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海賊姉妹  作者: 柳田健二
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第14話「復活の花-切り裂かれる村-」

北西(ほくせい)に向けて走る船

波に揺れる中、グレイブがふと目をやると

遠くの方に何やら虹色に輝く島が見えてきた


「どうやらアレがそうらしいな」

そうつぶやくとグレイブは舵を切り、船を島まで走らせた


やがて島に着くと、二人は陸に降り、辺りを見渡した


そこは薄く輝く白い浜辺に、ヤシの木やアバラのような(シダ)が生い茂る小さな島だった


「如何にもだな」


グレイブがそうつぶやくと

二人は島を探索するため、森の奥へと歩いていったーーー


森の中は蒸し暑く、

周辺には静かに佇むフラミンゴの群れや

濃いめの青い川などが流れていた


当てもなく島を歩き回っていると

やがて二人は小さな洞窟へと辿り着いていた


洞窟の奥には大きな空間が広がっており、その中央にはポツリと小さな石碑が置かれていた


二人は石碑の前に立つと、そこに刻まれた文字を読み上げた


「友よ、我らは永遠である

たとえ命朽ち果てようと…」


「…東に浮かぶ島

そこに咲く一輪の…」


それ以上はかすれて読めなかった


「どういう意味だろう?」

「東に浮かぶ島か…こいつが復活の花を指してるならそこに向かう価値もありそうだが…どうする?一旦船に戻るか」


ナギは頷き、二人は洞窟を後にし、一旦船に戻ることにしたーーー


「結局、花は見つからなかったな

村もない…よくわからない島だ」


「……」


「どうする?次は東に向かうか?他に当てもないしな」


ナギは小さく頷き

グレイブは東に向けて船を走らせたーーー


しばらく海を渡っていると

遠くの方に大きな島があるのが見えてきた


「アレか…?」


グレイブは舵を切り、島の陸地に船を寄せて停止させた


「まずは瘴気を片付けるか

雲が晴れて探索がしやすくなりそうだし

聞き込みもできるしな」


グレイブはそう言って二人は茂みの奥へと進んでいったーーー


道中には二つに切られた看板や

小動物の残骸があり、不穏な気配が漂っていた


やがて村が見えると、二人は呼吸を整えてそこまで向かった


「注意しろ、何が起きるかわからん」


二人はこれまでの事を振り返り、慎重に村の中を歩き、聞き込みを開始した


村の人間に異変がないかを聞いて周り、マモノの居場所を特定しようとした


「ふぅ、ダメだな」


グレイブが立ち止まり、ふと呟く


「みんな怯えて情報を探るどころかまともに話すらできん」


「この村で一体何が起きているんだ?」


一通り村を歩き終わり、収穫がないまま

二人はその場で立ち往生となった


「こいつも使い道がなけりゃ、ただの石ころか」


グレイブが懐から運の魔石を取り出すと

魔石は手から滑り落ち、地面へと転がり落ちてしまった


「おっと…」


グレイブが魔石を取ろうとしゃがみこむと、冷たい風がナギの頬を掠め、その瞬間、周りに一本の線が入った


「!?」


魔石を持って立ち上がるグレイブは何が起きたかわからず、村の奥をジッと見つめた


「なんだ…?」


しばらくすると奥の木がゆっくりと横にずれていき、それに合わせるように付近にいた村人達の体も胴だけが横にずれて地面へと落ちていった


「こいつは…!?」


「グレイブ!!」


ナギの声にハッとしたグレイブは即座に身をかがめ、第二の攻撃に備えた


「次元が真っ直ぐに切れた…、線が入って…」


「こいつがこの村の…」


二人は動揺しながらも、なんとか息を整えて現状を整理した


やがて村は静まり返り、それ以上の異変は起きることはなくグレイブは慎重に立ち上がり、周辺を眺めた


「お前は大丈夫か」


「うん、無の魔石があるから…」


ナギの返答にグレイブは安堵したのち、真剣な顔をして考えを巡らせた


「(次元が切り裂かれる村か…、厄介だな

敵の姿が見えん上に、どこに飛んでくるかもわからん即死級の攻撃…、運の魔石があるとはいえ、こいつは確率でしかないからな)」


「(一度船に撤退するのも手だが、相手の正体がわからん以上、迂闊に動けん…やはり、マモノを倒すしかないか)」


「ナギ、俺が死んでも臆さず進め

花を手に入れたらすぐに船に戻り、メイを復活させるんだ。そしてこの件には2度とかかわるな、いいな?」


「…!!えっと、グレイブは船に残って私だけが戦いに行くっていうのは…?」


「お前が一人でか?無謀なことはやめておけ

無の魔石を持ってるからと言って

