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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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162.煙で群雄を封じ、刃で活路を探る

狼の群れがうねり、唸りを上げて押し寄せてきた。


急変した状況に、二人の族長も長老たちも顔色を変えた。


両族は、それぞれ先の頭狼(とうろう)の襲撃を防いだ。

だが、そのために全力を使い果たしていた。

残る戦力は、恐らく全盛時の半分にも満たない。

ここへさらに一頭来られては、抗う力などなかった。


双方とも、思わず攻撃の手を止めた。


「頭狼は三頭だけだという情報ではなかったのか?!」


一人の長老が叫んだ。


「いや、あれは傷を負っている。群れもさほど大きくない」


ハクは努めて平静を保ち、そう言った。


「まさか、ロア一族を襲った頭狼では?!」


一人の長老が額を叩いて叫んだ。


十中八九、その推測は正しかった。


だが、皆の気持ちはさらに重くなった。

一人が絞り出すように言った。


「群れがここまで来たということは、ロア一族はもう……」


「くそっ、ロア一族め、情けない!一度の頭狼すら防げんのか!」


罵る者もいた。


なお希望を捨てない者もいた。


「見ろ、走り方がおかしい!さっきの頭狼より遅いぞ。きっと重傷を負っている!」


皆が目を向けると、沈んでいた士気がわずかに持ち直した。


確かに、走る姿勢が違っていた。


ほかの雷狼は走るとき、筋肉を張り詰め、自ら足を止めることはない。

頭も低く下げ、顔の柔らかい部分を守るとともに、獲物に遭えば硬い頭骨で衝突して殺せるようにしていた。


目の前の頭狼は、頭を高く上げていた。

走りながら、周囲を観察しているようだった。


何より奇妙なのは、後ろに尾が二本あるように見えることだった。


「待て、あれは頭狼ではないような……」


ベル族長がふいに何かを思い出し、身を震わせた。


(借威狐(しゃくいこ)だ。しかも、万獣王!)


ラインには、すでに答えがわかっていた。


狐は狼の遠縁とも言えるが、その知恵は数倍も上だ。

中でも最も狡猾なのが、借威狐だった。


幼い頃から偽装することを知り、ほかの強大な獣の群れへ紛れ込んで暮らす。

幼獣の餌を奪い、血のつながらない兄弟姉妹の中で、最も大きく育つのだ。


その後、群れの上位にいる獣を少しずつひそかに陥れ、最後には新たな首領となる。


目の前の借威狐は、長年雷狼に紛れて暮らし、姿も頭狼そっくりになっていた。

生来の二本の尾だけが、その正体を明かしていた。


偵察精霊使いが見誤ったのも、不思議ではない。


だが、正真正銘の万獣王であり、人に劣らぬ知恵を持っていた!


肉弾戦の力では普通の頭狼にやや劣るものの、その知恵ゆえに、危険ははるかに大きかった。


さらに、無数の雷狼(らいろう)を従えている。

ロア一族が滅ぼされたのも、無理はなかった。


「退く!」


ラインは雷翼を打ち振るい、すぐに空へ上がった。


長老たちは、すでに長時間戦い続けていた。

戦力を大きく損ない、狼の群れを脅かすことは難しい。

それ以上に、互いを疑い、力を一つにできないことが致命的だった。


万獣王は、甘く見てよい相手ではない。


ラインは向きを変えて逃げた。

まだ飛び回っている二匹の野生精霊にも、構っていられなかった。


すぐに離れなければならない。

少しでも遅れれば、二度と逃げられなくなるかもしれない!


世を渡るうえで最も大切なのは、自分の力を見極め、捨てるべきものを知ることだった。


「退こう!これほどのウルフウェーブには、もう抗えん!」


「集落へ戻れ、急いで防御を固めるぞ!」


長老たちは、まだ借威狐と見抜いていなかった。

それでも、すでに退くことを考えていた。


そのとき、借威狐がふいに長く吠え、巨大な狼の口を開いた。


刃のように不揃いな牙の間に、黒い気が湧いた。

瞬く間に、一つの黒い球へ凝縮される。


黒球が飛び出した。

わずかに曲がる黒い軌跡を空に描き、地面へ落ちた。


「外したのか?」


「この頭狼も、もう駄目だな!狙いがひどすぎる!」


長老たちが叫んだ。

だが、ラインはさらに飛ぶ速度を上げた。


黒い煙の球が、轟音とともに炸裂した。


黒煙が四方へ猛烈に広がり、瞬く間に直径一キロほどの範囲を覆った。


(四環の冥煙(めいえん)!)


