↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 朱色の豚
外道の本性

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/132

58.並ぶ一環の精霊、選び取る微光蛍

朝日が山の稜線を越え、ヴェルデン山を照らし出した。


学堂の精霊室の前には、すでに生徒たちが長い列を作っていた。

今日は二体目の精霊を選ぶ日である。

少年たちは興奮を隠しきれず、固く閉ざされた扉へ何度も目を向けながら、

自分が狙っている精霊について小声で語り合っていた。


誰より早く一環中位へ進んだラインには、優先して選ぶ権利がある。

そのため列の先頭に立ち、後ろにはノア、ライル、メルの順で続いていた。


侍衛が扉を開くと、ラインが真っ先に中へ入った。


精霊室はさほど広くない。

だが、四方の壁には大小さまざまな四角い棚が、隙間なく設けられていた。

そこには石の鉢、玉の皿、草編みの籠、焼き物の壺などが置かれ、

それぞれ異なる一環精霊が収められている。


この精霊室を維持するため、学堂は毎日大量の資源を費やしていた。

すべて霊石に換算すれば、一日に千個を超えるほどだった。


それでも、壁には空になった棚が少なくない。

精霊がまとめて補充されるのは、一年に一度だけだ。

以前、生徒たちが本源精霊を選んだ際には、ほとんどが月印を持ち出した。

そのため、今では一体も残っていなかった。


四方の壁に窓はなく、屋根に小さな天窓が設けられているだけだった。

そこから陽光が差し込み、床に明るい金色の光を落としている。


初めてここへ入ったとき、ラインはすでに月印を選ぶと決めていた。

そのため、ほかの精霊を詳しく調べてはいない。


だが、今日は違う。

いくつか大まかな候補は考えていたものの、

望みに合うものを選べるかは、何が残っているかに懸かっていた。


ラインは左側の壁に沿ってゆっくりと進み、

一つ一つの棚へ順に目を走らせた。


数歩進んだところで、銅の碗の前にしばし足を止める。

中には、平たい黄橙色の精霊がうずくまっていた。

頭は小さく、胴は幅広い。

楕円形の甲殻は、金属のような光沢を帯びていた。


ブロンズスキン。


近接戦を得意とする精霊使いが、よく使う防御精霊だった。

学堂の教官も一体飼っている。

発動すれば肌が青銅色に染まり、肉体の防御力も高まる。


ラインは一目見ただけで、再び歩き出した。

ブロンズスキンの後ろには、姿のよく似たストンズスキンが数体並んでいる。

いずれも全身が灰白色で、石像のように器の中で動かずにいた。


その先には、鉄の碗に収められたアイオンズスキンがあった。

甲殻は黒鉄のような冷たい光を帯びている。

前の二種と同じ系統に属することは、見ただけで分かった。


この系統の精霊は姿が似ており、

能力もすべて皮膚の強化に関わっている。

最もありふれたレザーズスキンは、

ストンズスキンよりもさらに価値が低い。


しかし、多くの高環精霊を錬成する材料になり、

その先の選択肢は非常に多かった。


ラインが本当に探していたのは、ヒスイズスキンである。


この系統では最も希少な種類で、

市場価格は酒虫に次ぎ、ときには同額に達することさえある。

もし精霊室に一体でも残っていれば、

それを選んで防御の弱さを補うつもりだった。


だが、アイオンズスキンの先に並んでいたのは、

一列のレザーズスキンだった。

左側の壁を最後まで見ても、あるはずの翠色は見つからない。


「ここは、所詮中規模の一族が持つ学堂だからな」


ラインは落胆しなかった。

ヒスイズスキンは、もともと滅多に見つからない。

都合よくローデン一族の精霊室に残っていると期待するほうが、

現実的ではなかった。


続いて、二つ目の壁へ向かう。

ここに収められているのは、カミキリ系の精霊が大半だった。


どれも細長い筒のような姿をしており、背中はやや平たい。

漆黒の甲殻が、金属めいた光を放っている。

体長を超える触角がわずかに揺れ、

頑丈な顎が開閉するたび、小さな音を立てていた。


ラインが最初に目を留めたのは、蛮力カミキリの精霊だった。


全身は赤鉄色で、触角だけがひときわ太い。

その表面には、節ごとに突起が生えていた。


発動すれば、短時間だけ精霊使いに牛一頭分の力を与えられる。

ただし、その効果は五呼吸しか続かない。


瞬発力の代償も小さくなかった。

一環中位でも、一度使えば精神力を一割ほど消費する。

初位なら、消耗はさらにその倍になる。


使用者の体が十分に鍛えられていなければ、

何度も使ううちに筋肉を痛めてしまう。

ひどい場合には、腱が裂けることさえあった。


ラインは十四歳の自分の体を見下ろし、そのまま通り過ぎた。

今の体で無理に爆発的な力を求めても、

敵より先に自分を傷つけるだけだった。


だが、そう遠くない別の棚を前にすると、

ラインの歩みが少しだけ遅くなった。


中にいたのは、抑制カミキリの精霊だった。

蛮力カミキリよりも細長く、甲殻は暗い黄色をしている。

二本の触角は、根元から先端へ向かうにつれて、

黄色から黒へと変わっていた。


抑制カミキリは、瞬間的な力を与えることはできない。

その代わり、体力の消耗を大幅に抑えられる。

