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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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126.シオンが動く、足りない功績

崖の上で、シオン・ベルは興味深そうに下を見ていた。

彼の座る崖の下では、生死を懸けた戦いが繰り広げられている。

巨雷狼(きょらいろう)がゆっくりと歩を進め、近づいていた。

二人の精霊使いが、険しい顔でその前に立ちはだかる。


その背後では、バラ・ロアが腰を低く落としていた。

左手で右の手首を強く握り、右手の五指を猛禽の爪のように曲げ、離れた巨雷狼へ向けている。


「奪霊(だつれい)!」


彼は声を張り上げ、体内の精神力をすべて奪霊へ注いだ。

目に見えない、奪い取る力が一気に放たれる。

右手で宙を掴むと、まるで一体の精霊を掴んだかのような感覚があった。


だが、その精霊は絶えずもがき、彼の力に抗っていた。

抵抗は凄まじい。

重心を十分に低くしていても、いつ前へ引きずられてもおかしくない感覚だった。


(奪霊の成功率は低い。だが、今回は成功させなければ、助かる見込みはほとんどない!)


歯を軋ませ、額に青筋を浮かべ、顔を歪めて精霊を使い続けた。

バラ・ロアには、もう退路がない。

成功しなければ、死ぬだけだ。


死の脅威に追い立てられ、彼は必死に精神力を注ぎ込んだ。

右の掌に宿る奪霊は、精神力を受けるほどに、強く相手を引き寄せようとする。

巨雷狼は異変を察し、激しく吠え、狂ったように攻めかかった。

二人の精霊使いが、懸命に食い止める。


もう少しで奪える。

そう感じた瞬間、バラ・ロアの顔色が変わった。


「くそ、精神力が足りない!」


血を吐き出し、たちまち力を失った。

奪取に失敗すれば、反動を受ける。

これが、奪霊の欠点の一つだった。


奪霊の拘束から解かれた巨雷狼が、口を開いて長く吠えた。

共生する精霊の力が放たれ、牙の間に電光が瞬く。

青色の電流が急速に集まり、二人の精霊使いの間を抜けて、腰を落としたままのバラを直撃した。


悲鳴を上げる暇さえなかった。

電流に焼かれ、真っ黒な死骸となって、その場で息絶えた。


「逃げろ!」


残る二人は戦意を失い、左右へ別れて逃げ出した。

巨雷狼は一人に追いつくと、押し倒し、一噛みで喉を砕いた。

最後に残ったのは、ベル一族の精霊使いだった。


巨雷狼に逃げ道を塞がれ、一歩ずつ崖へ追い詰められる。

背中が岩壁に触れた。

彼は顔を上げ、絶望の中で恐怖を叫びに変えた。


「あああ、死ぬ!死んでしまう!」


その叫びが、ふいに途切れた。

頭上の崖にいるシオンが目に入ったのだ。


「シオン様!シオン様、本当にあなたですか?」


一瞬、呆然とした後、彼は大声で呼びかけた。

喜びのあまり、涙が溢れる。


「あら、見つかってもうたな」


シオンは軽く笑い、ゆっくりと右手を上げた。

人差し指を下へ向けると、氷の錐が宙に生まれ、飛び落ちていく。

助けを求めた男の頭頂を貫き、そのまま顎の下まで突き抜けた。


「ぐっ……!」


助かったと思った歓喜を顔に残したまま、男は地面へ倒れた。

その光景には、巨雷狼の方が驚いた。

頭を上げてシオンを見つめ、口を開き、電光の絡む牙を剥く。


「何も知らん畜生やな」


シオンは冷めた目で見返し、軽く跳んだ。

五メートルの高さから飛び降り、空中で両の掌を勢いよく合わせる。

冷気が四方へ溢れ出した。

続いて掌を左右へ開くと、瞬く間に氷の刃が形を成した。


長さは1.7メートル。

地球の大太刀を思わせる形で、透き通った堅い氷からできていた。

その柄は、シオンの青白い手に握られている。


巨雷狼が電光を吐き、下からシオンへ撃ち上げた。

シオンは鼻で笑い、鼻から二筋の白い水蒸気を吐き出す。

水蒸気は身体の周りを巡り、球状の水の盾となって、彼を包み込んだ。


電流が流動する盾にぶつかり、吹き散らした。

水の球が破裂し、中から白衣の少年が現れる。


「死ねや」


漆黒の瞳が、突然、純粋な青へ変わった。

二つの青い水晶のような目には、無情な冷たさが宿っている。

刃が閃いた。


シオンは軽やかに着地した。

半透明の白い氷刃を、一滴の血が滑り落ちる。

巨雷狼は、彫像のように動かなかった。


一呼吸の後、その首から血が噴き出した。

大きな狼の頭が落ち、何度か転がる。

身体も続いて倒れた。


宿っていた二環精霊雷脈(らいみゃく)が飛び出し、シオンへ突進した。

彼は軽く手首を返す。

刃が閃き、精霊は弾け、瞬く青色の電光となって消滅した。


シオンはゆっくりと歩き、バラの死骸へ向かった。


「ほかの精霊は、ありふれたもんばかりやな。けど、この奪霊はちょっとおもろい」


死骸から奪霊を探し出し、懐へ入れた。

三家の盟約では、死んだ精霊使いが残した精霊を拾った者も、それを提出しなければならない。

だが、シオンはそんな規定を気にも留めなかった。


発覚したところで、何だというのか。

彼はベル一族の台頭を象徴する存在だ。

家族は必ず自分を守る。

それを、少しも疑っていなかった。


