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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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41.用意された来歴、露わになる綻び

昨夜、宿舎で開けた最後の化石からは、何も出なかった。

だが、その結果を知っているのはラインだけだ。

酒虫の来歴を説明する口実は、これで整った。


翌日の昼、ラインは昼休みを使い、市場へ向かった。


最初に向かったのは、昨日、心草を売っていた場所だった。

しかし、そこには空の荷車しか残っていない。

荷車を引く大きな荷鳥が、のんびり羽を整えていた。


「一足遅かったか」


心草をまとめて買えば、月印の餌代をもう少し抑えられた。

それでも、売り切れたものに未練を残しても仕方がない。

ラインは足を止めず、その場を離れた。


少し先では、青いテントの前に立った奉公人が客を呼び込んでいた。


「ミードにライ麦の蒸留酒、花苺の果実酒、熟成ワイン、

山奥で造られた猿果酒もあります!

百種類を超える酒を、ぜひお試しください!」


ラインは進む方向を変え、そのテントへ入った。


酒屋の中は、風変わりな造りになっていた。

陶器の壺ほどもある水晶テントウムシが、内壁に何十匹も張りついている。

透明な腹の中には、色とりどりの酒が満たされていた。


床には、鮮やかな色の天真キノコが群れをなしていた。

大きなものはテーブル、小さなものは椅子として使われている。


天真キノコは植物系の精霊で、埃や臭いを吸収する。

商隊では、テント内の空気を清めるためによく使われていた。


ラインはキノコのテーブルについた。


「猿果酒一杯」


奉公人が注文をカウンターへ伝えた。

酒を管理する一環精霊使いは、目当ての水晶テントウムシに少量の精神力を注いだ。


すると、水晶テントウムシが口を開き、金色の酒を木のカップへ注ぎ始めた。


猿果酒は果実の香りが濃く、口当たりも柔らかかった。

甘みも強い。

ラインは一口だけ飲み、酒虫を空界から呼び出した。


白い光がカップへ落ちた。

丸々と太った酒虫は酒の中で転がり、たちまち一滴残らず飲み干した。


「酒虫(しゅちゅう)?」


カウンターの向こうにいた精霊使いは、一目で正体を見抜いた。

その目に、隠しきれない熱が宿った。


彼は末等資質で、長年一環から抜け出せずにいた。

修練を助ける精霊を求めて商隊と共に旅をしている彼にとって、酒虫は願ってもない品だった。


「お客様、少々お待ちください」


男は急いでラインの前までやって来た。


「その酒虫を、譲っていただけませんか?

値段はご相談のうえ、十分な額をお支払いします」


「売らない」


ラインは酒虫を空界へ戻すと、そのまま立ち上がった。


男はテントの入口まで追い、なおも交渉を続けようとした。

しかし、ラインが足を止めることはなかった。

男は残念そうに、その背中を見送るしかなかった。


目撃者は、これでできた。

あとは噂が自然に広がるのを待てばいい。

自分から言い触らせば、かえって疑われかねない。


その日の夜、ラインは再び市場へ足を運んだ。


商隊がここに滞在するのは三日間だけだ。

二日目の夜を迎えた市場は、昼間の数倍もの客であふれていた。

昨夜、化石カジノで起きた出来事も、すでに集落の大半へ知れ渡っていた。


「霊石十個で買った化石から、翠玉蝶が出たらしいぞ」


「その翠玉蝶は、五百個で売れたそうだ」


「知っていたら、俺も昨日いくつか買ったのに」


ラインは噂を聞きながら歩いたが、酒虫の話は一度も耳にしなかった。


それも予想の範囲内だった。

酒虫は一環精霊使いにしか役立たず、実力者の興味を引くほどではない。

人前へ出したばかりなのだから、噂がまだ広がっていなくても不思議はなかった。


そのとき、前方の人波が突然、暗い赤色のテントへ押し寄せた。


「偽物の精霊を売りつけたらしいぞ!」


「騙されたのは、ローデン一族の人だ!」


「見に行こう!」


ラインも人の流れに乗り、テントの前まで進んだ。

入口は見物人で埋め尽くされていた。

中央には若い二環精霊使いが立ち、黒く太った虫を握っていた。


その向かいにいたのは、化石カジノの経営者、ルイス・ベルナーだった。


若い精霊使いは虫を高く掲げ、周囲へ向かって声を張り上げた。


「昨日、ベルナー商会はこいつを霊石二百五十個で俺に売った!

黒イノシシの精霊で、使った者の力を永久に高めるという説明だった!」


「だが、錬化して分かった。

こいつは黒イノシシの精霊なんかじゃない。

ただ悪臭を放つの太虫だ!」


周囲から、怒りに満ちた声が上がった。

しかし、ルイスは少しも慌てなかった。


「私がいつ、黒イノシシの精霊だと言った?

契約書でもあるのか。

それとも、取引の内容を証明できる者がいるのか?」


「お前!」


若い精霊使いが、ルイスの腕をつかんだ。


「俺が誤解するように、わざと仕向けただろう!」


「放せ」


ルイスはその手を振り払った。


「安さに目がくらみ、自分で精霊を見誤った。

それを商会の責任にするつもりか?」


ルイスは、黒く太虫を指さした。


「本物の黒イノシシの精霊なら、肉体を永久に強化できる。

相場は霊石六百個以上だ。

なぜ二百五十個で買えると思った?」


若い精霊使いは顔を真っ赤にしたが、言い返せなかった。

周囲のローデン一族の者たちは怒っていた。

それでも、すぐに手を出す者はいなかった。


ルイスは商隊長オスカーの異母弟だ。

そのオスカーは、四環精霊使いでもある。

ルイスも、そのことをよく分かっていた。


「数で囲めば、私が金を返すと思ったか?」


ルイスは周囲を見回した。


「ベルナー商会は、そんな脅しには屈しない。

我々が取引の決まりを破ったと思うなら、兄に直接訴えればいい。

兄も商隊の中にいる」


「ここで何があった?」


人垣の外から、よく響く太い声が届いた。


見物人たちは、すぐに道を空けた。

黄土色の商会コートを着たオスカー・ベルナーが歩いてきた。

背は低く、体つきはがっしりしている。


オスカーは現場を見回し、最後にルイスと黒い太虫へ目を止めた。


「オスカー様」


若い精霊使いは怒りを抑え、頭を下げた。


一方、ルイスはその場で硬直していた。

先ほどまで余裕を崩さなかった顔から、血の気が引いていく。

その目には、わずかな動揺まで浮かんでいた。


人垣の後ろにいたラインは、その小さな変化を見逃さなかった。

どうやら、ルイスが本当に恐れる相手は、怒ったローデン一族の者たちではない。


たった今、姿を見せた兄のほうだった。

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― 新着の感想 ―
この話の冒頭部分が前回の話と結構な量重なっているので投稿時のミスなら直したほうがいいと思います。 意図したことなら余計な指摘すみませんでした。
前半部分が前話とほぼ同じなんですけど…
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