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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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131/172

130.潜んで心を縛り、現れて戦局を覆す

冷気が迸り、氷刃が舞う。

鉄拳が唸り、剥き出しの牙の間から咆哮が響いた。


バルガスたちとシオンの戦いは、すでに白熱していた。

実際には、まだそれほど長く戦っていない。

だが、シオンから受ける圧力が増すにつれ、バルガスたちは一瞬一瞬がひどく長く、苦しいものに感じられた。


グリムの顔は暗く沈み、トルガの額は冷や汗に濡れている。

バルガスの眼差しも、ますます険しさを増していた。


ここまで戦えば、バルガスでさえ怒りを抑え、シオンの強さを認めざるを得ない。

環階(ランク)を二環に抑え、二環精霊だけで戦っているにもかかわらず、その戦闘力は、彼らが力を合わせても対抗できるものではなかった。


しかも、シオンはまだ全力を出していない。

ラインを警戒し、余力を残しておかなければならないからだ。


バルガスたちの目的は単純で、シオンを討ち取ることだ。

だが、シオンの置かれた状況は、はるかに複雑だった。

バルガスチームを相手にしながら、ラインの不意打ちにも備えなければならない。


ラインが隠鱗虫(いんりんむし)を使うところは、目の前で見ている。

そのため、戦いながらも意識の三割を周囲へ向け、暗がりからの襲撃を警戒していた。

ところが、これだけ戦いが続いても、ラインは何の動きも見せない。


シオンは左手で氷刃を振るい、バルガスの反撃を押さえ込みながら、素早く考えを巡らせた。


(もう行ってもうたんか?いや、あり得へん!初めて会うたばかりやけど、簡単に手ぇ引くような奴やない。必ず仕掛けてくるはずや。ただ、機会を待っとるだけや)


ラインがいつまでも仕掛けてこないことが、かえってシオンへの圧力を増していた。


鞘に収まったままの剣こそ、最も危険だ。

いずれどこへ突き立てられるか、誰にも分からないのだから。


ラインは遠くに潜み、観戦しているだけで、終始シオンの意識を引きつけていた。

この牽制がなければ、バルガスチームはとうに敗れている。

ここまで持ちこたえられるわけがなかった。


遠くの木陰で、ラインは腕を組んで立っていた。

その眼差しには、様々な思案が浮かんでは消えている。


(このシオン、なかなか頭が回る。まず巨雷狼(きょらいろう)を手早く殺し、私が利用できる駒を一つ減らした。

それから、自分が傷つくのも構わず、バルガスチームの治療精霊使いを斬った。

一つひとつが、最も賢明な選択だ。あれほど激しく戦っていても、私に備える余力は残している……)


ラインも、仕掛ける気がないわけではない。

適した機会が、まだ訪れていなかったのだ。

それでも、少しも焦ってはいなかった。


時間が長引くほど、シオンの戦力は削られていく。

原初の血による精神力の回復速度は、上等資質をはるかに上回る。

だが、それでも戦闘中の消耗を補いきることはできない。


待てば待つほど、シオンの空界に残る精神力は減っていく。

勝利の天秤も、ラインの側へ傾いていくのだ。


精神力が尽きてしまえば、檀雪(タンソル)の血を持っていたところで、何になる?

月刃一発で、その首を刎ね飛ばせる!


ラインも、シオンも、そのことは承知していた。

シオンは戦いでは確かな優位に立ちながらも、気持ちはますます重くなっていく。


(このままやと、あかん!)


