31.第一章 裏 [お宅訪問]
空手部の皆が帰り剣術部の練習が始まる。
と言っても、皆身体が疲れきっているので技の勉強会の予定だ。
「ふぅ、では今から鷹柳流剣術、技の勉強会を始めます。門外不出って訳では無いけど、人を殺せてしまう技だから、それを心に留めて欲しいです」
「ではまず、鷹柳流剣術1ノ形雨水から見せるね。
これは部活紹介の時にも披露した技だから見覚えがあるんじゃないかな。
簡単に言うと左右へ身体を振り、移動しながらの連続の突きです」
無行の位に構え、今回は的も何も無いため虚空に向かって技を放つ。
今回の突きは頭と両肩への3段で抑えておいた。
6段は僕以外に使うことが出来ないし、変に印象付けても良くないと思った。
「は、はやすぎっ…」と南さん。
「今の見えたやついる?」と榊原くん。
「お、おれは見えた…と思う」と神宮寺くん。
その他の皆もそれぞれに感想をつぶやいている。
「今日見てすぐ覚えてって訳じゃないから大丈夫だよ。今日はこんな技があるのかーくらいに思ってくれればいいから」
「そ、そうですよね。見てすぐ出来るものではないですよね」と福居さん。
では次は鷹柳流剣術2ノ形瀑布ね。
と次々に技を見せていく。
皆には1ノ形雨水と3ノ形漣しか見せたことが無いからか、色んな技を見て興奮しっぱなしだ。
人間離れした技ではないと思うけど、技自体が速いという事もあってよく見えなかったかもしれないな。
でもこれも勉強。
世の中には1つの技を極めた強者がたくさんいる。
それに比べたら僕の技なんかまだまだ、より良いものをたくさん見ることが何よりの勉強になる。
だから皆には手を抜かず、本物の技を見せていかないと。
6ノ形 水面まで見せて今日の勉強会は終わりにした。
技を見せた後には皆からの質問タイムにし、見落とした部分等を補完していく。
皆積極的に質問してくれるから僕としてもとても嬉しい。
皆であーでもない、こーでもないと話し合っていた。
そんな中、吉良先生には素振りを体験してもらっている。
「た、鷹柳くん、これ、けっこう辛いんだけど、あと何回で終わりなの?!」
「はい、えっと、今が200回ですから、あと800回ですね」
それを聞いた瞬間、スッと竹刀が下ろされ目が点になる先生。
「みんなー!喉渇いただろー!先生が飲み物買ってきてあげるよー!」と言い皆の方へ歩きだす先生。
「ちょ!先生!」と止めようとしたが、まぁ皆にも無理させちゃったし、流石に先生に1000本はやりすぎだよね。
お茶やジュースを飲みながら技について話し合っていると、部活終了の18時近くになった。
「じゃ今日はここまでかな、明日は校舎裏の日だけど、色々と出来ることはあると思うから今日はゆっくり休んで明日に備えてください」と伝え解散となった。
そして帰りは百瀬さんと滝くんの家へ向かう。
「……百瀬さん、今日は部活に付き合ってくれてありがとうございました。退屈ではなかったですか?」と顔色を伺いつつ聞く。
「ううん、全然!剣術の事は良くわからないけど、皆も生き生きとしてて見てるだけでも楽しかったよっ」と笑顔で応えてくれた。
ふぅー、機嫌は良くなっているみたいだと安心し、滝くんの家へと急ぐ。
15分程で滝くんの家に着き、呼び鈴を鳴らす。
1度目では出ず、念の為2回鳴らした。
すると玄関の扉がガチャと開いた。
中から現れたのは、赤い髪をボサボサにしてダラダラのシャツとハーフパンツを履いた滝くんだ。
「滝くん、ごめんね突然、学校に来ないから体調崩しているんじゃないかと思って様子を見にきたよ」と伝えた。
「ゆ、ゆきかぜ、、と……百瀬ちゃん!!」と、百瀬ちゃんという言葉で大声を出した滝くんは家の中へ戻ってしまった。
……僕と百瀬さんはお互いを見合い、「「どうしよう」」とつぶやいた。
