第11話「復活の花-素材島-」
島に降り立つ二人
「ソザイ島…ここではたくさんの物資や資源が取れるらしい
カリブ島の住民によればここに花があるかもしれないって話だが…」
周囲を見渡す二人
「まぁまずは村にでも寄ろうか
何か情報が聞き出せるかもしれない」
ナギはグレイブの提案に頷き、村を探す事にした
草木をかき分けてしばらく、森を抜けると
遠くの方にたくさんの赤い屋根が並んでるのが見え
ナギ達は斜面を降り、そこまで歩いた
「静かだな…」
村に着くとそこには奇妙な静けさが漂っていた
人の気配は感じられず、カラカラと鳴る風見鶏や風に運ばれる砂の音だけが寂しく響いていた
「誰もいないのか?」
グレイブはふと歩き、ナギも後に続き
二人は村の中を散策した
一通り歩き回るが村人は見つからず
二人が首を傾げていると
建物の影からヨロヨロと一人の女性が出てきた
「なんだ、いるじゃないかヒト」
グレイブは女性に近づき声をかけた
「聞きたいことがある
あんた、復活の花って知っーーー」
すると突然女性は白目を向いて
グレイブに掴みかかってきた
「ウガアアッッ」
「…ッッ!!」
グレイブは咄嗟に後ろに避けて
女の噛みつきを回避した
「なんだ…!?」
「グレイブ…ッッ!!」
ナギの声で周囲を見渡すと
ゾロゾロと村人達がグレイブ達を囲んでいた
「ゔぅぅぅ」
村人達は足を引き摺り、フラフラと前のめりになりながら唸り声を上げていた
「こいつら…気でも触れたか?!」
グレイブは咄嗟に剣に手を置き
ナギに言った
「ナギ、一旦村を離れるぞ」
ナギはコクリと頷き、二人はなるべく村人達を傷つけずに村を走り、森の中へと避難した
「ハァハァ…」
「追ってこねぇな、撒いたか
全く…どうなってる?」
グレイブは現状に脳が追いつけず
ナギは息を切らせていた
「あの女の人、急に噛み付いてきた…」
「あぁ、生気も感じられなかった
まるで歩く死体のような」
二人が混乱しながらも冷静に状況分析していると奥の茂みからケモノの唸り声が響いてきた
「グジュルルルッッ」
「チッ…休む暇も与えてはくれんか、
ナギ!!」
「はい!!」
二人は剣を構え、マモノ達に戦意を向けた
「てぇーーーッッ」
「!?」
そのとき大きな掛け声と共に
無数の発砲音が周囲に響き、
マモノはヨロヨロと足取りを悪くさせ
やがてドサドサと倒れていった
「構えやめッッ!!」
号令がかかると
奥の方にいる人影達が
何やらゴソゴソとしていた
「生き残り?」
「人間か…?」
人影達は何やらボソボソとした声で
やり取りを交わし、呆然とする二人に一人の青年が駆け寄ってきた
「大丈夫か君たち」
青年は逆だった緑色の髪をした
少しガタイのいい容姿をしていた
「そのなりは…、この島の住人じゃないな
どこから来た?船は?」
青年は少し落ち着きのない口調で淡々と質問をしてきた
ナギはその顔に見覚えがあった
「ユウト…?」
「?」
「隊長!」
青年はなにやら男性とやり取りを交わしたあと
深く頷く
「うむ、わかった
ここは危険だ、船まで案内してもらえるか
我々が護衛しよう」
青年はそう言うと、二人の方へ手を差し伸べてきたーーー
「我々は各地を回りながら
調査を行う団体、霧の正体を掴むため
そして失った者たちの悲しみを浄化するため
失った者達で結成された除染組織だ」
「除染組織…」
「俺はユウト、この組織の隊長をしている」
「ユウト…」
ナギが青年の顔を見上げながら
再度尋ねる
「…私のこと、覚えてない?」
「どこかで会ったか」
青年はきょとんとした顔でそう返したが
ジッと見つめるナギを見て青年の脳裏に
幼い頃の彼女がフラッシュバックした
「まさか…ナギか…?」
ナギは静かに頷く
「お、驚いた…全然気づかなかった
随分とその、様子が違うから…」
青年がぎこちなくそう答えていると
空がゴロゴロと怪しく鳴り響いた
「ここもそう長くはない、ひとまず拠点へ」
ナギ達は青年達に案内されるまま
拠点へと急いだ
「元々はのどかな島だった
彼らは農業や鉱山などで取れる資源を
他国に売買することで生活を切り盛りさせていた
