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ヤマメとの生活  作者: kanisaku
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呪いの結末

場所はヤマメの住む借家の一階。そこには二人の男女が住み、日々女性は男性を愛し男性は女性を恐れていた。


畳の敷いてある居間で座り、じっと料理を作っているパルスィをカズヤは眺めていた。それ以外することが何もないからだ。


カ「…」

パ「はい、今日のご飯よ」


焼き魚と漬物。湯気をユラユラと立ち上らせる白飯。質素に見える食事だが焼き魚は大きく。漬物も3種類あって食卓を彩っている。白飯はいい匂いを漂わせ、カズヤの目を引いている。


パ「今日はいい買い物ができたわ。アナタを思うと、自然と質の良い食材が選べちゃうのよ」

カ「そうか…ありがとう」

パ「もっと喜んでいいのよ?大好きなアナタの為に、私は頑張れるんだから」

カ「そうだな。食事の時くらい…。いただきます」


焼き魚の身を箸で少し崩して食べる。熱さで一瞬口の中に緊張が走るが、すぐに慣れてしまった。焼き魚の美味しさに拍車をかけるように白飯も一緒に頬張り、その美味に腹と一緒に心も満たす。


カ「本当なんだな。美味しい」

パ「でしょ?」


パルスィも自分の分の食事を食べ始める。こういう食事の時だけは、カズヤのパルスィに対する警戒心も薄れている。こんな時だからこそ、そうでもしないとストレスで倒れてしまいそうだからだ。


パ「そうだ。今日、アナタにしてもらいたいことがあるわ」

カ「?」

パ「大丈夫よ。アナタが苦しむようなことじゃないわ」


結局、自分が何をするのか聞かされないまま食事は終わった。


・・・・・。



突然の風のざわめきで目が覚める。半身を起してカズヤが当たりを見回すと、そこは見たこともない夜の森の中だった。鬱蒼と茂った背の低い雑草や、それに覆いかぶさるように背を伸ばしている樹木。不思議と怖いとは思わず、空を見上げる。今までに見たこともない程キレイで、キラキラと輝く次がポツンと寂しげに空に浮かんでいるだけ。


カ「なんだんだこれ…?これは、手紙?」


足元に石ころで重しをされている長方形の紙を広げると、何かが書いてあった。どうやら呪詛の方法らしく、五寸釘や藁人形と言った単語が出てくる。


『殺したいと恨む相手の体を一部、または相手の映っている紙を藁人形に入れる。その藁人形に恨みを籠めながら、五寸釘を突き刺せ』


カ「恨む、相手…」


『相手に呪いをかけ、いずれ相手は死ぬだろう』


カ「死ぬ…?」


紙を握る手に自然と力が入る。ふと気がつくと、自分が座っている横に藁人形と五寸釘、そしてカナヅチが転がっていた。


カ「これで、恨んでる人を…」


脳裏にパルスィの姿が浮かぶ。自分を監禁し、元の生活に戻さないように縛り続けているパルスィ…。彼女のせいで、自分は自分の生活ができない。親や恋人とも会えない。

そう思うと、苛立ちと恨みの感情が込み上げ、呪いをかけろ。と理性に言いかける。


カ「やってやる。じゃなきゃ、俺は…元の生活に…!」


紙から、パルスィが達筆で描かれた紙が落ちる。これを呪いの材料に使え、ということだろう。

全ての材料はそろった。あとは、これを木に打ち付けるだけ…。

周りにある多くの木のうちの一本を適当に選び、その木の前に立つ。藁人形に丸めたパルスィの紙を押し込み、木に押し付ける。

五寸釘を先端の部分だけを少し刺し、カナヅチを握る手に力をグッと込める。


カ「…!!!」


カナヅチを構える。その時…。


            大好きなアナタの為に、私は頑張れるんだから


パルスィの言葉を思い出し、ギリギリでカナヅチを止める。


カ「俺、の為に…」


自分があんなにパルスィを怖がっているのに、そんな自分にパルスィは…。そんなパルスィを自分は…。

自分は、パルスィに酷いことをしてしまっていたんじゃないかと心の中で罪悪感が満たされていく。

持っていたカナヅチを落とし、押さえていた藁人形から手を離す。すると、突然後ろから話しかけられた。


パ「どうしたの?刺さないの?」


後ろに立っていたのはパルスィだった。


カ「なぁ…これ打ってたら、どうなるんだ?」

パ「もちろん、私が死んでたわ。そうとう苦しみながらね…」

カ「そうなのか…」

パ「もう一回聞くけど、なんで打たなかったの?」

カ「パルスィ、お前って。本当に俺の事好きなのか?」

パ「今更ね…そうに決まってるじゃない。初めて橋の上で会った時から…」


ゆっくりと迫るパルスィは、そっとうしろからカズヤを抱きしめる。


パ「アナタ、本当に優しいわ…」

カ「俺は…優しくなんて。ただ、俺の事を思ってくれてるパルスィを、殺すのが忍びなかっただけだ」

パ「それが優しいって言ってるのよ…ほんと、妬ましいわ」


背景が燃え尽き、風で飛んでいくようにどんどん崩れ去る。

そして目が覚めると、布団の中で横になっていた。その隣では、パルスィが座ってこっちを見ている。


パ「おはよう」

カ「あぁ、おはよう…」

パ「アナタの気持ち。十分に分かったわ。これからもよろしくね…」


カズヤの頭を優しく撫でるパルスィは。何時もよりどこか物静かで、落ち着いた表情をしている。

これからは、彼女に対して…もう少しでも優しくしよう。

今でも彼女は怖い。けど、パルスィが自分の事を思ってくれてるなら、それに答えよう。

カズヤは心の中でそう思い、立ち上がる。二人の生活はまだまだ続く。



今回は、久々(?)のパルスィ登場ですね。二人の間にちょっと進展があったみたいです。どうやら和解できそうですね。



読者様につかの間の安らぎとジェラシーを

              「kanisaku」

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