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目指すは永生 ~二度目の人生を歩む外道精霊使い~  作者: 蛊真人/朱色の豚
外道の本性

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105.酒虫を手に、仏舎利再現

「おばあちゃん、これは何の精霊なの?」


三星窟(さんせいくつ)の三階で、少女が中央の陳列台を指しながら、好奇心に満ちた声で尋ねた。


この樹屋は、三つの階層に分かれている。

一階では一環精霊、二階では二環精霊、そして三階では三環精霊が売られていた。


上の階へ進むほど、陳列される精霊の数は少なくなり、その価値も高くなる。


もちろん、商隊がわざわざ三星窟へ持ち込んだ精霊である。

環の高低にかかわらず、どこでも手に入るようなありふれた品ではなかった。


メディシンは、孫娘が指し示した方向へ目を向けた。


陳列台の中央には、細長い円筒形の切り株が生えている。

その頂から伸びた五本の枝は、人間の指のように内側へ曲がり、互いに絡み合って、小さな檻を形作っていた。


緑の枝葉の間には、親指ほどの大きさしかない球形の精霊が絡め取られている。


真円に近い姿をしたその精霊は、柔らかな銀白色の光を静かに放っていた。

光は翠緑の葉を透かし、陳列台の周囲へ細かな光の斑点を落としている。


「あれは、白銀仏舎利(はくぎんぶっしゃり)という精霊だよ。

一度使えば消えてしまう、消耗型精霊さ」


メディシンはゆっくりと説明した。


「三環精霊使いが使えば、その場で一つ上の小境界へ進むことができる」


仏舎利とは、単独の精霊を指す名前ではない。


複数の環にまたがる、一つの精霊系列だった。


一環の青銅仏舎利(せいどうぶっしゃり)は、一環精霊使いにしか効果を発揮しない。

二環の赤鉄仏舎利(せきてつぶっしゃり)は、二環精霊使いを一つ上の小境界へ進ませることができる。


三環に当たるものが、目の前にある白銀仏舎利だった。


そして四環には、さらに驚くべき価値を持つ黄金仏舎利(おうごんぶっしゃり)が存在する。


少女は陳列台の脇に掲げられた値札を見ると、目を大きく見開いた。


「霊石三万個?」


驚いたように舌を出す。


「高すぎるよ!」


「それは最低入札額にすぎないよ」


メディシンは首を横に振った。


「実際の落札額は、少なくとも霊石五万個にはなるだろうね。

どうしても必要としている者がいれば、さらに値が上がっても不思議ではないよ」


少女は改めて白銀仏舎利を見つめた。


その瞳に浮かんでいた好奇心は、いつしか畏敬へ変わっている。

霊石五万個など、少女には想像すらできない大金だった。


「さて、三階もだいたい見終わったね」


メディシンは白銀仏舎利から目を離し、杖をつきながら階段へ向かった。


「一階の入口脇にある総合受付へ行こう。

時間を考えれば、酒虫の入札もそろそろ終わっているはずだよ」


三星窟で精霊を販売する方法は、その環階(ランク)によって異なっている。


一環精霊は、最初の入札を受けてから半日のあいだ、陳列台に置かれる。


時間が来ると入札は締め切られ、最も高い値をつけた者が精霊を買い取ることができた。


誰からも入札がなければ、そのまま陳列され続ける。


そして最初の入札が入った時点から、半日の計測が始まる仕組みである。


二環精霊の入札期間は一日。

三環精霊になると、さらに長い二日間が設けられていた。


一見すると、いささか複雑な規則に思える。


しかし、これはベルナー商隊が長年の行商を通じてまとめ上げた経験だった。


精霊の環階が高くなるほど、その値段を負担できる精霊使いは少なくなる。

買い手も霊石を用意したり、精霊の用途を見極めたりするための時間を必要とする。


場合によっては、仲間や親族へ連絡し、共同で資金を出すこともあった。


環階ごとに陳列時間を変えることで、商隊は取引の速さと最終的な落札額の両方を確保しているのだ。


