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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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61.獣の跡、人の罠

連なる山林の中を、ラインは一人で進んでいた。


陽光が高い樹冠の隙間を抜け、林の中にまだらな光を落としていた。

足元には青々とした草が茂り、その間に野の花が点々と咲いている。

耳に届くのは、時折響く鳥の声と、小川の流れる音だった。


辺りは静かだったが、ラインは少しも警戒を緩めなかった。


集落から離れるほど、山林は危険になる。

一般に、人の手が入らない荒野を単独で探索するには、精霊使いでも少なくとも三環に達している必要がある。


だが、それでも安全が保証されるわけではなかった。

野外で命を落とす三環精霊使いは少なくなく、時には四環精霊使いが命を落とすことさえある。


猛獣、毒虫、野生の精霊、悪意を抱く人間。

さらに、何の前触れもなく訪れる荒天。

そのどれもが、命を奪うには十分だった。


幸い、今回ラインが狙っているのは、野生のイノシシにすぎない。

山麓の狩人が時折イノシシを村へ持ち帰る以上、獲物も集落から遠くない場所にいるはずだった。


「一族は定期的に、集落周辺の危険な生物を掃討している。

一環中位の今でも、この一帯を歩く程度なら、危険は許容範囲に収まる」


ラインは周囲に残された痕跡を、慎重に調べながら進んだ。


「だが、獣も野生の精霊も、同じ場所にとどまりはしない。

一族が定めた範囲を守るはずもない。

安全とは、危険に遭う可能性が低いというだけのことだ」


前世で積んだ経験を頼りに、長いあいだ林の中を探し回った。

しかし、イノシシの痕跡は一向に見つからない。


「範囲が広すぎるな」


ラインは足を止め、辺りを見回した。

今の彼には偵察に使える精霊がなく、ヴェルデン山の地形に詳しいわけでもない。


しかも、集落の周辺では大型の獣が定期的に掃討されている。

このまま当てもなく探し続けても、時間を無駄にするだけだった。


「山麓へ行こう」


ラインはすぐに進路を変え、山肌に沿って下り始めた。


ヴェルデン山には、三つの主要な集落がある。

ロア一族は山の表側、ローデン一族は中腹、ベル一族は山の裏側にある滝の一帯で暮らしていた。


三つの勢力のほかにも、山麓には数十の村が点在している。

住民の大半は、精霊使いとなる資格を持たない凡人だった。


それぞれの村は三つの勢力のいずれかに従属し、食糧や労働力、さまざまな物資を供給している。

集落で働き手や使用人が不足すれば、村人の中から選ばれることもあった。


ただし、各一族が精霊使いとして育てるのは、自らの血縁者だけだった。


村人の中にも、まれに修練の資質を持つ者が生まれる。

だが、そうした者が一族から覚醒の機会を与えられることは、ほとんどなかった。


血によって結ばれた勢力にとって、力は何よりもまず、同じ血を引く者の手に握らせなければならない。


かつて急速な拡大を求め、血縁のない精霊使いを大量に受け入れた一族も少なくなかった。

だが、その多くは権力が外部の者へ移り、内紛に陥り、最後には衰退していった。


もっとも、一族が外部の者を完全に拒んでいるわけではない。

外の村の者でも、婚姻を通じて一族へ迎え入れられる。

その子供は一族の姓を継ぎ、次代を担う一族の者となる。


池へ絶えず細い流れを注ぎ込むようなものだ。

数は少なくとも、血が完全に淀み切ることを防げる。


かつてラインに仕えていた侍女のミラも、まさにそれを狙っていた。

婚姻によって使用人の身分を脱し、本当の意味でローデン一族へ入ろうとしていたのだ。


山を下り始めてから三十分ほど経つと、木々の間に炊事の煙が幾筋か見え始めた。

さらに進んだラインは見晴らしのよい斜面へ出て、川沿いに築かれた村を見つけた。


この村は、ローデン一族の支配下にある。

周辺の山林はローデンの集落の近くほど安全ではないものの、ここも定期的な掃討の対象になっていた。


凡人の村人が長年暮らしていける場所なら、ラインにとっても危険はまだ許容できる範囲だった。


「ん?」


村へ近づいたところで、ラインは山道の脇で足を止めた。

しゃがみ込んで、踏み倒された草を確かめる。

さらに手を伸ばし、緩んだ土をかき分けた。


硬く太い毛、蹄跡、そして牙で掘り返された地面。


「イノシシだ」


ラインの目が鋭く光った。

すぐに痕跡を追い、山林の奥へ入っていく。


進むほど、周囲の森は深くなった。

湿った岩は苔に覆われ、古木の枝が幾重にも交差している。

太陽が真上にあるというのに、地面まで届くのはわずかな木漏れ日だけだった。


不意に、前方の草むらが揺れた。

草を食んでいた数頭の鹿が一斉に顔を上げ、耳を動かしながら、音のした方角を窺った。


腰の高さまである草をかき分け、身をかがめたラインが姿を現した。


鹿たちは驚き、細い四肢で勢いよく地面を蹴った。

数度跳ねただけで深い林へ駆け込み、たちまち姿を消してしまった。


「すべて雌か」


ラインは、鹿が逃げた方向へ一度だけ目を向けた。

鹿皮は防寒着にでき、鹿肉も一部の精霊の餌となる。

雄なら、角や袋角にも高い価値があった。


中でも金色の紋を持つ特殊な袋角は、一部の精霊を上位へ高める際に必要となる素材だった。


野外は危険に満ちているが、それと同じだけ資源にも満ちている。

