155.権勢を借りて財を集め、霊石を収めて精霊を選ぶ
ラインは杯を置き、再び腰を下ろした。
一同も、ようやく座ることができた。
誰もが、どこかぎこちない動きをしている。
ここに集まったのは、同窓の全員ではない。ノアやメルのように、強い後ろ盾を持つ者は含まれていなかった。
「そろそろ失礼しよう。よい宴だった」
ラインは帰る意向を示した。
褒められたロネルは、喜びを抑えきれなかった。
慌てて立ち上がり、懐から霊石の詰まった袋を取り出す。
腰をかがめ、媚びた笑みを浮かべた。
「本日、ライン様のお教えを賜り、私めは目の開かれる思いがいたしました。実に多くを学ばせていただきました。ささやかな品ではございますが、感謝のしるしとしてお納めください」
まったくの出まかせだった。
宴が始まってから、彼はひたすらラインを持ち上げていただけだ。
修行について、何か尋ねたことがあっただろうか。
だが、一同は本当にそんなことがあったかのように口を揃え、ライン長老へ受け取るよう勧めた。
ラインも遠慮はしなかった。
かすかに微笑み、ごく自然に革袋を受け取る。
続いて二人目、三人目と、次々に贈り物を差し出してきた。
どれも霊石だった。
「どうも、どうも」
ラインは目を細めて笑い、一つずつ受け取った。
数十袋もの霊石を、自分で持ちきれるはずがない。
ロネルはすぐに使用人を数人呼び、ラインの後ろで持たせた。
わずかな間に、ラインの手元には一万個近い霊石が集まった。
最後に、彼は悠然と立ち上がり、もう一度杯を掲げた。
「ともに学んだのも、何かの縁だ。この友情は、お互い心に留めておきたい。一杯交わすにふさわしい縁だろう」
「まさに、ライン様のおっしゃるとおりです!」
「実に的確なお言葉です!皆が言いたかったのも、まさしくそれでございます!」
……
一同も立ち上がり、賛辞を並べながら杯を掲げた。
彼らには後ろ盾がないか、あっても弱い。
ラインが長老となった今、仕返しを恐れると同時に、これを機に縁を結びたいと思っていた。
ラインは薄く笑い、杯を少し高く上げた。
外では雲が晴れ、薄絹のような月明かりが、広間の外の庭を包んでいた。
冷たい空気には血の臭いが混じり、残酷な現実を感じさせる。
一方、広間は趣味よく整えられ、灯火が明るく輝いていた。
酒と色と金への欲が満ち、誰もが大げさな笑みを浮かべている。
まるで、温もりに満ちたこの世の楽園のようだった。
(これが、組織の体制が持つ魅力か)
ラインは杯を軽く揺らした。
澄んだ酒が小さな渦を作り、思考もそれにつれて巡っていく。
以前は、同窓から霊石を数個奪い、脅し取っただけで、大勢の怒りを買った。
今は何も言っていないのに、彼らの方から先を争って霊石を差し出してくる。
どの袋にも、百個以上入っていた。
表面だけを見れば、違いは長老になったことにある。
だが、本当の理由は、かつての彼が体制の外で動き、今は組織の上層に身を置いていることだった。
体制の中では、構成員たちは自ら進んで搾取を受け入れる。
ラインがほのめかす必要さえない。
自分から賄賂を差し出す者もいれば、庇護を求めてすり寄ってくる者もいる。
この世界も、地球も、その点は変わらなかった。
(人とは、何と滑稽なのか。盗まれたり、奪われたりすれば、わずかな損失でも激しく抵抗し、不公平を叫ぶ。それなのに、上層の者への賄賂となれば、金だろうと身体だろうと、自ら進んで差し出す。むしろ、まだ足りないのではないかとさえ恐れる。今夜これだけの霊石が集まったのも、体制の力を借りただけのことだ)
ラインは胸の内で冷笑し、アオ、リリア、クルたちを思い浮かべた。
アオのような俊才は、中等資質でも、その中で優れた部類に入る。
修行の才能だけを比べれば、ラインよりはるかに上だった。
それなのに、彼らの修行は遅々として進まず、長い間、二環に留まっていた。