「せやけど……このウルフウェーブ、ほんま退屈やな」


氷刃を撫で、骨に染みる冷たさを感じた。


「よう考えたら、やっぱり人と戦う方がおもろいわ」


欠伸をし、ふいに笑った。


「アオやバルガスは、今、どこまで強うなったんやろな。あれだけ修行してきたんや。ちょっとくらい、驚かせてくれるかもしれへん」


……


九日後。

広場は人で溢れ、ラインは巨大な旗を見上げていた。

旗面では、風墨(ふうぼく)が幾行もの文字となり、三族が共同で供給する物資を示している。


品目は多かった。

精霊の餌に加え、米や塩といった生活必需品もある。

もちろん、精霊や霊石も並んでいた。

それぞれの後ろには、交換に必要な功績が記されている。


狼の目玉一つで、十点の功績。

五点の功績で、一キログラムの米。

二十五点の功績で、霊石一個を交換できた。


間違いなく、ウルフウェーブは、平時には得難い機会ももたらしていた。

功績順位表と物資一覧は、多くの精霊使いを駆り立てる。

彼らは命を懸け、血を流し、昼夜を問わず雷狼と戦っていた。


特に最近は、ウルフウェーブが全面的に広がり、三大家族も長年蓄えてきた資源を次々と放出している。

精霊使いの戦意を高め、戦力を向上させ、集落を危機から救うためだ。

そのため、物資一覧には、普段は滅多に見られない品が数多く並んでいた。


ラインが今、目をつけている精霊も、その一つだった。


「風切草(かざきりそう)……」


小さく名を呟き、旗面の一行を見つめる。

風切草は移動を補助し、走る速さを高める。

今の彼が必要としている精霊だった。


このところ、物資一覧には多くの精霊が現れていた。

だが、その中で最も気に入ったのは、この風切草だ。

ただし、簡単には手に入らない。

用意されているのは一株だけで、必要な功績もかなり高かった。


(本気で力を出せば、功績を貯めて風切草を手に入れる機会はある。だが、それでは疑いを招く。それはまずい)


ラインは黙って考えた。


(もう一つの方法は、生気草を大量に生やし、その一環精霊を家族へ売って功績に換えることだ。だが、時間がかかりすぎる。必要な功績が貯まる頃には、風切草をほかの者に取られているかもしれない)


胸の内で首を振った。

この方法も適さない。

では、どうすればいいのか。


ラインは物資一覧と功績順位表を見つめ、考え込んだ。

功績については、周囲の誰よりも明確に、深く理解している。

その本質は、非常時の通貨だった。


平時、市場で流通するのは霊石だ。

霊石そのものに高い商品価値があり、確かな価値を持つ通貨として、価値を落とすことがない。


だが、ウルフウェーブの間は霊石への需要が急増し、通常の通貨流通を維持できなくなる。

そこで、一時的に霊石を代替する、別の通貨が必要になる。

そうして生まれたのが、功績だった。


(功績という補助通貨があれば、ひとまず経済を支え、崩壊を防げる。

地球でも、戦争が起きれば政府が大量の紙幣を発行することが多い。だが、発行しすぎれば物価が上がり、インフレが起きる。功績も同じで、後期になるほど価値が下がっていく。

それでも、集落の存亡が懸かっているときに、功績を使わず、霊石だけで流通を維持しようとすれば、状況はもっと悪くなる。小の虫を殺して大の虫を助ける。

だから、ウルフウェーブが終わるたびに、しばらくは不況が続くのだ)


ラインは小さく舌打ちした。

(こんな粗雑な経済体制など、取るに足らない。私が三環なら、簡単に利用できる。だが今は力が足りず、危険を引き受けられない。無理に手を出せば、火遊びも同然だ)


ラインは心の中で溜息をついた。

結局、環階が低く、力が足りないのだ。

力がなければ、知恵だけあっても役に立たない。


だから、人祖の物語では、人祖は力の精霊との取引を選んだ。

知恵を捨て、力を得たのである。

力こそが、土台となるからだ。


考えていると、周囲の話し声が耳に届いた。


「聞いたか?シオンがまたやったぞ!」


「何だって?今度は誰がひどい目に遭ったんだ?」


「ロア一族のバルガスだ。散々やられたらしい」


「シオンは何を考えているんだ?この前はクル様を負傷させ、今度はバルガスか。ウルフウェーブも終わっていないのに、まだ好き勝手に暴れている!」


「いつもああだろう。もう三環精霊使いなのに、わざわざ二環に絡んでいく。公平に見せるために、精霊を使って自分の実力を二環まで抑えているんだ。退屈にもほどがある。誰に理解できるんだよ」


それを聞き、ラインの心がふと動いた。


(シオンか……ふん、死を待つだけの男だ。だが、おかげで思いついた)


大量の功績を、短期間で手に入れる方法が浮かんだのだ。

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― 新着の感想 ―
昨日から一気の読みました、とても面白いです。 この様子だとラインは前世のシオンについて何か記憶してそうですね。
あっという間に最新話まで読み終えてしまいました。 芯のある主人公ライン、独特な設定がとても魅力的でした。 ここまで続きが気になる作品は滅多にありません。とても面白いです。ありがとうございます。 今後…
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