マンネリ?
ケ「…?」
ヤ「♪」
ケ「…何これ?」
ヤマメとケンの腕を繋ぐ、白と赤が混じったような色をした一本の蜘蛛の糸。布団から起きた時にはすでにケンの手首につけられており、外すことができない。それどころか、外そうと手を伸ばしてもすり抜けてしまうという不思議な糸だ。
ケ「それで、ホントに何なのこれ」
ヤ「私の力を最大限にまで込めて作った特製の糸よ。絶対に切れないから、これで一定の距離を保てるわね♪」
ケ「そうだけども…」
糸の長さは2mといった所だろうか。引っ張ると、確かに繋がれているヤマメの手もついて来ている。
ヤ「やん、あんぱり乱暴に引っ張らないで」
ケ「やけにノリノリだな…」
ヤ「ふふ、嬉しいのよ?だって、こうすればケンが逃げることもできないし、ケンの傍に居れる…」
今度はヤマメが糸を引っ張り、グイッと身体を引き寄せられる。
ヤ「あぁ、なんでもっと早くこうしなかったのかしら…。こうしてると、何時も以上にドキドキする…」
ケ「ふーん…」
ヤ「…感想とかないの?縛られるのは嫌だとか…私と居れて嬉しいとか」
ケ「いや、なんか今更感がすごいなぁとは思う」
ヤ「そんな…。だって、最近ケンが冷たいような気がするんだもの。昔はあんなにイチャイチャしてたのに…」
ケ「人聞きの悪いことを言うな。昔も今もイチャイチャしてるだろ」
床に寝転がるケンは、何時にもまして冷めたような態度だった。不機嫌にも思えるその姿は、まるで新婚夫婦のマンネリ化のようで、それを察知したヤマメは心配になる。
ヤ「…ケン。私に、飽きちゃった?」
ケ「どうして?」
ヤ「だって、今日はなんだか私に面と向かって話してくれないじゃない。いっつもはそんな事無かったのに…」
ケ「気のせいじゃないか?」
ヤ「気のせいなんかじゃないわ…。なんだか冷たい…」
横になっているケンに、寂しい表情ですり寄る。その悲しみを察したケンは、グルリと寝たまま身体を回転させてヤマメと向かい合う。
ケ「…」
ヤ「ひゃっ」
ヤマメをバッと抱き寄せ、有無を言わさずキスをする。
ヤ「んん…ふぅ、ぷぁ…」
ケ「ヤマメは心配し過ぎだよ」
ヤ「当たり前じゃない。アナタの事を思うと、心配し過ぎて気が狂いそうになるわ」
目に涙を浮かべながらそういうヤマメを見て。ケンは静かにヤマメを頭を撫でる。
ケ「そうだな…なんか、心配させてゴメンなヤマメ」
ヤ「いいえ、謝らなくてもいいわ…。けど、今日は、ずっとこうしてて…」
二人の糸は徐々に短くなり、最後は互いの手を握り合わないといけない程までに縮んでしまっている。しかし、ケンもヤマメも不自由だとは思わない。二人で寝ているだけだから何も困ることはないのだ。
ケ「よく見ると、この糸光ってるな」
ヤ「そうね。キラキラしてるわ。でも最初はこんなのじゃなかった。きっとケンが私の事を思ってくれてるからよ。嬉しいわ…」
ケ「そうなのかな…じゃあ」
ケンが目を瞑って数秒後、糸はもっと光沢を放って二人を照らした。
ケ「本当だ」
ヤ「コレ凄いわね…。けど…」
ヤマメが人差し指と中指でチョキを作り、糸を挟むと、プツンと糸が切れた。
ケ「どうして?せっかく作ったのに…」
ヤ「アナタをつなぐのは、私の糸じゃない…、糸に頼らなくても、私だけでケンを繋ぎ止めて見せるわ」
ケ「そうだな…俺も糸には縛られないけど、ヤマメには縛られたいかな」
ヤ「あら?そういうことなら拘束プレイがお望みかしら」
服の下から4本の蜘蛛の脚を出して、ケンを捕まえる。その拘束にケンも抵抗することなく、ヤマメと向き合って微笑んでいる。
ケ「やっぱり、ヤマメとこうしてるのが一番だな…」
ヤ「そうね…。私も、ケンと居れるだけで幸せよ」
二人の繋がりは糸ではなく、愛情で結ばれているということを認知したヤマメは、幸せそうに日々を過ごす。
マンネリって怖いですよね。愛が冷めていくのを実感した時はなんだか恐ろしく思います。愛していた人が離れていく。自分が尽くしていた人は誰かの元へ…。あぁ、嫌だいやだ。こんな時は妄想の世界に逃げ込むに限りますね。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




