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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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43.隠された継承、遅すぎた殺意

前世の記憶を頼りに、ラインはルイスを山壁の下まで案内した。

そこには、岩に隠れるような細い裂け目があった。


記録の精霊は今も、隠し洞窟の岩壁にはまったままだった。

無理に取り外せば、保存された映像を傷つけかねない。

ルイス自身が洞窟へ入り、品物を確かめる必要があった。


二人は前後に並び、岩の裂け目へ身体を滑り込ませた。

道は進むほど狭くなり、周囲も少しずつ闇に包まれていった。


ルイスは、この辺りの地形をまったく知らない。

ラインのあとを追って奥へ進むほど、その表情には警戒が増していった。


道半ばまで来たところで、ついに我慢できず口を開いた。


「一つ、どうしても分からないことがある。オスカーは信用を重んじ、客にも親切に接している。

一方の俺は、先ほどの件で詐欺師扱いだ。

霊石二千個もの取引なのに、なぜあいつではなく俺を選んだ?」


闇の奥から、ラインの声が返ってきた。


「あいつの環階(ランク)が高すぎるからだ。

オスカーがあの映像を見れば、私と取引することもできる。

記録の精霊を奪い、私を族長へ差し出すこともできる」

どちらを選ばれても、今の私には抵抗する力がない」


ラインは足を止めず、そのまま話を続けた。


「自分の生死を、他人の判断に預けるのは嫌いだ。

それに信用とは、利益を得るための商売道具にすぎない。

得られる利益が信用の価値を超えないうちは、誰もが喜んで守る。

だが、誘惑が十分に大きければ、信用が人を縛るとは限らない」


しばらく沈黙が続き、やがてルイスの低い笑い声が聞こえた。

「少なくとも、最後の言葉には心から同意する」


彼の疑いは、すでに大半が消えていた。だが、ラインはもう一つの理由を教えていなかった。


ルイスは一環で、オスカーに押さえつけられた直後だった。

強大で扱いにくい商隊長より、利益で動かしやすい。必要になったとき、始末するのも簡単だった。


二人はさらに進み、ようやく裂け目の向こうへ抜けた。

その先には、山の中へ隠された洞窟が広がっていた。


岩壁の記録の精霊は、今も動き続けていた。

同じ映像を何度も繰り返し、酒飲のカイとローデン一族の四代目族長の争いを映し出していた。


映像を目にした瞬間、ルイスはようやく警戒を解いた。


「本当にあったのか」


彼は岩壁の前まで急ぎ、映像を最初から最後まで見届けた。それからラインへ振り返った。


「英雄とたたえられる四代目族長も、伝説ほど立派な人物ではなかったようだな」


「そんなことは重要ではない」


ラインは平然と答えた。


「ローデン一族には英雄が必要だ。だから、四代目族長は英雄になる

この映像がベル一族やロア一族の手に渡れば、今度は卑劣な敵が必要になる。そうなれば、彼は卑劣な人物として語られる」


「同じ人物でも、その姿は物語を語る者によって変わる」


ルイスは一瞬きょとんとしたあと、声を上げて笑った。

「面白い。その言葉を聞けただけでも、ここまで来た価値はあった」


彼は洞窟の中を見回し、すぐに片隅の白骨へ気づいた。


「あれが酒飲のカイか?」


ルイスは数歩近づき、その目に欲を浮かべた。


「こいつは、かつて五環精霊使いだった。ここを見つけたとき、かなりの物を手に入れたのだろう?」


「長い年月が過ぎている。精霊のほとんどは、すでに死んでいた」


ラインは首を横に振った。


「手に入れたのは、酒虫だけだ」


「ここには俺たちしかいない。隠す必要などないだろう」


ルイスは、まったく信じていない様子だった。


「取引が成立すれば、俺たちは同じ秘密を守ることになる。」

「お前の得た物を、ローデン一族へ話したりはしない」


ラインは、それ以上説明しなかった。どれほど答えても、欲に目がくらんだ者は納得しない。

何も得ていないと言ったところで、隠し方がうまいと思われるだけだ。


ルイスは沈黙するラインから目を離し、改めて洞窟を見回した。


「少なくとも、一つだけ消えるはずのない物がある」


「何だ?」


「疾走(しっそう)オオカミグモだ」


ルイスの声には、自分の知識を誇る響きがあった。


「五環の騎乗用精霊で、巨大な身体を持っている。特に地中へ道を掘ることに優れた精霊だ

酒飲のカイは何度もこいつを使い、各勢力の包囲から逃げ延びた」


ラインは、わずかに眉を寄せた。

酒飲のカイについて、すべてを知っているわけではない。前世でも、疾走オオカミグモの話は聞いたことがなかった。


「その情報は信用できるのか?」


「去年ヴェルデン山を通ったとき、地元の者から酒飲のカイの噂を聞いた。商会へ戻ってから、わざわざ調べてもいる」


