荒れ街道
左腕の紋章は試練を乗り越えた証であるとマレギールから聞いていた、術式によって魔力を認識・感知できる身体へ造り変えられているのだと。だから、ユウハは左腕を人目につかぬよう皮布で隠していた。
そして、今のように紋章が光を発する現象は初めての体験で、ユウハ自身も実は驚いていた。
8年前、厳しい試練の果てに魔力を得たユウハだったが、問題は山のように起きた。とりわけ大きな問題は3つあった。
1つ目は魔術式をうまく扱えないこと、特に魔力を炎や水など別の物質・性質に変換することが苦手であった。魔術師になったばかりで術式の操作に慣れていないだけだとマレギールは言ったが、いくら鍛錬を重ねてもその力が安定することはなかった。
2つ目はマレギールが村を出たことである。彼の都合はよく知らないが、突然村を後にして王都へと移り住んだのだった。指導者を失ったユウハは魔術師としての成長速度が著しく低下した。
そして、3つ目は周囲の人間と感覚が合わなくなったことだった。魔術師となり一般の人間とは感受性が変わったことで、村の住民から愛想をつかされてしまった。20を超えると見た目に加齢を感じることもなくなり、よりいっそう不気味がられた。
それでも挫けずに魔術の訓練を続けられたのは、必死に魔術師を目指す自分を信じてくれた両親のおかげであった。その両親も2年ほど前に村の迫害に耐えかねて、母は重病に息絶え、父は首を吊ってしまった。
守ってくれる人も、マレギールのような権力者の後ろ盾も失ったユウハを村の住人はさらに虐げた。
そしてろくに働く能力もないユウハは、厄介者として疎まれ続けた憎悪で村の者に手を出す前に、この冬に故郷を飛び出したのだった。
* * *
「‥‥き、消えた。一瞬の間に、風に揺れる霧のように、丸腰の痩男が俺たちの目前から消えちまった!‥‥まさか、逃げられたのか!?」
朝も終わりが近づき、視界も良好となった街道でユウハの姿を見失った盗賊たちは動揺が隠せないといった様子のまま、頭目であるワルツに指示を嘆願した。
ワルツは豊富な知識を蓄えており、その周到な計画は盗賊団で何度も成功をおさめてきた。弟のワルドや他の仲間はワルツの作戦に従えば間違いなく成功すると考え、ワルツを信頼するというよりも彼に依存していった。そのため、計画とは異なる予想外の出来事が発生すると、容易く混乱状態に陥るのだった。
「お前ら、あわてるな!奇妙な魔術で意表を突き陣形を崩す、低級魔法使いの常套手段だろうが。‥‥‥ワルド、対魔法戦4項だ。思い出せ、冷静さを欠いては足をすくわれるぞ。」
「‥‥!、了解した。」
ワルツは盗賊団の頭脳を担っている。ユウハが魔法使いであると分かった瞬間から準備していた作戦を全て破棄し、新たに対魔法に特化した戦術を練り始めていた。
仲間ではもとより暗号1つで緊急時に行動できるよう入念に作戦項目を覚えさせているため、指示を読み取る冷静さを取り戻させさえすれば、その対応は特に問題ないはずであった。
予定通りに冷静さを取り戻した盗賊たちはワルツの指示を理解すると、腰に携えた鞄から麻袋を取り出し手持ちのナイフで袋の口を切り、すぐさま宙へと放り投げた。
弧を描くように飛んだ袋は回転し、その口から白い霧状の何かを吐き出し始めた。それははじめ雲のように集積していたが、徐々に降下し少しの風で横方向へも流れだす。連続して袋が投じられ同じことが起きると、やがて霧状のそれは盗賊たちが囲んでいる場所全体を純白の絹布で包むように広がった。
