第13話「復活の花-捕食される村-」
ナギは寝転び、無の魔石を眺め掲げていた
「無の魔石…、もっと早く手に入れば
君のことも助けてあげることができたのかな…」
ナギは悲しい顔をし、ふと昔のことを思い出していた
「(よぉ、お前らか、よそ者っていうのは?
ーーー俺はユウトだ!よろしくな!)」
それは幼少時代、ユウトと初めて会った時の記憶だった
「海賊?」
「そうだ、海賊はすげーんだぜ!海を冒険して伝説を残すんだ!デカい船乗って!」
「海を冒険…」
ユウトの話を聞いて
メイは静かに呟き、傍らにいたナギは首を傾げていた
「うぅ…」
「ヘ、ヘーキなの…?」
「なあに!これくらいヘーキだ!
海賊はおそれを知らないんだ!」
暗い森の中、臆さず進むユウトの後ろで
メイは心配そうな顔をし、
ナギはメイの背中で怯え縮こまっていた
「待ってよぉ〜」
砂浜でユウトを追いかけるメイ
「なんだメイ、もうバテたのか?
そんなんじゃ海賊は務まらないぞ」
「う、うっさい!」
ユウトの言葉にメイは頬を膨らませた
「ユウトくんってなんでもできるよね…
先に話しかけてくれたのもユウトくんだったし」
ナギがユウトの背中を見つめながらそう呟くと
ユウトは笑顔を見せながら返した
「そりゃそうさ、俺は海賊の船長になる男だからな!なんでもできて当たり前だ!」
そんなユウトを見て
ナギは頬を赤く染めた
「ユウト……」
昔の思い出を振り返ると
ナギは少し寂しそうな笑みをこぼしたーーー
「見えてきたぞ、あれがナイア島だ」
グレイブはそう言うと大きく舵を切り、船を島の方へと寄せた
二人は陸に降りるといつものように散策を開始し、やがて村に到着すると辺りの様子を調べた
「マモノ…ですか?」
「あぁ、この村で起きている不吉の元凶だ
そいつをぶっ潰せば雲が晴れ、村も元に戻る」
二人は村の娘に声をかけ、マモノについての情報を探っていた
「何か心当たりはないか?」
「そうですね…、島には元々マモノが生息していたので…
村の人たちも、あまり村の外には出たがりませんし…」
「そうか」
グレイブが話を切り上げようと、ふと視線を下に移した時
「そういえば…」
と村娘は何か思い出したように話し始めた
「ガラの滝が少し騒がしくなったと聞きましたね」
「ガラの滝?」
「えぇ、村外れにある大きな滝です
関連があるかはわかりませんが…」
「どうする?」
「そうだな、もう少し情報を探ってみるか」
相談する二人に娘はふとささやく
「あの、気をつけてください…」
「この島にはとても恐ろしい…言葉には言い表せないような"何か"がいるんです」
「そいつに体を吸われた人は…
たちまち…干からびた死体にーーー」
そう言いかけた途端、娘の声が突然奇声に変わった
「きゅごっっ!?」
ふと目線を映すとそこには
何かに吸われるようにキュッキュッと体が萎む娘の姿があった
娘の顔は徐々に薄く変色していき
やがて枯れ木のように干からびると
グレイブ達の方へと真っ直ぐ倒れてきた
「こいつは…」
二人は驚いた様子でしばらく娘の亡骸を眺めたーーー
その後、グレイブ達は村を離れ、大きな滝の前へと到着していた
「ここがガラの滝か」
グレイブは滝を見上げながら
ふとそう呟いた
「村の話だとこの辺りが特にマモノが活発になったって話だが…」
グレイブはそう言って辺りを見渡した
そこは緑に囲まれた森林地帯で
半分に抉れたような崖からは滝がドバドバと川に向かって降り注いでいた
「次元に吸い取られるように捕食される村か…また奇怪な話だ」
グレイブは村で起きた出来事を振り返り、難儀な顔をした
「瘴気の影響が強くなってるのかもしれない…」
そうつぶやくナギにグレイブはサッパリした声で返した
「まぁいずれにしても、今はマモノを倒すことが先決だ
無の魔石があれば楽勝だろう、さっさと済ませて花のありかを聞き出そう」
グレイブはそう言うと奥へと進み
ナギも後を追いかけた
しばらく道なりに進み
成人男性と同じくらいの大きさのイモムシや
フナムシのようなマモノを倒しながら滝の裏を調べると洞窟があり、内部へと侵入した
「気をつけろ」
「うん…」
洞窟の中はジメジメとしていて
水の滴る音やモゾモゾと何かが這いずるような音が聞こえ、あまり居心地のいい場所とは言えなかった
「くそ、早く出口を見つけるぞ」
「はい…!!」
グレイブに急かされナギは焦りながら奥へと進み、ナマコのようなマモノや
イソギンチャクのようなマモノを避けながら
やがて出口付近まで差し掛かると
奥の方から物凄い唸り声が洞窟内に響いてきた
「ぐっ…!?」
それは振動が鳴るほど大きく
グレイブは思わず耳を塞いだ
ナギは無の魔石の効果からか、何も感じない様子で戸惑いながらグレイブを見ていた
しばらくして振動は止み
グレイブは耳から手を離して、大きなため息を吐いた
「とんでもない鳴き声だ」
「だ、大丈夫?!」
「あー、なんとか平気だ」
ナギはグレイブを心配し、洞窟の奥を眺めた
「お前の方はどうだ?」
「音も振動も感じるけど…、なんだろう、
まるで私はそこにはいないような…不思議な感覚です」
「そうか、やはりそいつはかなり強力だな」
