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30.第一章 裏 [思い込み]


再度向き合う北山部長と僕。

構えはお互い変わらず間合いを探り合う。


少しの間ではあるけど、立ち合ってみて気付いたことがある。

北山部長はどこか実戦的に感じる。

学校の部活や試合とは違うような、仕合のような緊張感を感じる。


先に仕掛けたのは北山部長。

低姿勢のまま距離を詰め、左足による足払い、からの胴回(どうまわ)し回転蹴り(かいてんげり)。

足払いは足を引いて躱(かわ)せたが、回転蹴りは斜め上から降ってくるように放たれる為、この距離で躱す事は困難だ。

その為、僕は部長の胴体ごと抱き付くように抱えて受ける。

そしてそのまま畳の床へ抱え込みながら落とし、寝技を極め(きめ)(絞め技や関節技など)部長の身動きを止めた。


速さに関して言えば、北山部長は中々に速い。

道場破りに来た伊東さんが、薬物を服用した時の速さに比べれば劣るが、それでもウチの道場生と比べたら2,3番目くらいに速い。

霧島さんといい勝負かな。


只、小柄であり、尚且つ筋肉量が明らかに少ないのか、パワー不足は否(いな)めない。

今もこうして覆(おお)い被(かぶ)さり上半身を抑え込んでいるが、触れた部分はしなやかではあるが、格闘家にしたらどうも柔らか過ぎる。

もう少し筋肉量を増やせば、技にもキレとパワーが合わさり一つ上の段階へ上がれそうだ。

などと勝手に考察していると、

「うぅっ……ちょ……た、鷹柳君、ごめん。降参するから放してほしぃ…です」となんとも消沈した様子で北山部長は話しかけてきた。


それを聞き、絞(し)めすぎていたかと慌てて離れ、部長を起こしてあげた。

起こす際に脇の下に手を入れたからか、「ひゃっ!」と可愛らしい声を上げて飛び退く北山部長。


「す、すみません!」と謝る。


「う、ううん、僕の方こそごめんなさい。や、やっぱり鷹柳君は強いなー」と話す北山部長の顔は微(かす)かに赤く見える。


『ポトッ』と部長の帯が落ちた。

絞め技のせいで胴着がほどけてしまった様だ。

「え……」と声にならない声が出てしまった。


はだけた北山部長の胴着の胸元には、白いサラシが胸からヘソ上まで巻かれており、胸元には女性特有の膨らみが見てとれる。


「あ……あの、北山部長さんは……その、女性でいらしたんでしょうか」と焦って変な言葉で尋ねてしまう。


「…う、うん。僕は一応女の子だよ。ごめんね、黙ってて。自分から女の子だよーって言うのも言いにくくて」と少しハニカミながら話す北山部長。


「そ、そうですよね!すみません!失礼な事を」とすぐさま謝罪した。


「まぁ、僕も話し方とか態度とか?混乱させちゃう理由はあるからね、みんな最初は男の子だと思うみたいだし…でもまさか寝技になるとは思ってなくて……」


と、ここで先程の立合い稽古を思い返す。

僕は女の子に抱き付き、相手の動きを封じていたのか……あんな至近距離で…。

今になって自分のした行為を振り返り、顔が熱くなっていると感じる。


「すみませんでした!!」と90度の角度でお辞儀をし再度謝罪した。


「だ、大丈夫だよっ!知らなかったんだから仕方ないよ!あ……でも…」と北山部長の顔色が変わり、微笑むように少し広角があがる。


「やっぱり女の子を辱(はずか)しめた責任をとってもらおうかなー」とニコニコ顔の北山部長に戻る。


「せ、責任ですか?」不安しかないこの状況、どう切り抜ければいいんだ。


とここで道場入口の方から声が上がる。

「すみません、この状況を何方(どなた)か教えて頂けますか?」と尋ねているのは吉良先生だ。

良く見ると先生の後ろに百瀬さんもいる。

時計を見ると17時を少し過ぎていた。


そっか、二人とも17時には来るって言ってたもんね。

尋(たず)ねた吉良先生に、剣術部の皆が説明してくれているようだ。


吉良先生のおかげ?でなんとか責任問題は一時的に有耶無耶(うやむや)に出来、今日の合同練習は終わりを迎えた。


「遅くなってすみませんでした!剣術部の稽古頑張ってください!」と北山部長。

どうやら機嫌は直っているようだ。


「い、いえ!ありがとうございました!それではまた」と言いかけた時、

「あ、鷹柳くんには明日話があるからお昼休みにクラスにお邪魔させてもらうねっ」と北山部長が言葉を被せてきた。

北山部長の表情はいつも通りニコニコしている。けど、何故だろう。明日話を聞くのが怖いのですが。


「は、はい。お待ちしております」と応え、空手部の皆と別れた。



モヤモヤした気持ちのまま、剣術部の皆の所へ向かった。

そこには吉良先生と百瀬さんもいた。


「合同練習なんて大変な事になってたんだね、僕も事前にわかってたら準備とか手伝ったし、それに顧問として出来ることがあったかもしれないのに」と吉良先生。


「すみませんでした!突然決まったことで、報告が疎か(おろそか)になってしまいました。今後は気を付けます」と謝罪する。


「いや、いいんだよ。部活同士の交流は良いことだし、活発に活動しているアピールにもなるしね!校長先生や教頭先生にも印象付けできそうだよ」と前向きに捉えてくるているようだ。


それを聞きホッとしている僕に、

「鷹柳くん。さっきの子って女の子だったよね?」と後ろから平坦な口調で話しかけてきたのは……百瀬さんだ。

怒っている?…。


「う、うん、そう…みたいで、凄く失礼な事なんだけど、最後まで女の子だって気付かなくて」と何故か弁解している。


「ふーん、そう?あんなに密着してたらわかりそうなものだけど?」と、いつもの優しい口調を忘れてしまったかの様に冷たい口調で問い詰めてくる。


「……そうですよね、先輩には明日の昼休みに謝罪する予定です」

と明日の予定を伝えると、

「あした?……それって鷹柳くんがお願いしたの?」


「い、いえ、北山部長に誘われて…」


「そう、じゃそれには私も同席させてもらうね」と明らかに作った満面の笑みで話す百瀬さん。


「え、でも北山部長は僕に話しがあるって…」


「明日の約束忘れたの?」と今度は真顔の百瀬さん。


「いえ、三人でお昼を食べる予定です」と全力でお辞儀しながら答える。


「そうそう、だから空手部の部長さんには申し訳ないけど私と滝くんも一緒ね」と笑顔で話す百瀬さん。


もう、、もうなんでも良いです。







kogetora_suguです。


お読み頂き誠にありがとうございます‼️


是非次回も宜しくお願い申し上げます‼️

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