「‥‥それは、魔法の粉だ。毒は混ぜてない、水と砂糖があれば簡単な食糧にもなる粉。小麦を細かくすり潰して作った粉。以前、同じように馬車を襲った際、積まれた荷の中にあったものを奪っておいた、‥‥まぁ、ほかの物資も全部奪ったけどな。」
ワルツは漂う小麦粉をじっと観察する。空気の流れに身を委ね不規則に舞う粉塵を、その不規則の中に存在する不自然を見つけだすことに神経を集中させるのだった。
そして、わずかながら空中に粉が堆積している箇所を発見すると、迷いなく手に握った短剣を閃光のごとき豪速で投げつけたのだ。
弟のワルドはただ粉塵が舞うだけの空に武器を放った兄を理解できなかった。短剣の速度では下手をすれば向かい側の味方を貫く恐れだってある。だが、その考えは間違いだとすぐ理解することになった。
「その小麦粉が積まれていた馬車にも偶然か、魔法使いが同乗していたんだ。そして、逃げようとするそいつは今と同じように俺の目前でパッと消えちまったのさ。‥‥だが、俺はその魔法使いを決して逃がしはしなかった。」
ワルツの投げた短剣は漂う小麦粉を切り裂き、不思議なことに突如として空中で急停止した。しかも、短剣の切先は消えている。
次の瞬間、短剣を染めるように赤い液体が空間から突如として流れ出てきた。続けて、もがくような悲鳴と消えていなくなったはずのユウハの姿もその場に現れ、全ての魔法が明らかとなった。
粉塵の中でうめき声をあげるユウハの右肩にはワルツの短剣が刺さっており、ワルドや仲間はようやく自分たちの頭領の意図することが何かを知った。
「身を晦ます透明化の魔法、姿が見えないだけで実態は其処にある。姿が見えない分、躰に積もった小麦粉がよく見える。‥‥言っただろ、これは透明人間を見破る魔法の粉だ。効き目十分、毒も混ぜておけばよかったな。」
宙を漂う小麦粉がユウハを逃がしはしないと次々に体へ付着していく、その様子を見てワルツは自分の考えた魔法対策が的中したことについつい悦びの笑みを溢した。
「俺はとある業界で低級の魔法使いを始末する仕事も請け負っているんだ。透明化は厄介な魔法だから、こういう対策くらい考えてある。」
ユウハは血を流しながらその場に倒れ込んだ。短剣が刺さった傷口は燃えるような痛みに襲われ、近づいてくるワルツの声すら掠れてほとんど聞こえていない状態になる。何とか逃げようと身をよじり動くが、すぐにワルドの大きく分厚い掌に抑えつけられてしまった。
「終わったな‥‥、ざまぁないぞ魔法使い。全力で抵抗するとか言ってたから少々警戒していたんだが、いざ向き合えば呆気ないもんだ。」
ワルツはユウハの顔を踏みつけながら、期待外れにがっかりした様子を見せる。彼の手には先程の短剣よりはるかに大きい剣が握られており、その恐ろしく鋭利な刃はユウハの人生に躊躇なくとどめを刺すことを無情ながらに物語っていた。
「しかしまぁ、運が悪い。魔法に対する対抗策を知っている人間は数少ないんだ。今日、この馬車を襲った盗賊の中に俺がいなければ、あるいは生き延びたのかもしれない。」
剣の刀身が身体に近づくごとに、ユウハは自分に死が近づいてくることを実感する。そして、その感覚を身体も理解しているように震えるのだった。
「‥‥何を笑っている、絶望を目の当たりにして気が狂いでもしたのか?‥‥まったく、魔法使いってのはどこまでも気味が悪い存在だな。」
ユウハは足蹴にされながらもワルツをじっと睨んで薄い笑顔を見せていた。
罵声を浴びせながらユウハを踏みつけていたワルツは足元に押さえつけられた満身創痍の男に異質の気配を覚える。
「‥‥抵抗してるのさ。死にたくないから、『死ぬ』というのは悲しいことだから、僕は笑って、悲しくないように笑顔で抵抗するんだ。」
