↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/176

174.夜陰に蓮を狙い、映像から真意を探る

「そろそろ頃合いだ。もう待てない」


とうに夜の帳が下りていた。

暗い部屋の中で、ラインは目を開けた。


精霊使いの服はすでに脱ぎ、足元まで隠れる黒い長衣に着替えていた。

伸ばした黒髪と相まって、夜闇を歩けば、伝説の幽霊さながらに見えるだろう。


長い髪は、外見を変えるのに便利だった。

必要なら、短く切ればよい。

逆に、短い髪をすぐに伸ばすには、精霊の力を借りるしかなかった。


先日、コアと取り決めを交わした。

その後、鉄華(てっか)と四万個の霊石は、何度かに分けて手元へ届いた。

だが、あの治療用の草の精霊だけは、まだ受け取れていなかった。


「治療精霊が手に入らなくとも、仕方がない。世の中、すべてが思いどおりに運ぶはずもない。現実には、どうにもならないことがある……」


ラインはため息をつきながら立ち上がり、静かに戸を開けた。

隠鱗虫(いんりんむし)を働かせ、夜の中へ消えた。


情勢に追い立てられ、動かざるを得なかったのだ。


シュタール父娘は、一歩一歩迫っていた。

ロア一族への使者となる計画も、阻まれた。


ロア一族が戦力の大部分を温存していたため、ベル一族とローデン一族も、過度に追い詰めることはできなかった。

賠償交渉はまとまらず、三族は代わりに、三族大武闘会を開くことにした。


コア派閥は彼を引き入れようとしていたが、同時に政治闘争へ引きずり込み、ほかの長老たちの敵意を招いてしまった。


そのうえ、死に近づくほど強くなるシオンがいる。

ラインを取り巻く情勢は悪化する一方で、ほとんど逃げ場のないところまで、彼を追い込んでいた。


いかに策を巡らせるのが巧みでも、実行には力が要る。

すでに全力を尽くし、前世の同じ時期より、はるかに先へ進んでいた。

それでも、三環初位という環位(ランク)では足りず、局面を打開するには至らなかった。


「ここまで来た以上、危険を冒してでも、荒療治に踏み切るしかない!」


何度も考えた末、ラインが目をつけたのは、泉母蓮(せんぼれん)だった。


泉母蓮を摘み取れば、地下の鍾乳洞にある霊泉(れいせん)は、その力を失ってしまう。


一族は、狂ったように調べ回るだろう。


だが、追及するほかに、何をすべきか?


一度力を失った霊泉は、泉母蓮を取り戻して泉へ戻そうと、あるいはそれを壊そうと、元には戻らない。


一族が生き残るためには、ほかにどんな道がある?


新たな霊泉を奪うしかない。


だが、ヴェルデン山の霊泉は三つだけで、それぞれ三族が押さえている。

その一つをラインが壊せば、ローデン一族には、一つの選択肢と、二つの標的しか残らなくなる。


選択肢は、戦争。


標的は、ベル一族かロア一族。


どちらかの霊泉を奪って初めて、ローデン一族は存続を支える基盤を保てる。

霊泉の支えがなければ、精霊使いの修行など成り立たない。


危険に満ちた一手だった。

だが、ラインには、もうほかに手がなかった。


逆矢(さかや)の回復はますます速まり、空界はすでに負担に耐えきれなくなっていた。

時間は残り少ない。

追い詰められた中で危険を冒し、死地から一筋の活路を切り開くしかなかった。


……


広間には、すでに灯がともっていた。


精霊使いが運んできた記録(きろく)の精霊は、まだハクの手に握られていた。


「鉄血探偵殿、先ほどのお願いはいかがでしょうか?」


ハクが笑顔で尋ねた。


アキラは小さく鼻を鳴らした。


レオンはしばし考え、うなずいた。


「よかろう。たとえラインが犯人だと分かっても、三族大武闘会に出られるだけの猶予は与えよう」


「父上……」


アキラの目に、意外そうな色が浮かんだ。

父の普段のやり方とは違っていた。


「ははは、鉄血探偵殿は、必ず約束を守る方です。そのお言葉なら、もちろん信じられます。ご配慮にも、感謝いたします」


ハクの笑みはいっそう柔らかくなった。

だが、心の中では、冷ややかに鼻を鳴らしていた。


メディシンが勝手にシュタール父娘を地下の鍾乳洞へ連れ込み、一族の正史を調べさせた。

族長である彼が、知らないはずもなかった。


ただ、大武闘会が目前に迫り、一族内部の政治闘争も複雑だったため、ひとまず追及を控えていたのだ。


レオンが五環の強者だからといって、ハクの不満が消えるわけではなかった。


(幸い、本当のことはすべて一族の秘史(ひし)に記され、歴代族長だけが把握してきた。あの正史など、部外者に見せるためのものにすぎぬ)