だがある時、あの霧が島まで漂い始めてきて
村人達はみな息絶えていった
ーーーしかし、異変が起きたのはその後だった
死んだと思われていた村人の亡骸達が生命を宿したように動き出し、村を徘徊するようになったんだ」
「そして彼らはただ徘徊するだけではなかった
生き残りたちを喰らい、どれだけ抵抗されても死なない、不死身の怪物となっていた」
「まるで生きた屍…彼らは生前の記憶をなくし凶暴化していた」
青年は島の現状をナギ達に説明していた
「我々が島に降り立った時には
もうすでにここは地獄だった
隊員たちが住民の手記を見つけたことで
この島の現状は大方知ることはできた」
地図を開き、特定の場所を指差すユウト
「これら三か所が主な霧の停滞場所だ
霧はただ通り抜けるだけじゃない
特定の場所に留まる習性があるようなんだ
そしてそこにはマモノが徘徊している
彼らを倒せばどう言う理屈か空が晴れる
我々はこれらを"マモノの巣穴"と呼んでいる」
「マモノの巣穴…」
「それも長年の調査の上で分かったことなのか」
「そうだ」
「これから拠点を移しながら
それぞれの陣地へと向かい、号令をかける予定だ、マモノ達は凶暴、それに時間も限られる
隊員達全員で総攻撃を仕掛け、なるべく早く作戦を終わらせるんだ」
説明を終えたユウトに
グレイブが復習をした
「要するにお前達は霧の正体を掴むため、そして世界を救うために結成された集団という事か」
「そうです」
グレイブの問いにユウトはまっすぐな目で答えた
「…ふふ」
「どうした?」
「ユウトが敬語使うなんて、なんか変だなって思って」
「な、どういう意味だよ!?」
ナギがクスクスと笑い
ユウトはまるで幼い頃のような口調で返した
「武器は揃わせてある
鉄砲、砲台、火薬…みんなそれぞれ自前で用意したもの、各地で集めたもの、そして一から制作したものだ」
「これらを駆使して向かってくる障壁を打ち破る」
「準備が完了次第、すぐに出発だ」
隊員達はそれぞれの持ち場へとつき
ナギはユウトの案内で部屋へと招かれ
グレイブはユウトの案内を拒否しその場で待機した
「まさか生きていたとはな」
「私も…みんな死んじゃったのかと思ってた」
「どうやってあの島から逃げたんだ?」
「グレイブが倒れてる私を船まで運んでくれて…」
「一緒にいた人か
かなり腕の立つ人に見えたな、何者なんだ?」
「私も…あまり知らなくて
でもすごく良い人だよ」
「あぁ、それは俺も感じた
優しそうな人だった、だから丁寧に接したんだ、無礼を見せてはいけないって」
ナギとユウトは久々に
他愛のないやりとりを交わしていた
「(ユウト、随分と雰囲気変わっちゃったな…
体つきも…、男の子ってあんな体になっちゃうんだ…私も結構鍛えたつもりなのに…)」
ナギはユウトを眺め、
顔が熱くなるのを感じた
「ユウトはさ、ずっと戦ってきたんだよね…?」
「あぁ、あの日以来ずっと強くなる事だけを考えて生きてきた、守るべきものもできたからな」
ユウトは真剣な顔でそう答える
「みんな死んだ…ポルンもルッカも多分みんな…」
寂しく呟くユウトに
ナギは居た堪れない気持ちになった
「だがこうしてまた旧友と会えた」
「無事でよかった」
そう、微笑むユウトに
ナギはどこか安堵した顔を見せた
「失礼します」
ユウト達の部屋に
一人の女性がお茶を汲みにきた
「そうだ、ナギ
紹介が遅れた、彼女はレナ
同じメイス島の生き残りだ」
「初めまして、ナギさん…ですね
主人から話は聞いています」
「え…」
「結婚したんだ俺たち」
「ふふ」
ナギは突然のことで驚き
頭の中が白くなっていくのを感じた
「島を逃げてる途中で迷子になってるのを見つけてな、島を離れてずっといるうちに…」
女性はナギの前で頭を下げた
「こいつも親を失ったんだ」
「……」
「あの日、霧が島を覆った時だーーー」
「ポルンーーー!!ルッカァーーー!!」
友達の名前を叫び、島を走り回るユウト
「あの時は誰もが死んだと思っていた
だからこいつの存在は俺にとって唯一の生きる希望だったんだ」
