37.第一章 裏 [部室棟にて]
正門の前に立っている伊東武之と6人の男達。
手に持っている刀とその出で立ちは、どす黒いオーラを放っているようで、容易には近付くことが出来なかった。
以前道場にて伊東とは立ち合い、勝ちをおさめてはいるが、今の伊東は真剣、こちらは丸腰。
人数差からしてもこちらが不利だ。
まずは皆の安否確認を優先する為、彼らとは関わらず裏から学校へ入ることにした。
学校の約30m手前から、彼らに見つからないよう身を隠しながら学校の裏門へ回る。
無事に裏門までたどり着き入口へ近づく、すると見慣れた人影が門から現れた。
ひょろっとした体つきで高い身長、その人影は隣に住んでいる累さんだった。
目を覚ましてから暫く顔見知りに会えていなかったせいか、累さんをみつけた途端に安心感を身体中に感じた。
「累さんっ!」と少し大きめになってしまった声に驚いたのか、累さんはビクッと身体を震わせ、驚きの表情でこちらを見た。
「ゆ、雪風くん?!……どうして君がここに?……」と最初だけではなく、今も驚いた表情で問いかける累さん。
「えっと、、はい、話すと長くなってしまうのですが、実は僕1日以上意識を失っていたみたいで、目を覚ましてから急いで学校まで来たんです。
この学校には友達もたくさんいますので心配でしたし、この後は家族の状況も見に行こうと思ってます。
累さんこそ学校で何をされてたんですか?
それと学校の反対側には物騒な人達が大勢いたので一緒に行動しましょう。
あ、あと、この今の状況が掴めていないのですが、いったい何が起こってるんでしょうか」と、質問や不安を早口で一気に伝えた。
「えっとね……」と俯き考えこむ累さん。
「あ、とすいません!一気に質問してしまって」と謝罪し、「それとすみません!お話は歩きながらでも良いでしょうか?皆が心配で、早く皆の顔を見て安心したいんです」と学校の中へ入ろうとする。
「あ、あっ、うん……そうしよう」と累さんも同意してくれて一緒に校内へと入る。
半ば強制的に一緒に学校へ入ってもらったが、今の外の状況から1人での行動は危険だ。
累さんの為にも2人行動の方が良いと思う。
裏門から入ると、そこは本校舎とは反対の部室棟側になる。
普段なら部活もそろそろ終わりの時間の為、生徒が着替えや片付けで賑わうのだが、、今は生徒の姿が見えない。
「累さん!念のため僕の部活の部室を見てきてもいいでしょうか?」と少し離れた所を歩く累さんに話しかける。
「あぁ」と頷く累さん。
目を中々合わせてくれず、元気のない累さん。
やはり様子がおかしいな、と累さんの様子の原因を考えながら部室棟へ入る。
まずそもそも学校から出てきた事がおかしい。
累さんは基本的に家と公園しか行き来をしないし、この学校も卒業していなかった筈……最近会っていなかったから近況はわからないけど、何か変化があったのかな。
それにいつもは猫背の累さんが、今日はやけに姿勢が良いような気がする。
部室棟の奥、剣術部の部室前へ着いた。
あ、、鍵がないや。
と気付かなかった自分に落胆し踵を返す。
すると、部室内から『サッ』と小さな音がした。
その音の発生元は、剣術部の隣の部室から聞こえてきた。
部室の扉にはダンス部3と表記されている。
ダンス部は女の子の多い部活なので、着替えや何やらありそうだ。
不用意には開けられないな……ただ今の状況だと心配だと思い、「すみません、剣術部部長の鷹柳と申しますが、何方かいらっしゃいますか?」と声を掛けた。
すると数秒程して中から人の気配を感じ、『カチ……ガチャ』という音がし扉が開いた。
すると、中から出てきたのは、恐らく先輩の女子生徒が2人、男子生徒1人の計3人組。
一瞬、卑猥な考えが頭を過るが、3人の表情を見てそんな考えは一蹴された。
「けけ、剣術部の、ぶぶぶ部長ってことは、発表会ですごかった人だよなっ?!」と焦った様子で話しかける男子生徒。
「お、落ち着いてください。凄かったかどうかはわからないですが、発表会には参加した者です。皆さんはダンス部の方々ですか?僕は2年なのですが、皆さんは3年生ですよね?」と少し落ち着かせようと話しかける。
「う、うん、私たちはダンス部3年だよ。私は島村美月、私の後ろの子は田中有紀、で彼は田所純平だよ。見つけてくれたのが貴方でほっとしたわ」と説明してくれた島村さんの顔色はあまり良くないようだ。
「僕で良かったっていう言い方ですと、他に見つかりたくない人がいるって事ですか?
すみません、実は事情があって夕方までの記憶が無く、先程学校に来たばかりなんです。
何もわかっていなくて申し訳ないのですが、今の状況を詳しく教えて頂いても宜しいでしょうか?」
僕の話を聞き、三人は顔を見合わせ頷きあった。
「本当は今すぐにでもここから出たいんだけど、貴方が何も分からないまま逃げても危ないだろうから、少し説明させてもらうわね」と島村さんが部室の椅子に座る。
僕も近場の椅子に座り話してもらうよう促した。
「どこから話せばいいのか……今日の朝早くにテレビとかラジオ、新聞なんかで発表された事があったの。
[帯刀令]っていう法律?らしいんだけど、私も詳しく聞かずに学校へきちゃったから説明が足りなかったらごめんなさい。
……多分それが原因だと思うんだけど、知らない人達が数十人くらい学校へ押し寄せてきて、急に人を刃物で斬りだしたの……」と、言葉を詰まらせた彼女を見ると、膝に置いた手が震え、瞳からは涙がこぼれていた。
「ごめんなさい、、思い出したらまた怖くなっちゃって……」と泣いている島村さんにダンス部の二人が寄り添う。
「俺らは運良く逃げられたんだ、、丁度部室に荷物を取りに行くところで、まわりが騒がしかったから小窓から外を見たら皆逃げ回ってて……でもあいつら斬るフリなのか、ここら辺では襲われている奴は少なかったな、なんか追い立ててるみたいだった……。
そんで俺らは見つからないように息を殺して一日中ここで隠れてたんだ」と田所さんが話を続けてくれた。
2人の話を聞いて、理解は出来ないが内容を把握する事はできた。
なんとも信じがたい話だが、実際に目の前でここまで怯えている人を見ると信じざる負えない。
「ありがとうございました。帯刀令……なんでそんなものが……今の状況が少しわかりました。それでは皆さん、一先ずここを出ましょう。幸い僕が入った裏口には怪しい人はいませんでしたし」
「ほんとっ?!なら早く出ましょ!これ以上ここに?いたら私本当におかしくなっちゃいそう」と扉を開く島村さん。
「あ、僕が先に出ますのでっ!」と声をかけるのと同時に扉を開く島村さん。
「大丈夫よ、貴方が来てからまだそんなに時間は経っていないし」と扉の外へ出る島村さん。
急ぎそれに着いていく僕ら三人。
『バシュッ……ドタァン!』という大きな音が聞こえた。
扉が閉まり、見えなかった扉の反対側の光景が現れた。
そこには大量の血を流し床に倒れている島村さん。
そして手に血の滴る刀を握っている累さんが立っていた。
kogetora_suguです。
お読み頂き誠にありがとうございます。
最近は投稿の頻度が落ちてしまい申し訳ございません。
楽しんで頂けるよう、できる限り間を空けず投稿出きるようにして参ります。




