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ベルブレストの魔術紋  作者: ミロワキ
2/5

暗い朝

 夜が明け朝は早々、視界も朧《おぼろ》げになる靄《もや》の立ち込めた街道を一台の馬車が通る。


 2頭の馬が引く荷台には、雨風を防ぐために幌(ほろ)を被せ、厚い底板の上に乗客が座せるようにと藁で編んだ敷物を並べており、小石に躓くだけでガタガタと左右に揺れ動く車内において、それらは快適さを求めた努力のように思えた。


 乗客はユウハのほかにも家族と思しき成人の男女と幼児の合計3人が同乗していた。震動する荷台の上で頑なに目を閉じる彼らは、きっと夢の中へ意識を飛び込ませようと努めているのだろうが、その表情は安楽からほど遠い険相の極みであった。


 それもそのはず、この揺れ様はおとぎ話で語られる"大魚のイビキ"に肩を並べるのだから無理もない。水中を伝わる音の振動が大魚以外の生き物たちの眠りを妨げてしまうという内容だったか、体の内部を揺らされて皆気分が悪くなる、‥‥今と全く同じ状態だ。


 ただし、揺れに苦しむ両親の腕に守られて静かに眠る幼児だけは揺れを気にせず極楽の園へ誘われ、安らぎの表情であった。


 彼らと対面するように座っているユウハにも、かつては両親からの寵愛をわがものにしていた時期があり、寒く凍える冬の朝とは思えないほど温かく微笑ましい家族の様子はユウハの心に温もりを感じさせるのだった。


 ユウハが生まれた日の空は彼の父と母いわく、人生史上最も美しい青に彩られていたとのことで、雲ひとつない晴天とまではいかないが、偉大な太陽の光が土地の全てを満たしていたらしい。そんな祝福とも捉えられる大空の下で生を受けたとユウハは聞かされていていた。


 「ユウハ」という名は母が決めたらしい。名前は畏れ多くも《大空の神》であるアルマ・テラ・ユーハ(偉大なる天の光という意)から頂戴しており、子が神の御加護を授かるようにと願いを込めたそうだ。生まれて数年、両親の願いどおりに、ユウハは怪我ひとつなく育つのだった。


 父の厳しさも母の優しさも自分への愛情表現だったと今更ながらに感じていた。そしてそれが二度と戻らない幸福であることもユウハは痛切に理解してるつもりだった。


「どうかされましたか?先程からこちらを見ておられますが、」


 その言葉でユウハの意識は記憶の箱から戻った。

 相も変らず馬車の中、記憶とどこか重なる家族が恐る恐るユウハに声をかけてきた。母親は怪訝な表情を浮かべ、父親は妻子が体で隠れるようにひとつ前に出ている。


 同乗する家族の様子から、ユウハは今の自分の様相が怪しさの権化であることにようやく気付いた。


 およそ成人した男性とは見受けられない若い容姿。反対に、首から下はシワやほつれの目立つボロ布で覆い隠している。左の前腕から指先にかけて厚手の皮布を巻き、髪色は暗い青藍、その両方ともが周辺の土地の文化にはない珍しい特徴だった。


 ユウハを見る2人の反応は生物として当然、子を守る立場が故の警戒である。ここで下手な返しをすると彼らの警戒心を余計に煽ることになるだろうと、ユウハは無害を主張するようなとぼけ顔を見せた。


「ああ、これは申し訳ない。決して大したことではなく、幸福な家族の模範を目の当たりにして、懐かしさと感傷に浸っていたのです・・・・」


「・・・・はあ、それはどうも、」


 ユウハが子供の頃から鍛え続けた愛想笑いを見せれば、少しは警戒を解いてくれたのだろうか父親の方は気が抜けたように腰を下ろした。


 しかし、このまま黙り込んでしまうと、再びあの張り詰めた空気が戻って来るだろう。重く淀んだ空気は災難を呼び寄せる魔力があり、平穏を望むユウハにとっては耐え難く嫌悪することのひとつであった。