「ふっ、くだらない戯言だ。‥‥なんだ?」
ユウハの首を跳ね飛ばすために剣を振り上げたことで、ワルツは自分たちの真上に浮遊する謎の球体に気付いた。続くようにその場にいた盗賊の団員も頭上の球体を視界に入れ警戒する。
球体は掌に握れる程度の大きさで黒く、膜のような虹色の光を薄く纏っている。間違いなく足元の魔法使いが作り出したものであるがその正体は見当もつかない。
「盗賊の頭領さん、あなたは僕のことを運が悪いと言った。見てのとおり『馬鹿でもできる透明化』はあっさりと見破られ、そして肩に怪我も負わされた。すべては対魔術師の殺し屋に遭遇してしまった悪運、そう解釈されても仕方はない。‥‥だがその考えは間違いだ。」
ユウハが左の食指を折り曲げるように振ると宙に浮く球体が弾け、辺り一帯はまばゆい光に包まれた。
光は盗賊たちがその目を閉じるまでの刹那を駆け入り、瞼の裏と眼球の間を何度も乱打した。光が無防備な眼球を刺激するたびに、盗賊たちは激痛に悶え苦しむのだった。
「あなたの慢心で僕の命は繋がった。『こうなってしまえば抵抗し反撃する魔術師はいない、出くわしたことがない。』、その中途半端な経験が生んだ油断のおかげだ。‥‥盗賊団の中にあなたがいてくれてよかった。それが、僕にとっての幸運だった。」
「‥‥光が、目に‥‥!、ちくしょう、痛てぇよ。」
「これは『猿でもできる目眩ましの魔法』だ。魔力の殻に普段浴びている太陽の光を溜め込み、一気に発散することで激しい閃光となる。」
盗賊たちは強い光によって目だけでなく身体のあらゆる箇所が一時的に麻痺し、目を抑えて蹲る者がいれば、中には意識を失って倒れる者もいた。
「あなたが油断した時点で僕の勝ちは決まっていた。‥‥その光は僕が手にした勝利の証で、敗者が目するには眩しすぎた栄光ってことなのだろう。」
言葉を還したユウハは血の滴る傷口を抑えて立ち上がり、周囲で混乱する盗賊を警戒しつつ感づかれないように間を縫って元いた馬車へと急いで足を運んだ。
* * *
ユウハが飛び込むように馬車の荷台へ乗ると、恐怖に怯えた様子の一家と御者はユウハの方をふり向き、全員もれなく驚愕する様子を彼に見せた。殺されたと思っていた人物が野兎のように勢いよく乗車してきたのだから無理もない。だが、状況を説明する時間も彼らがそれを理解するための猶予も残されていなかった。
「説明はあとでします。馬車を出して、今すぐに!‥‥まだ生きていたいなら、僕の言うとおりにしてください。」
「‥‥、‥‥」
「‥‥早く!!」
状況が呑み込めず後ずさる彼らにユウハは切迫した呼吸のまま指示を叫んだ。時間が経過した分だけ不利になるのは自分たちであると理解させるための一言を、迫真の様相で訴えた。
状況を十分に把握したわけではないが、御者はユウハの言葉に反応し、すぐに手綱を手に取り、砂煙をあげるように馬を走らせる。
同乗者の一家はけがを負ったユウハの様子を心配しながらも、ひとまず彼が無事であったことに安堵の表情を浮かべた。
「もっと速く走れますか、お願いします。のどかな街道の旅みたいな乗り心地に気を使う走りではなく、凶暴な獣に襲われた野生馬の逃走がごとき速度を、そうでないと奴等を振り切ることはできない。‥‥道は遠回りになってもいいので、なるべく平坦な馬の操縦が安定する場所を進んでください。それと‥‥、」
揺れる馬車の上で、ユウハは器用に衣服を割いて作った包帯で肩の傷を押えつけながら、今の状況を同乗者たちに詳しく伝えた。
説明の途中で、ユウハが無造作に左手を振ると馬車は2台、3台と分身を生み出し、それぞれ別方向へと走り出した。