ラインの胸が重くなった。


すぐに最も賢明な判断を下したはずだった。

だが、黒煙が広がるほうが速く、彼も呑み込まれてしまった。


突然、夜に閉ざされたようだった。

伸ばした手の指さえ見えない。

むせ返るような濃煙がどこにでも満ち、息が詰まるほど苦しかった。


幸い、雷翼(らいよく)はまだ使える。

まっすぐ上がり続ければ、煙の外へ出られるはずだ。


次の瞬間、雷鳴が炸裂した!


一筋の稲妻が幾重もの黒煙を裂いた。

雷の蛇とも、荒れ狂う竜とも見えるそれが、数百メートルを走り抜け、ラインへ襲いかかった。


借威狐が攻撃したのだ。


稲妻は、あまりに速かった。

反応する猶予など、ほとんどない。


だが、その一瞬に、ラインの戦闘本能は思考より早く動いた。


雷甲(らいこう)!


天蓬(てんぽう)!


傍らに半円形の電光の盾が浮かび、同時に白く光る鎧が全身を包み込んだ。


荒れ狂う稲妻は、目がくらむほど眩しかった。

咆哮する天の竜のように、まず盾へ激突した。


盾は一秒も持たず、引き裂かれ、貫かれた!


続いて、稲妻がラインを直撃した。


目を固く閉じていても、刺すような眩しさを感じた。


凄まじい力に、空から叩き落とされた。

全身を電流が包み、筋肉がことごとく麻痺した。

呼吸さえ忘れそうになり、意識も途切れかけた。


地面へ激突し、激痛が走った。

その痛みで、意識がはっきりした。


ラインは痛みと痺れを堪え、すぐに起き上がった。


雷甲は、すでに死んでいた。


雷翼も巻き添えを受け、瀕死となり、もう使えそうになかった。

天蓬も強烈な電流を受け、深く傷つき、ひどく弱っていた。


先ほどの一撃は、間違いなく四環の精霊によるものだった。


環階が高くなるほど、一環の差がもたらす威力の隔たりは大きくなる。

四環の攻撃精霊の一撃を防ぐには、少なくとも三環の精霊が二体必要だった。


それまでの長い戦いで、すでに多くの傷を負っていたことも、雷甲が即死した理由だった。


(まさか、この借威狐が私を一番の脅威と見なすとは……)


ラインは苦笑し、周囲を探った。


濃煙は漆黒で、方向すらわからなかった。


「気をつけろ!頭狼が小さくなった!普通の雷狼と同じ大きさで、群れに紛れているぞ!」


煙の奥から、不意に長老の叫び声が響いた。


ラインの瞳が縮んだ。


やはり、この借威狐は陰険で狡猾だった。

全員を一網打尽にするつもりなのだ。

先ほど彼を撃ち落としたのも、一人たりとも逃がさないためだった。


周囲で、無数の狼の目が光りはじめた。


低い唸り声と、疾走する風音が次々に耳へ届いた。


濃煙は精霊使いたちの視界を著しく妨げていた。

だが、雷狼は影響を受けない。

嗅覚を捨てた代わりに、視力は並外れていた。


(早く抜け出さねばならない。いつ借威狐に出くわすかわからない。たとえ今は遭わずとも、群れに囲まれれば、残り四割の精神力で消耗戦などできはしない!)


ラインは素早く考えを巡らせ、地這い耳(じばいみみ)を発動した。


右の耳から十数本の根が生え、外へ伸びていった。


無数の音が、一度に押し寄せた。


狼の遠吠え、戦う音、長老たちの慌てた怒声、雷狼の断末魔。

すべてが入り交じっていた。


乱れすぎている!


