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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 朱色の豚
外道の本性

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26.痛めつけすぎず、奪いすぎず

「なぜ止める必要がある?」

学堂長老は眉を上げ、笑いながら遠くにいるラインを指さした。


「この少年はすでに、すべてを自分の支配下に置いている。」

「攻撃するときも、きちんと力を抑えているだろう」


「首を狙うときは必ず左右から打ち、後頭部や首の後ろには決して手を出さない。」

「左右を打てば相手を気絶させられるが、後ろから強く打てば命に関わると知っているからだ」


長老は地面に倒れている生徒たちへ目を向けた。

「見てみろ。あの中に大怪我をしている者が一人でもいるか? 誰もいないではないか」

「仮に怪我人が出たところで、学堂には治療を得意とする精霊使いがいる。」

「この程度の打ち身や傷なら、すぐに治せる」


「しかし長老様、この少年はいくらなんでも勝手がすぎます」

一人の護衛が目を細め、慎重に言葉を選びながら進言した。


「学堂の門を塞ぎ、我々の目の前で堂々と霊石を脅し取っています。」

「まるで護衛など存在しないかのような振る舞いです」

「我々が無視されるだけなら構いません。」


「しかし、これを知った一族の者たちは、学堂をどう見るでしょうか」

「たった一人の末等資質の生徒に好き勝手させたとなれば、長老様の評判にも影響するかもしれません」


「ふん。結局は、あの少年に無視されて、自分たちの面目を潰されたと思っているだけだろう?」

学堂長老は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

刃のように鋭い視線で見回され、護衛たちは一斉に頭を下げる。


「そのようなつもりはございません!」


「喧嘩の何が悪い?」

長老の声が冷たく響いた。


「命さえ失わなければ、生徒たちの競争心を刺激し、戦う意志を鍛えることができる」

「それを我々が禁止すれば、生徒たちの戦う気持ちまで潰すことになる。」

「これまでの生徒たちが、喧嘩をしなかったとでも思っているのか?」


どの年にも生徒同士の争いはあり、その回数も決して少なくなかった。

ただし多くの場合は、修練が進んだ年の後半に起きていた。


少年たちは戦う手段と力を手に入れると、それを試したくなる。

もともと血気盛んな年頃でもあり、わずかなきっかけさえあれば、すぐに殴り合いへ発展した。


「それなら、なぜ今まで止めなかった?」


「例年は一対一の争いが多く、これほど大きな騒ぎにはなりませんでした。」

「それにしても、ラインはあまりにも騒ぎを起こしすぎです」


護衛長がそう答えると、学堂長老はゆっくりと首を振った。

「違う。お前たちは、止めなかったのではない。止められなかったのだ」


「年の後半ともなれば、精霊使いは普通の人間を越える力を手に入れる。」

「精霊すら持たぬお前たちが、何を使って止めるというのだ?」

長老は一度言葉を切り、護衛たちを冷たく見下ろした。


「今になってラインを止めようとするのは、修練を始めたばかりで力が弱いと思っているからだ」

「そのうえ、自分たちを無視したことで、面目を潰されたと感じている」


長老の声が、急に厳しさを増した。

「よく覚えておけ。学堂の生徒は全員、ローデンの姓を持つ我が一族の者だ」

「どれほど幼く、どれほど力が弱くとも、お前たちの主人であることに変わりはない!」


護衛たちの体が一斉に震えた。

「ローデンの姓も持たぬお前たちが、何様のつもりだ?」

「多少の忠義を見せるから、護衛という役目を与え、いくらかの利益を恵んでやっているにすぎん」


学堂長老の顔は暗く、声には隠しようのない怒りがこもっていた。

「所詮、お前たちはただの下僕だ。下僕にすぎん!」

「その下僕が主人を批判し、主人のすることに口を出すつもりか?」


「そのようなつもりではございません!」

「お許しください! 決してそのようなつもりは!」


護衛たちは顔から血の気を失い、次々と床へひざまずいた。

額を床に打ちつけ、何度も許しを求める。


学堂長老は冷たく鼻を鳴らし、先ほどラインを騒がしすぎると評した護衛長を指さした。

「主人である一族の者を勝手に批判した。お前から護衛長の役目を取り上げる」


そこで少し間を置き、他の護衛たちへ告げる。

「半月後、新たな護衛長を選ぶ試験を行う」


他の護衛たちの目が、一斉に輝いた。

先ほどまでの恐怖は消え、代わりに期待が胸の中から湧き上がる。


(護衛長になれば、毎月霊石を半個多く受け取れる!)

