増殖
目覚めるとそこはいつものヤマメと居る居間だった。しかし不思議だ。自分は布団の中で寝た筈なんだけど…。
ケ「…?」
ヤ「おはよう、ケン」
ケ「おぉ、おはよ…っ!?」
後ろから声をかけられ、返事をしながら振り向いたケンは驚きのあまり目を丸くし、開いた口が塞がらなかった。
ヤマメが二人いるのだ。
寸分違わぬ外見で、まるでその光景を見せつけるかのように立っている。
ケ「え、え…?なんで二人なの?」
驚いてアタフタするケンを見て、二人は同時にクスクスと笑い始める。
ヤ「私は妖怪よ?」
ヤ2「ちょっと力を使えばこうして増えるなんて簡単なんだから」
ケ「へ、へぇ…そ、そうなんだ」
少し驚きながら返事をすると、二人のヤマメは一瞬向き合って、目で合図を送るような仕草をする。そして二人は座り込むケンを、挟み込むように寄り添う。
ヤ「ふふふ…こうすれば、何時も以上にアナタを感じられるわ」
ヤ2「ケンの背中、暖かい…」
ヤマメは二人に増えても、性格やすることは全く変わらないようだ。二人係でケンの身体をくまなく、ねっとりとした手つきで撫で続ける。
ヤ「ケン…どう?私が二人居て、何か感想は?」
ケ「感想ったって…。まぁ、嬉しい…かな」
ヤ2「私達も嬉しいわ…こうしてケンを愛せるなんて。なんでもっと早くこうしなかったのかしら」
背中を占領するヤマメはスリスリと頬ずりをして喜んでいる。自分の前に座り込むもう一人のヤマメも、手を首に回して抱きつてくる。幾度となく甘えてくるヤマメに、最初はどうしようかと悩んでいたケンも慣れてきたようで、二人の頭を撫でてその愛情を受け止めた。
ケ「大体二人に増えてもな~…。俺は一人で十ぶ…え?」
ケンが二人を交互に見ながら言っていると、視界の端に何かが映った。すぐに目をやると、寝室に繋がる襖からもう一人のヤマメが顔をのぞかせているのだ。三人目である。
ヤ3「あ、え、えっと…その…」
顔を赤くし、恥ずかしそうに何かを伝えようとしているヤマメは、俯いて襖の陰に引っ込んでしまった。
ケ「…何あれ?」
ヤ「もう一人の私じゃない?」
ヤ2「恥ずかしがりなのね、ちょっと待ってて」
そういうとヤマメは背中から離れ、もう一人のヤマメが隠れた襖の奥に入って行った。
ヤ2「ほぉら、私なんだから、ケンに甘えていいのよ?」
ヤ3「え、でも…あんまりベタベタしたら嫌われちゃう…」
ヤ2「大丈夫よ、ケンならいくら甘えてもいいわ。あの人、単純だから」
ケ「おい、なんか失礼な事聞こえたぞ。何教えてんだ」
ヤ「ふふ、正直な私なのね」
少し二人の会話がつづき、最後は半ば無理矢理ヤマメがもう一人のヤマメを引っ張ってきた。ケンの傍にずっとたヤマメも引っ込み思案なヤマメの手を取り、ケンに押し付けるように後押しする。
ヤ3「ひゃっ!うわぁ!」
突然押されたせいでバランスを崩し、倒れこむようにケンに圧し掛かる。
ケ「おぉう…。ヤマメ…。あの二人の言うとおり、俺ぐらいなら相手になるぞ」
ヤ3「ぇ…そ、そうなんですか?じゃ、じゃあ…」
上に寝た状態で胸に頭を乗せて、互いの手を重ねる。そうすると、少し赤かった顔はさらに赤みを帯びてくる。
ヤ3「ぇへへ…暖かい…」
ヤ2「私も、甘えちゃおうかしら」
もう一人のヤマメがその横に寝ると、残ったヤマメもその反対側に横になる。
ヤ「両手に…いや、両手と胸に花ね」
ケ「自分で言っちゃうんだ」
ヤ2「私達は、ケンっていう水が無いと枯れて死んじゃう花なの、ずっとケンの傍に居させてね?」
ケ「はいはい…」
満更でも無い様子で返事をするケン。その上に乗っているヤマメも嬉しそうに身体を捩らせ、ケンの首筋をペロペロと小動物のような小さな舌で舐めている。
ヤ3「美味しい…ケン、美味しいよ…」
ヤ「ふふ、そうでしょ?ケンって、私達の好きな味がするのよ」
両手と首筋を何度も舐められ、ゾクゾクとした感覚が襲ってくる。しかし、それもアリかと思っていると、一つの影が顔を覆う。
ケ「?」
ヤ4「はぁ…はぁ…もう、我慢できない…」
4人目のヤマメは下着姿だった。発情したようなそのヤマメはしゃがみ込むと、顔を掴んで無理矢理キスをして口を塞いできた。そのヤマメの背後には、何人ものヤマメが期待のまなざしでこっちを見ている。ガヤガヤと押し寄せてくるその集団の姿を最後に、突然視界が真っ暗になる。
・・・・・・・・・・・・・・・。
ケ「…どんな夢見てんだよ俺」
布団から半身だけを起こしたケンは、自分が見ていた夢の内容を思い出し、頭を抱えてなぜあんな夢を見たのかと悩み続けたという。
今回も夢落ちです。夢落ちって便利ですよね。あんまり多様するといけないような気もしますが、しょうがないんです。こうでもしないと自分で面白いと思える内容が書けませんから。ヤマメいっぱい居たみたいですね。一人くらい連れ帰っても…。ばれませんよね?
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