「ふふ、この人ったらずっとナギさん達の事ばかり話すんですよ、メイはな、ナギはなって」
「バッ…!?余計なことは言わんでいい!!」
「そう…ですか」
ナギはなぜか言いようのない感情に駆られていた
「この件が片付いたら俺達はメイス島へ行こうと思ってる
調査隊も何人か派遣するつもりだ」
「!!」
ナギはそれを聞いて驚いた顔をする
「元を辿ればあの島で起きたことが全ての始まりだ、あの島には何かある」
「霧の正体を掴んで、今度こそ終わらせるんだ
この長い戦いに終止符をーーー」
そう意気込むユウトを見てナギは
塞いだ口を少し開いて思わず吐き出す
「ユウト、そこには何もないよ…」
「どういうことだ?」
ユウトは少し待ったあと
何かを察してハッとなる
「まさか、行ったのか?お前も…島に」
ナギは頷く
「そうか…」
ユウトは落胆した顔を見せた
「島に行けば、何かがわかると思ってたんだが…
まぁいい」
「どちらにしても、やることは変わらない
マモノどもを倒して村の者達を解放する」
「この世にこれ以上の犠牲なんて生ませる必要はない
悲しみはもう誰にも背負わせたくはないからな」
「……」
ナギは何も言えず、ただ黙って
ユウトの方を見つめる事しかできなかった
扉を閉めると外から隊員達の声が聞こえてくる
「レナさん、ほんといい嫁さんだよなぁ」
「ユウトさんと同じ島出身なんだろ?」
「本当、似合いの夫婦だ、微笑ましいぜ」
「くそぉ〜俺もレナさんみたいな美人な嫁さんと結婚したかったなぁ!」
「ハハハ」
ナギは隊員達の話を聞いて、複雑な表情をしながら別室へと行き、静かに横になった
「ユウト…お嫁さんか…」
そう呟き、丸まるナギ
「(よぉ、お前らか、よそ者っていうのは?
ーーー俺はユウトだ!よろしくな!)」
「くっ…ふっ…」
ナギは幼い頃の記憶を辿り、静かに体を震わせた
洞窟を後にしたナギ達はユウトの案内で
隊員達と共に次の拠点へと足を進めていた
「ゔぅぅぅ…」
「点火、発破!!」
隊員たちが向かってくる住民たちに
火花を飛ばす
「大丈夫なのか?あいつらはこの島の住人なんだろう?」
「大丈夫です、ほら」
ユウトの視線に合わせて顔を向けると
さっきまで攻撃を受けていたのに
立ち上がり、唸り声を上げる住人の姿が見えた
「どうやら奴らはもう、俺たちが思っているような"人間"ではなくなったようだな」
「拠点はこの先です」
その後もナギ達は住民に妨害されながらも
安全な道を歩き
やがて中間地点に差し掛かった
途中、顔の皮膚が剥がれたゴブリン達を蹴散らしながら進んでしばらくすると
隊員達の列に一滴の雫が落ちてきた
「あ…っ」
隊員たちは足を止め
次第に顔を青くさせた
「雨…」
「あ、雨だ…」
やがて雫がポツポツと降り始めると
列はざわつきを見せ始めた
「雨だ…!!」
「雨だ、雨だーーッッ!!」
「うわぁぁぁっっ」とその場は一気にパニックに陥り、一人は半狂乱で列を乱し、一人は隊員達を押し退け逃げるようにその場から離れようとした
「退避、退避ーーーッッ!!」
「お前達!慌てるな!洞窟へ逃げるんだ!!」
ユウトの号令で隊員達は彼の後ろを急ぎ、洞窟へと走った
「グレイブ、早くッッ!!」
ナギは別の洞窟へ逃げ込み、グレイブを待った
グレイブはナギを先に逃し避難に一足遅れていた
雨は一層と勢いを増し
ナギは必死に手を伸ばすが
横にある草が枯れていくのを見て
思わず手を引っ込めた
「ぐあっ…ぐ!?」
「ひっ…おごご…っっぷぐ…」
雨に打たれ、道に倒れた隊員達はまるで溺れるようにバシャバシャともがき苦しんでいた
「くっ…!!」
ユウトは洞窟に逃げ込み、壁に張り付きながら現状を確認した
「大丈夫!?グレイブ!!」
「…あぁ」
グレイブはなんとか洞窟内へ逃げ切り
傘がわりにしたボロボロの大剣を地べたに置いた
ユウトは隊員たちがバタバタと倒れていく姿を見て、悔しそうに歯を食いしばっていたーーー
雨が止み、隊員達は雨に打たれた亡骸を、引き摺るように洞窟へと持ち運んでいく
「何かあった時のためにと
各地に武器とそれから部屋を設置してるんだ」
ユウトはナギ達に洞窟の案内をしていた