青い瞳に冷たい光が走った。

シオンは大きく一歩跳び退き、バルガスたちとの距離を取る。


喉仏が、上へ動いた。

何かが胃からせり上がり、口の中へ戻ってきたようだった。

両頬が大きく膨らみ、やがて苦しげに口が開く。


氷のように青い小鳥が、白い歯の間から頭を覗かせた。

きょろきょろと辺りを見回し、すぐに標的を見つける。

小鳥はシオンの口から抜け出すと、幅広く力強い翼を大きく羽ばたかせ、バルガスたち三人へ真っすぐ飛びかかった。


小さく愛らしいその鳥は、鳩に似ていた。

だが、目にしたバルガスたちは、そろって顔色を変える。


「三環精霊、氷葬鳥(ひょうそうちょう)?!」


「避けろ!」


皆、慌てて身をかわした。

だが、この青い氷鳥は、月刃とは違う。

放たれれば、自ら敵を追尾するのだ。


氷鳥は、バルガスチームで後方支援を担う精霊使いにぶつかり、爆発した!


凄まじい冷気が四方へ広がり、眩い青光が戦場を照らし出す。

次の瞬間、その青い光がふっと消えた。

そこには、淡い水色を帯びた、巨大な半透明の氷塊が残されていた。


その中に、精霊使いが閉じ込められている。

顔には死の間際の驚愕と恐怖が凍りついていたが、すでに命は失われていた。


シオンが三環精霊を持っていないわけではない。

ただ、使うたびに空界の二環精神力を激しく消耗するうえ、本来の威力を十分には引き出せない。

その後しばらくは、敵に隙を突かれ、猛攻を受けやすくもなる。


だが、今はバルガスたち三人とも、氷葬鳥の威力に気圧されていた。

シオンは追い打ちをかけず、背を向けて戦場を離れようとする。


極めて賢明な選択だ。

長引けば長引くほど、状況は彼に不利になる。


「くそっ……」


「シオン、度胸があるなら逃げるな!」


「よくも、また殺しやがったな!殺せ、同族の仇を討つんだ!」


三人は口々に怒鳴ったが、もう追いつけない。

四人のときは、どうにか包囲を保てていた。

一人欠けたことで、その包囲をシオンに突破されたのだ。


戦場を抜けようとしたその瞬間、茂った草むらから月刃が飛んだ。

続けて、人影が飛び出す!