祖母と孫は、一階の総合受付へやってきた。


メディシンが用件を伝えると、入札結果を確認する女性の精霊使いが、しばらく記録をめくった。


やがて、彼女はわずかに腰を折る。


「大変申し訳ございません、メディシン様、あちらの酒虫は、すでに別のお客様がお買い上げになりました」


「ほかの者に買われただと?」


メディシンは、たちまち眉をひそめた。


自分のつけた値には、十分な自信があった。


酒虫がどれほど貴重であっても、所詮は一環精霊である。

メディシンの入札額は市価を明らかに上回っており、これまでの経験から見ても、八割から九割ほどの確率で落札できるはずだった。


まさか、最後に競り負けるとは思ってもいなかった。


「誰よ、わたくしの酒虫ちゃんを横取りした意地悪な人は!」


少女が頬を膨らませて尋ねた。


「クスリ」


メディシンが小声でたしなめる。


クスリはようやく自分の失言に気づき、唇を尖らせながらも、大人しく口を閉じた。


受付の女性精霊使いは怒る様子もなく、改めて頭を下げる。


「申し訳ございません、本店では、購入されたお客様のお名前を明かすことはできません。

どうか、ご理解くださいませ」


入札者の名前を伏せることは、この取引方法を円滑に機能させるうえで重要だった。


同じ一族で暮らしていれば、誰もが日頃から顔を合わせる。

長輩や友人、親族が欲しがっている品を見つけた場合、自分も同じものを望んでいたとしても、人情に縛られて譲らざるを得ないことがある。


匿名入札であれば、そうした気兼ねを避けられる。


売り手とほかの買い手の双方に正体を知られないまま、誰もが自分の必要性と財力だけを基準に値をつけられる。


結果が発表されたときには、精霊はすでに新しい所有者の手へ渡っている。


その段階になって追及しようとしても、相手が誰か分からない。


親族の情や人情は、人の行動を縛ることこそできる。


しかし、人の私欲そのものを消し去ることはできない。

取引が人目から隠されるほど、礼儀の下に潜んでいた欲望は、何の遠慮もなく表へ現れるものだった。


メディシンはしばらく考え込み、やがてゆっくりと口を開いた。


「そちらの決まりは理解している、酒虫を買った者が誰か、聞くつもりはないよ」


そう言って顔を上げ、受付の女性精霊使いへ視線を向ける。


「だが、あの酒虫がいくらで落札されたのか。それだけは教えてもらいたいね」


女性精霊使いは困った表情を浮かべ、再び深く頭を下げた。


「誠に申し訳ございません、落札額についても、公開することはできません。

ですが、ご安心ください。

購入されたお客様が、すべての入札者の中で最も高い値をつけていたことは間違いございません」


「ベルナー商隊は信用を何より重んじております、

このような件で、不正を働くことは決してございません」


「ふん」


メディシンの顔がわずかに険しくなる。


「小娘、わしが誰か、分かって言っているのかい?」


女性精霊使いの表情が固まった。

それでも、彼女は口を割ろうとはしなかった。


周囲の空気が徐々に張り詰めていく。


そこへ、一人の中年男が足早に近づいてきた。


「何か問題でもございましたか?」


男の腰には、三環精霊使いを示す白い帯が巻かれている。


おそらく三星窟を通じて、総合受付で争いが起きていることを、すでに察知していたのだろう。


「番頭様」


女性精霊使いは、すぐさま男へ頭を下げた。


番頭は片手を振る。


「お前は下がっていなさい。ここは私が引き受ける」


「かしこまりました」


女性精霊使いは内心で安堵し、すぐに脇へ下がった。


番頭はメディシンへ向き直ると、丁寧な笑みを浮かべた。


「これはメディシン様。

お孫様をお連れになるとは、以前から伺っておりました。

こちらがクスリお嬢様でいらっしゃいますか?」


彼は少女へ目を向け、笑顔で褒める。


「噂どおり、利発で愛らしいお嬢様ですな」


同じ三環精霊使いである番頭を前にして、メディシンの表情も少しだけ和らいだ。