努力していなかったとでもいうのか。
ラインは胸の内で、小さく二度笑った。
これこそが、体制による搾取と抑圧だった。
ただ、それらはたいてい目に見えないところへ隠され、普通の者には見抜きにくい。
目の前の霊石も、贈り主が自分で使えば、間違いなく修行の助けになっただろう。
だから、賄賂そのものが、一種の搾取なのである。
無数の下層の者が先を争って賄賂を贈る。
それは上層のために資金を集めるに等しく、さらには、その権威まで強めていく。
金だけではない。
時間もまた、搾取される。
アオのような精鋭は、頻繁に賄賂を贈る必要こそない。
だが、時間を奪われていた。
あれこれ仕事を任され、各地を走り回り、用事に追われる。
そして、それを上層部から重んじられ、目をかけられている証だと言い聞かされるのだ。
その時間を修行へ回せていれば、アオはとうに二環頂位の壁を破り、三環へ進んでいたはずだった。
木傀もあれば、シオンを殺せたかもしれない。
微妙なのは、長老たちが内心では、そうした後輩の早すぎる三環昇進を望んでいないことだった。
これほど役立つ駒が、同じ地位に立ってしまえば、どう使えばいいのか。
自分の権力を分け与えたい者など、誰がいる。
だから、意図的に引き延ばし、抑えつける。
そのうえで、もっともらしくこう言うのだ。
「この者、なかなか見どころがござる。さりながら、玉も磨かねば光らぬ。よう鍛えてやらねばなるまい」
……
(これが、体制の中にある真実だ。見抜けなければ、どれほどの英雄であろうと、いかなる才能の持ち主であろうと、首輪をはめられた虎、人造の滝に欺かれた鯉にすぎない。結局は奴隷だ。アオやラゼルが、いくら賢く、有能であったところで、それがどうなる?)
思いは多かったが、巡るのは速かった。
外では、一瞬が過ぎただけだ。
「この一杯は、私から皆への友情のしるしだ。乾杯!」
ラインは杯を唇へ運び、仰いで飲み干した。
一同も慌てて飲んだ。
一滴たりとも残せなかった。
「では、失礼する」
ラインは拳をもう片方の手で包んで一礼し、歩き出した。
霊石を抱えた使用人たちが、後に続く。
一同は慌てて立ち、見送ろうとした。
「皆は続けてくれ。見送りは要らない」
そう言われても、そのまま従う勇気はなかった。
次々に席を離れ、恭しい言葉をかけてくる。
ラインは、もう一度口を開いた。
「私は、静かなのが好きだ」
彼の顔色を窺い、一同はようやく足を止めた。
広間に留まったまま、その背を見送る。
感慨深げに息をつく者、黙り込む者もいた。
誰かが、溜息交じりに言った。
「ライン長老は、やはりただ者ではない。何とも悠々としておられる……」
彼らの見識は限られていた。
霧越しに月を見るように、ラインの悠々とした振る舞いしか見えていない。
その背後にある体制までは、見抜けなかった。
実際には、体制に加われば、搾取を受け、利益を犠牲にすることは避けられない。
族長でさえ、一族を治めるために、多くの時間と労力を費やさなければならなかった。
ただ、下層の者ほど搾取は重くなる。
地位が高ければ高いほど、享受できる利益も増えるのだ。
当初、ラインが霊石を奪い、人と対立し、独り我が道を行き、実の弟にすら容赦しなかったのは、この搾取を避けるためだった。
だからこそ、十分な時間と労力を確保し、三環へ進んで長老となり、無数の人々を驚かせたのである。
今は一転して、物腰の柔らかな高位の人物となった。
長老としてのさまざまな待遇を享受し、人々の羨望を集めている。
体制の外に身を置くことと、その内へ入ること。
その使い分けには、深い知恵があった。
だが、それを見抜ける者が、どれほどいるだろうか。
ラインは搾取を少なく抑え、利益を享受した。
凡人の目には、それが悠々とした生き方に見えるのだった。
……
「よし、袋は卓に置いてくれ。もう帰っていい」
使用人たちは異を唱えず、黙って袋を置いた。