ハクは、胸の内で得意になっていた。


ローデン一族の史書には、正史と秘史がある。


正史は、地下の鍾乳洞の密室に収められている。

後世の者による美化や隠蔽が加えられ、真偽が混じり合った、目を欺くための歴史だった。


秘史には事実が記され、一切の偽りがない。

決して公にはできない秘密も、数多く含まれていた。


たとえば、血饗(けっきょう)を呼び出す方法など、正史には決して記されない。

詳しい記録があるのは、秘史だけだった。


「ハク殿、父上はもうお願いを聞き入れました。これで、映像を見せていただけますね?」


アキラの口調は、よいものではなかった。


「たとえ鉄血探偵殿が応じてくださらなくとも、お二方の捜査には、全力で協力いたします」


ハクは笑ってそう説明すると、記録の精霊を指で軽くつまみ潰した。


砕けた精霊は、七色の煙へと変わった。

その中には、さまざまな雑音が混じっていた。


ハクが軽く息を吹きかけると、煙は壁へ流れ、その中へ入り込んでいった。


墨が水面に落ちたときのように、真っ白な壁に、すぐ色とりどりの染みが浮かんだ。


模様は広がり続け、やがて映像となって、あの年の覚醒の儀を映し出した。


ライルは、すぐに自分を見つけた。

見覚えのある顔も、いくつもあった。


少年たちは興奮して、辺りの洞窟を見回していた。

顔にはまだ幼さが残り、羽ばたいて巣を出たばかりの雛鳥のようだった。


「あれが、ライン……」


アキラも、すぐに彼を見つけた。


映像の中のラインは、列の中を歩いていた。

周囲を見てはいたが、その眼差しは淡々として冷ややかで、周りの同い年の者たちとは、まったく違っていた。


ただ、意識して注目しなければ、普通は気にも留めない違いだった。


だが今、広間の者は皆、彼を見ている。

わずかな違和感も、隠れようがなかった。


「む?ラインは、やはりどこか妙だな」


ハクまで、わずかに驚いた表情を浮かべた。


壁の映像が移り変わり、少年たちは花の海の前に来た。


一人、また一人と地下河を渡り、対岸の花の海へ入っていく。


希望の精霊の光が、次々と輝いた。


少年や長老たちの声も、はっきりと聞こえた。

まるで、当時の光景が目の前で繰り広げられているかのようだった。


まずノア・ローデンが中等資質と判定され、場が沸いた。

続いて、メルも中等と判定された。


(やっぱり、おかしい。メルは緊張しすぎている。体も硬く、肌の色も普通じゃない。地下の鍾乳洞は薄暗いけれど、よく見れば、希望の精霊を引き寄せるために、何かを体に塗っているのが分かる。ふふ、不正をしているのは、まず間違いない)


アキラは、心の中で確信した。


だが、続いて眉をひそめた。


ラインの番になった。


川を渡って対岸に上がったが、希望の精霊の輝きは、さほど強くなかった。


期待が大きいほど、失望も深い。

少年や長老たちのため息が、広間へ響いてきた。


すべて、ごく普通のことに思えた。


ただ、ラインの表情だけは、終始平静なままだった。


当時、彼は長老や少年たちに背を向けており、ほかの者には顔が見えなかった。

だが今、映像を見るアキラには、はっきり分かった。


その顔は冷めたまま、少しも変わらない。


まるで……初めから結果を知っていたかのように。


(あり得ない!もし僕が、十四歳で一族中から天才と呼ばれていたのに、最後には下等資質だと判定されたら、何も感じずにいられるはずがない。落胆も、失望も、気落ちも、少しもないなんて。どうして、こんなことに?)


大きな疑問がアキラの胸にのしかかり、呼吸まで重くなった。


心臓がどくどくと鳴り、いくつもの考えが、稲妻のように頭を駆け抜けた。


いったい、なぜなのか。


どうして、こうなるのか。


「待って、資質……まさか?!」


アキラは勢いよく顔を上げた。

第六感が、胸の中で爆発したかのようだった。

大胆で途方もない推測が、突如として浮かび上がった。


……


映像の鮮やかな光が、ライルの顔を照らしていた。


覚醒の儀は、人生で最も大きな転機だった。


それまでは、取るに足らず、ちっぽけで、誰にも知られていない存在だった。


だが、その後はまばゆい輝きを放ち、自信に満ちるようになった。


記憶にある覚醒の儀は、実のところ、いくらか曖昧だった。

当時は、何が何だか分からないうちに、過ぎてしまったのだ。


今、傍観者としてあの式典を見直すと、言葉にしがたい思いが湧いてきた。


映像の中で、自分が進み出た。


当時の自分は、これほど自信がなく、弱々しかったのか。


続いて、川に落ち、もがきながら手足をばたつかせ、兄のラインに引き上げられる姿が映った。

全身ずぶ濡れで、ひどくみじめだった。


ライルの口元に、笑みが浮かんだ。


あれが、かつての自分だった。

どれほど多くの人に笑われてきたことか。


やがて、対岸に足を踏み入れ、うつむいて歩いていく自分が映った。

その身を包む希望の光に、無数の驚嘆の声が上がった。


栄光の瞬間であり、奇跡の瞬間だった!


上等資質によって、そこから先の世界は、まったく違うものになった。


「ライル、一つ聞きたいことがあります」


アキラの声が、不意に思考を遮った。


「何?聞いて。知っていることは、全部話すよ」


ライルは振り返り、笑顔を向けた。


「また、お兄さんのことです。あなたを引き上げたとき、唇が動いたのが見えました。でも、周りが騒がしくて、よく聞き取れないんです。あのとき何と言ったのか、ありのままに教えてもらえますか?」


アキラが問いを重ねた。


「あのときの言葉……」


ライルは記憶をたどった。


「確か……道、とか?」


ほどなく、その目に確信の光が浮かんだ。


「そう、道だ。思い出したよ。兄さんは、こう言ったんだ。『これからの道は、きっと面白くなるぞ。』あれ?不思議だな。あのときは何も思わなかったのに、今思い返すと、すごく深い意味があるように感じる。まるで……僕が上等資質だと、初めから知っていたみたいだ!」


「いいえ。あなたが上等資質だと知っていたのではありません。別のことを指していたんです」


アキラは身を震わせ、複雑な表情で息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://syuiro-buta.fanbox.cc/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。