「・・・・あの、どちらへ向かわれるのか、よければ教えてもらっても?」


 ユウハはさらに警戒される危険性を無視して、会話を続けようと2人に質問した。2人は顔を見合わせる。今度はユウハを怪しんでいる様子は見受けられなかった。


「都です。王城の下にある街、そこに一軒家を建てて、私たち3人で暮らすつもりです。都会に住むことは、田舎育ちである私のかねてよりの夢でして。」


 質問に答えるためにユウハの方を向いて口を開いたのは若い母親の方だった。


「ほぉ、それは思い切りましたね。あそこは土地や住居の価格も私たちの住む田舎とは比べ物にならないほど高いと聞きますよ。」


「子供も生まれ、心機一転の時だと思い立ち上がった矢先に、今期に夫の昇進が決まったのです。夫の職は役人ですので、昇進して街の方で仕事となれば王都への移住もやむなし、」


「それで、妻が今日にも新居へ向かいたいというから、こうして夜通し馬車に揺られているわけだ。」


 話が盛り上がるにつれて期待感で気持ちの高揚してきた彼女を抑えるように、夫が話へ介入してきた。


「私も子供を育てるのなら、安全な王の膝下がいいと考えていたんだ。移住は異論ナシさ。‥‥ところで、お兄さんはかなり若く見えるんだが、親元を離れて都に出稼ぎってところかな?」


「いや~、親元を離れてというか、両親とも亡くなり、遺産も少なくなって‥‥、王都に住む友人に頼らざるを得なくなったというか。‥‥ほら、最近の地方産業は不景気ですし」


 ユウハは半分事実をもう半分は嘘の答えを返した。嘘を吐いた理由は特にない。強いてゆうならば、最初に話しかけた時点で確認した男の警戒心の高さを考慮したからである。残り半分の事実は赤の他人に話すことではなかった。


 唐突に投じられた父親の質問に対してなんとか怪しまれない程度に応えたところで、ユウハはこの回答が相手を気詰まりさせる誤答であることに気づいた。


 幼児の父親は家族思いを装うユウハのために投じた話題のつもりだろうが、結果はまったく逆効果となった。


 ユウハが饒舌をもって羽のように軽やかな冗談のひとつでも言おうとする。しかし、間に合わない。向かい合う父親の申し訳ない思いで下ろした顔の方が速かった。


「・・・・、」


「‥‥、」


 父親は他人の家庭事情に安易に首を突っ込んでしまったことを後悔しているようだ。あっという間に車内の空気が重たくなり、口も開けづらくなる。こうなってしまえば会話は終いだ。あとはこの暗く重たい空間で、連なるように訪れる災難を待つだけであるとユウハは観念して目を瞑るのだった。



 * * *



 馬車がその乱暴な車輪をピタリと止めたのは、車内に地獄を彷彿とさせる辛気臭い空気が漂い始めてまもなくのことだった。同乗する一家はどうしたかと前方を窺い、ユウハはやはり来たかと深いため息を吐いた。


 出発から今まで、首を鉄で固定しているかのように、前方だけを見続けていた御者の頭がここに来て初めて後ろを振り返った。彼の顔は何も言わないまま、凍りついて血液が循環しなくなったように青ざめており、非常事態の発生を乗客へ伝えるには十分な表情であった。


 ユウハも同乗者の一家も、振り向いたままで口を開こうとしない御者に気味の悪さと不安を感じていた。


「あの・・・・どうかされました、何かトラブルでもあったのですか?」


 ここで、不気味な様子の御者へ勇敢に声をかけたのは同乗した一家の母親だった。腕内に幼児を強く抱えて、表情はこの場の誰よりもたくましく見えた。


 ユウハは自分を情けなく思った。そして、対抗するつもりではないが傍観者面して座り込んでいては生き様に傷がつくというもの。ユウハは同調するように狭い車内で立ち上がり、御者へ助力の有無を尋ねた。


