↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/136

50.霊石は懐へ、肩書きは他人へ

事態は、ほぼラインの予想どおりに進んだ。

学堂長老は治療を担う精霊使いを送り、二人の侍衛を救わせた。

命こそ助かったが、一人は左腕を失い、もう一人も脚に生涯残る障害を負った。


その後、二人は職を解かれ、学堂から追放された。

当日の一件について、口外することも禁じられた。

ラインには、何の処分も下されなかった。


むしろ学堂は、誰より早く一環中位へ進んだ功績を公に称えた。


侍衛たちに重傷を負わせた件も、正当防衛と認められた。

中位へ進む最中に、妨害を受けたためである。

この結果により、生徒たちはますますラインを恐れた。


学堂の侍衛を再起不能にしても、責任を負ったのは侍衛自身だった。

十四歳の少年たちには、単なる強さ以上に恐ろしい結果だった。

だが、騒ぎは学堂の中だけでは収まらなかった。


数日のうちに、噂はローデン一族全体に広まった。

下等資質のラインが、誰より早く一環中位へ進んだという噂だ。

精霊使いから凡人の住民、各派閥の使用人までが、同じ疑問を口にした。


ラインは、いったいどうやったのか。


最初、人々はただ驚いていた。

やがて、さまざまな推測が飛び交い始めた。


「下等資質の者が最初に進むことも、絶対にあり得ないわけではない。

適した精霊や薬があれば、一時的に資質の差を乗り越えるのは難しくない」


「一度使うだけで、位を上げられる精霊がいるらしい。

空界の壁を直接強化し、一段階上へ進めるそうだ」


「長老の誰かが、高位の精神力を外から注いだのかもしれない」


「酒虫(しゅちゅう)の可能性もあるぞ。あれなら一環の精神力を精錬できる。初期の修練を早めるには、まさにうってつけだ」


推測は増え続けたが、どの説にも裏付けはなかった。


一環中位へ進んだ直後に酒虫の存在を明かしていれば、疑問はすぐに解けていただろう。

それでも、ラインは沈黙を守り続けた。

まるで意図的に空白を残し、人々に想像させているかのようだった。


答えが得られないほど、好奇心と疑念は強まるばかりだった。

無数の視線が学堂へ集まり始めた。

各派閥も、学堂長老が説明するのを待っていた。


何しろラインは、学堂長老が直接教えている生徒である。

学堂でさえ理由を知らないのなら、長老の監督責任を疑う者も現れる。


学堂長老は、ラインの最近の行動を密かに調べさせるしかなかった。


霊石(れいせき)の出所、日々の修練、臨時市場で接触した商人。

一つの手掛かりも見逃さぬよう、すべてを洗わせた。


ただし、調査には時間がかかる。

答えが出るより先に、ほかの生徒たちも次々と一環中位へ進んだ。


二人目は、ノア・ローデンだった。

彼には、コア派閥から十分な資源が与えられていた。

ラインとの戦いで感じた焦りも、彼を修練へ駆り立てた。


療養中も、ほとんどの時間を修練に注いだ。

その努力が実を結び、二人目として一環中位へ進んだのである。


その三時間後、ライルも一環中位へ進んだ。

彼が三人目だった。


上等資質を持つライルは、本来ならもっと早く進めるはずだった。

ところが、最後の数日で霊石の不足が足を引っ張った。

ラインに先を越された衝撃も、ライルの心を乱した。

結局、ほんのわずかな差でノアに後れを取った。


四人目は、メル・ローデンだった。

彼の本当の資質も、ラインと同じ下等資質にすぎない。

カル・ローデンから三日ごとに、白銀の精神力を注いでもらっていた。

それによって、表向きの中等資質に見合う速度を保っていたのである。


この方法は効率が悪く、危険も伴う。

それでも二人に大きく遅れなかった時点で、カル派閥の目的は果たされていた。


五日目、学堂では七日ごとの補助が再び配られた。

今回は霊石の支給だけではない。

リーダー一人と、サブリーダー二人も正式に決められる。


そのため、生徒たちは全員、早くから教室へ集まっていた。

誰もが最終結果を待っている。


「ライン・ローデン」


学堂長老は、最初にその名を呼んだ。

ラインは席を立ち、落ち着いた足取りで教卓へ向かった。

嫉妬や羨望、消えきらない疑念を含んだ視線が、その背中を追っていた。


「最初に中位へ進んだんだ。リーダーはラインで決まりだろ」


「こんな結果になるなんてな。俺はずっと、ライルが勝つと思っていた」


「きっと何か秘密を隠している。話すつもりはないらしい」


「お前が同じ手段を得たら、皆に教えるのか?」


ささやき声の中、ラインは学堂長老の前に立った。


「お前は、今年の生徒で最初に一環中位へ進んだ。これは、学堂が約束した褒賞だ」


学堂長老は、青と白の布袋を差し出した。

ラインは受け取ると、その場で袋の口を開いた。

中の霊石を、一つずつ丁寧に数え始める。


学堂長老の目尻が、わずかに引きつった。


「三十個入っている。一つも減らしてなどいない」


ラインは手を止めなかった。

数が正しいと確かめてから、ようやく袋を懐へ収める。


「確かに三十個です。長老様、ありがとうございます」


学堂長老は、どうにか笑みを保った。

