ヤマメの悪夢
ヤ「ケン。今日も一緒に寝てくれるわよね?」
ケ「そりゃもちろん。さ、おいで…」
なんだか妙に積極的なケンは掛布団を片手で持ち上げてヤマメを布団の中に誘う。なんの疑いも無しにヤマメはその中に入り、ケンに抱き着く。
ヤ「ふふ、暖かいわ…」
ケ「ヤマメ。大好きだぜ…」
突然そう言ったケンはヤマメにキスをして抱き返し、ヤマメもそれを受け入れる。二人で向かい合って布団を温める。
しばらく二人で抱き合ってキスをしたり指を絡ませたりして。満足してから眠りについた。
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目が覚めるたヤマメは辺りが薄暗く、まだ夜なのだと分かった。不思議な事に、横で寝ていた筈のケンの姿が無く、少し不安になる。
ヤ「ケン…?どこ?」
オロオロと辺りを見回すが誰かが居るような気配はない。本当に一人ぼっちだった。ケンの居ない空間に耐えきれず寝室を出て家中を探しまわる。ケンが居ないだけで自分が長年住んでいた家が全く別のものに思えてくる。
ヤ「ケン…、どこなの…?」
窓を開けて、旧地獄街道の大通りを見てみるが、やはりケンの姿はない。妖怪達が点々と居座り、酒を飲んだり将棋をしている姿だけが目に映る。
ヤ「やだ、どこに行ったの?なんでいないの?」
焦りが大きくなってくる。ケンの事を思う度に心臓が苦しくなって、そのケンの居ない状況に泣きたくなってくる。
ヤ「ケン~…」
ついに涙をぽろぽろと流しながら、その場に座り込んでしまう。常に傍らに入る筈の愛しい人が忽然と居なくなってしまったのだ。大好きな人と居ることで満たされていた心の活力は一気に空になっていた。
ヤ「うぅ…。どうして…いなくなっちゃうのよ…」
どんなに拭っても止まることを知らない涙はヤマメの上着の袖を濡らしていく。自分が何か悪いことをしてしまっただろうか。それとも、別の何かに巻き込まれてしまっているのだろうか。いろんな考えが頭の中を渦巻くが、ケンを探す気力は残っていない。
まるで麻薬の禁断症状でも起きたかのように、ケンが居ないという現状だけがヤマメの心臓をキリキリと苦しめる。
ヤ「ケン…アナタ。前に「私が大好きな病気」に感染してるって言ったわよね…。私ね、もっと酷い病気にかかっちゃったみたい…アナタが居ないだけで、心が苦しくて動けないの…」
病気を操る能力を持つヤマメが感染したという病気は他でもない、「ケンが大好き過ぎる」病気である。彼が居なければ今のようにろくに動くこともできず、ただ苦しみを味わい続けるだけの恐ろしい病気。一度かかると二度と治ることはない。不治の病だ。どんな能力をもってしても、この病気を消すことなどできない…。
ヤ「私が何か悪いことしなら謝るから、反省するから…だから、戻ってきて、戻ってきてよ…ケンが居ないなんて、嫌だよぉ…」
土下座に近い体勢で頭を下げ、ボロボロと大粒の涙を床に落とす。
その時、謎の温かさがヤマメの身体を包んだ。不意に訪れたその温もりに身を任せ、目を閉じる。そうすると、明るく温かい場所から伸ばされた手を掴んでいるかのように、助けられているというのにも似た感覚を最後に意識は途切れた。
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ケ「ねーんねーんころーりーよー。ヤマメころーりーよー…ヘイヘイヘイっ」
棒読みな歌声で目を覚ますと。横にはいなかった筈のケンが添い寝してくれている。
ケ「あ、起きた。おはよう」
ヤ「ケン…どうして…?居なくなったんじゃ…」
ケ「え?いや、そんなことは一言も…ずっと一緒に寝てたし…。ヤマメ魘されてたんだよ。心配したぜ」
ケンのその言葉で、あれが悪夢だったのだと理解する。そして、夢の中で苦しむ自分に対してもケンは優しいんだということも分かって、ケンを抱き寄せながら大泣きしてしまう。
ヤ「うわぁあああああん!ケン!良かった!アナタが居てくれて!」
ケ「ぅおっ。おおよしよし…心配するな。居なくなったりなんかしないから」
ヤマメを慰めるために背中をポンポンと、子供をあやすように叩き、頭を撫で続ける。今のヤマメは、怖い目にあった子供同然だ。
ヤマメがどんな夢を見たのかなのかよくわからないまま、ケンは彼女を慰め続けた。
悪夢って嫌ですよね。自分は人生で初めて体験した二十夢が見知らぬ禿散らかしたおっさんと結婚させられるという夢でした。明るい場所で寝ると、夢を見やすいそうです。面白い夢ならいくらでもみたいですが、そうもいかないんですよね…。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