「困りごとなら、相談していただいてもよろしいですよ。助力できることがあるかもしれませんし、」


「ほぅ、それなら大人しく座ったままでいてもらおうか」


 ユウハの好意を無視したぞんざいな返事は御者のいる馬車の前方からではなかった。


 彼の後方、朝の冷気とともに風除けの幌を潜って男が現れた。体格は大きく、左の頬にある切り傷が特徴的な強面で、切り傷は顔に留まらず衣服と衣服の間からも見えた。


 右の手に刃物を握った男の表情から躊躇が感じられないこと、左手で外部になんらかの指示を送っていることから、ユウハは彼が徒党を組んだ悪賊の1人だと瞬時に判断し、刺激しないよう指示通りにその場に座った。


「・・・・と、盗賊がこんなおんぼろ馬車に一体なんのようで!?略奪する金品など積んではいませんよ!」


 相手が盗賊であると理解した御者は震えた声で精一杯に略奪の無益を訴える。しかし今は逆に寿命を縮めかねない行為だ。


「静かにしてろ。全員抵抗しなければ、苦しまないで死ねるように善処してやる。」


「そ、そんな・・・・。」


 唖然とする御者を尻目に、悪賊の男は血痕の付着した大型ナイフをユウハたちに向けて突き立てた。おそらく、抵抗するなと脅しているのであろう。目前の危機にユウハの心臓は、生まれてこの方聞いたことのない爆音で鳴っていた。


「こ、殺さないでください!幼い子供がいるのです。欲しいものがあるならなんでも差し上げますので、私たちの命だけはどうか見逃してください!!」


 絶体絶命ともいえる状況で、構えられたナイフに怯えながらも、幼児の母親は男に命乞いをする。


 一体どうすればこの場を切り抜けられると言うのだろうか、もし彼女の頼みが通じるのなら、彼女が口にした「私たち」の中に自分が含まれていてほしいとユウハは切に願った。


「だめだ。まぁ、家族どうしで別れを告げる時間ぐらいは設けてやろう。‥‥じゃあまず先にそこの変な格好をしてるお前からだ。独り身はつらいな‥‥、さっさと馬車を出ろ!」


 男に恫喝とナイフを突きつけてられて、失意のユウハは足早に馬車を降りた。馬車を出たユウハの目は今にも涙が噴出しそうだった。

 思うにきっと、薄れた靄の隙間から差し込んだ朝日が、暗い馬車から連れ出されたばかりの彼の目を刺したからであろう。



 * * *



「『生』は流れる運命の果てに、『死』は綴る因果の果てに」


 これは世界で最も長寿の王【アンテルキナ】が記した言葉である。それは王についての文献や伝記、はてはおとぎ話にも必ず登場しており、思想観念に基づいた信仰や創作物は王の死後も拡大を続けた。


 ユウハは生命の終わりに運命や偶然があると思ったことがない。意思や行動、何かしらの因果関係がもとで訪れる必然的なものだという考えを持っているからこそ、仕方がないと納得する受容も、その因果を断ち切ろうとする抵抗も、自ずと心に表れるのだった。


 今から自分は身ぐるみを剥がされ、その華奢な身体を少数とはいえ人前にさらけ出した後に、あの男の持つナイフで無惨に体を切り裂かれることだろう。子供の頃にも体験した、時間に追われ不安と切迫に満ちた感覚がユウハの全身を包んだ。恐怖によって、鼓動の高鳴りと足の震えが止まらなくなっている。


 しかし、ユウハは死に対して反抗的な意思を心内に感じていた。仕方のないことだとか、神のさだめた運命だとか、くだらない理由付けに納得して死を受け入れるつもりは心に微塵もなく、己の裸体を人前に晒すことも無論であった。