誰のサポートもなしに慣れない場所を一人で探索するのは自殺行為だ、石を途中で落とすリスクもあるしな」


「それに相手の攻撃範囲もよくわからん

仮にお前が船に残り、俺が一人で行ったとしても船に残ったお前が無事である保証はない」


「……」


「マモノも俺たちの存在を認知したはずだ

このまま無事に帰してくれるとは思えん

進むしかない、マモノを探し出すんだ」


ナギは静かに頷き、グレイブの後を追い、二人は森の奥へと入っていったーーー


「急を要するな、急いで探し出さんと」


足早に歩くグレイブの後ろでは

ナギは不安そうに(うつむ)いていた


「花なんて本当にあるんだろうか

もし、このまま…何もなかったら…」


「霧が濃くなってきた、こっちに何かありそうだな」


グレイブは霧の発生源を辿り、やがて青白く光る場所へと出た


「ここは…」


そこは薄暗く、光るキノコが周囲を照らし

周辺には蛍などが飛んでいた


近くにはカマを持った青いワシ鼻をした玉のようなマモノ達がフワフワと宙を浮いていた


「どうやら正解を引き当てたらしい

行くぞ、こいつらの動きを辿れば

親玉の元へ辿り着けるはずだ」


ナギは頷き、グレイブの後を追いかけたーーー


マモノ達が漂う中を進んでいく二人


マモノは二人に気づくなり、カマを振り下ろし攻撃を仕掛けてきた


「ふん、バカが」


二人は攻撃を回避し、グレイブはマモノめがけて剣を振り下ろした


しかし、剣はマモノの体をすり抜けてしまった


「…!?こいつ、実体がないのか…!!」


そして音に気づいたマモノ達が次々とグレイブ達の前に集まってきた


「チッ…」


剣を構えるグレイブにマモノは容赦なくカマを振り上げた


するとナギが前に出てきて

振り下ろされたマモノのカマはナギの首元に当たり、しかしそれ以上は切れず、停止してしまった


「グェッ…!?」


ギョロリとした目玉で驚きを見せるマモノに対し、ナギは短剣をマモノめがけて突き出した


「グォヤッ…ッ…!?」


短剣はマモノの体を貫いた


剣先からは紫色の血が(したた)っている


絶命するマモノを見て周囲のマモノも驚き、たじろいでいた


グレイブはそれを見てナギにひと声かけると

大剣を差し出した


大剣を受け取ったナギはツカを強く握りしめ、マモノ達めがけて大きく振りかぶった


「ビョヒョエェェ…ッッ」


強い衝撃波や斬撃と共にマモノ達が一斉に切り裂かれていった


「ヒョ、ヒョゲヘェ〜ッッ!!」


生き残ったマモノが血相を変えて森の奥へと慌てて逃げていった


「追うぞ」


グレイブの言葉にナギは頷き、二人はマモノの後を追ったーーー


「ヒ、ヒッヒ〜、ヒャアァッ!!」


怯えた様子でマモノが何者かにすり寄ると

突然マモノは金属音と共に真っ二つに裂かれ、絶命してしまった


マモノを追ってきた二人の前に姿を現したそれは

白いローブに身を包んだ死神のようなマモノで、手には巨大なカマが握られていた


マモノの顔には笑顔を表した仮面がつけられており、

表情が読み取れず、なんとも無機質で不気味な容姿をしていた


「こいつが親玉だな、ナギ構えろ」

「はい!」


ナギは剣を構え、マモノと対峙した


マモノは二人を眺めるや、その場に浮かんで、かかってこいと言わんばかりに手招きをしていた


グレイブは剣を強く握りしめ

ジリジリとにじり寄るように前に出た


「行くぞ!!」


という掛け声と共にグレイブは走り、マモノに迫ると

その体に勢いよく剣を振るった


しかしマモノは後ろに回避し、グレイブの剣はからぶってしまった


(あと)に続いたナギがグレイブの肩を踏み台にすると

マモノの方へと勢いよくジャンプをし、その体に短剣を振るった


しかし、マモノは更に後ろへと下がり

はるか上空へと飛んでいってしまった


「チッ、あんな遠くまで…!」


上空に浮かぶマモノは二人を見下ろすと

カマを強く握りしめ、腰を後ろへと回し

二人のいる位置目掛けて勢いよくカマを振りおろした


「!!」


危険を察知した二人が急いでその場から離れると

さっきまで足がついていた地面に一本の亀裂が入り、地面はバックリと二つに割れてしまった


二人が別々の場所へ着地すると

マモノはそれを見計らったかのように

カマを上に構えて、クルクルと回し始めた


すると回転するカマから複数の小さな煙が

二人の周りへ降り注ぎ、それはマモノの形へと姿を変えて別々になった二人を囲い込んだ


「ナギ!!」

「グレイブ…!!」


二人はそれぞれ名を叫び合い、ナギは向かってくるマモノたちを難なく蹴散らすもグレイブは対処ができず、マモノたちが一斉にカマを振り下ろすのをただ眺めることしかできなかった