効果は十五分ほど続き、使用者の体を傷つけることもなかった。


長時間戦う精霊使いにとって、

その価値は並の一環精霊より遥かに高い。

市場価格も、月印とほぼ同じだった。


しかも、この精霊室にいるのは一体だけである。


ラインはしばらく観察したが、やがて首を横に振った。


「精霊そのものは悪くない。

だが、今の私が進む道には合わないな」


さらに先へ進み、二つ目の壁もすぐに見終えた。

もともと、ここに収められているのは一般的な一環精霊が中心だ。

誰にも価値を見抜かれなかった珍品が残っている可能性は、

それほど高くなかった。


三つ目の壁で最も数が多いのは、イノシシ系統の精霊だった。


桃イノシシの精霊、ブチイノシシの精霊。

さらに希少な黒イノシシの精霊と白イノシシの精霊も、

すべて同じ系統に属している。


この中で、桃イノシシの精霊は最も価値が低い。

唯一の能力は使用者の体を変え、急速に太らせることだった。

特別な事情でもない限り、自ら選ぶ精霊使いはほとんどいない。

そのため、精霊室にも二、三体しか置かれていなかった。


一方、ブチイノシシの精霊は数十体もいる。

体に浮かぶ斑模様は一体ごとに異なり、

黒、白、桃色の三色が入り交じっていた。

それらが一か所に集まる姿は、ひどく目立っていた。


この精霊は、一時的にイノシシ一頭分の力を加えられる。

精神力の消耗は蛮力カミキリとほぼ同じだが、

効果は十呼吸まで続いた。


増加する力が弱い分、肉体への負担も遥かに小さい。

値段も蛮力カミキリの半分ほどで、

市場では最もよく見かける力系統の精霊の一つだった。


本当に貴重なのは、

黒イノシシの精霊と白イノシシの精霊である。


この二種は精霊使いの肉体を徐々に作り替え、

増加した力を、本当の意味で体の一部にできる。

たとえ後に精霊が死んでも、

すでに得た強化が失われることはなかった。


そのため、市場価格は通常でも霊石六百個に達する。

売りに出されれば、すぐに買い手がついた。

価値は、酒虫さえわずかに上回る。


酒虫は精神力を精錬し、一環の間の修練を速められる。

だが、戦いで使える精神力には、いつか限界が来る。

霊海が尽きれば、精霊使いが頼れるのは自分の肉体だけだ。


永久に増した力なら、どんなときにも突然消えることはない。

それこそが、黒と白のイノシシの精霊が

多くの者に求められる理由だった。


「どちらか一体でもあれば、予定を変えて選ぶ価値はある」


そう考えただけで、期待はしていなかった。

ヒスイズスキンさえない精霊室に、

黒や白のイノシシの精霊が今日まで残っているはずもない。


ラインはそのまま部屋を一周し、

残された精霊を一体ずつ見て回った。

だが、最後まで理想どおりのものは見つからない。

やがて、部屋の隅に置かれた玉の皿の前で足を止めた。


皿の上には、一体の微光蛍がいた。


小さな五芒星に似た姿をしており、

大きさは爪の半分ほどしかない。

体からは、柔らかな光が放たれていた。


精霊室には全部で五体いる。

希少性だけで見れば、ごく普通の精霊だった。


だが、微光蛍は月印と組み合わせて使える。

月印を補助する精霊としては、最も一般的なものの一つだった。

最初に考えていた候補には及ばないが、

少なくとも、今のラインが進む道には合っている。


「これにしよう」


ラインは玉の皿を手に取り、

微光蛍を連れて精霊室を出た。


外で待っていた生徒たちは、すでに少し落ち着きを失っていた。

ラインが姿を見せると、一斉に玉の皿へ視線を注いだ。


「やっと出てきたぞ。何を選んだんだ?」


「微光蛍だけか?」


「月印と酒虫を合わせれば、これで三体目だ。

あいつに、全部養えるのか?」


その声には、いくらか他人の不幸を喜ぶ響きがあった。

持つ精霊が増えるほど、日々の餌にかかる負担も重くなる。

少なくとも彼らの目には、ラインは平凡な補助精霊を選んだうえ、

さらに長く続く出費まで背負ったように見えた。


それでは、得をしたとも言い切れない。


ノアは、その話に加わらなかった。

ラインが自分の狙っていた精霊を選ばなかったと確かめると、

すぐさま精霊室へ入っていく。


ほどなくして、唯一の抑制カミキリの精霊を連れて出てきた。

その顔に浮かぶ喜びは、どうしても隠しきれていなかった。


三人目に中へ入ったのは、ライルだった。


すでに遠距離攻撃に使える月印を持っている。

今の彼に最も欠けているのは、防御の手段だった。

しばらく迷った末、左側の壁からブロンズスキンを選んだ。


最後はメルの番だった。


「相手の攻撃さえ当たらなければ、ずっと主導権を握っていられる」


いくつかの棚を何度も行き来して比べた末、

身のこなしを高める蟋蟀(こおろぎ)の精霊を選んだ。


こうして四人は、順に精霊を選び終えた。

その後も、ほかの生徒たちが決められた順番で精霊室へ入っていく。

静かに精霊を収めていた棚には、

たちまち新たな空きがいくつも生まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://syuiro-buta.fanbox.cc/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。