「オイオイ、‥‥気持ちの悪いやつだな。今から殺されるというのに、何が可笑しくて笑ってやがる。普通の人間は恐怖で憔悴した酷い顔になるもんだ。あ?・・・・恐怖のあまりイカれちまったか?」


 男はどうやら私の表情の変化に気付いたようで、私の身ぐるみを剥がそうと伸ばした手を止め、気味悪そうに後ろへ退いた。


 死を身近に感じると顔が勝手に笑おうとするのは、子供の頃から直ることのなかったユウハのクセである。全身にまとわりつく恐怖と不安を拭うためか、周りの人間を安心させるためなのか、今はもう自身にすら分からなくなった。


 子供であれば健気だと愛でられたかもしれないが、今のユウハでは不気味なだけで、きっと悪魔だとか人喰い魔術師だと揶揄されることだろう。


「・・・・魔術師か、そういえば、この皮布も友人の魔術師から譲り受けたものだったな。」


「何か言ったか?・・・・チッ、バッグの中には金目の物がねぇな。・・・・オイ、お前、その左手に付けてる皮布をこっちに渡せ。意外と高く売れるかもしれねぇ。」


 懐かしい友人を思い出す間もなくユウハは男に言われたとおり、左手にかぶせていた皮布を外して見せた。


『マレギール』、それが友人の名であった。マレギールとの出会いはユウハが幼い頃のことで、彼がユウハの村に移り住んで来たのだ。


 思えばその出会いがすべての始まりだったのだろう。


 当時のマレギールは若く中性的な容姿をしていたが、その時すでに彼の年齢は100を越えていたらしく、長い旅の末にこの世のありとあらゆることを知っていた。どうやら魔術師は己の体を全盛期の状態にとどめておけるそうなのだ。今はこの国で最も有名になり、その見識を伝える者として王宮に仕えていると噂を聞いている。


 幼いユウハは全知全能のように振舞うマレギールに憧れ、尊敬し、彼のような立派な魔術師を目指すことを誓ったのだった。


 その日から彼の家に入り浸って、知識を集めるために書物を読んだ。魔力を操るために無茶な訓練も試みた。行き詰り、嫌がるマレギールに魔術の基本を教えて欲しいと頼み込んだこともあった。


 極めつけは魔術師として認められるための試練だ。とても辛く苦しいもので、何度も死に目に会い、最後の方は意識も朦朧としていたためかよく覚えてはいなかった。


 気が付くと自宅の寝床に横たわっており、身体は以前と異なる感覚を身にまとっていたのだった。それは魔力に触れるという感覚で、試練を乗り越え魔術師として認められた証拠であった。


 あれから8年後、ユウハは再び命の危機に直面することとなってしまったのだった。今度の敵は、慈悲のかけらも持たない凶暴な悪賊である。


 衣服はすでに賊の手中に渡り、残るは上下の肌着一枚となった。そのまま、外れの街道で真冬の冷たい朝に馬車から放り出され、さらには命まで奪うと宣告されてしまっている。


「‥‥僕は何でこんな目に合ってるんだ?脅され、身ぐるみを剥がされて辱めをうけて、挙句の果てに殺されるなんて酷い仕打ちじゃないか。いったい誰のせいだ。‥‥僕を先に殺すよう賊に売ったあの家族か?」


 ユウハは馬車の方を向く、荷台の中から幼児の泣き声が聞こえた。幼児だけではない。あの気さくで明るい母親も、家族のために身を切る父親もきっと悲しんでいる。彼らには待望している未来があった。それを失う恐怖と奪われる悲劇に涙を流しているのだ。


「‥‥いや、彼らも被害者だ。恐怖から目を背けるな。唾棄すべき相手を見ろ、立ち向かうんだ。」


 ユウハにもまだ未練がある。自分を変えるために村を出たのだから、こんなところで死ぬことはできないと体が奮起していた。


「なんだ、何か言ったか?‥‥しかし、これはなかなか質のいい皮布じゃないか、高値で売れるぞ。」


 ユウハの痩せた体を見て、反撃されることなど考えてもいなかったのだろう。賊の男は盗品を漁ることに夢中になっていた。だから、ユウハが渾身の力で振り抜いた拳は男の顔に直撃し、男は勢いのまま地面に倒れた。


