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29.第一章 裏 [合同練習]


武道場を出て校舎裏へ向かう。

空手部との合同練習が決まったことを部員の皆に伝えると、

「え、、今日はもう動けそうもないんですけど」


「真央!泣き言をいっちゃだめだ、腕が上がらないなら下半身を鍛えるんだ!インナーマッスルの強化でもいい!」と神宮寺くんが熱く語っている。

神宮寺くんは熱血少年マンガの主人公みたいだ。

今時こんな子もいるんだな、見た目はどちらかというと爽やか少年っぽいのに。


「ですよねっ!先輩!」と神宮寺くんから振られ、慌てて応える。


「う、うん!無理はしなくていいから、出来ることをやっていこう。武道場の端でストレッチや下半身の強化をしようか?空手部の部員さん達の邪魔にならないように場所を確保しとくね!」


「ふぁーい」と女の子座りしたままダランと手を上げて応える南さん。


「私も真央さんと同じメニューにしようかな」と福居さん。


「おれも……」と榊原くん。


「うん、皆には少し無理をさせちゃったよね、ごめんね。今日は軽く動いたら技を見る勉強会にしようか。それなら動けなくても為になると思うから」


「「おぉ!!」」と一同声を上げる。

皆表情が少し明るくなったみたいだ。


「先輩の技を拝(おが)めるなんて!録画しても良いですか?!」と神宮寺くん。


「いいですよ!まだまだ基礎練習を続けないと技の習得は出来ないのですが、見ることも勉強ですからね」


「ではあと少ししたら武道場へ向かいましょう。後で吉良先生もいらっしゃるそうなので、部活存続の為にもしっかりとアピールしましょうね!」そう皆に声を掛け、武道場へと向か準備をした。



武道場では、野太い掛け声と共に筋骨粒々(きんこつりゅうりゅう)の男子達が拳を突き出している。

先程までは入口で楽しそうに組手をしていた北山玲部長も、今は舞台の前で皆に指導していた。


あんなに小柄でもやっぱり部長さんなんだな、僕も頑張らなきゃ!等と勝手に対抗心を燃やしつつ、北山部長の側まで歩いていく。


「本日は合同練習の申し出を頂きありがとうございます。宜しくお願い致します!」


「鷹柳くん、こちらこそ宜しくお願いしますっ!噂だと鷹柳くんは剣術だけではなく武術にも心得があるとか?!きっとお互いに良い発見があると思うので、楽しみつつ励(はげ)みましょうね!」



その後、剣術部の皆は、基礎トレーニングをしつつ空手部の生徒達と情報交換をしていた。

交換と言っても、剣術部は出来て間もないのでまだ知識という知識は与えられていない。

主に空手部の部活事情だったり、基本の動き等について教えて貰っていた。


僕はその近くで、北山部長と空手と古武道について話しながら型稽古を見せて貰った。



時間はあっという間に過ぎ、16時半を過ぎた頃。

北山部長からある申し出を受け、僕は今道場の中央に立っている。


北山部長からの申し出というのは、空手部、剣術部でお互いに演舞を見せ合おうとの事だった。


鷹柳剣術の徒手空拳(としゅくうけん)は型という概念がなく、剣術の応用のようなもの。

演舞なんてものは無いと伝えたところ、何故か北山部長との立合い稽古となった……。

少しだけ嫌な予感はしてはいたが、無刀の相手との立合いはこちらとしても貴重な経験、有り難く受けさせてもらった。


「いやー、まさか実際に組手が出来るとは思っていなかったのでとても嬉しいです!」とニコニコしながら話す北山部長は、新しいおもちゃを買って貰った子供のようだ。


「お、お手柔らかにお願いします」と伝え、互いに一礼し構える。


北山部長の構えは、両手は肩と胸の間くらいの高さに構え、左足を前方へ踏み出す構え。

顔面へのパンチの無い空手ではオーソドックスな構えだ。

顔面打撃ありでも、基本的には踏み込んでからの正拳突きのみの空手では、顔の前での構えは必要なく、見てからの捌(さば)きが間に合うようだ。


それに対して僕は無行の位(むぎょうのくらい)に構え、半歩ずつ近づいていく。


「鷹柳さんの流派では構えはないんですか?」と少し困惑した様子で話しかけてくる北山部長。


「いえ、構えをする方もいらっしゃいますが、僕はいつもコレなんです」と応えた。


構えというのは、構えた場所(腕や足)から最短距離で相手に打撃を与え、時には防御をする為にとる行動であるが、剣術の構えではそこからどの様な攻撃が来るのか予想がつきやすいと僕は思っていて、立合いの最中でも無行の位にしたり、構えを素早く変えたりしていた。

そうして色々と試行錯誤しているうちに、構えないという選択をするようになった。

そこから相手よりも早く動く、そっちに注力するようになった。


「そうですが、では参りますっ!」と北山部長は低姿勢になり左足を大きく踏み出す。

縮地(しゅくち)の足捌(あしさば)きに似ているが少し違う。

一瞬で僕の目の前まで移動してきた。

小柄な部長の武器はやはり素早さか、と納得している暇はなく、目の前へ正拳突きが放たれる。


北山部長の正拳突きはとても美しく、ブレる事無く真っ直ぐ最短距離で僕のアゴ目掛けて迫ってくる。


僕はそれを左の手の平で右へ受け流す。

体重が乗っていて重さもあったが、元々の体重が軽いせいで打撃は軽く、受け流しに成功した。


北山部長はすかさず受け流された力を利用して左回し蹴りを放つ。

僕はそれを両手の平で受け、右足刀蹴りを部長の腹部へ放つ。


足刀蹴りはヒットしたが、部長は咄嗟(とっさ)に右手でガードしており、大きなダメージにはならなかった様だ。


「つっ……痛いなー、流石鷹柳くんですね、須田くんが敵わなかったのも納得です」と北山部長。


恐らく須田くんというのは副部長の事かな。

「いえ、北山部長も凄いです、さっきの蹴りをガードされるとは思わなかったです」


とそこで今まで固唾(かたず)をのんで見守っていた空手部の部員、剣術部の部員達から歓声が上がる。


「「おぉーー!!!!」」

「や、やべぇよ!部長の本気初めて見たぞっ!」

「おぅ!いつもは手を抜いてくれてたってことだよな!」等々、空手部の皆は興奮しっぱなしだ。


とそれに比べ、

「なんかさー、鷹柳先輩だからか、人間離れしててもあんまり驚かなくなってきたの俺だけ?」と榊原くん。


「いや、それ私も思ってたところ、安心感というか、人間やめちゃってる感というか」と南さん。


「……たしかに相手は3年生の空手部部長さんですしね。それに焦っている様子がまったく無いところがそう思わせますよね」と福居さん。


空手部の部員とは違い、剣術部の皆はどこか盛り上がりに欠ける。

あれ?……僕あんまり慕(した)われていないのかな。

と少し不安になる。


「では、続きといきましょうか」と北山部長。


「はい、お願いします」と応えた。

kogetora_suguです。


お読み頂きありがとうございます。


第一章 裏も残るところあと数話のはずなんです。

まとめなきゃ!!


頑張りますー!

是非応援して頂けたら嬉しいです!

コメントや評価等、宜しくお願い申し上げます‼️

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