グレイブが足を踏み込んだ瞬間、カマは勢いよく降り下され、激しい砂煙があたりに舞った


「ッッ…!!」


ナギは思わず腕を前に出し、無の魔石の効果を忘れて砂煙が目に入り込むのを防いだ


「グレイブ…ッッ!!」


ナギは叫んだ、しかし応答はなく

激しい砂煙がその場を舞うだけだった


いつの間にかマモノの煙は消えており

ナギは急いでその場に駆け寄った


「ぐっ…くっ…」


そこには苦悶の表情で仰向けに倒れ込むグレイブの姿があった


「グレイブ…!!」

「くそ…ヘマやっちまった…」


グレイブは息が絶え絶えになりながらも

かろうじて喋れる状態にあり

ナギはホッと胸を撫で下ろした


「足をやった…、もう動けねぇ

くそ、あの野郎…」


グレイブは上空にいるマモノを見て

歯を深く噛み締めた


「奴をどうにかして、下におろさねぇと

と、飛び道具でもありゃあ…」


「飛び道具…!!」


ナギはそれを聞くとすぐに立ち上がり、辺りを素早く見渡した


「アレは…!!」


ふと目に飛び込んだのは

さっきの攻撃で折れた木の枝だった


マモノはグレイブの方を見て

ゆっくりとカマを上へとあげた


ナギはすぐに木の枝を手に取り、マモノに狙いを定めた


「くっ…!!」


「ヘァァア…」


マモノは甲高く不気味な声をあげると

カマを勢いよく下に下ろそうとした


その瞬間、マモノの胸部(きょうぶ)を木の枝が貫いた


マモノは「グエッ…!?」とえずくと

動きが止まり、その後しばらくして地面へと真っ逆様に落ちていった


ナギは槍投げの姿勢から元に戻すと、マモノの方へと歩いた


「ガヘッ…ゴハヘッ…」


マモノはまだ息があり、苦しそうにもがいていた


ナギは無言でマモノの体に足を乗せると

しゃがみ込み、その首元に短剣を深く突き刺した


「ゴヘッ…!?」


マモノは口から血を吐くと、頭を地面につけ、それっきり動かなくなった


「く…、はぁはぁ…」


グレイブは痛みに耐えながらなんとか起き上がり、自身の足首に癒しの魔石をあてがい、治療を試みていた


「…!?グレイブ…!!」


ナギはグレイブに気がつき、急いでそばに駆け寄った


「グレイブ、足は…!?」


「ダメだ…出血は止まったが…」


グレイブの足は

足首の後ろから半分切れた状態になっていた


「うまく上に飛んで、避けたつもりだったんだがな…、俺もまだまだか…」


そういうとグレイブは自身の腕に巻いていた布を足首に巻き、気休め程度の応急処置をした


ナギはグレイブを起こして

肩に担ぐと一旦船へと引き返すことにーーー


グレイブが船内のベッドに腰掛けていると

ドアが開き、ナギが顔を覗かせた


「グレイブ…?」


ナギはドアを閉めて、村での聞き込みの報告をした


「花は知らないって…

お医者さんも…」


「医者だと?」


「足、接合してもらわないと」


「ふん…」


ナギはグレイブを船に残し、一人で村の聞き込みに出ていた


「その足じゃもう、歩けないと思うし…」


「余計な心配事だ、足は動かんが

船の運転くらいはできる」


グレイブは不機嫌そうにそう答えた


「グレイブ…復活の花って本当にあるのかな…」


ナギはふと弱々しい声で本音を漏らした


「なんだ突然?」


「もし何もなかったら私…」


うつむくナギをよそに

グレイブは軽く鼻で笑った


「冥界があるくらいだ

花だってきっとどこかにある

おとぎ話じゃない」


そうつぶやくグレイブの目はどこか希望に満ちているように見えた


「そろそろ出発だ」


「まだ休憩した方が…」


「十分休んだ、俺は船を動かす

お前は…これからは単独だ

十分に身を引き締めろ

それから、無の魔石は絶対に無くすな」


グレイブはそう言うと外に出て

舵の方へと向かった


一人部屋に残ったナギは

無の魔石を手に取ると大事そうに頬に当て、静かに目を閉じた


「ユウト…メイ…」


ナギたちを乗せた船はゆっくりと動き出すと

陸地を離れ、東へと走り出したーーー



復活の花-切り裂かれる村-(完)

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