 しかし、多少身体能力が高いと言えどユウハは見た目どおりの非力であるため、男に大した痛手を負わせてはいない。きっとすぐに起き上がってくるだろう。何が起きたかわからないまま男が倒れている隙に、ユウハは急いで衣服を取り返し適当に身に纏った。


 男の方を向いたまま、ユウハは距離をとるように後退する。だが、先程予見していた通り悪賊の男には徒党を組んだ仲間が潜んでいた。馬車が止まっている街道沿いの茂みや木の上、岩の後ろから大勢飛び出し、アッという間にユウハの周りを囲んでしまった。


「オイオイ、だらしねぇな。こんな瘦せっぽちに殴り倒されるなんてよ。え? ‥‥、さっさと立ち上がれ!」


 現れた賊の中で頭領と思しき長髪の男が前に出る。他の賊よりも見た目を整えており、全身に鮮やかな宝石と金銀の装飾を付けていた。


 男が倒れている仲間を蹴ると、その仲間は顔面を殴打されたとは思えないくらい容易(たやす)く起き上がった。


「‥‥兄貴すまねぇ、すっかり油断しちまってた。でも大丈夫、アイツごときにいくら殴られても平気だ。もう二度と油断しねえよ。」


「ああ、それでいいのさ、ワルド。お前はまた一つ学習できたってことだ。そして、‥‥そこの青年、最期の希望を失ったな。弟を殴った瞬間にナイフを奪って全力で逃げれば、もしかしたら俺達から逃げることもできたかもしれないのに。」


 盗賊兄弟の兄は軽い口調で話を続けているが、その目には一切の慢心もなくユウハを一人の敵と認識していることが分かる。その間に弟も手放したナイフを拾い上げ、先程とは違う、脅すのではなく相手を襲う構えに持ち変えた。


「さぁ、武器も持ってないご様子だが、どう戦うのか見せてもらおうかな。言っとくが命乞いは無駄だぞ。もうお前は死ぬしかないんだ。」


 盗賊の言ったとおりに絶体絶命ともいえる状況のなか、ユウハの心情は恐怖の一辺倒から徐々に理不尽に対する怒りへと変わっていた。そして、ユウハの感情に呼応するかのようにそれは起きた。


 皮布を外して構えていたユウハの左腕から光とともに謎の紋章が浮き出したのだ。紋章は巻き付くように腕中に広がり、最後は手の甲に花の象形をつくった。


「‥‥お前の言うとおり武器は持ってない、襲われるつもりはなかったからな。自分の弟が殴られたんだ、怒ってるだろ?、だから命乞いが無駄なことも分かってる。‥‥だが、死ぬのはゴメンだ。本気で抵抗させてもらう。」

 

「‥‥なんだ、その紋々は?、お前は芸術家だったのか、身体に絵なんか描いてよ。でも‥‥、なんで光ってんだ?」


 盗賊の弟がユウハの腕が光っている現象を理解できないという様子で首をかしげた。兄の方はユウハが何者であるか気付いたようで、ユウハの腕を見た瞬間から苦笑いを浮かべていた。


「‥‥ワルド、アタリだ。いいか、警戒しろよ。あれは魔術の類《たぐい》だから何が起きても平静を忘れずに行動するんだ。あの野郎、ちゃんと打開策があったってわけか、面白くなってきた。」


 警戒心を最大に引き上げ、ユウハの動きを一寸も逃さないといった様子の盗賊たちだったが、次の瞬間、彼らは驚くことになった。獲物を狙う狼のように張った包囲網からユウハが煙のように風になびき、忽然とその姿を消してしまったのだから。


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