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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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52.失踪を追う証言、秘密を守る証拠

満月が、雲の合間から見え隠れしていた。


学堂長老は、夜道を足早に進んでいた。

月光が差しては陰り、その顔も明暗を繰り返している。


精霊使いの失踪は、珍しくない。

野獣や精霊、ほかの精霊使いなど、山で命を落とす原因はいくらでもあった。

数日も消息が途絶えれば、長年の経験から見ても、生きている可能性は低い。


だが、今回消えたのは、よりにもよってルイス・ベルナーだった。


父はベルナー家の当主で、五環精霊使い。

兄のオスカーも四環に達している。


ローデン一族で四環なのは、族長ハクだけだ。

ほかの長老たちは、大半が三環にとどまっていた。


三環が操る白銀の精神力は、四環になると黄金へ昇華する。

わずか一環の違いでも、戦いでは大きな隔たりになった。


ベルナー家は近年、商隊によって急速に勢力を広げている。

莫大な富を蓄え、山一つの資源を丸ごと支配していた。

人口も強者の数も、外部とのつながりも、ローデン一族を上回る。


ルイスがローデン領で死んでいたなら、ベルナー家との衝突に発展しかねない。

戦いを避けられても、噂が広がれば、ほかの商隊まで警戒するだろう。


商人の安全を守れない土地だと思われれば、訪れる商隊は減る。

領内の産物は売れず、必要な物資も仕入れにくくなる。


定期交易に頼る一族にとって、商隊からの信用は重い。

時には、戦いの勝敗以上の価値を持っていた。


「慎重に対処しなければならない」


学堂長老は歩みを速め、族長の評議室へ急いだ。


評議室は明るく照らされていた。

しかし、空気は張り詰めている。


上座には、族長ハクが腰を下ろしていた。

数名の長老は、左右に分かれて立っている。


中央にはオスカーが立ち、その後ろに六名の商隊員が控えていた。

椅子は用意されていたが、オスカーは座ろうとしない。


四環の彼が立っている以上、三環の長老たちも腰を下ろせなかった。

座っているのは、同じ四環のハクだけだ。

オスカーは沈黙したまま、その場の全員に圧力をかけていた。


学堂長老が口を開きかけた。

ハクは片手を上げ、それを制する。


「余計な話は後だ。学堂はお前に任せている。ライン・ローデンは、今どこにいる?」


学堂長老は胸騒ぎを覚えた。

まさか、この一件にまでラインが関わっているとは思わなかった。


「この時刻なら、宿舎で修練しているはずです」


「オスカーは、ルイスの失踪にラインが関わっていると疑っている」


ハクはこめかみを揉んだ。


「すぐに連れてこい」


「承知しました」


学堂長老が評議室を出ていった。

ハクは再びオスカーへ目を向ける。


「すぐに来る。座って待ったらどうだ」


オスカーは苦笑した。

用意された椅子には、目も向けない。


「申し訳ありませんが、とても座ってはいられません。

ルイスは、もう数日も行方が分からないのです。

何かあった可能性が高く、無事を確かめるまでは落ち着けません」


その焦りのすべてが、演技ではなかった。


ルイスが消えて初めて、オスカーは父の意図に気づいた。

実力の乏しい弟を同じ商隊に置いたのは、ただ機会を与えるためではない。


家督争いの中でも、弟を守り導けるか。

父は、オスカーの器を見極めようとしていたのだ。


ルイスが死んでいたなら、父が真っ先に責めるのは、同行していた自分かもしれない。

兄弟の情だけの問題ではなかった。

後継者の座を争う中で、父の信頼を失うわけにはいかない。


ルイスが商隊にいないと分かった直後、オスカーは調査を始めた。

弟が最後に目撃されたのは、ローデン領だった。

それを確かめると、その日のうちに引き返したのである。


今も座ろうとしないのは、一族に圧力をかけるためだ。

同時に、弟を捜すためなら手段を惜しまないと、全員に示している。

ベルナー家へ戻ったとき、その姿勢を父に伝えられるように。


ほどなくして、学堂長老がラインを連れて戻ってきた。


「族長様、オスカー様、長老の皆様」


ラインは一同へ軽く頭を下げた。

表情は、普段と何も変わらなかった。


「この少年か?」


オスカーが尋ねると、傍らの女性がうなずいた。

化石カジノでラインを接客した、一環精霊使いだった。


「間違いありません。彼です」


オスカーの目が鋭くなった。

だが、ラインを直接問い詰めず、上座のハクへ視線を向けた。


ここはローデン一族の領地だ。

族長を差し置いて、その一族の者を尋問するわけにはいかなかった。


ハクも意図を理解した。

ただし、すぐにラインへ質問することはなかった。


オスカーは二人の証人を連れて戻り、皆の前で本人かどうか確かめさせた。

相当な手掛かりを掴んでいるのは明らかだ。

