出会い
「立花美澪奈です。よろしくお願いします」
教室に拍手が響く。人数は前の高校とそう変わらない。
……やはり様々な色の服で賑やかなのは落ち着かない。……結局は慣れだろうか。
「じゃあ立花、あそこ……水瀬の隣の空いてる席、あそこが立花の席だから。水瀬、お前優しいから立花に色々教えてやれ」
「あ……はい」
「水瀬まで緊張してどうする」
「……別にそういうわけじゃ」
「……まあ、とにかく。今日から立花もこのクラスの一員だ。仲良くしてやってくれ」
もう一度拍手が起こる。私は軽く一礼して教室の隅の席へと向かった。
「じゃあ休み時間な、俺は一旦授業の用意取ってくるから」
先生の話が終わると同時にチャイムが鳴った。
水瀬君……と言ったか。彼に話しかけられる。
「……とりあえずカバンの中身出して、後ろのロッカーの上置いてきて」
……優しい、のだろうか。笑顔とはかけ離れた表情と声音だ。
「あ、うん……えっと」
「……教科書とかあるのか?」
「……まだ、届いてなくて……。ノートは前の学校で使ってたの持ってきたんだけど」
「あー、だよな……まあノートはそれでいいと思うし教科書は見せるから大丈夫」
「あ、ありがとう」
「どうも。次は数学だから、とりあえずノートだけ出しといて。教科書とファイルはまあなくてもなんとかなるだろ」
「あ、今数学って何やってる?」
「三角関数の加法定理、だな」
「あー……前の学校ではまだやってないところだ……ついていけるかな……」
「んー、まだ基本のところだし大丈夫だと思う。分からなかったら遠慮なく聞いてくれ、数学以外でも」
見た目は無愛想な感じだけれど、先生の言うように優しい……みたいだ。
ひとまずカバンの中身を机の中にしまい、カバンを置いてくる。
「美澪奈ちゃん」
席に戻る途中で呼び止められた。振り向くと、ボーイッシュな印象の女の子が笑顔で応じた。
「私、巡と一緒に学級委員やってる、大原菜穂。女子同士じゃないと困ることとかあると思うし……まあよろしくってことで!」
「うん、ありがとう。よろしくね」
大原さんが頷いて微笑む。私も微笑んで、席へと戻っていった。
「水瀬君って、学級委員だったんだ」
「……意外か?」
「ううん、そんなことはないけど……」
そこで予鈴が鳴り始める。
「……まあ、予鈴鳴ったぞーとか席座れーとか言うタイプではないな、そういうのは大原の方が向いてる。俺は大原みたいにきっかけもないのに転校生に話しかけるとかできないし。……それを分かって青葉先生はああやって言ったんだろうな」
「んー、そうじゃなくても困ったらさすがに隣の席の人を頼るかな」
「……それ隣じゃなかったらダメなやつじゃん。……まあ俺は学級委員だから機会はあるかもしれないが」
「……そうならないためにも、早く皆のこと覚えなきゃね」
「ん、そうだな。頑張れ」
「……あ、そういえばまだ水瀬君の下の名前聞いてないね」
「あぁ、確かに。……俺は水瀬巡。改めてよろしく」
「うん、よろしく」
青葉先生が戻ってきて、水瀬君は前へと向き直った。私も前を向く。……そういえば、前の席は空いている。後で水瀬君に聞いてみよう。
まもなくしてチャイムが鳴り、転校して初めての授業は始まった。