だが、ラインが必要としているのは豚肉だ。

数頭の鹿のために、狩りの目的を変える必要はなかった。


視線を戻し、再び蹄跡を追って進んでいった。


間もなく、前方から幾重にも重なる羽音が聞こえてきた。

ラインが足を止め、離れた場所から窺うと、太い古木の枝の下に灰黄色の蜂の巣がぶら下がっていた。


巣は大きな桶ほどもあった。

数十匹の兵隊蜂が周囲を飛び回り、働き蜂は巣の出入口を絶えず行き来していた。


蜂蜜は、熊力系統の精霊が好む一般的な餌である。

ロア一族では、昔から蜂蜜の需要が大きかった。


だが、目の前の巣程度の規模では、野生の精霊が生まれている可能性も低い。

ブロンズスキンのような防御精霊があれば、刺される危険を冒して蜂蜜を採ってもよかった。


しかし、今のラインにその手段はない。

蜂の群れを刺激しないよう、古木を大きく迂回した。


地面に残るイノシシの痕跡は、次第に新しいものになっていった。

踏み倒された草はまだ起き上がっておらず、泥に刻まれた蹄跡も、形がはっきりと残っていた。


獲物は、もう遠くない。

そう判断したラインは、足音をさらに抑えた。


野生のイノシシは、飼い慣らされた豚とはまるで違う。

成獣は筋肉が発達し、鋭い牙を持っている。

数頭で群れれば、森に棲む大型の猛獣さえ退けることがあった。


今のラインの体で正面から体当たりを受ければ、ただでは済まない。


だが、実際に獲物を見つけたとき、想像していた戦いは起こらなかった。


成体のイノシシが一頭、深い落とし穴の底に倒れていた。


穴の中には、先端を尖らせた青矛竹が隙間なく立てられていた。

数本の竹槍が、すでに腹と脚を貫いている。

傷口から流れ続ける血は、穴の底に暗赤色の血溜まりを作っていた。


出血の量から考えて、罠に落ちてから少なくとも十五分は経っていた。


それでも、イノシシはまだ力を失い切っていなかった。

竹槍の間で必死に暴れ、荒い咆哮を上げていた。


「手間が省けたな」


ラインの口元がわずかに上がった。

だが、警戒を緩めることはなかった。


この落とし穴は、明らかに近くの狩人が仕掛けたものだ。

成獣を捕らえられる罠なら、十四歳のラインを殺すことも難しくはない。


先ほど蹄跡を追うことに夢中になり、表面を覆う枝葉の偽装を見落としていたなら、今ごろ穴の底に倒れていたのはラインのほうだった。


村の近くでは大型の獣が定期的に掃討されている。

だが、狩人たちが仕掛けた罠は、山林の至る所にあった。


目立つ印を残したものもあれば、巧妙に隠され、見つけることさえ難しいものもある。

経験を積んだラインでも、この土地の狩人たちが使う印までは知らない。

同じように罠へかかる可能性はあった。


(同じ村の狩人同士なら、罠を仕掛けた後で大まかな場所を伝え合う。仲間を誤って傷つけないためだ。

この辺りに詳しい老練な狩人を探すべきだな。

罠の位置と、獣がよく現れる場所を聞いておく必要がある)


偵察に使える精霊がない今、そうした情報があれば、探索の手間を大きく省ける。

不慮の事故で命を落とす危険も、減らせるだろう。


ただし、経験が豊富で、しかも口を開いてくれる狩人が、優れた偵察精霊より簡単に見つかるとは限らなかった。


ラインはいったん考えるのをやめ、右手を持ち上げた。


青い光が掌へ集まり、やがて三日月のような刃となって、穴の中へ飛び込んだ。

淡青色の月刃はイノシシの首筋へ正確に食い込み、細長い傷口を開いた。


鮮血が瞬く間に噴き出した。

イノシシは最後の咆哮を上げ、体を激しく痙攣させた。

やがて抵抗は少しずつ弱まり、最後には青矛竹の間に伏し、動かなくなった。


ラインは、獲物が最後の息を吐き切るまで静かに見ていた。

温かな血が穴の底へ流れ込み、濃い血の臭いも辺りに広がっていった。


「生と死。それこそが、自然の中で永遠に変わらぬ旋律だ」


そのとき、遠くから話し声がかすかに聞こえてきた。


「ジャック、狩りでお前に敵う奴が村にいるか?

お前の親父のオールド・ジャックは、この辺りで一番名の知れた狩人だ。

その腕を受け継いだお前なら、イノシシを一頭狩るくらい簡単だろう?」


「そうだ。ところで、今日は妹を連れてこなかったのか?」


それに続いて、冷たく硬い声が響いた。


「一頭仕留めたくらいで、何が自慢になる?今日は三頭持ち帰って、お前らに見せてやる。

それとジョン、妹にちょっかいを出すな。殴るぞ」


ジョンと呼ばれた青年は、楽しそうに笑った。


「あの子が好きで何が悪い?あの子に気があるのは、村で俺一人じゃないぞ。

それよりお前も今年で十九だ。そろそろ身を固めたらどうだ?」


「俺は一生、この村に残るつもりはない」


ジャックは鼻を鳴らした。


「いつか必ずヴェルデン山を出る。外の世界へ行き、自分の名を轟かせてやる」


話しながら、四人の若い狩人が枝葉をかき分け、林の中から姿を現した。


先頭のジャックは背が高く、弓と矢筒を背負っていた。

むき出しの両腕には、引き締まった筋肉が浮かんでいる。

両目にも鋭い光が宿っていた。

長年、山を駆け回ってきたことが一目で分かった。


ジャックはまず穴の中のイノシシを見つけ、続いて罠の脇に立つラインへ気づいた。

その眉間に、たちまち深い皺が刻まれた。


「どこの村のガキだ?」


ジャックは一歩前へ出ると、鋭い声で怒鳴った。


「俺の獲物に手を出すとは、いい度胸だ。今すぐそこから失せろ!」

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