28.第一章 裏 [親交会]
午後の授業も無事終わり、僕と百瀬さんは各々部活へ向かった。
「じゃあとでねっ」と胸元で小さく手を振る百瀬さん。
「うん、あとで!」
教室を出て僕は急いで職員室へ向かう。
あるモノを受け取りに行くために。
職員室に丁度吉良先生がいたので、先生から荷物を受け取り皆が待つ校舎裏へ向かおうとした。
「鷹柳くん!今日は僕も見学に行ってもいいかな?」
「はい!是非いらして下さい。今日はコレも届いたので少しは部活らしくなると思います!」
「ありがとう、楽しみにしているよ。
じゃ17時過ぎに武道場だったかな?僕も近頃は運動不足だからジャージにでも着替えていくよ!」
「はい!では先生にも打ち込みをして頂きますね!それでは失礼致します」と一礼し職員室を出る。
そうだった、吉良先生が顧問をしてくださる条件は部活への参加だったんだ……一本足りなくなっちゃったな、、帰ったら叔父さんに相談してみよっと。
その後ダッシュっで校舎裏に行き、みんなと挨拶を交わす。
「遅くなってごめんなさい、今日は皆にお渡しするものがあります。コレです!」と言い後ろの箱を指差す。
「おぉー!先輩が持って来たときから気にはなってたんですが、竹刀ですか?!」と榊原くん。
「……え、うん。正解です。」
「いやいや、先輩!あの縦長の箱なんて、見ればだいたいの人は予想がつきますよ」と榊原くんは更に続けた。
「ちょっと海斗くん!空気読んで!くうき!」と福居さんが、小声で榊原くんに注意している。
聞こえているよ。
「そうだよね…でも喜んで貰えたら嬉しいな」
と箱を開けていく。
すると中から濃い紫色の刀袋に入った竹刀が5本出てきた。
「個人用って訳じゃないけど、今は6人の部活だからみんなそれぞれ大事にしてねっ」と一本ずつ手渡していく。
「うわぁー、綺麗な袋ですね」と福居さん。
「思ったより重いんですね」と神宮寺くん。
「うん、今回の竹刀は素振り用の重さ900gと仕合もできるスポンジ、ウレタン補強竹刀だから、打ち込み用の竹刀よりは重いと思うよ!一応一本一本特注にはなるから、色々と融通が効くんだよ」
「みんなそれぞれ鍔と柄に番号を刻印してもらってるから、ひとまず自分のが何番か覚えておいてね。管理とメンテナンスは責任を持ってやってもらうから宜しくね!」
と竹刀の説明を終え、皆胴着やジャージに着替える。
各々ウォーミングアップをして貰い、校舎裏のスペースをランニングとダッシュ。
身体が温まってきた所で新しい練習メニューを伝える。
「では、まずは新しい竹刀に慣れていこうか、素振り1000本!用意っ!……はじめっ!」
「え、えっ、いーち!」と皆慌てながらも素振りを始めた。
言った後に気づいた。
僕も叔父さんみたいにスパルタになっていると……。
素振り1000本が終わった時に立っていたのは神宮寺君と榊原君、高津君の三人で、女子二人は500回くらいで腕が上がらなくなってしまったようだ。
「もう腕が上がらないんだけど……」と南さん。
「わ、わたしもです……」と福居さん。
「いや、俺らも両腕パンパンで少し痙攣してるよ、最後はただ振ってただけって感じ」と榊原くん。
神宮寺くんも高津くんもそれぞれ同じような感想を言っていた。
榊原くんは剣道経験者だから、幾分かは慣れていると思うが、竹刀の重さが通常の2倍ともなると流石にキツかったようだ。
それにしても神宮寺くんと高津くんまで1000本出来るとは筋が良いし根性があるな。これは新人戦も期待できそうだ!
「お疲れ様でした。この後は本来なら切り上げ1000本なんだけど、今日は初めてだったのでとりあえず休憩を入れますね。10分休憩するので、身体を解したりストレッチしてください」
「「……」」みんな一瞬黙る。
「このあとに、切り上げ1000本?…今でさえこんなに辛いのに…ついていけるかな…」
「大丈夫ですよ南さん、最初から出来る人は滅多にいないんですから!実は僕も1000回振れた三人の事は驚いているんですから。500回振れれば十分ですよ!」
「う、まじか…無理するんじゃなかった…」と榊原くん。
「いやいや海斗、やりきる意志が大切なんだぞ!こうやって先輩は強くなられたんだ、同じ様に強くなるためにはコレくらいはやらないと」と神宮寺くん。
「じゃ少しゆっくり身体を休めてね、僕は武道場の様子を見てくるから」と言い僕は武道場へ向かう。
武道場では空手部の生徒達が熱心に練習していた。
特に入り口の男の子は元気一杯で、ニコニコしながら部員達と楽しげに稽古している。
副部長さんも復帰しているみたいだが、今日は皆に混じって練習しているようだ。
この前は椅子に座って指示を出しているだけだったけど、気持ちでも入れ換えたのかな?
とりあえず17時から使わせて貰うよう挨拶だけしておこう。
「失礼します」と入り口で一礼し入る。
入った瞬間、生徒達の視線が一気に集まった。
「あ、あいつこの前の」
「副部長ぶっ飛ばしたってやつか!」
「な、殴り込みかっ」等と騒ぎ出す。
僕はペコペコと頭を下げつつ武道場の奥へと向かう。
練習の手を止めた副部長の前まで行き話しかける。
「先日は失礼したしました。復帰されたようで良かったです。今日も17時から武道場を使わせて頂くのでご挨拶に参りました」となるべく柔らかい声色で話しかけた。
「……今日は部長がいるから部長に挨拶してくれ」と僕とは目を合わせず伝えられた。
「はい、わかりました」と告げ、部長はどこだとキョロキョロ辺りを見渡す。
「あのー部長さんはどちらに?」
「玲さん、お客です」と副部長さんが入口に向かって叫ぶ。
すると入口にいた少年がこちらへ駆けてきた。
「すみませんっ!!僕がこの空手部の部長の北山玲です。貴方は剣術部の部長さんですよね!」と汗を手で拭いながら話す。
目の前の身長150cmにも満たなそうな少年が、3年生で部長さんという事実に驚きつつ僕は応える。
「は、はい。剣術部部長の鷹柳雪風です。週に三回17時から武道場を使わせて頂くので、改めてご挨拶に参りました」
「そうだったんですね、それはご丁寧にありがとうございます!僕ら空手部は月曜、火曜、金曜が武道場使用日なので、僕らの後に使う曜日は月曜日と金曜日ですかね。こちらこそ宜しくお願いします!ちゃんと17時までには掃除も終わるようにしときますので!」と、とても好意的で、とても好印象だ。
副部長さんとのいざこざはなんだったんだ……。
「ありがとうございます!先日はご挨拶が出来ずすみませんでした。それではまた後で参りますので宜しくお願いします」
「はーい!わかりました!……ところで鷹柳さん、せっかくですし、空手部と剣術部の親交を深める為に、17時からと言わず今から一緒に稽古しませんか?」
思わぬお誘いに驚きつつ、どうするか思案する。
皆は素振りで当分動けそうにないかも、でも断るのも失礼だし……部長さんに色々状況を説明して、道場の端で体幹トレーニングでもすれば良いかな。
「はい、是非ともお願いします。只、部長さんにお伝えるする事がいくつかあります……」と皆の状況を説明した後、合同練習が開催されることとなった。
kogetora_suguです。
お読み頂きありがとうございます!
空手部との合同練習、これは何か起こりそうですね。
次回も是非宜しくお願いします!




