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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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74.巨石の先、逆さの石林

月日は瞬く間に過ぎ、夏が去って秋が訪れた。


薄暗い通路の奥で、ラインは再び道を塞ぐ球形の巨石と向き合っていた。


季節が冷え始めたため、今は簡素な長袖の服を身にまとっている。

数か月前と比べると、体つきも以前ほど痩せては見えず、胸や両腕、腹部、両脚には、はっきりとした筋肉の輪郭が浮かんでいた。


その筋肉は岩のようにごつごつと盛り上がっているのではなく、均整を保ちながら体に沿い、しなやかな線を描いている。

少しずつ伸びてきた背丈と白い肌も相まって、今のラインからは少年らしい生命力が感じられた。


「三日前から、白イノシシの精霊を使っても力が伸びなくなった。

つまり、すでにイノシシ一頭分の力を得て、酒飲のカイが残した条件を満たしたということだ」


ラインは目の前の巨石を見据え、その瞳に鋭い光を宿す。


「今日、もう一度試してみよう」


右足を前へ踏み出し、左足を後ろに残して、腰を深く落とす。

両手を巨石の表面に当てて大きく息を吸い込むと、全身に力を込めた。

重い巨石は、初めこそほとんど動かなかった。

だが、やがてわずかに揺れ、そのまま少しずつ前方へ転がり始める。


巨石の向こうには、斜め上へ延びる通路が続いていた。

酒飲のカイがわざわざ巨石を球形に削ったのは、継承者にこれを斜面の上まで押し上げさせるために違いない。


(十歩、二十歩、三十歩……)


ラインはゆっくりと前進しながら、心の中で歩数を数える。


(先週は四十五歩で力尽き、元の場所まで戻るしかなかった。今回は、どこまで進めるか)


四十歩。


四十五歩。


前回の限界を越えたときには、全身が熱を帯び、呼吸も明らかに乱れていた。


四十六歩。


四十七歩。


もはや体力はほとんど残っていない。両腕は震え始め、両脚も鉛を詰め込まれたかのように重かった。


四十八歩。


四十九歩。


ラインは残る力を振り絞り、どうにか二歩を進んだ。だが、そこでついに巨石が動かなくなった。


汗はすでに服を濡らしている。ラインは巨石が斜面を転がり落ちないよう、肩と両脚を押し当てながら、激しく息をついた。


(諦めるか?)


そんな考えが、無意識のうちに浮かび上がる。


ここは上り坂だ。たとえ諦めて戻るにしても、かなりの体力を使うことになる。

巨石は勝手に下へ転がっていくため、帰り道でも体を押し当て、速度を制御し続けなければならない。


かといって、手を離して逃げれば、巨石は斜面を転がるほど加速していく。

避けるのがわずかに遅れただけで、その下敷きとなり、肉塊に変わりかねない。


それでも、ここまで来て引き返すのは惜しかった。


(あと一歩だけだ)


ラインは歯を食いしばり、残るすべての力を両腕と肩へ注ぎ込む。


五十歩目。


その一歩を踏み出した瞬間、巨石から伝わる圧力が急に軽くなった。


ラインは一瞬呆気に取られたが、すぐに理由を理解する。

巨石は斜面を抜け、平らな石台の上へ乗っていた。


さらに数歩押して巨石を完全にどかし、その横を通り抜ける。

すると、前方には一つの密室が隠されていた。


広さは岩の裂け目にある隠し洞窟とほとんど変わらない。

ラインはひとまず、ここを第二密室と呼ぶことにした。


室内には何も置かれておらず、四方の壁は以前と同じ奇妙な赤土に覆われ、薄暗い赤い光を放っている。反対側には粗雑な灰色の石扉が立っており、酒飲のカイが急いで造ったもののように見えた。


ラインは、すぐには扉を押さなかった。


その場でしばらく休み、乱れた呼吸を整える。

やがて石扉の手前だけ、地面の色が周囲より濃く、湿っていることに気づいた。


(まさか……)


一つの可能性が、ラインの脳裏をよぎる。


その場にしゃがみ込み、両手で柔らかな湿土を慎重に払いのけると、一輪の地蔵花(ちぞうか)が姿を現した。


弱った精霊を封じ、長期間保存するための地蔵花だった。


ラインは思わず声を上げて笑うと、花弁を慎重に開き、黄金色の花液から眠り続けていた精霊を取り出した。


精神力を流し込むと、精霊はほとんど抵抗を見せないまま、瞬く間にラインのものとなった。


ヒスイズスキン!


