17.第一章 裏 [再確認]
道場から出ていった霧島さんを無言で見送った後、僕は少し迷ったがそっとしておく事にした。
叔父さんの言葉を理解できない霧島さんでは無いだろうし、自分自身で乗り越えないといけない事もある。
もしそれでも壁を越えられない時は力になれるよう,自分も成長しようと思った。
その後は型稽古、同帯組手、真剣での藁斬りを行い、その日の稽古は終了した。
途中で霧島さんは稽古に戻ってきていたし、きっと立ち直ってくれるだろう。
「今日はここまでっ!礼っ!!」と声掛けをして解散した。
最近学校の後の自主稽古があまり出来ず身体が鈍っていた感じだ。
早く剣術部を部としてちゃんと立ち上げ、少しでも技を磨かないと。
これでは世界一になんてなれない!と自分に言い聞かせ家路を急ぐ。
翌日の日曜日も道場での稽古。
午前中は技の模索の時間に費やし、午後からは昨日と似たメニューで稽古を行った。
最後の藁斬りを終えた時に霧島さんから声を掛けられた。
「雪風くん、今日を逃すと次はいつ立合い出来るかわからないから、今からお願いできるかな?…」と少し僕を伺うように話す霧島さんに僕は、
「勿論構わないよ!今日も遠慮はしないから、霧島さんも全力をぶつけてね!」と発破をかけた。
すると霧島さんは笑顔で「ありがとうっ、そのつもり!」と応えてくれた。
「それでは俺が立合人をやろう」と叔父さんが申し出てくれた。
「お互い構え!……はじめ!」かけ声が掛かり最初に動いたのは霧島さんだ。
初手に選んだ技は、鷹柳流剣術1ノ形雨水。
撹乱能力のある高速の多段突き技だ。
しかし、技を理解している者に対しては撹乱効果は半減する。
それを敢えてこの技を選んだ理由とは……。
霧島さんは俊敏に身体を左右に振り高速の突きを繰り出した。
僕は霧島の雨水が両肩と心臓を打つ三段技だと知っている為、反撃技である8ノ形凪海を放ち突きを絡めとった。
その瞬間、霧島さんの口角が上がった気がした。
ん?!突き絡めとった筈が、竹刀からまったく力を感じない。相手の攻撃が強ければ強いほど凪海の破壊力は上がる。
しかしそれは、逆に受けた攻撃があまりにも弱い場合は反撃も弱くなるという事。
力というのは速さにも関係する為、僕の凪海も技の発生速度も鈍重になる。
その瞬間、僕の胸に物凄い衝撃が加わり後ろへ吹き飛び道場の壁に打ち付けられた。
「かはっ……」心臓への衝撃と壁への衝突で一瞬息が止まる。
「そこまでっ!」と叔父さんの止めが入る。
「んっ、、はぁはぁ…」呼吸が少し戻り荒く呼吸する僕の目の前には無刀の霧島さんが立っていた。
それをを見て、僕は何が起こったかを理解した。
霧島さんは雨水をフェイントとして放ち、技の発生の瞬間に竹刀を手放したんだ。
手放された竹刀には力は無く、僕の凪海の威力は大幅に半減する。
そしてその隙を狙って霧島さんは鷹柳流剣術15ノ形懸河掌を放っていた。
懸河掌は無刀状態での格闘技の1つ。
濁流の川の如く、瞬発力、体重移動、身体のバネ等全ての力方向を一点に集中させた掌底打ちだ。
段々と胸の痛みと呼吸が収まってきたので立ち上がり霧島さんへ少しずつ歩み寄る。
「やられました、初手で勝負を決めにくるとは思っていませんでした」と称賛の言葉を掛ける。
「ううん、これしか勝てる方法が思いつかなかっただけだよ」と霧島さんは小さく微笑む。
「私には雪風くんや師匠みたいな筋力は無い、それでも大人達と渡り合う為にって焦って張り合おうとしてた。周りだけじゃなくて、自分自身を見失ってた」
「私には大人達には負けないスピードと鷹柳流の技がある。無いものを欲するより、今あるものを大事にしないとだよね」
僕は、「明日からの試験の為に役立てたかな?」と問いかけた。
霧島さんは少し驚いた様な表情をした後、
「うん、ありがとう。雪風くんのおかげで自信がついよ。絶対試験に通ってみせるねっ!」と胸の前に拳を作る。
「うん、頑張ってね!」と僕は応援した。
kogetora_suguです。
お読み頂きありがとうございます!
あぁーー早速投稿が滞ってしまったーー。
是非次回もお楽しみにーー。