グレイブは無の魔石に感心すると
先へと進み、ナギも後を追いかけた
洞窟を抜けるとそこはもう一つの滝裏だった
細い足場を道沿いに沿って進むと
川の中から大きな口を開けたコイのような巨大なマモノが飛び出し、壁に張り付いた
「相手にするな、行くぞ」
ナギはグレイブの指示のもと、マモノの腹の部分をくぐるようにして二人はいそいそとその場を後にした
滝から離れ、しばらく森を進むと前方に
なにやらうごめく物体があった
近づくとそれは根っこのような大きなマモノだった
茶色い大根のような胴体に短い足
大きな口からは人間の歯のようなものが生えそろっていた
マモノは口を開くと耳障りな叫び声を発し、ナギ達は思わず耳を塞いだ
「キシャアアアア」
「ぐぅぅッッ!!」
その声は凄まじく、地面は揺れ、足はすくみ、鼓膜が破れそうなほどだった
「!!…???」
思わず耳を塞いだナギだったが、
魔石の効果で何も感じず、キョロキョロと辺りを見渡した
しばらくして音が止むとグレイブは剣を構え、マモノの元へと走った
ナギも後へ続こうと腰を下げると、地面を這いずる妙なものに気がつき、思わず足を止めた
「うおおおお!!!」
マモノの元へと突進するグレイブを前方から何かが襲いかかった
「ぐっ…!?」
グレイブは咄嗟に後ろへと避け、致命傷を防いだ
見るとそれは根っこのようなものだった
避けられた根っこは行き場を失い
小動物に突き刺さった
するとゴクゴクと何かを飲む音と共に小動物の体がみるみると痩せ細っていき、やがて干からびていった
「こいつ…生物のエネルギーを呑んでやがるのか」
しばらくすると根っこは小動物の体から離れ、地中へと潜った
「どうやらこいつが島で悪さをしている奴の本体のようだな」
グレイブはそう言って剣を構えると、もう一度マモノの元へと走り出した
「グレイブ…!」
「ナギ、奴の動きに注意しろ、根っこにもな!」
グレイブは根っこを避けながら進み、マモノ本体まで差し掛かるとその巨体目掛けて大剣を大きく振り下ろそうとした
しかし、マモノはグレイブの存在に気づくや否や頭を大きく振って、地面へと強く叩きつけてきた
「!?」
グレイブは咄嗟に後ろへ回避したが
反動であたりには強い風が吹いた
「敵を寄せ付けないつもりか…、こいつ、完全に俺達のことをエサだと思ってやがる」
グレイブはマモノの行動に若干の苛立ちを見せながら、攻撃の隙を伺った
その後も根っこを避けながら
なんとかマモノの元へと近づくが
頭を叩きつけてきたり、噛みつかれそうになったりして、なかなか攻撃を与えられず
有効なダメージを与えられずにいた
マモノはまるで相手にならないと嘲笑うかのように不適な笑みをこぼしたように見えた
マモノは上を向くと、さっきの耳障りな音を周囲に響かせた
二人は咄嗟に耳を塞ぎながら
どうすればダメージを与えられるかを考えていた
しかし根っこは考える暇も与えまいと
二人の方へと容赦なく襲いかかった
グレイブは咄嗟に避けたが
ナギは反応が遅れて根っこに隙を与えてしまった
「!?」
根っこはナギの胸元に真っ直ぐ伸びた
しかし、根っこは皮膚の上で停止し
それ以上刺さることはなかった
ナギは咄嗟に根っこを掴み、後ろへと引っ張った
「グヴッ…!?」
驚くマモノを意に介さず
根っこはブチブチと地面から引きちぎられていく
ナギは根っこを引っ張ったまま
短剣をマモノの方へと投げつけた
回転する短剣はマモノの口の中を通り、そのまま口内を突き破って、後ろの木に突き刺さった
「グヴァア…アァ…」
マモノは苦しむように項垂れるが
突き破られた口内はすぐに修復され
マモノは再び立ち直った
「こいつ、不死身か!!」
叫ぶグレイブとは裏腹に
ナギは短剣を取りに行こうとした
「ナギ!!」
グレイブは咄嗟に叫び、自身の大剣をナギに放り投げた
ナギは大剣を手に取り、マモノの元へと走り
地面から這い出る根っこを足場にして高く飛び、その脳天に勢いよく剣を叩き込んだ
叩き込まれた剣はマモノの頭からマタへ砕くようにまっすぐ落ち、ナギは地面へと着地した
縦半分になったマモノはフラフラと足取りを悪くさせ、それぞれ逆方向へと倒れた
その後マモノの体は干からびていき
やがて息をしなくなった
雲が晴れ、大地に光が戻ると
二人は一息つき、一旦村へと引き返していったーーー
「感謝します、あなた方は村の恩人です」
雲が晴れたことに喜び、感謝する
老人にふとグレイブが尋ねる
「じいさん、復活の花について何か知らないか?」
「復活の花?はて…昔、本で読んだことがある気がしますが…、この村にはそんな花があると言った話は聞いたことがありませぬのう…」
「そうか」
グレイブが話を切り上げ、船に戻ろうとすると
老人に呼び止められた
「あぁ待ちなされ、そういえば
この島から北西にある島にならもしくは…
あの島は"神秘の島"と呼ばれていまして
もしかしたらその島にその復活の花とやらがあるかもしれません」
「神秘の島…?」
グレイブ達は有益な情報を得たと感じ
神秘の島を次の目的地に指定し、船へと戻ったーーー
復活の花-捕食される村-(完)