その姿は、平たく幅の広いカメムシに似ている。

頭部はひどく小さく、淡い緑色をした楕円形の胴体には、温かな玉色の光が絶えず漂っていた。


「白イノシシの精霊を手に入れてから、ヒスイズスキンをどこで探すべきか考えていた

この二体を揃えて初めて、いずれ合練によってシロタマズスキンへ昇格させる機会が得られる」


ラインの思考が、素早く巡る。


「まさか酒飲のカイが、継承者のために最初から用意していたとはな」


これで、ラインが所有する精霊は六体となった。


これまでにも五体の精霊を所持していたが、その中に防御へ使えるものは一体もなかった。

ヒスイズスキンを得たことで、ようやく防御面の欠点が補われたことになる。


そして状況によっては、防御そのものが攻撃にも繋がる。


ラインは白イノシシの精霊によって、イノシシ一頭に匹敵する力を得ていた。

今の彼なら、比較的柔らかな石であれば、一撃で砕くこともできるだろう。


だが、実際に試したことはない。


石を砕くだけの力はあっても、それを受け止める肉体の強度が足りていなかったからだ。

一撃を放てば石は砕けるが、ラインの拳も皮膚が裂け、下手をすれば骨まで傷ついてしまう。


ヒスイズスキンの防御があれば、事情はまったく異なる。

これからは自分の肉体が攻撃に耐えられるかを心配せず、イノシシ一頭分の力を存分に発揮できる。


もっとも、ヒスイズスキンを得たことは、良いことばかりではなかった。


一環精霊の中でも屈指の防御力を持ち、それだけに価値も高い。

しかし、飼育にはかなり手間がかかり、十日ごとに百グラムほどの玉石を食べさせなければならない。


玉石そのものも安くはない。だが価格以上に問題となるのは、その入手経路だった。


ライルもヒスイズスキンを所有しているが、彼の背後には族長がいる。

定期的に玉石を届ける者も、当然用意されているだろう。


一方、ラインにはそのような伝手がない。必要な玉石は、自分で買い集めるしかなかった。


だが、何度も玉石を購入すれば、ヒスイズスキンを持っている事実も簡単に露見してしまう。


「白イノシシの精霊を養うため、定期的に山へ入ってイノシシを狩るだけでも十分に面倒だ

それに加えてヒスイズスキンまで……今度は玉鉱を探し回り、自分で玉を掘れというのか?」


ラインは苦笑した。


新しい精霊が一体増えるということは、新しい負担が一つ増えることでもある。


ヒスイズスキンを空界へ戻して養いながら、ラインは石扉の前に立った。

両手を表面に当て、ゆっくりと力を加えていく。


灰色の石扉は極めて重い。

白イノシシの精霊によって力を高めていなければ、全力を出しても少しさえ動かせなかっただろう。


しかし今は、低い摩擦音とともに、分厚い石扉が少しずつ内側へ開いていく。


扉の向こうの景色が姿を現し、ラインの視界も一気に開けた。


そこにあったのは、狭い通路でも密室でもない。

想像を遥かに上回る規模の、地下石林だった。


ラインは大まかに広さを見積もり、少なくとも二万平方メートル、二ヘクタールを超えていると判断した。


地球にある一般的なサッカーコートが、約七千平方メートル。

つまり、この地下石林はサッカーコート三面分に近い広さを持っている。


「今いる場所は、すでにヴェルデン山の内部深くまで入り込んでいるはずだ。

この地下空間は、自然に形成されたものだろう」


ラインは頭上を見上げた。


地下空間の高さは十六メートルを超え、天井は岩盤によって完全に閉ざされている。

そこからは巨大な暗赤色の石柱が何本も垂れ下がり、一本一本が弱い赤光を放っていた。

周囲の岩壁からも、同じ光が滲み出している。


決して明るくはないが、近くの景色を見渡すには十分だった。


石柱は、逆さまに生えた巨木を思わせる。

枝も葉もなく、孤独な幹だけが残され、上部は太く、下へ行くほど細くなっていた。


無数の石柱が密集して垂れ下がり、山の内部に逆さまの石林を形作っている。


柱の表面は滑らかではなく、至るところに深く暗い小穴が開いていた。


自然が生み出したとは思えないほど、見事な光景だった。