同乗者たちはユウハの魔法に驚きながらもそれを易しく受け入れ、生き延びるための活路がそこにあると期待するのだった。
「『落ちこぼれでもできる分身の魔法』ですので暫らくすると消えます。気休めですが、これでうまく騙すことができれば敵の数を減らせるかと、‥‥関所までの距離はおそらく14ロータリク(約10km)ほどあるので、到着するまでの間に必ず盗賊たちは追い付いてきます。‥‥そのときは、覚悟を決めてください。」
「その‥‥今みたいに君の魔法で追い払うことはできないのかい?さっきは逃げることができたんだろう、もし奴等が来たとしても同じ目に合わせればいいのではないか。」
一家から『魔法』という奇跡と同意の言葉へ期待と信頼をのせた疑問がユウハへと投じられた。
「‥‥僕は攻撃系の魔法を使うことができないんです。さっき試したんですが不発に終わって、反撃としてこの怪我を負いました。‥‥出来損ないだから、本物の魔術師みたいに魔法を操ることができないのかと、」
ユウハは肩の傷を抑えながら期待を裏切る申し訳なさに俯き、つられるように同乗者の一家もガックリと肩を落とした。
「!!‥‥来たぞ!魔法使いさん、奴等だ!」
目的地の半分である7ロータリクすらも通過しないうちに、御者が大声で追手の存在を告げた。
ユウハの予想では残り4ロータリク(約2.8㎞)ほどで追いつかれ、追撃をうけるもなんとか関所へ駆け込むという考えであった。そのため、速すぎる追従にユウハが思わず後方を見ようと馬車から頭をつき出すのも無理はなかった。
「‥‥なんだあれは?、‥‥豚、‥‥それともイノシシなのか?」
ユウハは敵を視認して目を丸くした。追手の盗賊に足となる何かがいることは容易く予想できたが、目前の不可解な生き物には驚くしかなった。
その生物は人間を2人ほど背中に乗せる巨躯に、豚や猪と全く同じ丸みを帯びた形状で四足歩行、全身を体毛に覆われ大きな鼻頭を持っていた。しかし、猪の特徴として見られる猛々しい2本の牙はなく、鼻の上から太く鋭い一本角が生えており、さらには目らしきものが顔の何所にも見当たらなかった。
謎の生物は盗賊を背に乗せながら、馬車の後ろを畦道だろうと泥濘であろうと速度を落とすことなく平気で追いかけてくる。
きっと一歩前進することも危ぶまれるほどの獣道だろうと、この生物に乗れば容易に通ることができるだろう。それほどの安定性と推進力を目の当たりにして、なぜこれほど早く追いつかれたのか、ユウハはその理由をようやく知った。
馬車も追手を振り切ろうと速度を上げて街道を駆けるため、荷台は幌に掴まっていなければ転がり落ちてしまいそうなほど揺れた。それでも、盗賊との距離は縮む一方であった。
「‥‥とにかく足が速すぎる、このままでは追いつかれてしまうだろう。それに、目がないのに何であんなに速く走れるんだ?‥‥嗅覚?、熱探知?、‥‥何でもいいが非常に厄介だな、『目眩まし』も通用しないと思える。」
後に迫る盗賊たちは全員目元を覆うように頭巾を被っている。おそらく頭巾は遮光性の高い布で作られており、先程の魔法へ対処しているのだろう。加えて化物猪には目がないときた。
「‥‥どうしよう、追いつかれてしまう、‥‥魔法使いさん!!」
怯えた乗客はユウハに危機からの救いを求めた。それに応えるように、街道の分岐点にたどり着くとユウハは再び分身を作り出し、自分たちが曲がる反対方向へ盗賊たちを誘導し、少しでも追手の数を減らそうと試みた。
だが、化物猪に乗る盗賊たちは迷う素振りを一切見せず、本体の馬車と同じ方向へ曲がってくるのだった。
