23.第一章 裏 [相談]
人の居る気配がしない累さんの家。
二度目の様子見をしてからもう10分は経ったかな。
庭からならリビングの状態が確認できるのだが、許可無く庭に入る訳にもいかず、心配だが今日は諦めて家に帰ることにした。
累さんのお母さんは高齢者用の施設でヘルパーさんをしている。
その為、夜勤の際は朝方帰ってくることもある。
今日がその日なら、そしてたまたま累さんが出掛けてるなら良いなと思った。
4月21日 火曜日
累さんの家の事は気になったが、学校を休むわけにもいかずいつも通り学校へ登校する。
すると登校途中の公園で累さんを見つけた。
僕は嬉しさと驚きで累さんの近くまで駆け寄った。
「累さん!よかった、昨日累さんの家に誰もいないみたいで心配だったんですよ!」
声を掛けられた事に驚いた様子で応える累さん、
「あ、あぁ雪風くんか、最近良く会うね。きのう?あぁちょっと夜に歩きたくなって散歩してたんだよ」
「そうだったんですね、それなら良かったです。では僕は学校があるので、また!累さん!」と声を掛けて僕は立ち去った。
無事だったようで一安心だ。
あの物音もやはり叔父さんの言うとおり何かが落ちた音だったんだろう。
心配事が解消され、スッキリした気持ちで学校へと向かう。
今日はどんな練習をしようかなー!ワクワクだー。
と1人テンションを上げつつ学校へと走る。
午前の授業は滞りなく進みお昼休みになった。
すると、教室の扉から大きな声で名前を呼ばれた。
「鷹柳先輩っ!今日も一緒にお昼食べましょっ!」
声を掛けてきたのは南さんだった。
「鷹柳くん、あの子って新しく入った部員さん?」と
百瀬さんから聞かれた。
「うん、そうだよ。期待の新入部員です!……南さん、今行きますね!」と百瀬さんと南さんに応え、鞄からお弁当を取り出す。
扉へ向かおうとした時、
「鷹柳くん!……たまには滝くんと三人でお昼食べようね?」と徐々に声を小さくしながら、百瀬さんからお誘いを受けた。
「はい!是非!」と応え、教室を出ていく。
「…あんな可愛い子が入ったんだ……」そうボソッと呟く百瀬さん。
「南さん、今日も中庭で食べるの?」
「あ、えっと、今日は別の場所でもいいですか?」
「全然構いませんよ!ついていきます」
「ふんふーん♪」と鼻唄を歌いながら前を歩く南さん。
どこへ行くのかと思ったら、着いたのは校舎裏だった。
「今日はここで食べるんだね。みんなは後からかな?」
「えっと、そうですね……」となんだか歯切れが悪い。
「どうかしましたか?」何か事情があるのかと、少し俯いている南さんの顔を、下から覗きながら聞いてみる。
「じ、じつは鷹柳先輩に相談があって」とチラチラ目線を合わせたり外したりしながら応える南さん。
「なんだ、それなら早く言ってくれたら良かったのに。どうぞ、もう南さんは剣術部の一員なんだから、仲間の力にはなるよ!」
「あ、ありがとうございますっ!それじゃぁ……」と少しずつ話してくれた。
「まず1つ目の相談…というか質問なんですが、鷹柳先輩は今彼女っていますか?」
「……え?…っと、い、ないけど」
「それじゃ2つ目の質問なんですが、好きな女の子のタイプを教えて頂けますか?」
「……」
「えっと、好きな女の子の…」
「いや!聞こえてるよ、そうじゃなくて相談って?」
「はい、なので今相談を?」と首を横に傾げながら応える南さん。
「いや、僕はてっきり学校での悩みとか、部活の今後の相談かと…」
「んー、恋愛相談も立派な相談です!」と誇らしげに胸を張る。
「そ、そうかもね…力になるって言ったのは僕だし、精一杯協力するよ」
「さっすが高柳先輩っ!」と僕との距離を詰める南さん。
僕は一歩下がり、「では、続きをどうぞ」
少し不満げな表情の南さんからその後も質問が続く。
「うー、中々守りが堅いですね。こうなったら一気に確信に迫りますよー、先輩は好きな子はいますか?!」
「……いるよ」
「?!……そく、即答…」
「もういいでしょ!時間もあんまりないからお昼食べちゃおう」と話を遮り近くの簡易ベンチでお弁当を広げた。
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