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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 朱色の豚
外道の本性

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28.弟を守る姉、南域を望む外道

(七日間も休まず基礎を鍛えた。)

(それなのに、ラインとは二度も攻撃を交わさないうちに、また気絶させられた……)


ノア・ローデンは、考えれば考えるほど屈辱がこみ上げてきた。

屋敷の裏にある訓練場で、木製の訓練人形へ何度も拳を叩き込む。


重い音が続けて響く中、背後から小さな笑い声が聞こえてきた。


「その訓練人形に、いったいどんな恨みがあるの? そこまで痛めつけなくてもいいでしょう」


聞き慣れた声に、ノアの顔から怒りが消えた。

すぐに振り返り、驚きと喜びの混じった声を上げる。


「姉さん、帰ってきたのか!」


「一族から任された偵察任務が終わったの。今日、戻ったばかりよ」


リリアは笑いながら弟へ近づいた。

彼女はノアの実の姉で、すでに二環中位へ達している。


だが、弟の顔に残る痣を見つけた瞬間、その笑みは消えた。


「その傷、どうしたの? 誰にやられた?」


「誰にもやられてない。歩いている途中で、うっかり転んだだけだ」


ノアは視線を逸らし、適当な嘘をついた。


コア派の後継者と見なされている自分が、

わずか七日の間に、同じ下等資質の生徒から二度も気絶させられた。

そんな事実を、どうしても認めたくなかったのだ。


被害に遭ったのはノアだけではない。

他の生徒たちも、ラインにはまるで歯が立たなかった。


しかし、それを考えても気分は少しも楽にならない。


最初の敗北なら、油断していたと言い訳できる。

だが二度目は、七日間も練習を重ね、十分に準備したうえで、ほとんど何もできずに倒された。


真相を姉に知られれば、弟に甘いリリアのことだ。

そのままラインのもとへ乗り込んでいくかもしれない。


リリアはしばらくノアの顔を見つめていたが、それ以上は追及しなかった。


「練習するときは、せめて手首と拳にバンデージを巻きなさい」

「あなたはまだ身体を強化する精霊を持っていないの。このまま殴り続けたら、先に壊れるのは訓練人形ではなく、あなたの手よ」


それだけ言い残し、リリアは訓練場を離れた。


屋敷の中を歩いていくと、途中で出会った使用人たちが作業を止め、次々と頭を下げる。


「お帰りなさいませ、リリア様」


リリアは彼らへ目も向けず、屋敷の奥にある書斎へ向かった。


扉をノックすることもなく中へ入る。

コア・ローデンはヴェルデン山の地図を前に立ち、羽根ペンで魔狼の巣をいくつか書き込んでいた。


「帰ったか」


コアは振り返らないまま尋ねた。


「向こうの様子はどうだった?」


「どうして私だと分かったの?」


「この屋敷で、ノックもせず私の書斎へ入ってくるのは、お前だけだ。他に誰がいる」


口調には呆れが混じっていたが、振り返ったコアの顔に怒りはなかった。


リリアも気にせず、地図の前まで歩いていく。


「巣は、そろそろ収容できる限界に近づいているわ」

「今の繁殖速度なら今年は問題ないけれど、来年は大規模な群れが村を襲う可能性が高い」


リリアは机の上に置かれていた菓子へ目を向け、勝手に一つ手に取った。


「祖父はいつも私がルールを守らないと言うけれど、本当は一番甘やかしているでしょう?」


菓子を口へ運びながら、彼女は楽しそうに続ける。


「でも、本当に手をかけているのはノアのほうよね」

「あの子には派閥を継がせるつもりだから、甘やかしているところを絶対に見せないだけで」


「分かっているなら、それでいい」


コアは困ったように孫娘を見たあと、再び地図へ視線を戻した。


「雷冠巨狼は何頭いた?」


「今のところ、確認できたのは三頭よ」


コアはわずかに表情を緩めた。