しかし、落札額を聞き出すことまで諦めたわけではない。


番頭も、当然ながら彼女の思惑には気づいていた。

そのため、内心では大いに頭を悩ませる。


彼は長年にわたって商隊へ付き従ってきた、オスカー・ベルナーの腹心だった。


ローデン一族の内部事情にも詳しい。


目の前にいる薬堂長老は、一族で最も重要な治療資源を握っているだけではない。


これまで多くの精霊使いの命を救い、広大な人脈を築き上げていた。

人脈と影響力だけを見れば、ローデン一族の中で族長ハクに次ぐ存在と言っても過言ではない。


ベルナー商隊にとっては、カルやコアのような実権長老を敵に回すよりも、メディシンの機嫌を損ねるほうが避けたい事態だった。


番頭はしばらく考え、ようやく一つの折衷案を思いついた。


「メディシン様、酒虫をお孫様への贈り物になさりたいのであれば、私の権限で一度だけ特例を認めましょう」


彼は声を落とし、続ける。


「実を申しますと、商隊の在庫には、全部で三体の酒虫がございます。

それぞれをどこへ運び、どの場所で売るかは、すべてオスカー様が直々にお決めになったことです。

酒虫は数が少なく、本来ならば勝手に動かすことはできません」


番頭は愛想笑いを浮かべた。

「ですが、メディシン様のためであれば、別の場所から一体を密かに回すこともできます

お値段は、先ほどお出しになった入札額と同じで結構です、いかがでしょうか?」


普通の客であれば、想像もできないほどの厚遇だった。


しかし、メディシンはすぐには頷かない。

ゆっくりと首を横に振り、手にしていた杖で床を一度突いた。


コン。


小さな音が響き、番頭の顔に浮かんでいた笑みが、わずかに固まった。


「そちらの商隊に損をさせるつもりはないよ」


メディシンは平然と言った。


「先ほどの酒虫に落札額があるのなら、新たに回す酒虫も同じ値段で買おうじゃないか」


「それは……」


番頭は、たちまち返答に窮した。


二体目の酒虫を買うというのは、あくまで表向きの理由にすぎない。


メディシンが本当に知りたいのは、やはり先ほどの落札額だった。


「どうしたんだい?」


メディシンは、わざと顔を険しくする。


「まさか、わしには払えないほど高い値で落札されたとでもいうのかい?」


「決して、そのようなことはございません!」


番頭は慌てて否定した。


しばらくの沈黙が流れる。


やがて番頭は、どうしようもないとばかりにため息をついた。


「承知いたしました、メディシン様がそこまでおっしゃるのでしたら、先ほどの酒虫と同じ落札額でお譲りいたしましょう」


番頭は少し身を寄せ、小声で一つの金額を告げた。


それを聞いたクスリは、まず安堵の息をつく。


しかし、すぐに不満そうに頬を膨らませた。


「何よ、わたくしたちより、霊石二十個多いだけじゃない!」


メディシンは目を細め、何も答えなかった。


わずか霊石二十個の差。

その金額は、ちょうどメディシンが想定していた上限を超えながらも、大きく外れてはいない。


相手は偶然この値をつけたのか。


それとも、自分が提示する金額の範囲を、すでに読み切っていたのか。


……


その頃、すでに三星窟を離れていたラインは、一軒の酒屋を訪れていた。


二体目の酒虫は、すでに手に入った。


次に用意すべきものは、酸味、甘味、苦味、辛味を持つ四種の美酒である。


(甘い酒なら、すでにある)


以前、分家任務を達成した際、ラインは黄金蜂の巣から大量の黄金ミードを持ち帰っていた。


内務院へ提出したのは、その一部にすぎない。

残りは今も、大切に保管してある。


黄金ミードは香りが濃く、味も甘い。

煉成に必要な甘い酒として、申し分のない品だった。


(辛い酒なら、どこにでもある。度数の高い烈酒を探せば、条件を満たすものは簡単に見つかるだろう

酸っぱい酒も、果実酒の中から選べばいい)


ラインは酒屋に並ぶ商品を確かめながら、胸の内で考え続ける。


(本当に厄介なのは、やはり苦い酒だ)