「…みんな、死んじゃったね」
「あぁ、みんな霧の犠牲者達だ
みんな家族や故郷を失った…」
部屋へ招いたナギに
ユウトは失った隊員達を思い
気持ちを吐露していた
「初めはただ慰め合うだけだった
同じ苦しみを持ったものが集まり
情報を共有していくうちに
いつの間にか隊ができ、俺はみんなを束ねるリーダーになっていた」
「考え方の違いで時に衝突し、
仲間割れが起きることもあったが
みんな故郷のことを思い出すと
すぐに泣き出し、お酒を飲んだりして
いつのまにか仲良くしてるんだ」
「やっぱりみんなどこかでは通じ合ってる
同じ仲間なんだ」
そう話すユウトを前にナギは複雑な気持ちになった
「あの霧が俺たちの人生を狂わせた」
「仲間も家族も友達も…
大切なものを何もかも奪っていく」
「あの霧が憎い…!!」
ユウトは悔しさに震えていた
「ユウトはすごいな」
「?」
ナギがふと呟き、ユウトは首を傾げた
「いつもみんなのことを考えて
不思議な魅力でみんなを惹きつけて…」
「突然、なんだ…?」
「あの時、島でユウトに話しかけてもらえなかったら…
私やメイはずっと誰とも仲良くなれずにいたかもしれない」
「俺は…寂しがりなだけだ
誰かといないと一人じゃ不安なんだ」
「それでも…すごいよ」
ナギはそういいながら
寂しそうに顔を下に向けた
「ユウトくんはすごいね…なんでもできて」
「当たり前だ、俺は海賊の船長になる男だからな」
ナギはふと幼い頃の記憶を頭の中で辿っていた
「島には戻れなくなった」
「どういうこと…?」
「まさかあの紫の…」
「どうしよう、私たちのせいだ…」
ググッと拳を握るナギに
優しい声が聞こえてきた
「ナギ?」
見るとそれはユウトだった
「どうした?」
何も知らなそうな顔をするユウトに
ナギは何かを言いたくなったが
喉に引っ掛かりを感じた
「ユウト…あのね、島のことなんだけど…」
「……?」
ナギは言葉を詰まらせるように島で起きた出来事をユウトに打ち明けた
「……!!」
ユウトはナギの話を聞いて目を丸くさせていた
「じゃあ…遺跡から漏れ出た霧が
俺たちの島や家族を奪ったってことか…?」
ナギは顔を赤くさせ寂しそうに頷いた
ユウトはそれを聞いて頭が真っ白になっていくのを感じていた
「全部、だとしたら…俺たちも、じゃあ…」
「ごめんね、ユウト…」
「いや、お前が謝ることじゃない
誰も…、知らなかったことだ
ポルンがメイに吹き込んで無かったら
…逆だったかもしれない」
ユウトは混乱しながらも
冷静にことを把握し、ナギに理解を示した
「ナギ、自分を責めなくていい
そんな物があるからダメなんだ、そんな物が…」
その言葉にナギはどこか救われたような気がしたーーー
話を終えて部屋を出ると
レナが立っていた
「ナギさん、あなたが今、どんな気持ちであるかはわかりません…でも」
レナは言葉を詰まらせるように続けた
「私は…あなたを許すことはできません
多くの人が犠牲になりました、父も母も…」
「主人はああ言いましたが、許せない人もいる…
それだけは忘れないでください」
ナギはそれを聞いて心に何かが
突き刺さるような感覚を覚えた
部屋へ戻るとナギは塞ぎ込み
レナに言われたことを思い返していた
「(私はあなたを許すことはできない…か
そうだよね…そりゃそうだ…)」
ナギは寂しそうな顔で俯く
「(わかってたつもりでいた…
どこかで安心してた…
許されるはずがないのに
ユウトが私のことを許してくれて
気持ちが軽くなった気がしたんだ…)」
ナギは花園でグレイブに言われたことを思い出していた
「(世の中はそんなに甘くはない)」
「(贖罪だの浄化がなんだの
安く使ってる内はまだまだガキだ
お前は何も分っちゃいない)」
「そうだ、私は何もわかってなかった
責務だとか浄化だとか
そんな言葉では片付けちゃいけないことを
私たちはしたんだ…」
「私は甘かった…」
ナギは自身の甘さにショックを隠し切れず
気づけば涙が頬を伝っていたーーー
「隊長!」
「ん?」
洞窟を歩くユウトに
一人の隊員が声をかけてきた
「すべての遺体の回収が完了しました!
