あの世 1
それは、40分前の出来事だ。
ケ「ヤマメって、何時みても可愛いよな。一緒に居れて嬉しいよ」
ヤ「ふふ、そんな事言って…夜が寂しいの?いつでも相手してあげるけど…」
ケ「なんでそんなことになるんだよ…。ただ言ってみただけだよ。にしても、本当に可愛い」
ヤ「もう、照れるわ」
ケ「可愛いっ、綺麗っ、セクシーっ、妖怪ナンバー1っ」
ヤ「照れるって~っ」
ゴッ!
ケ「…」
ヤ「~♪…ケン?ケン、ちょっと、ねぇ、ケン!ケン!」
その日俺は、褒めた女性になぐり殺された。
ケ「酷いよな~。まさか死ぬ勢いで頭を叩くなんて…」
彼女にとっては照れ隠しのつもりだったのだろう。しかし、度が過ぎている。いくらなんでもやすぎだ。
自分が死んでいる。というのは、なんとなく、勘でそう思っているだけだ。が、辺りは小石が敷き詰められ、水の流れる音が聞こえる川辺。三途の川に違いない。自分は死んだのだ。
ブツブツとヤマメに文句を言いながら歩いていると、一人分の人影が見えた。
ケ「あれは…。おーいそこの人~」
人影に手を振って小走りで駆け寄り、その姿を確認する。
小「お、新しい死人かい。自殺?」
ケ「いや…他殺…」
物騒にも、大きな鎌を担いだ赤髪の女性。元気そうな声はとても三途の川に似つかわしくなく、本当人ここがそうなのかと疑える程だ。
小「ふーん…幻想郷も最近は、物騒になってきたねぇ…」
ケ「俺は元の世界の事よく知らないからわかんないや」
小「アンタ…外の世界から来たのかい?」
ケ「そうだな。ここって、やっぱり三途の川?」
小「そうだね。アタイは死神の小町っていうんだ。よろしく」
ケ「あぁ…よろしく」
差し出された手を握ると、小町は辺りをキョロキョロと見回す。
小「さて…他に死んだ奴は居ないね…じゃ、乗りな」
小町が川に近づくのを目で追うと、木製の船が一隻プカプカと浮いている。それに小町が乗り込み、自分に手招きをしている。
小「死を受け入れる時が必要な時がくるものさ。乗りな」
ケ「あ、あぁ…」
木の板を渡り、船に乗り込む。すると、誰も動かしていない筈なのに船はゆっくりと動き出した。
ケ「これって自動なんだ…ハイテクだね」
小「まぁね。さて…向こう側に着くまでは時間がある。アンタの死んだ理由。嫌じゃなかったら聞かせてくれないか?話せば気が楽になることだってあるしさ」
ケ「うん…。と言っても…本当になんの前触れもなく、一撃だったもんな~」
小「誰にやられたんだ?」
ケ「彼女」
小「ふーん、酷い彼女もいたもんだね」
ケ「優しいよ?ただちょっとやり過ぎちゃっただけだ」
小「そうなのかい。喧嘩でも?」
ケ「いや、褒めたら照れて、殴られてポックリと…」
小「随分あっさりとしてるんだね…」
呆れたようにいう小町。二人を乗せた船は、ゆっくりと霧の濃い川を渡っていく。まだ5分も経っていないと思うが、結構長い間乗っているような気もする。
小「まぁ…それは災難だったね」
ケ「そうですね~。せめて最後にお別れくらい言いたかったなー」
小「はは、死んで船に乗った奴の殆どはそう言うさ」
それから数十分だろうか。他愛も無い雑談で時間をつぶし、気がつけば目的地であろう岸についていた。
小「そこを真っ直ぐ進んでいきな。大きな建物がある筈だから、その中に入るんだ。あとはそこに居る奴らが何とかしてくれるさ」
ケ「ああ、ありがとう。じゃあな」
小「あいよ」
小町と別れ、小さく草が生えている、道も無い広い場所を進んでいく。船を降りてから数分で、小町が言っていたであろう建物の前にたどり着いた。日本の昔の城を思わせるような外見に、赤い模様も混じってとてもきれいな建物だと思える。
ケ「ここ…だよな…」
その大きな建造物に、「本当にここに自分が入っていいのか」と思ってしまうが、小町が言うにはここなので入るしかない。呼吸を整え、そして開かれている大きな門をくぐる。
ケンの突然の死!犯人はヤマメ!
まぁ、珍しくケンとヤマメ。離れ離れなお話です。次回も続きます。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




