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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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46.三つの派閥、一つの秩序

学堂三階の窓辺から、学堂長老は訓練場を見下ろしていた。

ラインがノアを倒し、自ら試合を降りるまでの一部始終を見ていた。

特に、ラインがリングを出た瞬間には、長老の眉間に深い皺が刻まれた。

勝敗も霊石(れいせき)二十個も、あれほど簡単に捨てるとは思わなかった。


(この少年は、思っていた以上に扱いにくい)


学堂長老の胸に、かすかな苛立ちが湧いた。


ラインは学堂の規則を知り尽くしている。

処罰できるような落ち度も、ほとんど残さない。

授業中によく眠っていても、指名されると正確に答える。

ほかの生徒と争う際も、相手に負わせる怪我を規則の許す範囲に抑えていた。


今回も、自分から試合を降りただけだ。規則には何一つ違反していない。


学堂はラインの威勢を削ぎたい。

だが、罰を与える理由が見つからなかった。

わざと難癖をつければ、公正さを疑われる。ほかの長老たちに、非難の口実を与えることにもなる。


どこにも付け入る隙がない。

学堂長老は、ラインに強い嫌悪を覚えた。自分の中に湧いた感情に気づき、かえって意外に思った。


長年学堂を預かり、さまざまな生徒を見てきた。

どんな指示にも従う者もいれば、すぐ感情的になり、数日おきに規則を破る者もいた。

どちらにも辛抱強く向き合い、同じ規則で対処してきた。


だが、ラインは違う。


学堂長老は先ほどの光景を思い返した。

そして、自分が苛立つ理由をすぐに見つけた。


普通の少年が人前で教官に逆らうとき、その裏にはたいてい怒りや不満、強がりがある。

感情が激しければ激しいほど、教官からの評価を気にしている証拠になる。

学堂や一族から罰を受けることも恐れている。


心に恐れが残っているかぎり、規則で縛れる。

だが、ラインにはその恐れがなかった。


教官に責められても、怒りも動揺も見せない。

ただ相手の狙いを言い当て、自分の望むときに立ち去った。

教官の期待に背くことなど、何とも思っていないようだった。


これは、少年の衝動的な反抗とは違う。

初めから相手を眼中に入れていないのだ。

ラインは規則を理解し、教官に自分を罰する手段がないことも知っている。だからこそ、何も恐れない。


(学堂も一族も恐れていない。そんな者を育てて、本当に一族のために働くのか?)


学堂長老の目が、次第に鋭くなっていった。


一人の生徒が言うことを聞かないだけなら、大した問題ではない。

だが、ラインは人前で何度も教官の意向に逆らっている。

それでも罰を受けない姿を見れば、ほかの者も学堂の権威を疑い始める。


十四歳の少年は、強い者の真似をしたがる。

ラインが強くなるほど、その振る舞いも周囲へ広がりやすい。

それこそが、学堂長老にとって最も見過ごせない問題だった。


(あいつの威勢を抑えなければならない)


方針が決まると、次の疑問が浮かんだ。


(どうやって抑える?)


ラインは、処罰できるほどの過ちを犯していない。

学堂長老も、公正な管理者という立場を守る必要がある。

身分を振りかざし、十四歳の生徒一人を狙うわけにもいかない。


先ほどの教官も、ラインの相手にはならなかった。

周到に組んだ連戦でも、ラインを負かせなかった。それどころか、三十三連勝を飾らせてしまった。


学堂長老はしばらく考え、生徒たちへ目を向けた。


(あの三人の誰かが、一環中位へ進むのを待つしかない)