今、身元の特定を進めてるところです」
「ん、報告ご苦労」
「みな損傷が激しく、特定にはまだまだ時間がかかりそうですが、なんとかなりそうです」
「そうか」
「ただ…気になる点が…」
「…?、なんだ?」
顔を顰める隊員にユウトは不思議そうに尋ねた
「はい、みんな腕に妙な模様が浮かび上がってまして…
いままではこんなもの、なかったはずなのに」
「模様?」
「はい!」
そう言って隊員はスケッチブックをユウトに見せた
「なんだと思いますか?これ…」
ユウトはそれを見てしばらくしたあと
何かを察したかのように目を大きくさせて
袖をまくり自身の腕を確かめた
「……」
「隊長?」
ユウトは震えるような口で
「そういうことか…」とつぶやき、そっと袖を下ろした
「なんでもない…持ち場に戻っていいぞ」
「え…あ、はい!失礼します!」
力なく返答するユウトに
隊員は敬礼をし、その場から離れていった
「……」
「これからマモノの巣穴へ突入する!
激しい戦いになるだろう、
しかし決して折れてはならない!
俺たちの故郷を、家族を、仲間を奪った物達に一矢報いてやるのだ!」
ユウトは集会を開き、隊員達の前で演説を行なっていた
「お前達は大切な仲間だ
必ず全員で生き延びるんだ!」
ユウトの演説に隊員達は拍手を送り
「うおおお!!」と雄叫びを上げたーーー
その後、ユウト達は安全を確認して
移動を再開、あたりがすっかり暗くなった頃、目的地の洞窟拠点へ到着
付近には湖があり、その先の二つの崖の間には大きな丸太が橋のように架かっていた
隊員達はそれぞれの持ち場へと移り
作戦準備に取り掛かっていた
何人かの隊員達は副隊長の指示に沿って丸太を渡り、マモノの巣穴へと向かっていた
洞窟に残ったナギは外を眺め、マモノの巣穴の入り口を静かに見下ろしていた
「……」
湖に一人、小舟を浮かせるユウト
ふと後ろに目をやると寂しそうな顔で佇むレナの姿があったーーー
「気づいていたならもっと早く教えてくれれば良かったのに…」
「言えなかった…言ったらきっとこうなるってわかってたから…」
レナはユウトにしがみつき、悲しそうな顔をしていた
「笑えるだろ?今まで必死に守ってきたと思ってたのに、全部俺が呼び寄せてたんだ…」
ユウトはどこか諦めた表情で遠くを見ながらため息混じりにそう言った
「ユウト…?」
ナギは湖を渡る小舟の存在に気がつき、ふとつぶやいた
小舟が湖の中央付近に差し掛かると
空が怪しく蠢き、ゴロゴロと不気味な音を鳴らした
「…!?、ダメ、ユウト…ッッ!!」
ナギは何かを察し、声を荒げ、
その声に反応したグレイブや隊員達が何事かと振り向いた
稲妻が怪しい音を立てて
二人の方へと狙いを定めた
「ダメ、ユウト、、嫌だっっ!!」
レナはユウトの手を強く握りしめ
その顔にはどこか恐怖のようなものがあった
「嫌だっっ!!」
ユウトはそっとレナの方を向き、励ますように頭を撫でた
「ユウトッッ!!なんで…!!」
二人にはナギの声は届かず
レナは震えるような口で叫んだ
「ユウト…!!好きっ…!!好きぃッッ…!!」
涙を流すレナの姿に
ユウトも強張った顔でレナを強く抱きしめ
その瞬間眩い光が二人を照らした
「嫌だっっ!!」
ナギの叫びも虚しく、稲妻は二人の乗った小舟を直撃し、激しい音と共に飛び散る破片と何個かの黒い塊がボチャボチャと水に落ちた
「ーー!!」
「ーーーッッ!!」
