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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 朱色の豚
外道の本性

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81.勧誘の裏、心の仮面

ラインは、その褒賞の裏に隠された真意をすでに見抜いていた。

これは、族長ハクが仕掛けた一つの探りである。


ラインは何食わぬ顔で演武場を見渡した。

ローデン一族でも指折りの三組が、今この場に集まっている。


族長派を代表するアオ組。


カル派閥を代表するクル組。


そして、コア派閥を代表するリリア組。


普通の学員であれば、この三組のどこかへ入れるだけで、強力な後ろ盾を得たも同然だ。

将来は約束され、前途も明るい。


だが、ラインにとってはまるで逆だった。


年中考査の一件以来、一族の上層部はラインの背後に何らかの勢力が潜んでいると考えている。

この状況で、この三組のどれを選んでも、たちまち疑いを招くことになる。


仮にクル組を選んだとしよう。


カル派閥は、自分たちがラインを密かに勧誘したことなど一度もないと知っている。

ゆえに、まずこう疑うはずだ。


――ラインは他勢力が育てた駒でありながら、なぜ今になってクル組へ入ろうとする?

――いったい何を企んでいる?


一方、ほかの勢力は、卒業前のラインを取り込んだのはカル派閥だと考えるだろう。

暗黙の慣例を破り、誰よりも早く動いたのだと。


そうなれば、カル派閥は、実在しない謎の後ろ盾だという濡れ衣まで着せられる。

疑いを晴らすため、ラインを厳重に監視し、行動を制限しながら、背後の勢力を突き止めようとするはずだ。


しかし、本当の問題は別にある。


ラインには、そもそも後ろ盾など存在しない。


(この三組のどれかへ入れば、一族の三大勢力の争いへ巻き込まれる。そんな選択はできない)


ラインは素早く思考を巡らせた。


(もともとは、目立たないようにバキのいるチームへ入るつもりだった。

だが、あのチームの背後にも牢獄長老の影が見える。

今この場で選べば、やはり疑われるだろう)


ラインはすぐには答えなかった。


族長ハクの笑みが、いっそう穏やかになる。


「ライン、すぐに決められないのなら、私が代わりに手配してもよいぞ」


ハクの傍らに座る長老たちは、表情一つ変えなかった。

まるで、沈黙を守る石像のようである。


(そろそろ態度を明らかにしろ、ということか)


ラインはわずかに視線を動かし、ハクが次に何をするつもりなのかを読み取った。


もしハク自身が配属先を決めるなら、十中八九、ラインをクル組かリリア組へ送り込むだろう。

ハクは、自分がラインを勧誘していないことを知っている。


そうすれば、族長派への疑いを晴らしながら、ラインという厄介者を政敵の派閥へ押しつけられる。

さらには、それをきっかけに、謎の後ろ盾を表へ引きずり出せるかもしれない。


まさに一石三鳥。


政敵へ火の粉を浴びせるだけの単純な手に見えて、実際にはひどく老獪である。

一族を長年まとめてきたハクの政治的手腕が、遺憾なく発揮されていた。


(ハクに決めさせるわけにはいかない。こうなれば、三大勢力と明確な関わりを持たないチームを選ぶしかないか)


ラインが口を開こうとした、そのときだった。


「それなら、私たちのチームへ入らないか?」


人混みの中から、一人の男が声を上げた。

決して大声ではなかったが、静まり返った演武場にはっきりと響き渡る。


「ちょうど、私たちのチームには攻撃役が一人足りなくてな」


誰だ?


その場にいた者たちは一斉に振り返り、声の主へ視線を向けた。


話していたのは、中肉中背の男だった。

肌はくすんだ黄色を帯び、顔には拭いきれない病人めいた陰がある。

細長い三角眼はわずかに細められていたが、その奥には、弱々しい外見とは対照的な鋭い光が宿っていた。


「あれは、病蛇(びょうじゃ)のサイラスだ」


誰かが、その異名を低く呟いた。


「サイラス・ローデンか?あいつのチームなんて、名も知られていない平凡なところだろう。背後に有力な派閥がついているわけでもないのに……」


族長と長老たちの目に、揃って微かな失望が浮かんだ。


(サイラス……)


ラインの目の奥に、見落としそうなほど微かな暗い光がよぎる。


サイラス・ローデンとは、これまで一度も会ったことがない。

前世の記憶を探ってみても、この男が何か目立ったことを成し遂げた覚えはなかった。


ならば、どうして今この場でラインを勧誘したのか。


年末考査で一位を取ったから?


そんな単純な理由であるはずがない。

そんな話を信じられるのは、ライルのように甘い人間だけだ。


とはいえ、サイラスが声を上げたことは、ラインにとって願ってもない突破口だった。


(今、一番失望しているのは、あそこに座っている一族の上層部だろうな)


そう考えたラインの口元が、ほんのわずかに上がる。

彼は目を伏せ、瞳の奥に浮かんだ冷たい光を隠した。


「分かりました」


ハクが再び口を挟む隙を与えず、その場で頷く。


「あなたのチームへ入ります」


演武場には、たちまちざわめきが広がった。


「ラインは馬鹿なのか?アオ組やクル組、リリア組みたいな一流の組を選べるのに、わざわざ病蛇のチームへ入るなんて」


「あそこは実力も平凡だし、サイラス本人の性格も……なあ?」


「せっかく族長様が与えてくださった機会を、無駄にしやがった」


学員や精霊使いたちは、理解できないとばかりにラインを見つめた。

中には、救いようのない愚か者を見るような目を向ける者さえいる。


棚の下では、ハクと長老たちの表情もわずかに沈んでいた。


今日の探りは、横から割り込んだサイラスによって、完全にかき乱されてしまった。

だが、彼らの胸にはすぐに新たな疑念が生まれる。


サイラスも、誰かの指示を受けているのではないか?