そして、その慎重さを霊石不足の表れだと受け取った。


ラインは下等資質である。

誰より早く進むため、ほかの生徒より多くの資源を使ったはずだ。

親族からの援助も失っている。

今は、かなり霊石に困っているに違いない。


霊石を必要とするかぎり、ラインも完全には一族から離れられない。

役職、補助、そして修練に必要な資源。

いずれは、それらを得るために学堂の方針を受け入れるだろう。


学堂長老は、ラインが今も数百個の霊石を持つとは知らなかった。

密かな調査は続いており、報告もまだまとまっていない。

翠玉蝶を売った件も、詳しい情報は届いていなかった。

当然、ラインの手元に残る霊石の数も把握していない。


「さらに、二体目の精霊を優先して選ぶ権利も与えられる。詳しい日時は、後ほど知らせよう」


学堂長老はわずかに間を置き、最も重要な決定を告げた。


「成績に基づき、お前を今年のリーダーに任命する」


教室のあちこちから、落胆のため息が漏れた。

ノアは歯を食いしばった。

メルは腕を組んだまま、教卓を見ていた。


最も大きな影響を受けたのは、ライルだった。

自分も、少なくともサブリーダーにはなれると思っていた。

だが、今後は兄の指示に従わなければならない。

そう考えた途端、その地位は魅力の大半を失った。


「お待ちください」


ラインが、不意に口を開いた。

学堂長老の胸に、嫌な予感がよぎった。


「どうした?」


「私には、ほかの生徒をまとめる役は向いていません。リーダーの座は、その責任を担いたい者にお任せください」


学堂長老はしばらく固まり、自分の耳を疑った。


「断るというのか?」


「はい」


「リーダーは七日ごとに霊石を十個受け取れる。普通の生徒より、七個も多いのだぞ。

その地位は、お前の実力と成績を学堂が認めた証でもある。本当に手放すつもりか?」


「はい。辞退します」


学堂長老の眉間に、深いしわが刻まれた。


リーダーの地位こそ、ラインを一族の秩序に組み込む絶好の機会だった。

追加の資源を受け取る代わりに、責任も負わせる。

規律を保ち、教官を補佐し、生徒たちをまとめさせるのだ。


リーダーになれば、補助の支給日に門を塞ぐことなどできない。

自分がまとめる生徒から、堂々と霊石を脅し取ることも不可能になる。


任命を受け入れた時点で、毎週の収入源は大きく制限される。

ほかの少年たちも、彼の圧迫からようやく一息つけるはずだった。


だが、ラインにとって、この条件には何の価値もない。

リーダーになって増えるのは、七日ごとに霊石七個だけだ。

全生徒から得る総額とは、比べものにならない。


役職がもたらす名誉にも興味はなかった。

それに付随する義務は、行動を縛るだけである。

学堂長老がラインには拒めないと踏んだ条件も、初めから何の魅力もなかった。


ラインは静かに問いかけた。


「学堂の規則では、首位が必ずリーダーになるのですか?

それとも、生徒には任命を断る権利がないのでしょうか?」


学堂長老は沈黙した。

そのような規則は、どこにも存在しない。


これまで誰も断らなかったのは、受け入れる義務があったからではない。

リーダーの名誉と資源の誘惑に抗える少年が、いなかっただけだ。


「……そのような決まりはない」


「では、ご理解に感謝します」


ラインはわずかに頭を下げ、そのまま自分の席へ戻った。

彼が腰を下ろした途端、教室中から声が上がった。


「本当に断ったぞ!」


「七日ごとに霊石十個だぞ。それを要らないっていうのか?リーダーになれるのに!」


ノアも、初めは状況を理解できなかった。

少しして、ようやく気づく。

ラインが辞退した今、成績二位の自分がリーダーの第一候補である。


幸運があまりに突然で、ノアはしばらく声も出せなかった。


メルには、ラインの選択が理解できなかった。

皆が欲しがるものを、何の迷いもなく捨てたようにしか見えない。


ライルも、席へ戻る兄を呆然と見つめていた。

自分は今も、サブリーダーになれる。

それでも、そこに期待していた喜びはなかった。


兄に勝って手に入れた地位ではない。

ラインが自ら退き、空いた席にすぎなかった。


教卓に立つ学堂長老の顔は、すっかり陰っていた。

規則でラインを縛ろうとしたのは、これが二度目である。

そして今回も、ラインは許された出口から難なく抜け出した。

どれほど不満でも、任命を無理に受けさせることはできない。


補助の支給が終わると、学堂長老は改めて結果を発表した。

成績二位のノア・ローデンが、リーダーに選ばれた。

ライル・ローデンとメル・ローデンは、それぞれサブリーダーとなった。


今後、ノアには七日ごとに霊石十個が支給される。

ライルとメルには、それぞれ五個ずつ与えられる。


家計に余裕のない生徒たちは、羨ましそうな顔をしていた。

ラインだけは背もたれに身を預け、何の関心も示さなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://syuiro-buta.fanbox.cc/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。