読心術?
ヤマメが台所で料理している間、ケンは本を片手に食器などを運んだりしていた。
ヤ「何読んでるの?」
ケ「恋愛小説。前に買い物に行ったときに店の人からタダでもらったんだけど、全く読んでなかったから今読んでみてる。結構面白いよ」
ヤ「へぇ、どんな内容?」
ケ「心が読める女の子が別の世界から来た男性に惚れて、一方的にラブラブアタックを…」
ヤ「怖いわね、相手の心が読めるなんて。ちょっと体感してみたい気もするけど…」
・・・・・・・・・・・・・・・。
さ「ふふ、今月も売れ行きは順調ね…」
男(なんの?)
さ「私の日記を小説家してるの。アナタも読む?…そう、残念。アナタの心も丸分かりだから、かなり書きやすいのよ?嘘偽りのない文章が書けて…」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
ケ「最初は男は抵抗するんだ。けど、相手の女性が恐ろしくも可愛く思えてたみたいでさ、女の子は思ってることが分かるのを男に黙ってて接するんだ。最後は自分の力を打ち明かして、自分以外に喋りかけられないように喉を潰そうと」
ヤ「ホラーなの?」
ケ「ホラー…じゃない?相手の心読んでほくそ笑んでるような悪女だからな。ドラマ化したら絶対ドロドロした内容になるよ」
ヤ「ふーん…。私も、ケンにしちゃおっかな~」
ケ「何を?」
ヤ「ラブラブアタック♪」
ケ「もうしてるじゃん」
ケンの突っ込みに、それもそうねと納得しながらヤマメは皿に美味しそうにできあがった野菜を乗せていく。料理を居間のちゃぶ台に置き、二人そろって手を合わせる。
ケン・ヤマメ「頂きます」
アツアツの野菜炒めとご飯を頬張りながら、ケンは閉じて置いてある本を見つめる。続きが気になるようだ。
ヤ「食事の時は止めておいたら?」
ケ「分かってる。今は読まないよ」
キャベツや人参の炒め物の味をかみしめながら本の続きを想像する。そんなケンを見て、ヤマメは少し機嫌を損ねていた。自分より本を優先しているケンに不満を抱いているのだ。
ヤ「ねぇ、本と私、どっちが好き?」
ケ「え?そりゃヤマメに決まってるだろ」
ヤ「…」
ケ「…あ。ヤマメあれだろ、お前…俺が本ばっかり読んでるから本に嫉妬してるんだろ」
ワザとらしく言うケンだが確かにそうだ。今の自分は本に嫉妬している。けど、落ち着きを取り戻した。理由は簡単、相手が本だからだ。本ごときにケンが奪われる筈が無い。そう確信できたから。
ケ「あの本は面白い。けど、ヤマメが嫉妬するほどじゃないぞ。だってただの本だからな」
ヤ「? …え、えぇ、そうよね…ただの本だもんね…」
ヤマメは内心驚いていた。心を読まれたような気がしたから。しかし、気のせいだろう。そう自分に言い聞かせる。
ケ「そうそう、気のせいだって」
ヤ「!?」
おかしい、何故ケンは突然そんなことを言ったんだろう。
ヤマメの心は、動揺によって大きく揺さぶられた。
ヤ「ね、ねぇ…ケン…」
ケ「何?」
ケンはいつも通りの笑顔だ。しかし、この笑顔が怖かった。まるで、全てお見通しとでも言いたげな自信満々なものにみえてしまうのだ。
ヤ「正直に話してほしいの…アナタ、人の心が読めるの?」
ケ「ん~?いや、そんな訳ないじゃないか」
冗談でも聞いたかのようなヘラヘラした対応が余計に怪しく思えてしまう。
しかし、心の中でもう一つの感情が湧きあがってきた。
ケンが、自分の全てを見てくれている。
そう思うとゾクゾクとした感覚と共に喜びの気持ちがこみ上げ、ケンを疑っていた感情が押しつぶされて消滅した。
そして、ケンを試すためなのか、もっと見てほしいからなのか、心の中でありとあらゆる妄想や想像を考えてみた。ケンがそれを読み取ったときにどんな反応をするのかが気になったからだ。
ケ「…ふぅ、ごちそうさま…。美味しかったよヤマメ」
ヤ「えぇ、それは良かったわ…」
ケンはいつもと変わらない感じで食器を片づけ、本の続きを読んでいる。ヤマメはその横に座り、ひたすらに妄想の限りを尽くした。
ヤ(ふふふ…そのうち「いい加減その妄想を止めてくれ」なんて言い出すのかしら…)
期待に胸を躍らせて笑顔で待っているが、ケンは一向に喋らない。
ヤ(きっとケンでも言うのが恥ずかしいのね)
そんなことを思いながら、その日は何事もなく終わった。
・・・・・・・・・・・・・。
3日後、ケンとの買い物の途中でヤマメは悟った。
ヤ(ケン…まさか、本当にマグレだったの…!?)
そして、自分が今まで妄想していたことを思い出し、墓穴を掘ったように恥ずかしがしながら顔を赤くする。
ケ「?ヤマメ、何してるんだ?」
ヤマメのひとり妄想のお話でした。勘違いって怖いですよね。でも勘違いで動いちゃう子好きです。嫌な方向に進まなければですが…ね。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