「なんでだ!?」
「危ない!!」
盗賊たちの投げたナイフが馬車の速度に揺れたユウハの髪を掠めて馬車の細い柱や幌を貫いたことで、すでに投擲物の届く範囲まで迫られてしまっていることを知る。ユウハは同乗者がナイフの的にならないようできるかぎり馬車の前方へ避難させ、再び後方へと戻った。
「!!、‥‥僕の血だ。あの化物は目ではなく、盗賊の短剣に付着した血の匂いを辿っているのか。それでは分身を作り出してもほとんど意味がないってことだ。‥‥まったく、たかが馬車強盗にどれだけ綿密な計画を練ってきているんだ、こいつ等は!」
透明化、目眩まし、囮の分身、その全てが無駄となった。予想を遥かに超える敵の周到さにユウハは思わず肩をすくめる。
「ああ、いったいどうすれば。何か打開策は‥‥、」
ユウハは思考を巡らせながら不意に馬車に刺さった投げナイフを抜き取り、心に沸き立つ怒りのままに盗賊へ向けて投げ返した。ナイフは見事に化物猪の鼻を抉り、その一匹がたまらず仰け反り転倒した。
ユウハは少し気が晴れ、見たか!と拳を握りつつ、心内ではたかだか一匹倒しただけで現状の何一つも打破していない行動であることを冷静に理解していた。
「‥‥あの兄弟はどこに行った?弟はともかく兄は分身に釣られるほど阿呆ではないはずだが、姿がどこにも見えない、」
謎の生物や目晦し対策に気を取られていたが、追い迫る盗賊の郡中に肝心な2人がいないことにユウハはようやく気付いた。しかし、気付くのが遅かった。
グシャリ
突然の破砕音と共に馬車が強い揺れに襲われ、ユウハは体勢を崩して床に倒れ込んだ。上下左右も分からない激しい揺れのなか、ユウハは馬車から振り落とされないように全力で必死で組板の凹凸にしがみついた。一度でも板から手が離れたならば恐ろしい盗賊と怪物の餌食になってしまう、それだけは御免だった。
‥‥ッ、何が起きた?、馬車は、御者は、乗客は無事なのか!?
状況を把握しようと揺れに耐えながら、ユウハは懸命に目を開け、そして両手で強く握っている組板の先、御者や乗客がいた馬車前方の無事を確認した。
「‥‥よし、彼らは無事だ。・・・・・!?」
そこでユウハは違和感に気付いた。自分のいた馬車の後部と乗客たちのいる前方との距離が異様に遠く、しかも、その差はどんどん広がっている。
そしてユウハには気付いたことがもうひとつあった。それは馬車前部と後部との間にあの盗賊兄弟の弟が立っていることだった。
盗賊弟の手には大剣が握られており、先程の破砕音があの大剣で何かを叩き切った音であることを理解した。
‥‥では何を?
その答えはすぐに分かった。
「馬車をぶった切られたのか!?、‥‥どんな膂力だ!」
馬という動力を失った馬車後部は叩き切られた衝撃で空中へと飛び出していた。同じく後方にいたユウハも宙へと放り出され、残骸となった元床板に虚しくしがみついていたにすぎなかったのだった。
木屑と共に宙を舞うユウハは改めて現状を見回す。
馬車の車輪は4輪あったため、馬が引いている車両前方はそのまま走り、逃げて行ってしまった。つまり逃げる足を失ったということだ。
真下ではどす黒い笑顔を浮かべながら手招きをしている盗賊兄弟がいる。つまり逃げ場はないということだ。
「‥‥ああ、もう最悪だ。」
先程に運の良し悪しを語っていたが、やはり悪運は自分に憑いているのだと、八方塞がりな状況にユウハはとうとう頭を抱えてしまった。
やがて勢いを失ったユウハは、重力にしたがって馬車の残骸と共に盗賊の待つ地面へ、文字通り「不幸のどん底」へと落下を始めたのだった。