雷冠巨狼は、魔狼の群れを率いる最も危険な個体だ。

ヴェルデン山には大きな村が三つあるため、来年の襲撃が三方へ分かれれば、それぞれの村が相手をするのは一頭ほどになる。


その程度なら、まだ防衛できる範囲だった。


「引き続き監視を続けろ。刺激して巣から追い出すな」


コアは羽根ペンを動かし、三つの巣の横へ印をつけた。


「冬になって餌が減れば、魔狼が予想より早く移動を始める可能性もある」

「鉱山と薬草の谷へ続く道も、もう一度確認しておけ。」

「移動の兆候が見つかれば、キャラバンが来る前に山道を封鎖する必要がある」


リリアはうなずいた。


この偵察任務は、来年の村の防衛に関わっている。

彼女が半月以上も山を歩き回ったのは、狼の数と、移動に使う可能性のある道を確認するためだった。


報告を終えると、リリアはすぐに話題を戻した。


「それで、ノアの顔にある傷のことを教えてくれる?」


コアは書斎の椅子へ座り、落ち着いた声で答えた。


「あれは転んでできた傷ではない」

「学堂の門前で、同じ相手に二度も気絶させられたのだ。一度目は七日前、二度目は今日だ」


「誰にそんな度胸があるの?」


「同じ学堂に通うラインだ」


コアは怒るどころか、楽しそうに笑った。


「なかなか見事なものだったぞ」


リリアは信じられないように祖父を見つめた。


「ノアは祖父の実の孫でしょう!」


「実の孫であり、コア派を継ぐ者だからこそ、私がすべての敵を片づけてやるわけにはいかん」


コアは笑みを消し、まっすぐリリアを見た。


「敗北と屈辱は、自分の弱さを嫌でも見せつけてくる」

「ノアは目を覚ますと、すぐに護衛から接近戦を学び始めた。」

「それだけでも、今回の敗北には意味があった」


「ラインは一族からの支援を受けていない、下等資質の生徒にすぎん」

「それに対して、ノアには中等資質があり、我々が与える資源もある」


コアの声が、少しずつ厳しくなっていく。


「その程度の相手にさえ姉の助けが必要なら、将来どうやって派閥全体を率いるつもりだ?」


「でも――」


「ラインは、ノアに任せろ」


コアは彼女の言葉を遮った。


「お前はすでに二環中位だ。入学したばかりの一環精霊使いへ直接手を出せば、他の派閥から負けを認められない連中だと笑われるだけだ」


「ノアが暗殺されそうになったなら、守ってやればいい」

「だが、公の場で行われる勝負まで、お前が代わりに勝ってやることはできない。分かるな?」


さらに重要な問題があった。


リリアが先にルールを破れば、他の派閥の大人たちにも、子供同士の争いへ介入する理由を与えてしまう。

今日リリアがノアのためにラインを罰すれば、明日は誰かが同じ理由を使ってノアを狙うかもしれない。


そうなれば、コア派には相手を止める立場がなくなる。


コアは窓の外へ指を向けた。

そこでは今も、ノアが訓練人形へ拳を打ち込んでいる。


「後継者が、いつまでも一族に障害を取り除いてもらうわけにはいかん」

「追いかける相手を持ち、自分の力で追いつき、最後には乗り越えることを学ばなければならない」


「ノアがラインさえ倒せないのなら、まだ私の持つ権力を受け継ぐ資格がないということだ」


リリアはしばらく黙っていたが、やがて小さく頭を下げた。


「分かったわ、祖父」


書斎を出た彼女の表情は、いつもと変わらず落ち着いていた。

しかし心の中では、すでに別の考えが生まれている。


祖父には後継者を育てる方法があり、自分には弟を守る方法がある。


ラインへ直接手を出すつもりはなかった。

だからといって、何もできないわけではない。


自分が戦わなければ、ルールを破ったことにはならない。

ラインと話をして警告を与えることも、他の誰かに実力を確かめさせることもできる。


あの少年をノアから遠ざける方法など、いくらでもあるはずだった。



夕方、ラインは宿屋の一階にある食堂で食事を取っていた。


窓の外では、夕日がすでに山の向こうへ沈みかけている。

通りを行く人々も、それぞれの家へ帰り始めていた。