もしや、この男もまた、謎の勢力が表へ送り出した駒なのかもしれない。


真相がどうであれ、サイラス・ローデンについては、改めて徹底的に調べる必要がある。


……


三日後。


一日中降り続いていた雪は、ようやく勢いを弱めていた。

白い雪片が寒風に巻き上げられ、空中を絶え間なく舞っている。


ヴェルデン山全体が、銀白色の衣をまとっていた。

大半の木々は葉を失い、剥き出しの枝を広げている。

常緑の松と矛竹だけは元の色を保ち、雪と氷の中で凛として立っていた。


雪の積もった山道を、五つの人影が駆け抜けていく。


先頭を走っているのは、中背で顔色の悪いサイラスだった。

彼は走りながら横を向き、黙ったまま後ろについてくるラインへ穏やかに笑いかける。


「ライン、そう緊張する必要はない。一族の任務に出るのは初めてだろうが、今回の任務はそれほど難しくない。

私たちについてきて、見ながら覚えればいい」


「分かりました」


ラインは淡々と答え、視線を前方へ向けたまま走り続けた。


季節はすでに真冬である。


雪に覆われた山中を駆けていると、正面から吹きつける寒風が刃のように肌を切り裂く。

息を吸い込むたび、砕けた氷を飲み込んでいるかのように、胸の奥まで冷え込んだ。


もともと白いラインの肌は、山一面の雪に照らされ、普段以上に青白く見えた。

細かな雪が黒髪や肩、眉へ絶え間なく降り積もるが、走ることで生まれる風にさらわれ、すぐに後方へ流れていく。


以前と違い、ラインは真新しい衣服を身につけていた。


濃紺の武装束である。


上衣は袖口を絞った短衣で、下には動きやすい長袴を穿いている。

脛には竹片を重ねた脚絆を巻き、足元には竹を編んだ履物、額には鮮やかな瑠璃色の鉢巻きを締めていた。


鉢巻きの両端が、走るたびに背後へなびく。


腰には幅の広い鉄紺色の帯を締め、その正面には一枚の銅板が嵌め込まれている。

銅板には、「一」の文字がはっきりと刻まれていた。


これは、正式な精霊使いだけに許された装束である。


銅板の数字は、ラインが一環精霊使いであることを示していた。

学堂で一年間の修練を終え、正式に卒業した少年だけが、この装束を身につける資格を得る。


この装束には、戦闘や行動に適した衣服である以上の意味がある。


これを身につけた者は、凡人の階層から脱し、正式な精霊使いになったと認められる。


一環精霊使いは、精霊使いの中では最下層にすぎない。

それでも、あらゆる凡人の上に立つ存在だった。


これから先、凡人がラインと出会えば、自ら道を譲り、頭を下げて礼をしなければならない。


サイラスの目が微かに光る。


濃紺の武装束は、ラインによく似合っていた。

まだ成長しきっていない少年の体つきだが、常に淡々としているその表情も相まって、冷厳で隙のない雰囲気を漂わせている。


道中、サイラスが再び口を開いた。


「外で任務に当たるときは、長い距離を速いペースで移動することも多い。この程度の走りは日常茶飯事だが、ついてこられそうか?」


「問題ありません」


ラインは相変わらず必要最低限の言葉しか返さず、横目でサイラスをちらりと見た。


その顔に浮かぶ穏やかで親しげな笑みを見ているうちに、ラインは人祖神話に伝わる一つの物語を思い出した。


伝承によれば、人祖はかつて、規と矩の二体の精霊の力を借り、力の精霊を従えたという。

しかし、その後に知恵を失い、最後に傍らへ残ったのは、疑い、信頼、そして態度という三体の精霊だけだった。


やがて人祖は、態度の精霊を捕らえた。

賭けの取り決めに従い、態度の精霊は人祖へ頭を下げるしかなかった。


態度の精霊は、人祖へこう告げた。


「人よ、私を捕らえた以上、私の負けを認めよう。これからは、お前のために力を貸してやる。

私を顔に着ければ、その力を使うことができるだろう」


態度の精霊の姿は、一枚の仮面によく似ていた。


人祖はさっそくそれを顔に着けようとしたが、どうしてもうまく固定できない。

紐できつく縛りつけても、最後にはひとりでに滑り落ちてしまう。


「いったい、どういうことだ?」


人祖はどれほど考えても、理由が分からなかった。


すると、態度の精霊は笑い出した。


「人よ、お前にはもう心がないではないか。態度とは、心にかぶせる仮面だ。

心を持たぬお前に、どうして私を着けることができよう?」


その言葉を聞き、人祖はようやく悟った。


自分はとっくに、その心を希望へ渡していたのだ。

心を失った者は、態度という仮面をかぶることができない。


裏を返せば、人に心がある限り、外に見せている態度は、本心を覆い隠すための仮面かもしれないということだ。


(この穏やかで親しげな態度こそ、サイラスが顔に着けている仮面だ。

ならば、その仮面の下には、いったいどんな心が隠されている?)


ラインは口を閉ざしたまま、静かに思考を巡らせる。


サイラスは何気ないそぶりで、ラインを観察していた。

そしてラインもまた、同じようにサイラスを観察していた。

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