地這い耳は偵察範囲こそ広いが、これほど混ざった音を細かく聞き分けることはできなかった。


ラインは眉をひそめ、音の少ない方角へ進むしかなかった。


だが、間もなく百頭を超える雷狼の群れと鉢合わせた。


狼たちが濃煙から飛び出し、凶暴に襲いかかってきた。


ラインは旋牙百足(せんがむかで)を呼び出し、同時に天蓬を展開した。


鋸歯が狂回転し、百足が大剣のように振るわれ、黒煙をかき分けた。

狼の体を斬るたびに、血と砕けた骨が飛び散った。


荒れ狂う狼の潮を舟で進むように、刃を振るって必死に道を切り開いた。


一頭が悲鳴を上げて死んだばかりなのに、二頭目、三頭目が続いて飛びかかってくる。

攻撃には、ほとんど切れ目がなかった。


(陰険な奴だ。背後にまで群れを回し、包囲させていたのか!)


一つの方角へ斬り進んでも、いつまでも雷狼にぶつかる。

戦い続けてようやく、ラインは悟った。


戦いながら退き、たちまち全身が血に染まった。


圧力が大きすぎた。


周囲は濃煙に閉ざされ、伸ばした手の指さえ見えない。

それでも狼は四方から襲いかかってくる。

一人では、すべてに対処することなどできなかった。


「ハク、どうする?」


そのとき、煙の奥からベル族長の声が響いた。


「やむを得ん。まずは力を合わせて包囲を破る!」


すぐにハクが怒鳴った。


状況に追い詰められた今、協力しなければ生きる道はない。


ばらばらに戦えば、間もなく精神力を使い果たし、狼たちに食い殺される。


次の瞬間、狼の咆哮と激しい爆発音が立て続けに響いた。


「くそっ!」


二人の族長が同時に怒鳴り、長老たちをまとめるどころではなくなった。


明らかに、借威狐が奇襲したのだ。


人に劣らぬ知恵を持つ。

一度の攻撃で二人の族長の狙いを潰し、皆の抵抗を乱した。


二人の族長が場をまとめなければ、長老たちは本当に手を組めるのか。


それは、大きな疑問だった。


(駄目だ。精神力の消耗が激しすぎる。ほかの者の力を借りなければ!)


さらにしばらく斬り進み、ラインは疲れを感じはじめた。


イノシシ二頭の力があっても、筋肉はひどく痛んでいた。

精神力が減り続け、体の傷も増えていく。

天蓬も、もはや間欠的にしか使えなかった。


旋牙百足は全身の光沢を失い、両側の鋸歯もひどく傷んでいた。


短い間に、千頭以上の雷狼を斬っていたのだ。

中には、巨雷狼(きょらいろう)も数頭いた。


そのうち何頭かは防御精霊を宿し、鉄や石より硬かった。


旋牙百足も、あらゆるものを切り裂けるわけではない。

鋸歯が損なわれれば、斬る力も大きく落ちる。

もはや、以前の威力は見る影もなかった。


ラインは戦いに留まらず、刃を振るいながら移動し続けた。


地這い耳を頼りに、懸命に音を聞き分けた。

轟雷狼(ごうらいろう)の重い足音を聞けば、すぐ進路を変え、避けようとした。


この千獣王を、一人で相手にすることはできない。


足止めされ、そのうえ群れに囲まれれば、生きる道はなかった。


「こんなところで、死ねるか!」


煙の中で長老の悲鳴が響き、不意に途切れた。


黒煙の下で、ウルフウェーブはなお荒れ狂っていた。

多くの長老が次々と狼の牙に倒れ、悔しさと無念の怒号だけを残した。


(私も、もう長くは持たない!)


ラインは死が迫るのを感じていた。

だが、その顔は冷酷なままだった。


危険が増すほど、心は静まっていく。

氷雪のように冷たく、少しも揺らがなかった。


前世では、これより凶悪な状況を幾度となく経験していた。


今は、まだ最悪ではない。

二人の族長は、なお借威狐と戦っている。

ならば、希望は残っていた。


(ん?前で戦う音がする!)


ラインはすぐに向きを変えた。


もう限界に近かった。

前にいるのがローデン一族でもベル一族でも、彼の助けにはなる。


「殺したる!殺したる!殺したる!」


まだ近づく前から、咆哮が絶え間なく聞こえていた。

激しく戦っている。


ラインは駆け寄った。

だが、その勢いが不意に鈍った。


シオン!

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