畑仕事を終えた農民、薬草袋を背負った採集者、仕留めた獲物を担ぐ狩人。

その中に混じり、何人かの精霊使いも通りを歩いている。


彼らの多くは動きやすい戦闘服を着ており、腰には環階を示すベルトを巻いていた。


木材を満載した荷馬車が、ゆっくりと通りを横切る。

その横を、巡回から戻ってきた守衛たちが歩いていった。手にした武器には、まだ拭き取られていない魔獣の血が残っている。


一見すると、村はどこまでも平穏だった。


しかし実際には、毎日のように誰かが山へ入り、狩りや採集を行っている。

鉱山や薬草の採集地を守る者も多いため、通りで精霊使いを見かける機会は、普通の町よりはるかに多かった。


一環精霊使いが身につけるのは、青色のベルトだった。

中央には青銅製のバックルがあり、その表面に一つの輪が刻まれている。


二環精霊使いのベルトは暗赤色で、鉄製のバックルには二つの重なった輪が刻まれていた。

本人を知らなくても、それを見ればおおよその実力を判断できる。


ラインはしばらく通りを観察し、六、七人の一環精霊使いと、一人の二環精霊使いを見つけた。


三環まで進めば、普通は一族の長老へ加わる。

四環ともなれば族長となり、一つの村を支配できるほどの力を持つ。


五環に至っては、ローデン一族の長い歴史でも、わずか二人しか現れていなかった。


一族全体の実力を判断するのは、それほど難しいことではない。


村の中をしばらく観察し、一般人と低環の精霊使い、

そして高環の精霊使いがどの程度の割合で存在するかを調べる。

それだけで、その一族がどれほどの人口と資源を支配できるのか、おおよその見当がつく。


ローデン村では、通りを歩く二十人のうち、およそ六人が精霊使いだった。

さらに、その中には一定の割合で二環精霊使いも混じっている。


これだけの戦力を持つローデン一族は、ヴェルデン山でも特に重要な資源地帯の一つを支配していた。

周辺にある三つの一族の中でも、最も大きな力を持っている。


山中の霊石鉱山、希少な薬草の採集地、そして安全に通行できるいくつかの交易路。

その多くは、三つの一族によって分けられていた。


ローデン一族が最も豊かな地域を占めているのは、名声があるからではない。

代々の精霊使いたちが積み重ねてきた武力が、それを可能にしていた。


だが、広大な南域全体から見れば、この程度の力は珍しくもない。


(今の私は、まだ一環初位にすぎない。ヴェルデン山を一人で出る資格さえない)

(安全に南域を旅するには、少なくとも三環まで進む必要がある)


南域は広く、村や町の間には長い荒野が広がっている。

そこには魔獣だけでなく、旅人を襲って生きる盗賊や、どの一族にも属さない流れの精霊使いもいた。


一環では、一族の保護を離れて行動できない。

二環になればキャラバンへ加わることはできるが、単独で長い旅をするには力が足りなかった。


誰にも頼らず遠くへ向かえるのは、三環に達してからだ。


ラインは料理を一口食べ、暗くなり始めた通りの向こうにある山々へ目を向けた。


ヴェルデン山は、彼の目的を収めるにはあまりにも小さい。

いずれ必ず、この場所を離れることになる。


ただ、今はまだその時ではなかった。


「ははっ。ライン・ローデン、ようやく見つけたぞ」


嘲るような声が、横から聞こえてきた。


ラインが顔を向けると、背の高い中年の男がテーブルへ近づいてくる。

日に焼けた黄褐色の肌と、吊り上がった眉。

太く鍛えられた両腕を胸の前で組み、ラインを見下ろしていた。


「何の用だ?」


男は鼻で笑った。


「自分がどれほど厄介な相手を敵に回したか、まだ分かっていないようだな」

「俺たちのノア様を二度も傷つけたそうじゃないか」


男は半歩前へ出た。


「リリア様も、そのことを知った。今は人を使い、お前の居場所を捜している」

「ライン、お前は大変なことになったぞ」


その瞬間、成人した精霊使いが放つ威圧感が、ラインを正面から覆った。


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