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27.第一章 裏 [一難去って]


仕合は僕の勝利に終わったが、実際ギリギリだった。

負傷した身体での連続技は、肉体的にも精神的にも大きな負荷がかかっていた。

足下(あしもと)はふらつき、竹刀を支えに立ち上がる。


叔父さんと道場生数名が駆け寄ってくる

「雪風、よくやった」

「師範代、見事でした!」

そう言って肩を貸してくれたり、痛み止の薬を持ってきてくれたりした。


「叔父さん、僕はやはりまだまだです……自分の力を過信し過ぎていました。

不甲斐(ふがい)ない所をお見せしてすみません」


「そんなことはない、豹変前(ひょうへんまえ)の伊東ならばともかく、その後の伊東相手では、私は勿論、道場の誰が挑んだとしても勝ち得なかっただろう。

この道場はお前の手によって救われたと言ってもいい、誇っていいぞ」と言い肩をバシッと叩かれる。


「うぁっ!……ちょ、叔父さん、今は背骨が…」苦痛に顔を歪める。


「すまんすまん、だがそれも勲章だっ、はっはっは!

」と、どうやら叔父さんは上機嫌なようだ。


本当に痛いんです。


道場生に伊東の拘束を頼み、念のため警察への連絡を頼んだ。

道場でのいざこざはあまり警察へは連絡しない。

それは法律的にギリギリの立合いも少なくないからだ。

だが今回は伊東が服用したカプセルが気になる為、専門家への調査をお願いした。


元々手練れであったとしても、あそこまでの能力向上は異常という言葉以外に見つからない。


もしあのカプセルが他の悪事を働く者の手に渡れば大惨事になるやもしれない。



数十分後、伊東は警察に引き渡され、叔父さんは事情聴取に同行することになった。


僕は体力の限界も近い為、先に救急病院へ行ってから家へ帰らせてもらう。


はぁ、世の中にはまだまだ強い人はたくさんいるんだろうな。

もっと強くならないと。



4月27日 月曜日


身体の痛みはまだ残っているけど、部活の皆も待ってるだろうし学校へは行くことにした。


登校途中百瀬さんに声を掛けられた。

「おはよう鷹柳くん、お休みはゆっくりできた?」


「おはよう百瀬さん、うーん、色々あったからゆっくりって訳ではないかも」


「そうなんだね…部活の準備とか?」


「ううん、土日は毎週叔父さんの道場に行ってて、だから休みっていう休みはお盆と年末年始くらいしか無いかな」


「そ、そうなんだね…大変だ。じゃ今週末も?」


「うん、そのつもりだよ、今週末に何かあったっけ?」


「え、と、た、滝くんが最近元気ないかなーと思って。

だから、前に約束してた学校外の案内をしようかと……思って」


「あ、たしかに。先週の滝くんは大人しすぎるくらいだったね。部活の事で悩んでるのかな、今日話してみようか」


「うんっ、そうしよ!」と笑顔で応える百瀬さん。

なんだから嬉しそうだ。


教室に着いて滝くんを探す。

まだ、来ていないみたいだ。


「滝くんまだ来てないみたいだね」と少し心配そうな百瀬さん。


「うん。一応連絡だけは入れておくよ」と携帯を取り出しメールを送っておいた。


その後、お昼になったが滝くんは学校へは来ていない。

メールをチェックしたが返事もない。


「メールの返事もこないや、体調でも崩したのかな。今日の放課後、部活後になっちゃうけど家まで様子を見に行ってみるよ」と百瀬さんに伝えると、


「あ、それなら私も一緒に行くよ、終わる時間合わせるね」

そう約束をし、各々昼食をとる。



そして何故か今日も南さんと昼食を食べている僕。


「あ、あのさ、今日は皆で集まって食べない?」


「いえ、私は二人で大丈夫ですっ」とニッコリと満面の笑みを浮かべる南さん。


「あ、そう?……」まぁ別に南さんとお昼を食べることが嫌なわけではないからいいんだけど。


「あ、そうそう先輩っ、昨日うちの弟が………それで、昨日うちの犬が……」等々、南さんの家の話をたくさん聞かせて貰った。


お昼休みでわかった南さんの情報は、中学生の弟がいて、部活は弓道部。

全国大会にも出れるほどの強者らしい。

あとはわんちゃんを飼っていて、名前はペロ。

犬種はパピヨンだそうだ。

写真も見せてもらったが、とても可愛かった。

今度是非家まで見に来て欲しいとの事だった。

あとはクラスでは学級委員長をしているそうで、吉良先生からも頼りにされているみたいだ。


食べ終わったあとも話に夢中で、昼休みはあっという間に終わってしまった。


「先輩、お話聞いていただいてありがとうございましたっ、今日も部活宜しくお願いしますねっ!」と、可愛らしく手を振り教室へ戻る南さん。


僕も教室へ戻ろうと校舎へ入った瞬間、横から声を掛けられた。

「た、鷹柳くん。今から教室戻るの?」

声の主は百瀬さんだった。


「あ、百瀬さん。うん、ギリギリになっちゃいそうだから急がないとね」と言い教室へ一緒に戻るよう促す。

二人が教室へ向かっている途中。


「鷹柳くんってさ……部活の後輩の子とお付き合いしてるの?」と斜め下を見ながら百瀬さんが問いかける。


「えっ!いや、お付き合いはしてないけど、なんで?」と少し焦りながら応えてしまった。


「えっと、最近良く一緒にいるよね?…今日もお昼二人で食べてたでしょ?」

と話す百瀬さんからは、今までにない威圧感を感じる。


「う、うん。一緒にお昼食べてたけど、別にそんな関係ではないよ。うん。南さんの家の話しとか聞かせてもらってただけで」


「この前も教室に来てた子だよね……明日は私と滝くんとでお昼食べない?」と僕の目を見ながら話す。


「え、でも百瀬さんは別のクラスの友達と食べてるんだよね」


「大丈夫、たまには…ね」


「わかった、じゃ明日は滝くんも誘って久しぶりに三人で食べようか」


「うんっ」

と返事した時には先程の威圧感は消え、

いつもの柔らかい百瀬さんに戻っていた。


「その為にもまずは滝くんの欠席の理由を調べなきゃだね、やっぱりメールの返事は無いし……。

剣術部は18時までなんだけど、書道部は何時までなの?」


「書道部は17時までだから、終わったら剣術部の練習場まで行くね、場所ってどこだっけ?」


「わざわざ来てもらっていいの?図書室とかで待っててもいいからね!

今日は月曜日だから17時から武道場にいると思うよ」


「ありがとう、武道場ね。

鷹柳くんの部活見るのも楽しみだから大丈夫だよっ」


「よしっ、じゃまずは午後の授業に急がないとね!」

と言い二人は早足で教室へと向かう。








kogetora_suguです。


お読み頂きありがとうございます。


またまた投稿が遅れてしまいました。

仕事の事情もあり、今後は週に3,4投稿くらいになる予定です。


女の子に人気があるみたいで、鷹柳くんは羨ましいですね。

高柳くんにも春が来ることを願うばかりです。


それでは次回も宜しくお願い申し上げます。

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