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ヤマメとの生活  作者: kanisaku
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ケンの覚悟

昼間。ヤマメは自分の身体の異変に気付く。何時もは放出を押さえてれている病気の気を上手くコントロールできないのだ。それのせいなのか、体がやけに重く感じ、動くことが困難になりつつあった。


ヤ(おかしい…。どうして?)


横でケンが昼寝している。ケンには自分の病気が効かないとはいえ、このまま増大し続ける病気を受けさせ続けるのは心配だ。


ケ「ん…。んぁ~…ヤマメおはよう」


ケンは自分の異変に気づいてはいない。そんなケンは今日は買い物に行こうと笑顔で話す。


ヤ「えぇ…そうね…」

ケ「…なんか、元気無い?何かあった?」

ヤ「え?いや、大丈夫よ…。心配してくれてありがとう。嬉しいわ」


何時もならここで抱き着くのだが、病気をばらまき続ける今の自分はなるべくケンに触れることはできない。とてももどかしい。皮膚感染の病気や空気感染の病気、飛沫感染の病さえもジワジワと放出し続けているため、抱くことはおろか、キスもできないと思うと気が狂いそうになる。


ヤ「じゃ、じゃあ準備しましょうか…」


徐々に病気のコントロールが効かなくなり始めた身体に鞭打って準備をし、ケンと一緒に借家を出る。



・・・・・・・・・・・。



ヤ「……」

ケ「なんか顔色悪くないか?大丈夫?」

ヤ「え、えぇ…大丈夫…」

ケ「…いや、なんか嘘っぽい。だって手もつながないじゃないか。いつものヤマメじゃないみたいだ」


ケンにはヤマメに何が起きているのか分からない。しかし、ヤマメの表情からは何時もの笑顔は無く、ケンを心配させるには十分だった。


ケ「何か隠してるなら正直に言ってくれよ。何でも相談にのるからさ」

ヤ「う、うん…」


なんとか押さえてはいるが、もう限界だった。コントロールが本格的に効かくなってきている。ヤマメの周りには目を凝らすと見える、紫の霧のようなものが漂っている。


ヤ「ケン…。逃げて…」


ヤマメはそう言うとその場に倒れ、気絶してしまった。それと同時に、今までとは比べ物にならない程濃い病気の塊のような霧がとめどなく周囲を覆った。

離れた場所にある植物は枯れ、近くを通っていた妖怪達は皆咳き込みだし、中には跪いたりするものもいた。

ヤマメを覆う病気の霧が危険だと察した妖怪達は、次々に逃げ出していく。


ケ「おい、ヤマメ!しっかりしろよ!」


ヤマメを抱きかかえて揺さぶるが、反応は無い。具合が悪そうに眼を瞑って小さくうなされている。

突然、後ろから腕を引っ張られ、ヤマメから引き離される。一匹の妖怪が深刻な顔付きでケンを見ている。


妖「おい!ソイツは危険だ!お前も逃げるんだよ!死ぬぞ!」

ケ「ちょっと、離せ!」

妖「誰か!コイツも逃がすの手伝ってくれ!」

ケ「ヤマメ!ヤマメェェー!!!」


加勢に来た他2匹の妖怪にも腕を掴まれ、引っ張られるように連れて行かれる。そんなことをしている間に地底の3割を病気の霧が漂い、死者も出ていた。

それをいち早く察した妖怪達は次々に地上に逃げ、地底に繋がる道に蓋をした。



・・・・・・・・・・・・・・。



地上に無理矢理避難させられたケンは、大粒の涙を流して悔やんでいた。

もっと自分が早くヤマメの症状に気付いていれば、きっとヤマメを救えていたかもしれないのに…と。

何故ヤマメの能力が突然暴走し始めたのかは分からない。もう今の自分にはどうすることもできないのだ。


妖「困ったな…これじゃ地底に戻れない…。今更地上で暮らそうなんてできないし…俺達はどうすれば良いんだ…」

ケ「…」


ふと、ケンはポケットに小さな箱が入っているのを思い出した。

正方形の黒い箱を開けると、ヤマメに似合うと選んだスフェーンの指輪が入っていた。

昨日の夜。ヤマメに渡されたのだ。



ヤ「私がケンの指輪を持ってるから、私の指輪をケンが持っててちょうだい。結婚する日に交換しましょう。大好きよケン…」



ヤマメ…。彼女のその言葉を思い出し、そして苦しむように倒れた彼女の最後の姿が脳裏に浮かぶ。きっとまだ彼女は苦しんでいる。そんなときに、自分はこんな所で泣いていていいのだろうか。いや、いいわけがない。


ケ「ヤマメ…!!!」


スフェーンの指輪をポケットに入れ、地底に繋がる道を塞いでいた石の集団をガラガラとかき分ける。


妖「お、おい!何してるんだ!止めろって!」

ケ「地底に、俺の大事な人が居るんだ!まだ苦しんでる。俺が行かなきゃ、俺がヤマメと居なきゃダメなんだ!」


持ち上げられない大き目の岩を渾身の力で蹴って洞窟内に押し込む。乾いた音をたてながら人一人が通れる隙間が完成した。ズボンの裾を破り、ハンカチ替わりに口元に巻き付ける。


ケ「ヤマメが居る場所が、俺のいるべき場所なんだ」


崩した岩の隙間を通って洞窟内に一人突入する。愛するヤマメを助ける為に、愛するヤマメと会う為に…。

さぁ…次回最終回です!はたしてケンはヤマメを救うことができるのか、ケンの愛は届くのか!書いててなんだかバトル漫画を書いているような気分になりました。次が正真正銘の最後です…。ケン、頑張れ!



読者様につかの間の安らぎと愛を

            「kanisaku」

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