ラインへ深く一礼し、退出する。
ここは、以前借りていた、あの粗末な家ではない。
長老へ昇進すると、一族から新築の一軒家を与えられた。
書斎と、修行に籠もるための修練室も備わっている。
ただし、使用人はつけられておらず、自分で探す必要があった。
「宝灯花、出てこい」
ラインが念じると、白銀精神力が注ぎ込まれた。
舌の表面に宿る宝灯花の印が、にわかに生気を帯びる。
口を開いて吐き出すと、赤い光が走った。
宝灯花が目の前に現れる。
提灯のような姿を宙に浮かべ、ゆっくりと回っていた。
さらに力を働かせると、赤い輝きが急速に広がり、周囲を真っ赤に照らした。
光に包まれた霊石が、見えない力に引かれ、次々と袋から飛び出す。
そのまま、宝灯花の中へ吸い込まれていった。
しばらくすると、赤い光が収まった。
ラインが口をわずかに開くと、宝灯花は飛び戻った。
舌の上へ降り、再び赤い宝灯花の印となる。
(宝灯花は、霊石だけでなく、ほかの物も収められる。三環の収納精霊としては優秀だ。霊石だけなら、最大で三万個は入る。ただ、ほかの物資のために空間を残す必要があるから、収められる霊石は、多くても一万五千個ほどだろう)
使うのは初めてだった。
それでも、前世の豊富な経験から、すぐに容量の見当をつけることができた。
霊石は、精霊使いが修行するうえで、何よりも基礎となる資源だった。
霊石がなければ、修行を支える重要なものを失ってしまう。
精神力を素早く回復することもできるため、戦いでも大きな助けになった。
特に、独りで外を渡り歩く精霊使いにとっては、野外生活を支える最も基本的な備えだ。
しばらくの間、最低限の生活を維持するには、普通は少なくとも一万個の蓄えが必要だった。
しかも、定期的な補充も欠かせない。
一万五千個は、ラインにとって少々心もとない。
それでも、許容できる範囲ではあった。
(先にカルから借りた三千個と、今夜の収入があれば、しばらく霊石に困ることはない。六つの備えのうち、攻撃は血月、防御は天蓬、移動は雷翼、収納は宝灯花、偵察は地這い耳。足りないのは、治療だけだ)
ラインは胸の内で、手持ちを数えた。
もともとは、九葉生気草があった。
だが、それを供出したことで、宝灯花を手に入れることができたのである。
もっとも、あの二環精霊を残したところで、その治療能力に満足はできなかった。
(三環の治療精霊なら、望みに近いものが幾つかある。たとえば常春。継続して治療でき、精神力の消耗も少ない。精神力を節約できるという点では、私のような低い資質の精霊使いに、最も向いている。
残灯草もある。わずかな生命力を保っておける精霊だ。自分の最後の生命力をその中へ移し、危険が去った後、普通の雑草に擬態した残灯草から、その生命力を返してもらえる。
最も理想的なのは、剛癒だ。これは精霊使い自身の肉体の力に依存する。力が強ければ強いほど、新陳代謝を促し、傷を癒やす働きも強くなる)
しかし、その三種を、どこで探せばいいのか。
ローデン一族の地下精霊室は、すでに見てきた。
そこにはなかった。
これほど希少な精霊が、一族の功績交換用の物資一覧に出されるはずもない。
まだ多少の望みがあるとすれば、酒飲のカイの遺産だけだった。
だが、その望みも極めて薄い。
ラインは、ほとんど期待していなかった。
この遺産の探索も、終わりが近いと感じている。
その最後に、ちょうど自分の求める精霊が現れるなど、あり得るのか。
もしそうなれば、あまりにも理想的で、できすぎている。
そのときには、考えなければならないだろう。
この世界には、容易に察知できない何らかの意志が存在し、周囲のすべてに影響を及ぼしているのではないか、と。
(ともあれ、この遺産は最後まで探るべきだ。少なくとも、あの旋牙百足は手に入れておかねばならない)
ラインの中では、すでに考えが定まっていた。




