仕返し
ヤマメ「ご飯、できたよ…」
ケン「おー。旨そうだな」
出された料理は麻婆豆腐。ホクホクと立ち上る水蒸気とともに居間に広がる美味しそうな匂いに釣られ、フラフラとテーブルに座るケンを、異様にニコニコと見つめている。
ケン「…なにか嬉しいことでもあった?」
ヤマメ「いいえ、アナタに食べさせるのを待ってるの」
ケン「そうだよな~。毎回そうだもんな…」
渋々スプーンをヤマメに渡し、口を開けて待機する。
ヤマメ「うふふ…今日も美味しくいただきましょう」
スプーンで麻婆豆腐をすくい、自分の口に入れる。熱いようで、ジワリと目に涙を貯めた後、水を一気飲みにして落ち着く。
ヤマメ「ふぅ…思ったより熱いわ…」
ケン「フーフーしようか?」
ヤマメ「そうね。お願いするわ」
もう一度すくった麻婆豆腐をヤマメが自分の口元まで持ってくる。それに飛ばないように、でも丁度いい温度まで冷ますように、息を吹きかける。
ヤマメ「あむ…」
麻婆豆腐を食べたヤマメは、しばらく噛んだあとに…飲み込んだ。
ケン「…あれ?俺の分じゃないの?!」
ヤマメ「あ…ゴメン。アナタが冷ましてくれたやつだと思ったら、つい…」
ケン「『つい』で、俺の飯は無くなるのか」
ヤマメ「一回だけならいいじゃない…ね?次はちゃんと食べさせてあげるから」
なだめるように言うヤマメは、不満気な表情をする自分に麻婆豆腐の乗ったスプーンを近付ける。それに食らいつこうとすると、スッとスプーンを離され、またもヤマメが自分の口に入れる。
ケン「普通に食わせてくれればいいのに…」
ヤマメ「ん~ん」
多分、「だ~めっ」と言っている。そのまま顔を近付けて、口移しをする。ニチャニチャと少し汚い気もするが、彼女なりの愛情表現の一つなのである。ヤマメの唾液と一緒に送られてくる麻婆豆腐を飲み込んで、ヤマメに質問する。
ケン「ん…あのさ…」
ヤマメ「なに?」
ケン「こういう、ドロッとした食事の時は、これ止めない?なんかちょっと気持ち悪くて…」
ヤマメ「そう?全然そうは思わないけど…」
ケン「いいやダメだね。これ以上続けたら、俺が吐くぞ」
ヤマメ「うーん…」
ケン「肉とかさ、野菜とかさ、そんなんなら全然いいんだけど、麻婆豆腐の時とかは止めて」
ヤマメ「…分かったわ。ケンがどうしてもって言うなら…」
ケン「分かってくれたか。物分りの良い妻で良かったよ」
ヤマメ「妻?私達って、もうそんな所まで来ちゃってるの?」
ケン「だって…ねぇ?俺とヤマメはもう…あんなことしちゃったし…」
もう2回だろうか。ヤマメと交わったこと…。人と妖怪が交わるなんて、滅多にないことじゃないだろうか。
ヤマメ「あの時のアナタったら、とても激しくて…。嫌々言ってる割には、結構積極的だったわ…」
両手を頬に当て、嬉しそうに身体を左右に揺らす。乙女だ。
ケン「あんまり嫌々言って抵抗しても、ヤマメが傷ついちゃうかなって…」
ヤマメ「ケンは優しいのね…そんなケンは好きよ」
ケン「じゃあ優しくない、意地悪な俺は?」
ヤマメ「…それも好き。だって、私を虐めて相手してくれるんでしょ?でも知ってるわ。ケンがそんな事しない人だって…」
ケン「昨日縛られたの忘れたの?」
ヤマメ「そういえば、そうだったわね…」
ギギギと不気味な、人形が動くような音を立てながらゆっくりと振り向くヤマメは、ケンをジッと見つめる。どす黒い目は、ケンを吸い込んでしまうかのような威圧感を放ち、その迫力にケンも冷や汗をかく。
ヤマメ「仕返し…してもいいかしら?」
両肩を掴まれ、ハァハァと息を荒くするヤマメ。
ケン「嫌です。嫌でげす」
つい変な喋りになってしまった自分をお構い無しに、服を脱がせながら蜘蛛の糸で器用にグルグルと拘束していく。
ヤマメ「大丈夫よ。ケンが私にしたのと似たようなことをするだけ…」
天井に一本の糸を貼り付ける。その糸は、自分の両手を後ろで縛った糸と繋がっていて、腰の弱い年寄のような恰好を、上半身裸でさせられる。
そして、ヤマメの涙で濡れたことのあるアイマスクをつけられ、ヤマメの不気味な微笑の声だけが聞こえてくる…。
ヤマメ「放置するなんて事はしないわ。その代りに、じっくりと相手してあげる…」
ベタベタと身体を弄るヤマメの息遣いが後ろから聞こえてくる。言い表せない感覚でゾワゾワと鳥肌が立ち、「ぅうっ!?」っと、つい情けない声をだしてしまう。
ヤマメ「クスクス…変な声。可愛い反応ね」
お腹、肩、二の腕、脇腹、背中、鎖骨、頬、指先…。ありとあらゆる所を触られ、場所によっては舐められた。
ケン「うひゃぁぁ」
ヤマメ「…なにか奇妙な声ね…」
ケン「も、もう十分だろ。放してくれよ」
ヤマメ「ダメよ、あと1時間は続けさせてもらうわ…うふふ、覚悟しててよ?」
ケン「そ…そんな…」
撫でまわされるって、なんか良いですよね。何と言うか…こう…愛されてる感じがしますよね。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




