ出したネズミか!まぁ、暫くはゆっくりするがいい」
「ありがとうございます」
小さな離宮が私達に与えられ、この離宮の中なら自由にして良いと言われた。
外には出るなということだ。
ジュラクはジャイカルに一部とは言え、防壁を作ってもらっている。
その為にメキシアからジュラクに入るには三週間も掛かってしまう。
出入り口は小さく、馬車が一台通れるだけのスベースしかない。
メキシアはカルフォヴィアか北に逃げるしかないが、北には海があり、船がないと逃げ場がない。
その海も開発が遅れているために、小さな港しかなく、結局逃げるのはカルフォヴィアしかないのだ。
そのカルフォヴィアはメキシアより生きていくのが厳しい状態になっている。
メキシアは夏までは王族は生きていけるが、カルフォヴィアは冬が越せないだろう。
畑で収穫しようにも、殆どが餓死で死んでいて、その死骸をそのまま放置したため、疫病が発生している。
父上はカルフォヴィアに一体何を言って、その気にさせたのか不思議で仕方がない。
メキシアもカルフォヴィアも自滅の道しか残っていないのだ。
一週間ほどで、ジャイカルからの使者がジュラクにやって来た。
ジャイカルの第二王子で、ランベルトと名乗った。
私とララーシャが亡命を望むと、軽くあしらわれ「あなた達に何の価値があるのか?」と聞かれた。
「生かすより殺すことのほうが簡単だ。生き残られると後々問題が起こりやすい。メキシアに帰ることをおすすめするよ。それか、ジュラクから北へ北へと逃げることだ。王族のあなた達が何をして生きていけるのか私は楽しみだ」
自分達に情報源としての価値すらないとは思わなかった。
私が話すことすべて、この第二王子、ランベルトは把握していた。
この秋にメキシアとカルフォヴィアが同時に攻め込む事も知っていた。
そして、攻め込む力ももう既に持ち合わせていないことも知っていた。
元気なのは王族だけなのだということも。
「メキシアもカルフォヴィアも愚かとしか言いようがない。民を殺してしまっては国は立ち行かない。王族などいなくても国は存続していける。本当にメキシアの王族は愚かだ」
そう言って第二王子ランベルトは私の前から去っていき、ジュラクの王にはジュラクから出ていくことを求められ、私とララーシャはジュラクの北にあるシューコックへと逃げるしかなかった。
ジュラク国王の餞別だといって、メキシアの人間だとは言わないほうがいいだろうと教えてくれた。
シューコックで入国を断られたら、メキシアに戻るしかないとも教えられた。
私達はシューコックで入国を断られ、メキシアに戻るしかなかった。
ブルータスと他2編の話も書いていたのですが、クラッシュしてしまって全て消えてしまって、本編とあまり関係ないからいいかな?と全削除になってしまいました。




