慰め
いつも通りの朝食。なのだが、いつも以上にヤマメがこっちを見て微笑んでいる。まるで、食事に毒を盛って、自分が苦しむのを待つ犯人のように思えてくる。
ケ「…毒の種類は?」
ヤ「どういう意味よ…」
真面目な顔でふざけたことを言うケンにヤマメが突っ込む。夢の中に出てきたケンだったなら、絶対にできないやり取りだ。
ヤ「私、さっき怖い夢見てた」
ケ「ふーん」
ヤ「もうちょっと関心持ってくれてもいいじゃない」
ケ「で、どんな夢だったの?誰かに追いかけられる夢?歯が抜け落ちる夢?力士にビンタされる夢?」
ヤ「最初の二つは分かるとして、最後のやつは何よ…」
一呼吸おいて、決心をつけたように話す。
ヤ「私がね、夢の中で…ケンに飲ませるために惚れ薬を作るの」
ケ「今でも十分惚れてるよ」
突然言われた言葉に顔を赤くしながらもヤマメは続ける。
ヤ「それで、ケンに飲ませるんだけど…ケンが…私を好きになりすぎて、ご飯もいらないなんて言うの。それで、どんどんケンが痩せていって、最後は…」
ケ「…」
ヤ「…」
ケ「…え?最後は何?」
ヤ「察してくれないの?」
ケ「くれいなよ。最後は耐えきれずに飯食ったかもしれないだろ」
気を使ってくれないケンに少し呆れ気味に、しょうがなく言う。
ヤ「…死んだのよ」
ケ「マジかよ。何やってるんだよもう一人の俺は」
片手で目を覆い、まいったぜ。といわんばかりのポーズをとるケンは床に寝転がってヤマメを見る。
ケ「まぁなんだ…、夢で良かったじゃないか。ヤマメもそんな薬を作らない方が良いってのが分かったんだし、安心しろよ」
ヤ「そうよね…」
打ち明けたヤマメの表情は暗かった。ケンは、夢なのだからと特に気にしてないが、ヤマメを見ていると少し心配になってきていた。
ケ「俺はヤマメ好きだけどそのほかの事を疎かにするアホーじゃないよ。それに、俺を見てみろ」
ヤ「?」
ケ「死ぬ顔に見えるか?」
ヤ「見える」
ケ「…」
それもそうだ。人間なのだから、何かあればすぐに死んでしまう脆い人間なのだから、死ぬように見えて当然だ。
ケ「ふぅ。もう夢の事だ。忘れようぜ」
ヤ「そうね…」
ヤマメの表情はまだ暗い。なんでもいい、どんな手を使ってでもヤマメを笑顔にさせたかった。
ケ「夢で思い出したけど、俺も昨日夢見てたよ」
ヤ「?」
ケ「ヤマメとさ、結婚する夢。そういえば俺達まだ結婚してなかったんだな~って実感させられたよ」
ヤ「そういえば、そうね」
ケ「式場とかどこにする?やっぱり着物とかが良い?それとも思い切ってドレス?」
突然の質問攻めに少し驚くが、それがケンが自分を思ってやっているこのなのだと理解して涙が出てきた。
ケ「おいおい…泣かないでくれよ…」
ヤマメの横に座り、慰めたいがどうすることができずにアタフタふるケンを見て、ヤマメは小さく笑う。
ヤ「ケンが…優しいなぁって…」
ケ「…そうだよ。俺は好きな人には優しいんだ」
ケンはそっとヤマメを抱きしめ。ヤマメの背中をポンポンと叩く。子どもをあやす親のような行動に、ヤマメも安心して身を任せた。
・・・・・・・・・・・・・・・。
ヤ「式はしなくていいわ。だって他の女にケンを見られたくないもの」
ケ「男だけ呼ぶってのは?」
ヤ「ケン以外の男なんて要らないわ♪」
ケ「そうなのか。じゃあ結婚するだけで派手は事はしなくてもいいな」
ヤ「私ね。ケンと一緒に過ごすなら、もうちょっと狭い家がいいな~って思ってるわ」
ケ「どうして?」
ヤ「だって…ケンともっと寄り添えるじゃない」
頬に両手をあて、恥ずかしそうに左右に振っている。乙女がしそうなそぶりだが、ヤマメがするともっと可愛く見える。
そんなヤマメが好きだから、もっと彼女と居たいと思う。
前回の続きです。ケン優しいですね、こんな男性になりたいです。優しくできる女性もいませんが…。
終了まで…あと、3日ですねぇ…。寂しいものです。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