(主人である一族の者は別として、他の護衛たちより上に立てるぞ)

(私が護衛長になれば、どれほど威張れることか……)


「いつまでここに突っ立っている! さっさと下へ行け!」

「喧嘩が終わったら、すぐに生徒たちを運び、門の前を片づけろ!」


「は、はい!」

「失礼いたします!」

護衛たちは怯えた様子で上階を離れた。

階段を下りている途中、誰かが足を踏み外し、それに巻き込まれて何人もの護衛が次々と転倒する。


しかし、学堂長老を恐れるあまり、誰も声を上げなかった。

顔を真っ赤にしながら痛みに耐え、歯を食いしばって立ち上がる。


(下僕など犬と同じだ。時々叩いて、誰が主人なのかを思い知らせる必要がある)

(そのうえで小さな利益という骨を投げ、互いに争わせ、一族のために働かせる。いわゆる飴と鞭こそ、上に立つ者が人を使う方法だ)


階下の物音を聞きながら、学堂長老は満足そうに笑った。

再び窓へ向き直り、学堂の門を見下ろす。


門の前には、さらに十人以上の生徒が倒れていた。


ラインはその中心で堂々と立ち、向かい側では三人の少女が背中を合わせ、隅へ追い詰められている。

「こ、こっちに来ないで!」

「これ以上近づいたら、月刃を撃つから!」


三人の掌には、水色の光が浮かんでいた。

追い詰められた末に精神力を使い、月印を動かそうとしている。


ラインの体は、今のところ普通の十五歳の少年と変わらない。

本当に月刃を撃たれれば、簡単には対処できなかった。


しかし、ラインに恐れる様子はなかった。

少女たちを鼻で笑い、ゆっくりと距離を詰めていく。


「ずいぶん度胸があるな。学堂の規則を忘れたのか?」

「学堂内で、精霊を使って争うことは禁止されている。破れば退学処分だ」

「学堂を追い出されたいのなら、好きに撃てばいい」


「それは……」

少女たちの顔に迷いが浮かんだ。


「確かに、そんな規則があったよね……」

掌を覆っていた水色の光が、少しずつ消えていく。


ラインの目に鋭い光が走った。

その隙を逃さず一気に踏み込み、手刀を続けて振るう。


二人の少女は首を打たれ、その場で意識を失った。


残された一人は完全に戦う気をなくしていた。

膝から力が抜け、その場に座り込むと、涙を流しながらラインへ懇願する。


「ライン、お願い……こっちに来ないで。許して、お願いだから……」

ラインは少女の前に立ち、冷たい目で見下ろした。


「霊石一個」


少女の体が大きく震えた。

ようやくラインの目的を思い出し、慌てて財布を開ける。


三、四個の霊石を取り出すと、すべて掌に載せ、ラインへ差し出した。

「打たないで。全部あげるから、全部持っていって!」


ラインは無表情のまま、ゆっくりと右手を伸ばした。

人差し指と親指で、少女の掌から霊石を一個だけつまみ上げる。


少女の震えは止まらなかった。


ラインの手は、十五歳の少年らしく白く細い。

しかし彼女の目には、恐ろしい魔物の爪のように映っていた。


「初めから、取るのは一個だけだと言ったはずだ」

ラインは一度言葉を切り、何事もなかったように続ける。


「もう行っていい」


少女はしばらく呆然とラインを見上げていた。

やがて立ち上がろうとしたが、手足に力が入らず、地面から腰を上げることさえできない。


すでに彼女の心は、ラインへの恐怖で満たされていた。

怖さのあまり、体を動かす力まで失っている。


学堂長老はその光景を見て、思わず首を振った。

今回の騒ぎを通じて、生徒たちの戦いに対する適性を見ることも、彼が止めなかった理由の一つだった。


座り込んでいる少女は下等資質を持っている。

しかし、この精神の弱さでは後方支援の精霊使いにしかなれず、

一族内で生産に関わる仕事をさせるべきだろう。


戦場へ出すことなど、とても期待できなかった。

「それにしても、ラインか……」


学堂長老は顎をなで、目を細めた。

その瞳の奥に、興味深そうな光が浮かぶ。


ラインは戦いの才能があるだけでなく、どこまでなら許されるかも理解していた。