どうしたものかと考えていた時、玄関の扉が勢い良く開かれた。
「おまたせっ!百瀬ちゃん!さっ、入って入って!」と言い、髪型をバッチリとセットし、何故か制服に着替えた滝くんが手招きしてくる。
再度僕らは互いを見合い、小さく頷き滝くんの家へと入っていった。
滝くんの家は、一戸建てで住宅街の中にある。
回りには公園もチラホラあり住みやすそうな所だ。
「ささっどうぞっ!」と執事のような仕草で百瀬さんをリビングへ促す滝くん。
僕はそれに付いていく。
リビングのソファーに座らせてもらい、滝くんが飲み物を持ってきてくれた。
「良くわからない事を言い出しそうだから先に質問させてもらうね。最近元気が無いように見えたし、
今日もお休みだったから心配で様子を見にきたんだ。体調でも崩してたの?」と、百瀬さんしか目に入っていない滝くんへ向け、先んじて質問をした。
「お、おう、雪風、理由は色々だ」とだけ返答があった。
「滝くん?何か悩み事とかあったら聞くから言ってね」と百瀬さん。
「いや……実は俺の立ち上げようとしてた格闘クラブに人が集まらなくて……部活として認められなかったんだ。だから今日は学校行く気になれなくて……心配してくれてありがとう、百瀬ちゃん」
もう百瀬さんに任せよう、と心に決めた。
その意思を伝えるべく、無言で百瀬さんに目配せした。
それを感じ取ったのか、百瀬さんが先週の出来事等を滝くんから聞き取りしてくれた。
どうやら毎日毎日放課後に1人で新入部員を3時間も待ち続けていたようで、それが5日間となれば精神も病んでしまいそうだ。
それに詳しく聞くと、隣で新入部員と楽しそうにしている部活があり、それを見ていて余計に辛かったとの事だった。
たしか滝くんの格闘クラブも校舎裏で活動していたような……僕らの事か。
「た、滝くん、僕からも先生に期間の延長をお願いしてみようか?」
「いや、、いい。部活なんて作らなくても俺一人で強くなればいいからな、だからもう部活は諦めた」とムスッとした表情で応える滝くん。
すると百瀬さんから思いもよらない提案がされた。
「それなら剣術部に入らせてもらえばいいんじゃない?」
「「えっ?!」」と僕と滝くんは同時にリアクションする。
「だってこの前も空手部の部長さんと格闘技?してたし、剣術部でも滝くんの役にたつ事はたくさんあるんじゃないのかな」との事だった。
まぁたしかに、兵法という括りにすれば徒手空拳も剣術部には大事な要素かもしれない。
「うん、滝くんさえ良ければ僕は歓迎するよ」
「マジか、雪風の部活でも殴り合いがあるんだな。それなら俺は副部長でお願いするわ」
?…え?「いや……まず、部活参加は歓迎するよ、殴り合いというか素手での格闘術はあるよ!
それで副部長はもう決まっているから、、ごめんね」
福居さんごめん!まだ何も伝えていないけど、貴方は今副部長に任命されました。
「そっか、副部長は残念だが仕方ないな。じゃ明日からヨロシクな!」とこちらに親指を立ててくる。
僕はそれに笑顔で応える。
「良かったねー滝くん、これで明日からまた学校に来れるね!あっ、そうそう、あと今週末なんだけど、鷹柳くんに私と滝くんで、前に話してた学校の外の案内をしようと思うんだけど、どうかな?」
「で、デートか、少し早いがいいだろう」
「……じゃ、決まりだね、鷹柳くん、週末は予定空けといてね!」とこちらに笑顔を向ける百瀬さん、と上を向いて何やら妄想に浸っている滝くん。
不安だ。
kogetora_suguです。
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なにとぞー
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