ハクは、その周到さを快く思わなかった。


「本当に見間違いではないのだな?」


ハクは女性を見据えた。


「ラインには双子の弟がいる。顔はほとんど同じだ。もし人違いなら、謝罪だけで済む話ではないぞ」


四環の強者に見据えられ、女性の顔がこわばった。


オスカーが一歩前へ出た。

ハクと女性の間に立ち、その視線を遮る。


「私は以前から、ローデン一族を敬っております。族長殿が公正に対処されると信じております」


口調は丁寧だった。

だが、女性の前から退こうとはしない。


「まずは証言をお聞きください。ラインがルイスの失踪に関わっているかは、その後で判断していただきたい」


ハクはしばらく黙っていた。

やがて、うなずいた。


心の中では、すでに対応を決めていた。


本当にラインの仕業なら、下等資質の少年一人を差し出すことも選択肢になる。

それでベルナー家の怒りを鎮められるなら、一族にとっての損失は小さい。


たとえ真犯人がライルでも、罪はラインに背負わせるしかなかった。


ライルは、ここ三年で一族に現れた唯一の上等資質の持ち主だ。

将来は、ベル一族のシオンに対抗してもらわなければならない。


双子であろうと、二人の価値は等しくなかった。


「ライン、緊張する必要はない」


ハクは穏やかな笑みを浮かべた。


「一つだけ答えなさい。ルイス・ベルナーの行方を知っているか?」


ラインは顔を上げた。


「ルイス・ベルナーとは、誰ですか?」


「嘘!」


女性が、すぐさま声を上げた。

甲高い声に、長老たちが眉をひそめる。

しかし、彼女には周囲を気にする余裕がなかった。


「間違いなく、この少年です!

商隊が到着した最初の夜、化石カジノへ来ました。翠緑色の封印化石を六つ、まとめて買ったのです!」


女性はラインを指さした。

早口になりながら、さらに続ける。


「五つ目を解封すると、翠玉蝶が出ました。

ルイス様が霊石五百個で買い取っています。

あれだけ大勢の客が見ていた取引を、私が忘れるはずはありません!」


そこで一度、ハクの顔を見た。

その笑みは、次第に薄れていた。


「最後の一つだけは、その場で解封しませんでした。未解封のまま持ち帰っています」


ハクはラインへ目を向けた。


「そうなのか、ライン?」


ラインは、ようやく思い当たったように目を瞬かせた。

その顔に、わずかな動揺が浮かぶ。


「あの人がルイスだったのですか。確かにカジノで会いましたが、取引の後は一度も会っていません」


「それも嘘だ」


今度は、男性の精霊使いが口を開いた。

臨時市場の酒屋で働いていた男だった。


「商隊が出発する前の夜、君がルイス様と同じ卓についているのを見た。

長い間話し込んで、その後、二人は相次いで酒屋を出ていった」


ラインは男性をじっと見つめた。

顔に驚きが浮かび、すぐにそれを隠すように表情を引き締める。


居合わせた者たちは、その変化を見逃さなかった。


室内に低いざわめきが広がった。

学堂長老の眼差しも冷たくなる。

ハクは椅子の背へ、深く身を預けた。


「酒屋には、毎日大勢の客が来るはずだ。なぜ私だったと断言できる?」


ラインの声には、焦りがあった。


男性はすぐに答えた。

まるで、その問いを待っていたかのようだった。


「君は、その日の昼にも一人で来ただろう。

猿果酒を一杯頼んで、自分では一口しか飲まなかった。残りは酒虫を呼び出し、すべて飲ませていた」


酒(・)虫(・)


学堂長老の目に、鋭い光が走った。

男性はラインを見たまま、説明を続ける。


「私はその酒虫を売ってほしいと持ちかけた。だが、君は断った。だから、はっきり覚えている」


下等資質でありながら、誰より早く一環中位へ進んだ。

青竹酒を大量に買い込み、修練を速めた方法だけは明かさなかった。


長老の中で、それまで繋がらなかった手掛かりが結びついていく。


一方、ラインは心の中で冷笑していた。

まさに、この証言を待っていたのだ。


ルイスを知らないふりをし、わざと動揺まで見せた。

証人の口から、あの日の出来事を詳しく語らせるためだった。


今や、全員が聞いている。

ラインはルイスと密談する前から、すでに酒虫を持っていた。

その事実を、証人自身が認めた。


学堂長老が一歩前へ出た。


「ライン。その酒虫をどこで手に入れた?」


ほかの長老たちも、口々に問いかけた。


「なぜ今まで隠していた?市場での取引と関係があるのか?」


「初めから、すべて説明しろ!」


ラインは両手を強く握り締めた。

疑われ続けることに耐えかねたように、勢いよく顔を上げる。


「酒虫とルイスには、何の関係もありません!」


その声には、怒りと悔しさが満ちていた。

追及していた長老たちが、いったん口を閉じた。


「酒虫は、六つ目の翠緑色の封印化石に入っていました!カジノから持ち帰り、私がこの手で解封したのです!」

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