条件に合う苦い酒さえ見つかれば、今夜にも四味酒虫(しみしゅちゅう)の煉成を試すことができる。


反対に、苦い酒が手に入らなければ、二体目の酒虫を得たところで、待ち続けるしかない。


そして世の中というものは、得てして不安に思っていることほど現実になりやすい。


それから数時間、ラインは臨時マーケットにある酒屋と天幕のほとんどを回った。


辛い酒は、すぐに見つかった。

酸っぱい酒の数は少なかったものの、外から来た商人の一人から、強い酸味を持つ果実酒を買うことができた。


しかし、苦い酒だけは、どこにもなかった。


商隊には、苦味のある薬草を加えた酒が何種類か存在していた。


だが、薬草の気配が酒虫の煉成を妨げるため、それらを使うことはできない。


太陽が少しずつ西へ傾いても、ラインは何一つ手掛かりを得られなかった。


「世の中、思いどおりにならないことが十中八九とは、よく言ったものだ」


ラインは諦めたように、小さくため息をつく。


苦い酒がない以上、四味酒虫の煉成は、ひとまず先送りにするしかない。


四味酒虫の力を得られなければ、ラインの精神力をさらに精錬することもできない。

修練速度も、再び凡庸なものへ戻ってしまう。


その日の午後、ラインは再び三星窟を訪れた。


一階では、すでに多くの陳列台の商品が入れ替わっている。


午前まで酒虫が置かれていた中央の陳列台には、今では一体の浄水の精霊(じょうすいのせいれい)が収められていた。


その姿は、地球にいるヒルとよく似ている。

身体は細長く柔らかい。

しかし、気味の悪さはまったくなかった。


全身は半透明の淡い青色をしており、表面には清らかな水の光が絶えず流れている。


(浄水の精霊は、空界に残る異種の精神力を洗い流すことができる)


それを見た瞬間、ラインはメルのことを思い出した。


メルの資質は下等にすぎない。

しかし、祖父カル・ローデンの助けを受け、短期間で二環まで進んでいた。


当然ながら、そのような強引な成長に代償がないはずもない。


カルがメルの空界へ注ぎ込んだ精神力には、カル自身の気配が残されている。


それを速やかに洗い流さなければ、異種の気配が空界の根本へ影響を与え、メルの今後の修練を大きく妨げることになる。


だからこそ、カルは必ず、この浄水の精霊をメルのために買おうとするはずだった。


(カルの性格と財力を考えれば、過度に出し惜しみすることはない。

だが、意味もなく価格を吊り上げることもしないだろう)


ラインはしばらく考えただけで、一つの判断を下した。


(入札額は、霊石六百三十個から六百四十個の間)


その金額は、酒虫の通常の市価すら上回っている。


しかし、空界から異種の気配を取り除かなければならないメルにとって、浄水の精霊は酒虫よりも遥かに価値が高かった。


(私が霊石六百五十個を出せば、高い確率で落札できる。

さらに十個を上乗せすれば、まず間違いなく手に入るだろう)


(午前中の酒虫については……)


ラインの口元に、冷たい笑みが浮かぶ。


(私の入札額は、メディシンよりも霊石二十個ほど高かったはずだ)


その判断は、何の根拠もない当てずっぽうではなかった。


前世で生きた五百年の経験と、地球で発達した商業知識。


その二つをもとに導き出した答えである。


人の立場、性格、必要性、財力。

そして、商品そのものが持つ価値。


そのすべてが、最終的な入札額へ影響を与える。


十分な情報さえ集めれば、ほかの者の提示額が見えない封印入札であっても、まったく予測できないわけではない。


ラインの前世の経験では、算出した金額へ霊石十個を上乗せすれば、八割ほどの確率で落札できる。


酒虫を買う際には、そこからさらに霊石十個を追加していた。


それは無駄遣いではない。

あらゆる事態へ備える、ラインの慎重な行動原則だった。


もっとも、今回ラインは入札しなかった。


浄水の精霊など必要としていない。


無理に買い取ったところで、カルから目をつけられ、調査を招くだけである。


それ以上に、商隊はこれからも数日間、ローデン集落に滞在する予定だった。


本当に自分へ適した精霊が現れるまで、手元の霊石を残しておく必要がある。


(今の私に最も足りないのは、偵察と移動補助の精霊だ)


