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13.第一章 裏 [静まる舞台]


体育館に全校生徒が集まったところで、生徒会長から挨拶と部活紹介についての説明がされた。


各部活毎の持ち時間は3分。

その間に主な活動内容と活動場所、目標を話してからアピールタイムとなる。

3分は短いかなと思ったが、30個程ある部活全ての紹介となるとそれだけで90分かかる。


部活紹介自体は2限分、およそ100分程時間は設けられているが、例年なんだかんだと時間は押してしまうそうだ。

生徒会長の説明が終わり、1つ目の部活紹介が始まった。


華やかな演奏と共に吹奏楽部の紹介が始まった。

ある意味最初の部分にアピールタイムを持ってきたみたいでインパクトは十分。

実際にまわりの生徒の注目を集めていて、さっきまで雑談していた生徒達も舞台に釘図けだ。


その後は文芸部や家庭科部、茶道部とまずは文化部の紹介が続いていった。

そして百瀬さんの書道部の紹介が始まった。


百瀬さんを含めた5人が壇上に上がり1人が説明、あとの2人は舞台袖から大きな和紙が貼られた板を運んできた。

あとの1人は墨の入ったバケツを持ち、百瀬さんは滝くんの太い腕程ある筆を胸の前に抱えている。


説明の途中で、「それでは我らが書道部から皆さんに一文字(ひともじ)を贈りたいと思います」と言い百瀬さん達を促した。


百瀬さんはいつになく真剣な表情で、筆をバケツに浸し大きな和紙へと筆を走らせて行く。

15秒程で書き終え、書かれた文字が掲げられた。


そこには躍動感と品のある『輪(わ)』という文字が書かれていた。


部活説明をしていた生徒から、この文字で伝えたかった事が話される。

「この輪という文字に込めた想いは、私達人は皆、手を取り合わなければ生きていけません。そんな人と人との繋がりをこの輪という一文字であらわしました。そして私達は、この文字一つ一つを大事に表現する書道という羅国独自の文化を、学校の皆に知って貰えるよう輪を広げていけたらと思っています」

と締めくくった。

生徒や先生から拍手が起こり書道部の紹介が終わった。


部活紹介が続き、5限目の終わりを告げるチャイムが鳴ったところで前半戦の終了だ。

少しの休憩を挟んでから後半の紹介が再会される。


僕らの剣術部と格闘クラブは運動部扱いなので6限目に控えている。


今のうちにお手洗いに行っておこうと席を立つと、同時に滝くんも立ち上がった。

2人とも目があってから何故か頷きあって各々トイレへと向かうのだった。


6限目開始のチャイムが鳴り、後半の運動部紹介が始まった。

花形の野球、サッカー、バスケットボール、陸上、水泳と人気の部活紹介が終わり、とうとう最後の2つ、僕と滝くんの仮部活紹介がやってきた。


生徒会の司会者から促され、まず壇上に上がったのは滝くん。


「えーと、俺が作りたいのは格闘クラブです。これに入ればみんな強くなれます。こんな風に」とメモを見ながら話していた滝くんは舞台袖に消えた。


戻ってきた滝くんの後ろから、いかにも突然頼まれたであろう生徒会長含めた生徒会の方々が大きな木の板を持ってきた。

大きさは人と比べる限り高さ、幅ともに150センチくらいで厚みは10センチ程あり、台車みたいな物に固定されていた。

生徒会の方々は設置だけ頼まれた様で舞台袖に捌(は)けていった。


設置された台車のストッパーらしき物を念入りに確かめる滝くん。


「よし、あーっと、じゃやりまーす」となんの説明もなしに板の手前5m程に立つ滝くん。


なんとなく予想はしていたが、厚さ10センチの板を素手で叩くつもりかな?

普通の人ならこぶしを怪我してしまいそうだけど……。


舞台上の滝くんは仁王立ちしたまま動かない。

そしてなんの構えもせず突然走り出す滝くん、板の直前で急停止し右の拳を振りかぶる。

その瞬間、『バゴンっ!!』というとんでもない音と共に板は真っ二つに割れ、木屑(きくず)が舞った。


実際この厚みの板を素手で割る事は凄いはず、だが説明の少なさと格闘技ならではの構えからの技でもなく、如何(いか)にも滝くんのポテンシャルだけで割った事、あとは単純に驚きで見ていた生徒達はしーんと静まり返っていた。


「やっふーっ、よかったよかったー」と喜びながら滝くんは再びメモを取り出し話し出した。


「このように、格闘クラスに入れば、誰でも簡単に板を割ることができることでしょう。さぁ、みんなも一緒にレッツ木割りー!」と天高く拳を突き上げる滝くん。


僕はあまり動揺はしないタイプの人間だと思っていた。

でもこの空気の後に壇上に上がる勇気は……少しだけ逃げ出したい気分になりました。


舞台袖に上がった僕に生徒会長から一言、

「ごめんよ鷹柳くん、君を先にするべきだったね……僕の判断ミスだった…」と誰か身内が亡くなったの?!と思う程辛そうな表情で僕の肩に手を置いた。


「い、いえ、僕は自分の部活の紹介をするだけですので大丈夫ですよ!お気遣い頂きありがとうございます」


「すまんっ」と言い会長は舞台袖奥へ捌けていった。


体育館の空気は重いがやるしかない!

そう自分に言い聞かせ舞台中央へ歩きだす。


kogetora_suguです。


お読みいただき誠にありがとうございます。


引き続き楽しんで頂けるように精進致します。



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