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ヤマメとの生活  作者: kanisaku
98/100

愛を選ぶ

今日もヤマメはケンにデレデレしている。買った本を読んでいるケンは特にうっとおしくも思わず片手でヤマメの肩を抱いて何とか本を読んでいる。


ヤ「前に貰った本の続き?」

ケ「それの続編買った。中々面白かったから。でも残念だな。これ最終巻だって」


表紙には巻数が書かれている場所に「終」と書いてある。ケン曰は12巻程続いていたので残念だと言っていた。

 

ヤ「その本が終わっても、私からの愛は終わらないわよ?」

ケ「分かってるよ」


ポンポンと頭に手を置き、本を閉じる。

今日はヤマメと地上に出かける予定なのだ。なんでも結婚指輪を買いたいらしく、二人で選ぼうとのこと。


ヤ「ふふふ。楽しみね。この日の為にどれだけお金を貯めたことか…。外の世界から流れ着いた宝石とかもあるらしいから、たくさん見て回りましょうね」

ケ「そうだな。疲れるからあんまり長くならないといいけど…」



・・・・・・・・・・・・・・。



洞窟を通り抜け、外に出たケンは、走って近くにある木に張り付いた。


ヤ「…何してるの?」

ケ「もう飛ばない。俺ぁ絶対に飛びたくない」


首を横に振ってイヤイヤと駄々をこねている。しかたないので、そんな彼を脇を思いっきりくすぐる。


ケ「ぅわっひゃっ!」


情けない声を出しながら手を離した瞬間に後ろから抱き着き、木から離れるように離陸する。


ケ「やめろ!死にたくない!死にたくないんだ!俺にはやり残したことが!」

ヤ「放さないから安心していいわよ…あんまり暴れると…」

ケ「はい、大人しくしておきます」


目を瞑って我慢するケンを抱え、なるべく早く人里に向かう。


人里に到着すると、真っ先に宝石店に向かった。木造の店内には、その内装に不似合に輝く宝石が展示されていた。どれも高価なもので、普段であれば到底買おうとは思わないものばかりだ。


ケ「ひゃー、高っかい…買えるの?」

ヤ「男女で買えば半額ってチラシが来たの。丁度いいから買っちゃおうと思って」

ケ「なるほど…確かにそれなら買えるかもね」

ヤ「あ、見てケン。これなんかケンに似合うと思うわ」


ヤマメが指差した宝石には『パール』と書かれ、その下には買うには気が引ける値段が書かれている。


ケ「コレの半額か…まぁ買えなくはなさそうだな…。でももうちょっと見て回ろうぜ。他に良いのが見つかるかもしれないし。ヤマメのは俺が選んでいいか?」

ヤ「もちろんよ。ケンが選んでくれたのならどれでも良いわ」

ケ「もうちょっと自己主張を持ってくれてもなぁ…」


二人で手を繋ぎ店内の宝石達を視認する。ダイヤモンドやエメラルド。オブシディアンとかクンツァイト、チャロアイトなんかの名前すら聞いたことのない宝石が展示されている。


ヤ「綺麗ね…。もっとここに居たいわ」

ケ「そうだな。私物じゃなくても高価な物に囲まれるってのも悪くないな」

ヤ「宝石に囲まれてケンと一緒…ロマンチック」

ケ「これ言うのも在り来たりだけど、宝石よりヤマメの方が綺麗だぜ」


本当にありきたりだ。けど、こういう場所だからこそそんな言葉が言えるような気がする。ここじゃないとそう言えないのだ。


ヤ「ケンがそう言ってくれるなんて嬉しいわ」


嬉しそうに抱き着く姿を、店内に居た数名の客や店員が見ていた。すぐに押し離し、話を逸らす為に手前にあったショーケースの宝石を指差す。


ケ「あ、これなんかいいんじゃないっ?」


ケンが言ったのは『スフェーン』と書かれた紺色の宝石。指輪の形をしていて、結婚指輪には丁度いいものだ。


ヤ「綺麗ね…。じゃあこれにするわ。ありがとう、ケン」


ニコニコと微笑むヤマメの元に店員が向かい、ショーケースを開けて宝石を取り出す。


店「これですね?」

ヤ「ええ、彼の分も買うから、ちょっと待ってて」

店「わまりました」


男性の店員はそれを会計所まで持って行って待機している。

しばらく悩んでヤマメが選んだのは、ラピスラズリの指輪。角度を変えるとキラキラと光るように加工してあり、とても美しく仕上がっている。


店「スフェーンとラピスラズリ…。二人は夫婦ですか?」

ヤ「夫婦予定です♪」

ケ「夫になります♪」

店「………。では割引させていただきますね」

ヤ(無視したわね)

ケ(無視しやがったな)

店「ちなみに、宝石には花言葉のようなものがあるんです。そちらの旦那が選んだスフェーンは『永久不変』。奥さんが選んだラピスラズリは『愛』『永遠の誓い』があります」

ヤ「ふふ、私の愛は永久不変なのね。嬉しいわ。ケンも永遠の愛を誓ってくれるかしら?」

ケ「もちろんだ」


二人のイチャイチャを前にしても店員は表情一つ変えず、無表情のまま宝石を綺麗に包装する。


ヤマメに腕を抱かれながらの帰路は、なんだか清々しい気分だった。きっと買い物が思った以上に楽しく思えたからだろう。こんな事ならもっと長く買い物していたかったが、それは自分が疲れてしまいそうだ。


ヤ「良かったわね。あの店。きっと私達の為だけに用意されてたんだわ」

ケ「んな馬鹿な…」



・・・・・・・・・・・・・・・。



ケ「嫌だ!嫌だ!嫌だあぁぁーー!!」


もちろん飛んで帰るケンは、泣き叫びながらその声を空に響かせた。

宝石って良いですよね、綺麗ですよね。自分は好きです。特に何が好きというわけでもありませんが、名前で言えばジルコニアって宝石が好きです。



読者様につかの間の安らぎを

            「kanisaku」

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