ラインは樹屋の中をゆっくりと見て回る。


(来年には、ヴェルデン山で本格的なウォルフウェーブが発生する。

そうなれば、危険を冒してここへ入ってくる商隊などいなくなる。

私は酒飲のカイの継承を手に入れた。


ラインはふっと息を吐き、天井を見上げた。

(だが、あれは彼が重傷を負ったあと、慌ただしく遺したものにすぎない。

そこにどれだけの精霊が残されているのか。

私に足りないものを補えるのか、今の段階では何も分からない)


前世の記憶にある来年のウォルフウェーブは、極めて危険なものだった。


月華印とシロタマズスキンを持っていたとしても、大規模な狼群に包囲されれば、ラインが生き残れる可能性は低い。


それまでに、自らの戦闘体系を可能な限り完成させなければならなかった。


環階であれ精霊であれ、あまりに大きな弱点を残しておくことはできない。


それから三日間、ラインは毎日三星窟を訪れ、新たに並べられた精霊を確認した。


そして三日目。


ラインは一階で、思いがけない掘り出し物を発見した。


一体の黒イノシシの精霊である。


黒と白、二種類のイノシシの精霊は、どちらも精霊使いの肉体を根本から強化する。


ラインはすでに白イノシシの精霊を使い、イノシシ一頭の力を得ていた。

その後、白イノシシの精霊はシロタマズスキンの煉成によって消滅した。


しかし、一度身体へ定着した力まで失われたわけではない。


今後、別の白イノシシの精霊を使ったとしても、ラインの肉体には何の効果も現れない。


だが、黒イノシシの精霊なら話は別だった。


黒と白のイノシシの精霊による強化は、互いに重ね合わせることができる。


目の前の黒イノシシの精霊を煉化すれば、ラインの力は再び大きく向上する。

彼は迷うことなく、入札額を書いた竹紙を陳列台へ入れた。


正午になると、入札が締め切られた。


黒イノシシの精霊は、無事にラインの手へ渡った。


その後の数日間にも、三星窟には偵察や移動補助の能力を持つ精霊が何体か並べられた。


しかし、いずれも能力は平凡で、ラインの要求を満たすものではない。


しかも、それらは普通の陳列台に置かれており、ほとんど注目を集めていなかった。

わざわざ入札しようとする者も少ない。


商隊がローデン集落へ八日間滞在すると知ったラインは、焦って選ぼうとはせず、辛抱強く待つことにした。


そして、七日目。


ラインは三星窟の二階にある中央の陳列台で、一体の赤鉄仏舎利を発見した。


二環精霊使いを、瞬時に一つ上の小境界へ進ませる精霊である。


最低入札額は、霊石三千個。


その知らせが広がると、大勢の二環精霊使いが三星窟へ押し寄せた。

金額の書かれた竹紙が、次々と陳列台へ投入されていく。


入札の熱気は、先日の酒虫とは比べものにならなかった。


ラインは人垣の外に立ち、赤鉄仏舎利をじっと見つめる。


(これさえ手に入れば、私は二環初位から中位へ、一瞬で進むことができる)


二環中位へ到達すれば、空界からさらに質の高い緋紅色の精神力が生み出される。

月華印(げっかいん)もシロタマズスキンも、より強い精神力の支えを得られる。


使用できる回数と、実際に発揮される威力も、それに伴って向上するだろう。


環階こそ、精霊使いのあらゆる力を支える根本である。


能力の平凡な偵察精霊や移動補助精霊を無理に買うよりも、直接環階を引き上げられる赤鉄仏舎利のほうが、今のラインには遥かに適していた。


しかし、ラインはすぐに眉をひそめた。


(最低入札額は霊石三千個にすぎない。

だが、最終的な落札額が、その程度で収まるはずがない)


本格的なウォルフウェーブが迫っている。

災害が本当に訪れる前に、すぐさま実力を高められる品は、どれも激しい奪い合いになる。


(最終的な落札額は、少なくとも霊石五千個を超える。

場合によっては、八千個近くまで上がるかもしれない。

だが、私はすでに酒虫と黒イノシシの精霊、それに煉成で使う酒を買っている……)


ラインは手元に残った霊石を数え、次第に険しい表情を浮かべた。


この赤鉄仏舎利を手に入れるには、どうやら霊石が足りない。


新たな難題が、すでにラインの前へ突きつけられていた。

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