隊員が指示を出し合うと
何人かの隊員達が湖の方まで降りていった
ナギは涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになり
時が止まったかのようにその光景をただ眺めていた
「ナギ、行くぞ」
グレイブはナギの方に駆け寄り、放心状態の彼女に声をかけた
「奴の意思を無駄にするつもりか」
「ナギ!!」
「……ッ!?」
その声にようやくナギはハッとなり
意識を取り戻した
「ご、ごめん…うん、行こう」
ナギは袖で顔を拭き取り、湖には寄らず、マモノの巣穴へと向かう隊員達の元へと急いだーーー
「うおおおお!!!!」
怒号を上げながら巣穴へと突入する隊員達
ナギも怒りのままにマモノ達を薙ぎ倒していく
やがて最深部へと到着すると、不気味な鳴き声が壁の方から響いてきた
「グジュルルルッッ…」
「こいつがこの洞窟の…ヌシか!?」
見るとそこには壁にめり込んだアリのような姿のマモノがいた
隊員達は武器を構え、マモノに標準を合わせた
マモノは若干紫がかった体色をし、口からは毒ガスのような物が漏れていた
しばらく砲撃を続けていると
マモノは壁から抜け出て
羽を広げて隊員達へ襲いかかった
「ひっ!?」
「うああっっ…!?」
尻尾から放出された毒液が隊員達に容赦なく降り注ぐ
「あのガスで人々を生きる屍に変えてるわけか」
観察し身構えるグレイブの隣でナギは静かにマモノを見上げていた
「ユウト…」
ナギは静かにつぶやくと顔を険しくさせ
魔石を強く握りしめマモノへと構えた
「うああああっっっ!!!」
ナギは叫び、マモノの元へと勢いよく走ったーーー
激しい戦いののち、傷だらけのマモノは
血液を吐き出すとヨロヨロと崩れるように
その場に倒れ、やがて動かなくなった
「はぁはぁ…」
息を切らしたナギはマモノの死骸を静かに見下ろしていた
マモノを倒したことで外では空が晴れ
動く屍となった村人達は砂のように崩れ、消滅していった
「ん?」
グレイブは大剣をしまい、ふとマモノが飛び出した壁の方を見ると何か光る物が見えた
周囲には負傷した隊員達と
ガスにやられて消滅した隊員の亡骸が散乱していた
生き残った数名の隊員達は仲間の死に疲弊し項垂れていたーーー
その後、隊員達は墓を建てて仲間達を弔った、その中にはユウトやレナの墓もあった
「隊長…」
一人の隊員が涙を流すと周りの隊員も鼻を啜り
ナギも顔を手で覆い、体を静かに震わせた
「協議の結果、隊はこのまま継続することになった」
「新しい隊長にはこの副隊長のガーディンが任命された!ユウト殿の意思は途絶えさせはしない、必ずや未来まで繋いで見せる!」
新しい隊長がそう唱えると
周りで拍手が響き渡ったーーー
「お世話になりました、ナギさん」
「いえ…」
「ユウト殿は…残念です
ご友人との再会がまさかこんな事になるなんて」
「……」
「彼の存在は我々にとって唯一の生きる希望でした、この団体が出来上がったのも
彼が我々の心を支えてくれる柱だったからです」
「家族も故郷も失った我々に
行き場所を、失った笑顔を再び与えてくれたのです」
「ユウト殿はこの希望のない世界において唯一の光でした」
「ユウト…」
ナギは隊員達に別れの挨拶を済ませると
グレイブと共に船に戻り、ユウトや隊員達の事を思いながら静かに島を離れたーーー
復活の花-素材島-(完)




