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32.第一章 裏 [新入部員]


4月28日火曜日

朝の登校時、僕の少し前に見覚えのある赤い髪の青年を見つけた。


滝くんはちゃんと来てくれたみたいで良かった。

今も前のめりで百瀬さんと話をしているようだ。

倒れる時は前のめりという偉人の言葉もあるけど、彼のそれは少し違うかな。

百瀬さんの困り眉を見て、滝くんの復帰も祝うべく彼らの側まで急いだ。


午後の授業が終わり滝くんと職員室へ向かう。

格闘クラブの部活立ち上げ撤回(てっかい)と、剣術部への入部手続きについて桜井先生と吉良先生に相談するつもりだ。


吉良先生は滝くんの事を部活紹介で知っていたようだが、印象はあまり良くないみたいだ。

何度も備品の管理は気を付けて、暴力行為は気を付けて等、剣術部に対して暴力行為を問うのはどうなんだろうと思いつつも、僕らはうんうんと先生の話を聞いた。


その後二人で校舎裏へ向かい、部員の皆にも滝くんを紹介する。


部活紹介の印象が強いのか、皆一歩下がった所にいる。

特に女子はもう一歩程離れている。


「滝くんは僕と同じクラスで、元々は格闘クラブを作ろうと思っていたんですが、諸事情があり、僕らの剣術部に入ってもらうことになりしました。皆宜しくお願いしますね」と僕から軽く挨拶をし、滝くんへ自己紹介を促した。


「滝 真一郎だ、格闘技について聞きたいことがあったらなんでも聞いてくれよな!これから宜しくっ!」と親指を立てポーズを決めた。


2拍程間(にはくほどま)が空いてから拍手が起こる。


「あ、そうそう、本当は俺が副部長になる筈(はず)だったんだが、もう既にいるって聞いたが誰だ?挨拶しときたいんだが……」


今度は大分間が空く。

まずい、鷹柳流走法術(そうほじゅつ) 其の1 閃流(せんりゅう)を使い一瞬で福居さんの後ろへまわる。


「福居さん、本当にごめんなさい。あとでちゃんと説明するから、ここは福居さんが副部長ということでどうかお願いします。どうか……」と小声で伝えた。


「えっ?えっ?私?!」とあたふたする福居さん。

それを見て無言で頷く(うなずく)僕。


何かを感じ取ってくれたのか、コクコクと二回頷き滝くんへ手を挙げてこたえてくれた。


「わ、私が、ふ、副部長の福居 姫です」


「おう、福居さんね、覚えたぜ。これから宜しくな!何かあったら雪風だけじゃなく俺も頼ってくれよな!」と言い福居さんに握手を求める。


恐る恐るそれに応える福居さん。

ありがとう福居さん。ごめんなさい福居さん。


その後は滝くんへ剣術部の方針や練習内容等を伝えた。

格闘技にしか興味が無いのかと思っていたが、「入ったからにはちゃんとする」との事で、竹刀を握って稽古に励んでくれている。


太刀筋も良く、案外良い剣士になるかもしれないな。



5月2日土曜日

百瀬さん、滝くんとの約束の週末を迎えた。


集合場所は橙幻町の中心に位置する穂雑(ほぞ)駅だ。

西口と東口があり、今回は学校側の東口で待ち合わせとなった。


昨夜叔父さんに明日は道場へは行けない旨(むね)を伝えたところ、体調や心労を心配されたが、叔母さんから一言「雪風にもとうとう彼女ができたのねっ」と言われ、二人でニヤニヤしていた。

すぐさま否定して三人である事も伝えたが、二人は聞く耳を持たず、どんな子だろう、お小遣いを渡さないと!等楽しそうに話していた。


お小遣いを貰えたことは嬉しいけど、変に勘違いしたら相手にも申し訳ないよ。

などと考えていると、前から手を振りながら小走りで向かってくる百瀬さんを見つけた。

僕も手を振り返し、百瀬さんを迎えるべく少し歩きだした。


「ごめんなさい、もっと早く着く筈だったんだけど、お母さんが急にエリザの散歩押しつけるからギリギリになっちゃって」と額にじんわりと汗を滲ませて話す百瀬さん。


「全然大丈夫だよ、時間にも間に合ってますし。

それよりエリザさんというのは?」


「あっ、うん、ごめんね、家の犬なの。ボーダーコリーっていう犬種なんだけどわかる?」


「うん、たしか牧羊犬(ぼくようけん)だったよね。運動量が多そうだから大変だったんじゃない?」


「そうそうっ!牧羊犬だよ。そうなの、お散歩は朝と夕方の二回するんだけど、普段はお母さんがしてくれてるからお休みの日くらいは私がしてて。でも今日は用事があるって昨日伝えてあったのに、朝になって急にお母さんが……ってごめんね、どうでもいい話、、」

と少し俯(うつむ)く百瀬さん。


「いや、そんなことないよ!百瀬さんのお話が聞けて嬉しいよ。百瀬さんはお母さんと仲良しなんだね」


「そう?…それなら嬉しいな…。お母さんと仲は良いと思う。お父さんは無口だし、私は小さい頃あんまり外へ出て遊ぶような子じゃなかったから友達も少なかったし。半分お友達みたいな感じかもしれないかな」とはにかんだ笑顔で応える百瀬さん。


その後も百瀬さんとお互いの家の事や趣味の事などを話し合っていた。

集合時間の10時を少し過ぎた頃、「おぉーーいっ!!」と駅の東口側全体に聞こえるような大声で叫ぶ男の子が目に入る。


三人は無事に合流し、少し話してから1つ目の目的地へと向かった。



kogetora_suguです。


お読み頂き誠にありがとうございます!


もっともっと面白くして参りますので、どうか最後までお付き合いくださいませ。


あとコメントやブックマーク等も是非お願い致します。


それではー

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