一人から奪う霊石を一個に抑え、長老が許せる範囲を越えていない。


もし二個ずつ奪おうとしたなら、それはやりすぎだった。

その場合は、長老も騒ぎを止めるつもりでいた。


学堂から支給される霊石は、もともと一人三個しかない。

そのうち一個を奪われても大きな問題にはならないが、

二個まで奪われれば、支給する意味がなくなってしまう。


それなら最初から、すべてラインに渡したほうが早い。


間もなく、最後の生徒たちが門の前へやって来た。

全部で五人、その中にはラインの双子の弟であるライルもいた。


「兄さん、どうしてこんなことをするんだ!」

「学堂の門で他の生徒を殴り、霊石まで脅し取るなんて、いくらなんでもやりすぎだよ!」


ライルは目の前の光景に呆然としていた。

自分の兄が、これほど大胆なことをするとは信じられない。


「僕は、今すぐ自分から学堂長老に謝ったほうがいいと思う」

「これだけの騒ぎを起こしたんだ。冗談では済まされないし、退学させられるかもしれないよ!」


ラインは小さく笑った。

「もっともな話だ」


ライルはほっと息をついた。

兄はまだ完全におかしくなったわけではなく、話を聞く余地が残っているらしい。


しかし、その直後にラインが続けた言葉を聞き、表情を固めた。


「一人につき霊石一個だ」


「えっ?」

ライルは驚き、大きく口を開けた。

「僕も払わないといけないの?」


「私のかわいい弟なのだから、もちろん払わなくても構わない」

ラインの声は、とても穏やかだった。

「ただし、地面に転がっている連中と同じ目に遭うことになる」

ラインは、気を失ったり、痛みにうめいたりしている少年たちを指さした。


「実の弟からも取るのかよ!」

「ラインは本当におかしくなった。あまりにも容赦がなさすぎる……」

「俺たちでは勝てない。今は逆らわず、霊石を渡したほうがいい」

「そうだな。たった一個だ。あとで長老や家の大人たちに報告すれば、必ず罰を受けるさ」

先に倒された者たちを見ていた五人は、不満を隠そうともせず、霊石を一個ずつ差し出した。


「待て」

立ち去ろうとしたところで、ラインに呼び止められる。


「ライン、約束を破るつもりか?」

少年たちの顔に緊張が走った。


ラインは地面を埋める少年たちを眺め、軽くため息をつく。

「まさか私が、自分で一人ずつしゃがんで、財布を探すと思っているのか?」


五人は一瞬、意味が分からずに固まった。

やがて何を求められているのか理解し、顔を赤くしながら、その場に立ち尽くす。


ラインは目を細め、五人を見つめた。

細められた目の奥に冷たい光が走り、五人の背筋に一斉に寒気が走る。


「分かったよ、ライン。言いたいことは分かった」

「今回だけだからな……」


ラインに逆らう勇気もなく、五人は仕方なく頭を下げた。

地面に倒れている少年たちの財布を探し、その中から霊石を一個ずつ取り出していく。


集めた霊石は一か所にまとめられ、すべてラインへ渡された。


学堂の生徒は全部で五十七人。

ライン自身を除く全員から一個ずつ奪ったため、彼の手には五十六個の霊石が集まった。


ラインはもともと霊石二十個を持っていたが、青竹酒の入った徳利を五本買うために十個を使っている。

そこへ自分の支給分三個と、月刃試験の褒賞十個が加わった。


さらに今奪った五十六個を合わせ、手持ちの霊石は合計七十九個になった。


「強盗と脅しほど、元手のいらない商売はないな」

急に重くなった財布を懐へしまい、ラインは堂々とその場を立ち去った。


あとに残されたのは、地面を埋める大勢の少年たち。

そしてライルを含む数人の生徒は、遠ざかっていくラインの背中を呆然と見送っていた。


「急げ!」

「若様方を丁寧に運べ。絶対に雑に扱うな!」

「治療のできる精霊使いはどこだ? 早く呼んでこい!」


護衛たちは大声を上げながら、一斉に門の前へ駆け寄った。

わずかな護衛長の座を手に入れるため、誰もが先を争うように働いていた。

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