ルイスは周囲の岩壁を指さした。


「ヴェルデン山の内部には、粘り気の強い青い粘土が多い。

これほど形の整った天然洞窟は、めったにできない。

この洞窟は、疾走オオカミグモが掘った可能性が高い。

酒飲のカイがここで死んだのなら、オオカミグモも残っているはずだ」


ラインは洞窟全体を見回した。

ここへ入るために通った裂け目は、あまりにも狭い。大人でさえ、身体を横にしなければ通れなかった。


巨大な五環のオオカミグモが、あそこから出られるはずがない。

洞窟の中に、ほかの出口も見当たらなかった。


「疾走オオカミグモは、四代目族長に殺されたのかもしれない」


ラインは岩壁に映る映像へ目を向けた。


「記録に残る最後の戦いで、酒飲のカイは一度もオオカミグモを呼び出していない。

戦いの前に、すでに倒されていた可能性がある」


「なら、この洞窟はどうやって造った?」


ルイスが問い返した。


「オオカミグモが掘ったのなら、その死骸が残っているはずだ。

オオカミグモの死後に掘ったなら、カイは山中を移動する別の手段を持っていたことになる」


二人は同時に口を閉ざした。


ラインは、改めて洞窟の構造を調べ始めた。

ルイスの情報は、これまで見落としていた疑問を浮かび上がらせた。


ここには、別の通路が隠されているのかもしれない。あるいは、さらに奥に秘密の空間が存在する。


岩壁の記録の精霊は、変わらず同じ映像を流していた。

ラインは内容を確かめるため、これまで何度も起動していた。


そして今回、再生回数がちょうど百回に達した。


最初から繰り返されるはずだった映像が、突然大きく揺らいだ。


これまでの光景がすべて消えた。

代わりに現れたのは、全身に深い傷を負った、髪のない精霊使いだった。


男は地面へ座り込み、背中を岩壁に預けていた。胸や手足には、無数の傷が刻まれていた。


めくれた肉から流れる血は、あまりにも少ない。全身の血液が、ほとんど尽きているようだった。


男は顔を上げ、青白い顔に不気味な笑みを浮かべた。


「俺が、酒飲のカイだ」


記録の精霊から声が響き、閉ざされた洞窟の中で何度も反響した。


「後からここへ来た者よ。お前が誰であろうと、この映像を累計で百回も再生した。

それは、ローデン一族に大した敬意を持っていない証拠だ。

実にいい!お前には、俺の遺産を継ぐ資格がある!」


ルイスは大きく目を見開いた。映像の中で、酒飲のカイはさらに続けた。


「真の遺産を、俺はここに残した。ただし、それを得るには一つの条件を受け入れなければならない」


「ローデン一族を滅ぼせ、一族の者を、誰一人として生かしておくな」


映像は酒飲のカイの笑みを最後に停止し、洞窟は静寂に包まれた。


「本物の五環精霊使いの遺産……」


ルイスは岩壁を見つめたまま、次第に呼吸を荒くしていった。


末等資質の彼にとって、五環精霊使いの遺産は人生を丸ごと変えられる。

資質を高める精霊が、残されているかもしれない。

環階(ランク)を一気に高める資源が、眠っている可能性もある。


この力を手にすれば、もうオスカーを見上げる必要はない。


ローデン一族を滅ぼせという条件など、ルイスは気にも留めなかった。

酒飲のカイは、とうの昔に死んでいる。遺産だけを持ち去り、死人の願いなど無視すればいい。


だが、洞窟にはもう一人いた。


ルイスの視線が、ゆっくりとラインへ向いた。


二人で遺産を見つけた以上、利益を分ける必要がある。

秘密が漏れる危険も、二人で背負わなければならない。


それなら、ラインを殺したほうが簡単だった。


ここは集落から遠く、ほかに目撃者もいない。

まずは協力するふりをして、ラインが油断したところで襲えばいい、そうすれば、遺産を独り占めできる。


わずかな間に、欲望がルイスの答えを決めていた。


ルイスは目を細め、再び笑みを浮かべた。ゆっくりと身体をラインへ向け、口を開こうとした。


その顔へ、青く光る二枚の月刃が飛んできた。


隠された遺産が現れた瞬間から、ラインはルイスの動きを見張っていた。


荒い呼吸も、ラインの首へ向いた視線も、腰へ伸びる右手も、すべて殺意を示していた。


二人の距離はあまりにも近い。

ルイスに、月刃を避ける時間などなかった、二枚の月刃が、続けてその首へ命中した。


鮮血が飛び散り、ルイスの声は途中で途切れた。

頭が地面を転がり、少し遅れて首のない身体も岩壁のそばへ倒れ込んだ。


洞窟は、再び静けさを取り戻した。


ラインは死体を一度だけ見て、淡々と言った。


「殺すと決めたなら、考え込まずに動くべきだったな」


すぐに死体から目を離し、岩壁の記録の精霊へ向き直った。

売るつもりだった映像に、酒飲のカイの真の遺産が隠されていた。


「これは予想外だったな」


ラインは目を細めた。


「面白い」


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