シオンは氷刃を振り、月刃を打ち散らした。

だが、飛び出してきた者の蹴りが下腹に入り、大きく三歩、よろめきながら後退する。

この隙に、バルガスたち三人が追いつき、再び彼を囲んだ。


シオンは三人には目もくれず、目の前の相手を見据えて冷笑した。


「やっと出てきよったな」


「ラインだ!」


トルガの目が輝いた。

思わぬ活路が開けたようだった。


「ライン、よくやった!」


グリムも喜びを隠せず、大声を上げた。

バルガスだけは、口を閉ざしている。


見かけは粗野でも、人並み以上に細かなところまで考える男だ。

先ほどまで一度も手を出さなかったラインが、今になって突然現れた。

もしや、ずっと近くに潜み、戦いを見ていたのではないか。


その考えが、バルガスの胸にかすかな不安を生んだ。


ラインは笑みを浮かべ、勝利を確信しているかのように見えた。

だが、内心はわずかに重くなっていた。


シオンが退こうとしたのは、ラインを引きずり出すためだ。

その狙いなど、一目で見抜いていた。

だが、見抜いたところでどうなる。

手を出さないわけにはいかなかった。


バルガスの表情の変化も、見逃していない。

こうなることも、予想はついていた。


「皆、安心してくれ。一族にはもう知らせてある。もう少し持ちこたえれば、援軍が来る!」


それを聞き、バルガスの疑念は晴れた。

トルガとグリムも、大いに戦意を取り戻す。


ところがシオンは、不意に顔を上げて笑い出した。


「ははっ、ラインっちゅうんか。ほんま、おもろい奴や……ますますお前を殺したなってきたわ!」


「できるものならな」


ラインの目に冷たい光が宿り、一歩踏み出した。


「シオン、天にも見放されたな!今度こそ、お前は死ぬ!」


グリムが歯を食いしばり、シオンへ突進する。


「好き勝手するのもいい加減にしろ!今日はその報いを受けてもらう!」


トルガも怒鳴り、シオンの背後へ回り込んだ。


バルガスは、ラインに声をかけた。


「ライン、少し下がれ。後ろから俺たちを援護して、シオンが逃げないように抑えてくれればいい」


彼ら三人の連携は、よく取れている。

ラインが迂闊に加われば、かえって陣形を乱しかねなかった。


戦いが再開された。

ラインは冷めた顔でバルガスの言葉を聞き流し、立て続けに攻撃を繰り出す。


初め、三人はそろって眉をひそめた。

他所の者が突然加われば、陣形が崩れ、連携にも狂いが生じやすいからだ。

だが、ラインの一手一手は鋭く、容赦がない。

しかも戦機の見極めが的確で、三人は大いに助けられた。


バルガスも初めは何度か怒鳴ったが、すぐに自分から口を閉じた。

ひそめていた眉が、逆にわずかに上がる。

その目には、驚きが浮かんでいた。


ラインの手数は多くない。

だが、その一手は常に戦局の急所を突いていた。

達人の手腕が発揮されるや、彼は戦いの流れをしっかりと掌握した。


先ほどまで、バルガスチームは五人でかかってもシオンに押され、二人のメンバーを失った。

ところが、ラインが加わり、残る三人と力を合わせると、今度はシオンを完全に押し込んだのだ。


「シオン、死ね!」


バルガスが猛然と叫び、高く跳び上がった。

両手の指を組んで一つの拳とし、落下の勢いとともにシオンへ叩きつける。


シオンが身をかわそうとしたところへ、ラインが駆けつけた。

放たれた月刃が、跳び退くはずだった先を塞ぐ。

シオンは、バルガスの一撃を正面から受けるしかなかった。


水繭(みずまゆ)!


二筋の水蒸気が鼻から噴き出し、体の周囲を巡った。

たちまち、それが球状の水盾へと変わる。


重い拳が水盾を打ち、一瞬で弾き散らした!

だが、拳の力も水の流れに分散され、シオンはその一撃をしのいだ。


それでもバルガスは、ラインをちらりと見た。

その目は、賞賛に満ちていた。

ラインの巧みな援護がなければ、この拳は避けられていただろう。

正面から受けさせ、精神力を費やして防がせることなどできなかった。


(また水繭か……)


バルガスの視線など気にも留めず、ラインはシオンを凝視して、わずかに眉を寄せた。

あの精霊が、何度もシオンを危機から救っている。

水盾の防御力は、シロタマズスキンさえ僅かに上回っていた。


だが、大きな欠点もある。

最大限の防御力を発揮するには、水盾を球形にし、表面を絶えず巡る水流で力を受け流し、衝撃を分散しなければならない。

シオンが岩壁を背にして、球状の水盾を作れなくなれば、防御力は大きく落ちる。


ヴェルデン山には、木々が密生している。

だが、シオンは常に位置取りへ気を配り、逃げ場のない場所へは追い詰められていなかった。


(水繭を破れば、あいつを窮地に追い込める。だが、どうする?)


ラインが考えていると、シオンが不意に口を開き、また一羽の青い氷鳥を放った。

バルガスたちは、この攻撃を恐れていた。

だが、ラインには少しの恐れもない。


鼻を鳴らし、月刃を放つ。

月刃は氷鳥を直撃し、その場で爆発させた!


シオンが低く唸った。

距離が近すぎたため、氷鳥の爆発に自らも巻き込まれたのだ。


爆風に吹き飛ばされ、地面へ叩きつけられる。

同時に、左腕の大半が氷に閉ざされ、戦いに使えなくなった。


(絶好の機会だ!)


バルガスの目が鋭く輝いた。

「死ね!」と叫び、両手を組んだ拳を、シオンめがけて思いきり振り下ろす。


凄まじい力を込めた一撃だった。

地面に倒れているシオンでは、水繭の防御力を半分発揮することさえ難しい。


この拳が頭に叩き込まれれば、シオンは即死する。

それ以外の結末など、あり得なかった。

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