だが、前世で多くのものを見てきたラインが、それに見惚れることはない。

彼の視線は初めから、石柱に並ぶ無数の黒い穴へ向けられていた。


その眉間に、次第に深い皺が刻まれていく。


酒飲のカイが第二密室にヒスイズスキンを残した理由も、何となく分かってきた。


「私の予想が正しければ……」


ラインが右手を振ると、一筋の月刃がまっすぐ宙を走り、石柱に開いた黒穴の一つへ正確に飛び込んだ。


次の瞬間、穴の中から鋭く苛立った鳴き声が響く。

一匹の灰色の猿が勢いよく飛び出し、灰色の影となってラインへ襲いかかった。


ラインは続けざまに右手を振るう。


三筋の月刃が、次々に空気を切り裂いた。


灰猿は宙に浮いているため、足場を使うことはできない。

だが、その尾は恐ろしいほど器用だった。


尾を続けて振るい、その勢いだけで空中の体を回転させると、最初の二筋を立て続けに回避する。

三筋目の月刃が、ようやくその体を捉えた。


灰猿は地面へ激しく叩き落とされ、そのまま息絶えた。


奇妙なことに、傷口からは一滴の血も流れていない。

死んだ直後から灰色の体は急速に硬直し、瞬く間に血肉の肉体から、一体の石猿像へ変わった。


地面に倒れた姿勢も、その顔に残る表情も死んだ瞬間のまま保存され、まるで精巧な彫刻のようだった。


二呼吸ほど経つと、石猿の表面から、ぴしりと乾いた音が響いた。


内側から生じた亀裂が全身へ広がり、やがて石像は音を立てて崩壊する。

あとに残ったのは、地面へ散らばった灰色の小石だけだった。


「やはり、地下に群れを作る宝石猿か」


ラインは歩み寄って腰を下ろし、灰色の小石をかき分ける。

その中から、二つの碧緑色をした珠を拾い上げた。


宝石猿の眼球である。


この奇妙な生物は、死ぬと全身が灰色の石屑へ変わり、両目だけが翠玉の珠として残される。

一粒だけでもかなり重く、少なくとも五十グラムはあった。


二粒を合わせれば、ヒスイズスキンが一度に必要とする量をちょうど満たせる。


つまり、宝石猿を狩り続ける限り、ヒスイズスキンの餌を安定して確保できるということだ。


酒飲のカイは、やはり最初からすべてを用意していた。


「だが、ヒスイズスキンを養うだけでは足りない。

酒飲のカイが残した、次の継承への手掛かりも探さなければならない」


ラインは石林の奥へ目を向ける。


「新たな手掛かりは、おそらくこの石林のどこかにある。

見つけ出すには、宝石猿の縄張りを通り抜ける必要があるということか」


その眉間に刻まれた皺が、さらに深くなった。


厄介なことになった。


ラインは周囲の石柱を警戒しながら、試しに数歩前へ進んだ。


七歩目を踏み出した瞬間、最も近い石柱に開いた無数の黒穴から、一対、また一対と、緑色に光る目が浮かび上がる。


薄暗い地下石林の中で、数百、数千もの幽緑色の視線が、一斉にラインへ注がれた。


一滴の冷や汗が、額をゆっくりと伝う。

ラインは即座に踏み出した足を引き、元の場所まで後退した。


石柱から距離を取るにつれ、黒穴に浮かんでいた緑色の目は次々に消え、再び暗闇の中へ沈んでいく。


一対の目につき、一匹の宝石猿。


ラインは先ほど、たった一匹を倒すために、四筋もの月刃を使っている。


しかも一本の石柱だけで、少なくとも百匹以上が棲みついていた。

地下石林全体となれば、どれほどの数が生息しているのか見当もつかない。


現在のラインでは、四匹の宝石猿に同時に囲まれただけでも、命を落としかねない。

手に入れたばかりのヒスイズスキンを加えても、一人で相手にできるのは十二匹ほどが限界だろう。


幸い、宝石猿は普段、そのほとんどが黒穴の中で眠っている。


腹が減っても、喉が渇いても、身近な石を直接かじればいい。

石柱は巣であると同時に、食料でもあった。


こちらから攻撃を仕掛けるか、十メートル以内まで近づかない限り、わざわざ穴から出てくることはない。


地球の言葉で表すなら――自宅警備猿。


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