精霊使いになったばかりの時期は、資質と資源が修練の速さを大きく左右する。

最初に一環中位へ進む可能性が高い生徒は、三人いた。


ライルは上等資質を持ち、族長派から手厚く育てられている。

メルとノアも、学堂の記録では中等資質だ。それぞれの派閥には、霊石を安定して与える力もあった。


学堂は以前、最初に一環中位へ進んだ者への褒賞を発表している。

霊石三十個に加え、二体目の精霊を優先して選べる。

これだけの褒賞なら、三人とその派閥は全力で修練に取り組む。

生徒の関心も、格闘の勝敗から環階(ランク)の競争へ戻るはずだ。


それに比べ、ラインは下等資質にすぎない。

長く支援してくれる親族もいなかった。

実戦で同年代を圧倒しても、資質の差まで覆し続けられるはずがない。


ライル、メル、ノアの誰かが先に一環中位へ進む。

そうなれば、精神力の質に差がつく。

月印から放たれる月刃の威力も一段上がる。


そのときこそ、正面からラインを倒せる可能性が生まれる。

人前で一度負けるだけで、「ラインは倒せない」という印象も崩れる。


資質が修練の速さを決めるという常識も証明できる。

ラインが今は最も戦いに強くとも、その常識には逆らえない。

それまで彼が独り占めしていた脚光も、新たな勝者へ移るだろう。


そこまで考え、学堂長老の表情は少し和らいだ。


改めて訓練場を眺めると、生徒たちは三つの輪を作り始めていた。

片隅では、メルが傷めた肩を押さえている。

その周りには、彼の派閥と親しい少年たちが集まっていた。

別の場所では、族長派の少年たちがライルを囲み、小声で話していた。


治療を終えたノアも、訓練場の端へ戻ってきた。

顔色はまだ悪いが、彼の周りにも数人の生徒がいる。

傷を案じる者もいれば、ラインをどう倒すか、腹立たしげに話す者もいた。


(これこそ、競争を許している本当の理由だ)


三つの輪を眺め、学堂長老の機嫌は少しずつ直っていった。


学堂が生徒同士の争いを完全に禁じないのは、戦闘力を鍛えるためだけではない。

人を引きつけ、まとめる者を早めに見つけるためでもある。


例年なら、明確な派閥ができるのは年の後半だ。

今年はラインが霊石を脅し取り続けている。

そのせいで、全員が早くから自分の立場を選ばされていた。


ラインに正面から挑み続けたのは、ライルとメル、そしてノアの三人だけだ。

時が経つにつれ、ほかの少年たちも三人の周りへ集まっていく。

彼らを、ラインに対抗できる中心人物と見るようになった。


まだ不安定な三つの輪は、いずれ一族の勢力図の原型となるかもしれない。

三人が一環中位へ進み、リーダーとサブリーダーの座を得れば、周囲の者も離れにくくなる。


一年後に実戦チームへ入っても、学堂で築いた関係は残る。

チームの中でも、服従と協力の形で受け継がれるだろう。

学堂はこうして、一族を率いる者と従う者を選んでいた。


しかし、どの輪にも属さない者が一人いた。


ラインだ。


彼は訓練場の端に一人で立ち、両手を背中へ回していた。

半ば目を伏せ、ほかの少年が霊石二十個を争う姿を眺めている。

その表情は、少しも変わらなかった。ラインの周りには、誰も近づかない空白が残っていた。


実のところ、彼に付き従おうとした者もいた。

全員を敵に回していても、その強さは人を引きつけた。

臆病な者や、後ろ盾のない者ならなおさらだ。

だが、ラインは差し出された手をすべて拒んでいた。


彼にとって、十四歳の生徒たちは役に立たない。

情報を集めることも、危険な仕事を任せることもできない。

関係を保つ手間をかけるより、全員から恐れられるほうが都合がよかった。


学堂長老には、その孤立こそが、公然と逆らう以上に危険に見えた。

人には親しい仲間や、頼りにする親族がいる。

望む地位も、本人を動かす手段になる。

一族はそうしたものを通じて、その者の選択に影響を与えられる。


だが、ラインは誰も受け入れない。

一族にとっては、彼をつなぎ止めるものが見つからないということだった。


(とはいえ、まだ十四歳だ)


学堂長老は、ゆっくりと眉間の力を抜いた。

今は何のしがらみもなくとも、この先も同じとは限らない。


間もなく、学堂ではリーダーとサブリーダーが正式に選ばれる。

一年後には、この生徒たちも十五歳になる。

実戦チームへ編入され、リーダーや副リーダーを目指す資格を得るだろう。


一族の任務にも関わり始め、家業を継いで管理する権利も手に入れる。

地位に就いた者には、より多くの霊石と修練資源が与えられる。

名誉を得た者は、同年代からも尊敬される。


ラインが修練を続けるかぎり、一族が差し出すものをすべて拒み続けることはできない。

長く共に過ごすうちに、人と人の間には関係も生まれる。

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